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【モチベーションカンパニーへの道】ベストリハ 代表取締役 渡邉 仁

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

企業家倶楽部アーカイブ

ヘルスケア分野のプラットフォーマー

(企業家倶楽部2021年7月号掲載)

2020年7月に発表された平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳。誰もが願うことは健康で幸せな老後であろう。とはいえ、歳を重ねるとできないことが増え、不自由な生活を強いられる老人は多い。「不自由な世界を変える」というビジョンを掲げ、ヘルスケアサービス領域でDXを用いて新たなサービスを提供するベストリハ。自らも作業療法士として現場経験をしてきた渡邉仁に起業の想いとこれからの展開を伺った。(文中敬称略)

危機感からの起業

 学校を卒業後、理学療法士として現場で経験を積んできた渡邉。「もっとこうしたらよいのではないか」「自分ならこうしたい」と、常に問題意識を持って現場に臨んでいた。

 同時に、現状のサービスをこのまま続けることができるかということを感じていた。日本の介護サービスは非常に手厚いサービスを提供している。利用者の自己負担は、割合こそ増えてはいるがそれでも安価で利用することができる。

 しかし、急速に進む超高齢化社会と少子化問題を考えたときに、同じサービスを提供し続けていくことはコスト的に難しくなってくるだろう。現場に立ちサービスを提供する渡邉は「このままでは持続可能なサービスを提供することが難しい」と危機感をいただいていた。

 この課題を解決するには、自らが起業するしか方法がないと決意し、2011年にベストリハを設立した。「不自由な世界を変える」というビジョンの下、利用者の「やりたいを叶える」ことを愚直に徹底的に追い求めたサービスの提供にこだわった。

 サービスを受ける人たちは、今まで当たり前のことのようにできていたことができなくなっている人が多い。例えば、犬の散歩であったり、友達と食事をすることであったり、何気ない日常を失っている。

 同社の特徴的な取り組みの一つとして、「てへぺろレストラン」というレストラン運営が挙げられる。現在は新型コロナウイルスの影響で一時的に休止しているが、同社のサービス利用者が料理をしたり、接客を行うレストランとなっている。「利用者のやりたい」を叶えるためにここまで本気で取り組んでいる会社はなかなか見当たらない。

リアルとテクノロジーが両輪
 リアルな取り組みも他社と一線を画する同社であるが、さらに特徴的な取り組みがテクノロジーを用いて介護、医療、ヘルスケア分野における社会課題解決に取り組んでいる点である。

 例えば、デイサービスの利用者それぞれにどのように介護を進めていくかという計画書がある。この計画書の作成は非常に複雑で作成に時間が取られる。半日かけて作成に追われるということも日常茶飯事である。なお且つ、書類の数も多く、それを数か月に一度評価をしなければならない。

 この業務をほぼ自動で作成できるプロダクトが「はやまる」である。渡邉自身が現場を知っているからこそ生まれたプロダクトだ。自社の施設で前身となるシステムを数年前から使用し、検証し、改善を行い、さらに磨きをかけて出来上がったのが「はやまる」なのだ。

 昨年9月から、社外への提供を開始し、現在約300事業所で利用されている。今年の4月に介護報酬の改定が行われ、より一層煩雑になった業務の効率化を比較的安価で図れるということで、4月には問い合わせが殺到した。専属の営業マンを配置し更なる導入を目指す。

 「はやまるはあくまで入口です」と渡邉は語る。より多くの事業所が採用することで、多くのデータが蓄積できる。それらを分析することによって健康維持にとって最適なリハビリ、最適な栄養、最適な医療・福祉とは何かを追い求め、それらを医療・福祉サービスにフィードバックすることで「不自由な世界を変える」というビジョンを達成していこうと決めいている。

 さらに、8月にリリース予定の「ヘルプケア」は、利用者の血圧や心拍数、体温など様々な個人データを一元管理し、医療現場、介護現場、さらにはその家族までもがそのデータを見ることができ、コミュニケーションが取れるツールである。利用者ファーストのシステムであり、渡邉が目指す「病気しない世界」という究極の目標の一歩ともいえるシステムである。

 今まで感じてきたリアルの課題点をシステムに落とし込み、そのシステムを検証し、さらにブラッシュアップするというサイクルが同社の強みとなっている。

乗り越えてきた壁

 組織改善コンサルを手掛けるリンクアンドモチベーションが今年3月に開催した「モチベーションチームアワード2021」でベストリハの2つの事業所が見事受賞した。様々な取り組みを行い、企業と個人のエンゲージメントが大きく向上した結果である。取り組みを初めて約4年での快挙であった。

 ここに至るまではいくつもの壁があった。施設が5 店舗を超えプレイングマネージャーから経営者に変わらなければならないタイミング。また、100名、300名とスタッフが増えてきたタイミング。ある時、社内で働くスタッフのリアルな声を聞き「次へ進むためには組織を変えないといけない」と強く思った。

 ビジョンやバリューを明確にするとともに、スタッフへの浸透を地道に行ってきた。同時に新卒採用に力を入れるなど人に対する積極的な投資を行った。2021年の新卒入社は41名と過去最大規模の採用を行った。「近いうちにキラキラの組織に変わる」と大きな自信をのぞかせる。

 組織固めを行い、リアルとテクノロジーを両輪で回し、目指すは「病気のない世界」。医療、介護といった垣根を超え、健康で幸せな生活を支えるプラットフォーマーとして、先頭を走る渡邉のこれからが楽しみである。

Profile 渡邉 仁(わたなべ じん)
理学療法士国家資格を取得。2011年にベストリハ株式会社を設立し代表取締役に就任。デイサービス経営、デイサービス計画書自動作成システム「はやまる」、デイサービスDX化を支援する「ヘルプケア」を提供している。

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