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【社長のおしゃれ6】池田ゆう

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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リーダーの服装

リーダーの服装

(企業家倶楽部2010年12月号掲載)

 先日、あるマスコミの記者とホテルのカフェでゆったりとした時間を過ごしたが、突然アメリカ合衆国のオバマ大統領の写真を取り出してテーブルに置いた。目的がわからず私が迷っていると、彼の服装について評価して欲しいとのことだった。25年間もベストドレッサー賞の選考委員長をしていると、このようなケースはよくあることだ。

 私は彼こそ世界のベストドレッサーだと評価している。常に無地の濃紺スーツを着用しているが、それはビジネス界で最も無難な服として誰もが着用するスタンダードアイテムである一方で、感性の差が最も大きく表現されることにもなる。

 写真やテレビの中で見るオバマ大統領の服は最高の品格がある。先ず肩のラインが美しい。そして身体にまとわりつくようなボディシェープ、照明効果もあるが、襟のソフトなリッチ感のある仕立て。この知性感は無地柄であることで最大効果を発揮している。また常に同系色のネクタイを愛用するのも彼の特徴だ。白のシャツの襟が横に広がったワイドスプレッドのデザインは、ファッション的にもタイムリーであり、時代を読む感性が伝わってくる。

 私はリーダーの服装の条件を、彼の服装から多々学ぶことがある。時代性の主張、全ての人々に対する平等な心づかい、けっして個性を主張するのではなく、多くの人々との調和を大切にしている。しかも、無地柄や同系色の高度なコーディネーションによる感性はしっかりと主張する。

 経営者にとって、イメージプロデュース能力は大変重要な能力の1つだと考える。それは多くの人々に伝わる信頼と興味のメッセージだからだ。目立つファッションは簡単なことだ。ショップでスタイリストに任せたなら簡単にできる。ちょっと予算を多く使うならば、著名ブランドを楽しむこともできる。しかし、自己メッセージとしての服装はプロのスタイリストや専門店のセールスには不可能なことだ。流行を着ることではなく、ブランドを着ることでもなく、自己メッセージとしてのイメージプロデュース能力は経営者能力の1つではないだろうか。

 私はファッションデザイナーではなく、パーソナルプロデューサーとして服作りを楽しみたいと考えている。

 末筆ですが、1年間大変お世話になりました。心より感謝申し上げます。

 池田ゆう

ファッションデザイナー。ベストドレッサー賞選考委員長、(社)日本メンズファッション協会前理事長、(社)日本プロゴルフ協会学術委員。各界著名人や企業経営者の服装コンサルタントも多数手掛けている。監修したDVDに「池田ゆうの男のおしゃれ 人は見かけによるのです」がある。『あらゆる出会いの第一印象は最初の6秒が勝負!ベストドレッサー賞の選考委員長池田ゆうが誰でもできるスタイルテクニックを伝授。コツはたったの7つ!同じスーツなのに全く印象が変わります!!』

http: / / yuhikeda. com 

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