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【特別インタビュー】サマンサタバサジャパンリミテッド社長寺田和正氏

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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25周年をバネに新たな飛躍を

25周年をバネに新たな飛躍を

2月4日キックオフイベント

(企業家倶楽部2019年6月号掲載)

 

「日本発世界ブランド」を掲げ、若い女性向けのバッグやジュエリーで成長してきたサマンサタバサ。創業25周年を迎え、その動きが活発化している。この1年間、感謝を込めて365個のサプライズを実施すると語る寺田和正社長。25周年を機にどんな仕掛けで未来を創るのか。その真意を伺った。

最良でも70点

問 創業25周年とのこと、おめでとうございます。

寺田 ありがとうございます。

問 25年経営してみて、今、思い通りになっていると思われますか。

寺田 思い通りになっていると思ったことは一度もありません。自分を採点すると、一番良くて70点です。悪い時は35点でした。

問 良くて70点とは随分厳しいですね。それはいつごろですか。

寺田 2005年12月12日、株式上場したときです。丁度40歳の誕生日でしたが、ITバブルでしたので、時価総額2000億円がつきました。日本発世界ブランドということでニューヨークに店を作り、欧米からアジアに拡大していこうと思いましたが、リーマンショックでそれは叶わず、アジアからということになってしまいました。

問 でもそのアジアで今頑張っておられます。

寺田 香港、韓国、シンガポールなどに展開していますが、韓国には20店舗あります。ロッテと一緒にやりましたのでオペレーションがしっかりしています。今、第3創業期としてもう一度アジアに力を入れていきます。

問 一番悪い35点というのはいつごろですか。

寺田 17年9月です。2020年に向けて売上1000億円、利益100億円の目標を掲げ、人を増強し社内改造を試みました。寺田一人に頼らず、組織として売上と利益を確保できるようにと。しかし寺田がいるからできないと‥‥。言い訳にすぎませんが、良くも悪くも寺田の影響力がありすぎるということでうまく機能しませんでした。
 船を大きくし乗組員も増やしましたが、もう一度コンパクトにしたいと、原点回帰から原点進化へと舵を切り、今、ようやく50点まで戻ってきたところです。さまざまな施策が上ってきていますので、これを着実に実行し、成果に繋げていきます。
 
365個の夢を叶えるサプライズを実現

問 25周年ということで、最近テレビや雑誌にもいろいろ取り上げられていて、サマンサが動いているなと。

寺田 昨年の5月からプロジェクトがスタート、各チームからメンバーが集まり、これをやろう、あれをやろうと企画を練ってきました。

問 25周年のコンセプトは何ですか。

寺田“サプライズ”です。3月1日からスタートしていますが、25 年間の感謝を込めて、365個のサプライズを実施していきます。問 365個というのはスゴイことです。いくつかご紹介下さい。寺田 まずは何といっても「We are One」というチャリティソングを作ったことです。わが社の原点が歌の中に込められています。歌手のGLAYのTERUさんがプロデュースし、たくさんのアーティストの方々がこの歌に参加して、出来上がっています。

問 たまたまテレビ番組でサマンサの歌が作られていく様子を拝見しました。印象に残るいい楽曲で、スゴイことをやっていると驚きました。

寺田 大変いい曲に仕上がっていますので、多くの方に聞いていただきたいですね。

サマンサウェディング全体感

問 ウェディングの企画もやると聞きました。

寺田 ウェディング運営会社とコラボし、企画は当社が作り、全国20組の新郎新婦に総額1億円の「サマンサウェディング」プランをプレゼントするというものです。結婚指輪などは安心感が重要ですので、実際にウェディングをやると、よりリアリティが出てきます。サマンサティアラのブライダルの売上が伸びています。

問 ジャイアンツとのコラボ商品も作ったとか。

寺田 25周年の今年はお祭りなので、普段やらないことをやろうということで読売ジャイアンツとコラボしてバッグや財布を作りました。

問 ジャイアンツのオレンジカラーは元気の出る色ですし、ファンにとってはたまらないですね。

寺田 ジャイアンツがファッションブランドとコラボするのは初めてとのことです。またオンキヨーと組んで、オシャレで可愛いイヤホンも作りました。

オンキヨーとコラボしたワイヤレスイヤホン



問 伺っているだけで次は何が出てくるかとワクワクしますね。それにしても365個というのはスゴイ。

寺田 楽しみながらやり続けることが大切。企画を通してさまざまな人と出会い、交流することで新しい化学反応が生まれます。すごいなと思ってもらえることが大切です。

問 素晴らしいですね。まだ始まったばかりですがこれからどんなサプライズが出てくるか楽しみです。

アニバーサリーソングのジャケット
 
二極化するファッション市場

問 ところでハンドバッグなどのファッション市場の現状はどうですか。

寺田 今は二極化がますます進んでいます。持っているだけでワクワクドキドキするような付加価値のある市場と、機能と価格を優先する市場です。中間は生き残れないと思います。当社はこの付加価値のある市場を狙っています。

サマンサタバサ本社のショールーム

問 ラグジュアリーな分野ということですね。

寺田 ラグジュアリーというよりアフォーダブル、ちょっと手が届きそうという市場で、持っていて嬉しい、どれだけワクワクさせられるブランドになれるかがポイントです。

問 アフォーダブルというのはわかりにくいのですが、具体的にどんなブランドがそれに当てはまりますか。

寺田 フルラやケイト・スペードなどがそれにあたります。サマンサはそこに位置します。しかしアパレルなどで元気がいい会社は、安くて機能が良い商品を作っているところです。

問 今、百貨店も苦しんでいるし、商品構成が随分変わってきました。

寺田 最近ワクワクドキドキするものを買う場所が少なくなりました。インバウンドはラグジュアリーと化粧品の売り上げがすごいです。
 
消費税が上がっても買いたくなるものを

問 ところで25年の歴史の中で一番苦しかったのは、いつどんな時ですか。

寺田 25年なんてアッという間ですね。一番苦しかったのは1997年、消費税が3%から5%に上がった時です。本当に会社がつぶれそうになりました。5%から8%に上がった時は、早くから準備をしましたので全くその影響は受けず、逆に最高益を出しました。

問 今年の秋には8%から10%に上がります。

寺田 消費税が上がっても買いたくなるものとはどんなものか。何をすればいいのか、今思案中です。ベースになるのは景気です。景気が冷えれば消費意欲が下がります。

問 最近サブスクリプションが盛んでバッグを借りて利用する人も増えているようです。

寺田 我々もサブスクにチャレンジしたいと考えています。結構難しいようでうまく利益につながっているところは少ない。

問 洋服ではエアークローゼットが先行しましたが赤字から脱却できない。ストライプスンターナショナルが手掛ける「メチャカリ」はSPAですから3年半で黒字化したと聞きます。御社は自社でバッグを作っていますので有利ですね。

寺田 当社のバッグを一度手にしていただきたいと思うので、いろいろ思案中です。
  
「運」と「縁」を大切に

問 18年春からカンパニー制を導入していますが、その成果はいかがですか。

寺田 成果は数字にも表れてきています。今後はしっかり実行して大きな成果を出せるようにしたい。

問 原点進化を打ち出し、ベンチャースピリッツに火をつけたいと言っておられました。

寺田 ベンチャースピリッツは醸成しつつあるのですが、反面、当社の良さである感謝と尊敬をベースにしたファミリー的な要素がおろそかになっているように思います。自分たちだけでなくチーム全体だということを忘れないで欲しい。

問 化粧品分野への進出についてはどうですか。

寺田 既にボディクリームは出来上がっており、ネットのサブスクモデルで販売しています。本格的な化粧品、スキンケアについてはサマンサタバサとサマンサベガで販売予定です。いろいろ試行錯誤していますが、今年中には発売したいですね。

問 寺田社長が企業家として一番大切にしていることは何でしょうか。

寺田 「運」と「縁」ですね。ご縁を大切にしているとさまざまな「運」が開け、感謝と尊敬の念をしっかり抱いているとまた新しい縁が生まれます。その積み重ねで今があります。

 

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