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【第15回 企業家賞 記念講演録】ジャパネットたかた 髙田 明 代表

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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メガネの歴史を変える

メガネの歴史を変える

(企業家倶楽部2014年10月号掲載)

 このたび企業家大賞という名誉ある賞をいただけたのは、昨年のジャパネットたかたのチャレンジを評価されてのことかと思います。  

 昨年のジャパネットたかたは企業として落ち込んでいました。2010年にはテレビが1万台も売れて売上1759億円でしたが、翌年は200億円下がり、2012年にはさらに1170億円にまで落ち込みました。私は動じはしませんでしたが、もちろん「これはいかんな」と思いました。

 そこで昨年は「利益136億円行かなければダメだ! もし行かなかったら社長を辞める!」と宣言したのです。そして1年間、社員と一丸となり、一生懸命がんばりました。その結果、売上は250億円増の1425億円となり、150億円の利益を上げることができたのです。これは過去最高益。そのときは社員とともに涙しました。

 これは奇跡ではありません。必然です。それを成し遂げられた理由の一つは、現実を受け入れて、「やるぞ!」と決めたこと。しかしリストラや経費削減は一切しない。それをするくらいなら、やらなくていい。さらに東京・六本木にスタジオも作りました。人は前向きに行動すれば結果を生むことができます。だから一番厳しいときこそ、引かずに進むのです。

 またもう一つは原点に返ったこと。一時はテレビが売れましたが、家電はほかにもいろいろあります。そこでテレビに代わるものとして、これまでにも努力をしていた白物家電に力を入れ、それが功を奏しました。こうした変化に対応しないと企業は生き残れません。

 私は最近、世阿弥にこだわっています。世阿弥に「秘すれば花」という言葉がありますが、この「花」とは新しい、珍しいということ。そのみんながワッと驚くものの一つが東京のスタジオです。また世阿弥は「初心」ということも言っていますが、初心には三つあります。「若いときの初心」「時々の初心」「老後の初心」です。変化する初心とともに挑戦を続けていくのが人生なのです。

 私は今65歳ですが、あと51年生きるつもりです。116歳は男性の長寿ギネス記録で、それにチャレンジしようと思っていますが、想いは実現するものです。そのためにも私はずっと夢を追っています。ビジネスも人生もうまくいかないこともありますが、「やる!」と決め、信じてやり続ければ必ず成功します。

 私は「その商品を使った先にどんな幸せがあるか」を20年間語り続けてきました。その結果、こんな手紙をいただきました。その女性は東北へ嫁いだものの、家族とうまくいっていなかったそうです。でもジャパネットたかたでカラオケマイクを買ったら、姑が喜んで仲よくなれたというのです。2万9800円のカラオケマイクで人生が変わったのです。

 また、あるご両親は小児ガンの我が子にニコンの一眼レフカメラを買ってあげました。病気と闘う力をあげたいとの思いからでしたが、そのカメラで撮った写真が新聞に載ったのです。それを知ったニコンの社長は泣いたそうですよ。そしてその子はガンを克服したのです。こんなビジネスができて、これ以上幸せなことはありません。

 人間の一生は一回限り。人生をどう生きるか、どう死ぬかは自分次第です。年を取っても世阿弥の言う「花」はあります。私もまだまだ未熟。来年1月16日に社長を退任しますが、これからも「花」に向かって、ポジティブに発信し、挑戦を続けて参ります。

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