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【オフィス訪問】アイスタイル 代表取締役社長 吉松徹郎

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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世界に羽ばたくための拠点

世界に羽ばたくための拠点

(企業家倶楽部2015年8月号掲載)


女性に圧倒的人気の美容系クチコミサイト「@cosme(アットコスメ)」を企画・運営するアイスタイルは、2013年8月、本社を赤坂のアーク森ビルに移転。次世代に向けて新たなスタートを切った。赤坂の高層ビルからは、日々発展する東京が一望できる。新オフィスには吉松徹郎社長自身が深く関わったという。その真意と未来戦略を伺った。

問 オフィス移転の狙いをお聞かせ下さい。

吉松 以前のオフィスはフロア別に分かれていたり、サテライトオフィスがあったりと、情報コミュニケーションが取りにくくなっていました。今後海外進出に向けて、皆でコミュニケーションが取れるラストチャンスだと。もっと大きくなるとワンフロアが実現できなくなる。会社の理念を今ここでしっかり固めていくためにも、ワンフロアを実現したかった。2つめは、世界進出に向けて、世界に羽ばたくための拠点を作ろうと考えました。

テーマは「大きな木」

問 全体のコンセプトはどのように考えて作られたのですか。

吉松 基本的にはインタラクティブとアンフィニッシュドです。アンフィニッシュドとは、オフィスはこれで完成ではなく、常に変化し続けるということ。テーマは「木」です。大きな木の下に人が集まって、木を育てていくというイメージです。議論を重ねる中で、木を中心にしていこうという形になりました。

問 オシャレで居心地のよいオフィスですが、誰が考えたのですか。

吉松 チームを作り、ほとんどのミーティングには私が参加しました。アイスタイルとして、こうしたいという気持ちが強くあったので、細かいところまで指示を出しました。私は元々設計が大好きなので、自宅のリフォームも今回の新オフィス構築もずっと関わっています。

 ここは最初からテーマとして、全て繋がるようにしてほしいと要請しました。皆が集まって来るので、視界を遮らず、ワンフロアという点を気にしたのです。動線も道のように途中で行き止まりにならないようにしました。

問 社長がこれだけ詳しいと業者さんも大変ですね。

吉松 私も勉強させて頂きましたし、すごく楽しいです。10社くらいにコンペをお願いして、最後はとあるベンチャー企業にお願いしました。

問 吉松社長がこのオフィスの中で一番力を入れたのはどこですか。

吉松 視界を遮らないために、オリジナルのホワイトボードを作ったことや、木というテーマに徹底したところです。一周繋がる空間を作りましたが、一番こだわったのはオフィスの形ですね。機能的であることです。

問 今ここにはどのくらいの人がおられるのですか。

吉松 協力会社さんも含めて450人くらいです。

常に変化対応するアンフィニッシュド

問 移転して2年になりますが、皆さんの反応はいかがですか。

吉松 皆すごくポジティブになりました。しかし逆にオープンすぎるという苦情もあります。何か書く時やプログラミングする際には集中したいという声も。そこで集中できるブースを作るべく、新しく部屋を改造しました。これこそまさに「アンフィニッシュド」です。常に変化できるようなオフィスを目指したいので、多様的に使える部屋を作りました。セミナーを開いたり、ミーティングルームにしたり、部活をする場所にしたり、色々ですね。

問 部活もやっているのですか。  

吉松 19時くらいからヨガが始まります。あとは納会に使うこともありますね。

問 ファミレスのようなコーナーはどういった思いで作られたのですか。

吉松 自分たちにとって気持ちのいい空間をたくさん作りたかった。ファミレスって仕事がはかどるじゃないですか。ミーティングしている人もいれば、食事している人もいる。昼間は雑誌を読んだり、ランチを食べたりと、本当にファミレスとして使っている感覚です。

問 一本の木のように繋がっていることと、アンフィニッシュドがポイントですね。

吉松 木は成長し続けますので、変化が大事です。インタラクティブ・ツリーになるのです。

問 社員の皆さんからはどのような意見がありますか。

吉松 自分たちの会社が大きくなったと実感しているようです。オフィスは、なんとなく吉松っぽいねと言われました。アイスタイルのロゴのイメージや、境目が無いこと、色使いも白や赤など豊富です。普通は明るくしようとすると白に統一してしまいますが、ポップで楽しいイメージは僕っぽいと思います。

問 社長室はいかがでしょうか。

吉松 実は社長室がありませんので、大きいミーティングルームを使っています。しかし、無くても不自由は全く感じません。

ビューティという市場で世界企業を目指す

問 アイスタイルの現状と未来戦略をお聞かせ願えますか。一時期少し厳しい時期もあったと思いますが。

吉松 厳しいと言われたのは海外の投資分だけで、国内の数字は落ち込んでいませんでした。海外投資分を連結したらマイナスになっただけです。世間では業績が下がったと騒がれました。しかし本質的な部分では、宣言していた売り上げ100億円にだいぶ近づいてきました。

問 今は計画の何合目ぐらいですか。

吉松 6合目くらいですね。

問 しかし、ゴールが近づいてくるとまた新しい目標が出てきますね。

吉松 来年度の売り上げ165億円というのが対外的に約束させていただいたひとつの基準です。6合目なのでまだ厳しいところもありますが、大切なのはそれを達成すると同時にその先に向かうことですね。

問 その先とは何でしょうか。

吉松 完全に化粧品、コスメではなくて、ビューティという枠で、日本からアジア、アジアから世界へ事業を広げていく。来年中には@cosmeストアをアジアでも展開していきたい。それに向けて輸出会社も作りました。アイスタイル・トレーディングとして、いろいろな化粧品会社さんの商品を輸出しようと考えています。もっと世界に対してアクションができるようになるでしょう。

問 アジア市場ではやはり日本のコスメは人気ですか。

吉松 コスメだけでなくネイルも人気です。様々なところにビューティの可能性が広がっています。

問 化粧品だけでなくビューティ全体となると市場が一気に拡大するのではないですか。

吉松 かなり広がります。そうなると我々の競合は日本国内ではなく海外になります。韓国の化粧品メーカーやエステなど、色々な企業がライバルになる。

問 日本人にとってエステは得意な分野なのでしょうか。

吉松 そうに思います。きめが細く、サービス精神が旺盛ですからね。

問 ビューティにまで拡大させると市場はどのくらい拡大するのですか。

吉松 軽く今の5倍にはなると思います。しかもそこに美しく生きるというライフスタイルの考え方も入れられる。女性が関わるマーケットは全部ビューティという考えです。ビューティだけの動画、メディア、チャンネルなども有りですね。LINE元社長の森川亮さんが独立して設立されたCチャンネルに我々も出資しています。様々な展開にビューティというキーワードをかければ、今後もビジネスチャンスは広がっていくでしょう。

10年間の経験を武器に世界で勝負

問 ビューティは永遠のテーマですね。女性だけでなく男性もそうなのではないでしょうか。

吉松 幅を広げる可能性はありますね。単純にインターネットで何をするかではなく、インターネットを使ってビジネスをしてきた10年が武器になっている。これを最大限に活用して、ビューティというマーケットでどう戦っていくかがこれからの勝負です。

問 何か課題はありますか。

吉松 会社の規模がやりたいことに見合っていない点でしょうか。「やりたいこと」と「できること」のギャップ。それを埋めていくのが仕事です。

問 5年後、10年後の目標についてはいかがですか。

吉松グローバル企業になりたいと強く思っています。世界のマーケットで勝負したい。日本の持っている価値を世界に広げていくことです。これから7~8年、私が50歳になるまでが勝負ですね。このオフィスが世界に向けた拠点となっていきます。

P r o f i l e

吉松徹郎(よしまつ・てつろう)

1972年、茨城県生まれ。東京理科大学基礎工学部卒業。1996年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア株式会社)入社。1999 年7月アイスタイル設立。 第6回ニュービジネスプランコンテスト優秀賞受賞、1999年12月アットコスメオープン。2012年3月東証マザーズ上場、同11月東証一部へ市場変更。2013 年7月企業家ネットワーク主催第15回企業家賞「ベンチャー賞」受賞。

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