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【核心インタビュー】ジャパネットたかた創業者 髙田 明氏

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

編集長がゆく!

今を生きる 前編

今を生きる 前編

『伝えることから始めよう』高田 明著 東洋経済新報社(1,600円+税)


(企業家倶楽部2017年4月号掲載)

2015年1月、社長の座を長男の旭人氏(現社長)に譲り、2016年1月、自らが番組に出演し、人気を博したテレビショッピングからも引退して1年が過ぎた。長崎県平戸の小さなカメラ店から年商1700億円を超える優良企業にまで成長させた秘訣は何か。髙田氏は、「現在のジャパネットたかたがあるのは、『今を生きる』ということを一生懸命にただやってきた結果」と語る。「伝える」ことに心を砕き、お茶の間の客と真摯に向き合ってきた一人の企業家の生き様を聞いた。聞き手:本誌編集長 徳永健一

初の自著を出版

問 「伝えることから始めよう」というタイトルも髙田明さんのイメージに合致しています。このタイトルにした狙いは何でしょうか。

髙田 実は最後までどちらにしようか悩んだ言葉がありました。「今を生きる」という言葉を入れたかったのです。タイトルについては、編集部とも長い間議論し、結果的にはシンプルに「伝えることから始めよう」に決めました。

 仕事をしていても、伝えたつもりが、伝わっていないことは皆さんもよくあるでしょう。そのことが原因で問題が生じたり、対立が起こったりします。世の中の多くの問題を解決するヒントになればと思ったのが本を書くきっかけです。

問 「今を生きる」とは、愚直で地道ながらも大切なことですね。この本の中で、髙田さんは「『過去』と『他人』は変えられない」、「しかし、『未来』と『自分』は変えられる」と書いていました。未来志向で前向きになる言葉です。そのように考えるようになったのは何故ですか。

髙田 それはある方の言葉なのですが、結論から言えば、明日を変えるのは今しかないということです。過去に起こったことはどんなに頑張っても変えられません。一方、未来も変化が早く、3年後や10年後のことを考えても空論にしか過ぎません。未来を不安に思って悩んでいたら、今が疎かになってしまいます。そう、変えられる未来を作れるのは、今しかありません。この本で一番伝えたかったことは、「今を生きる」ことです。

 それでは、今何をすれば良いのか分からないという人もいるでしょう。そんな時は、「今最低でもこれをやらなければいかんぞ」ということから取り組むことです。脇目を振らないで、今やるべきことに集中している人や会社が変化に対応も出来るし、変化を創っていけるのです。

 私自身がスタジオで「どうしたら伝わるんだろう」と悩みながら何度も試行錯誤して、1つの商品をどのようにしたら魅力が伝わるかと考え続けたから、工夫も生まれました。この過程を通して、段々成長をさせてもらいました。それが今を生きるということに繋がってきます。

問 髙田さんのように今、目の前にある課題に一生懸命取り組んでいると工夫も出来るし、お客があっと驚くようなアイデアも出てくるのですね。

髙田 どうしたら伝わるだろうかと真剣になって、次の新しい突破口を探していくのです。だから机の上でいくら考えても、現場に立って行動しないと現状は変わらない。直感力や変化対応力は今を生きていることによって、その人に備わってくるものであると私は思います。色んなビジネス書を読んでも、言葉は違えども皆同じようなことが書いてありますね。

 どんな偉い人でも10代20代といった若い頃から直感力や変化対応力が備わっているわけではありません。いかに続けてやっているかという真剣の度合いが深ければ深いほど力が付いてきます。

問 経営に一線を引き、最近、ゴルフが趣味だと伺いましたが、調子はどうですか。

髙田 スコア90切りを目標にしていますが、なかなか難しいですね。でも、ゴルフを通して学びがあります。 
 通販の世界で30年の間、何万回もスタジオに立ち、伝え方の練習をしていたから上達したのに、ゴルフではほとんど練習に行きません。学んだ理論をもとに1万回練習したら上手くなるに決まっています。しかし、私はゴルフの本を読んで理屈で分かったつもりになっている。座学で上達すると思っている自分がいます。私はスタジオで学んだ経験がゴルフでは活かされていないことに気付きました(笑)。

(後編に続く)

P R O F I L E 髙田 明(たかた・あきら)

1948年長崎県生まれ。大阪経済大学卒業後、機械メーカーへ就職し通訳として海外駐在を経験。74 年父親が経営するカメラ店へ入社。86 年「株式会社たかた」として分離独立。99年現社名へ変更。90年ラジオショッピングを期に全国へネットワークを広げ、その後テレビ 、チラシ・カタログなどの紙媒体、インターネットや携帯サイトなどでの通販事業を展開。15年1月同社代表取締役を退任。同年A andLive 設立、代表取締役に就任。14年第16 回企業家大賞受賞。

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