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【核心インタビュー】カルタホールディングス会長 宇佐美進典

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

編集長がゆく!

インターネット広告領域で圧倒的な存在になる 後編

(企業家倶楽部2019年8月号掲載)
(インターネット広告領域で圧倒的な存在になる 前編)


問 一般論としては大手企業の方が仕組みは出来ていて、ベンチャーはないものづくしと言われますが、どうですか。

宇佐美 これは良し悪しで、予算に関してサイクルが半期や1年ベースと比較すると、四半期ベースと短い方が管理体系の仕組みとしては優れているでしょう。一方で労務の部分はCCIの方が良く出来ていると思います。そういう意味ではどちらか一方が優れているということはなく、良い方をベースにそれぞれの分野で共通言語化させていくことを今は選択しています。

さらなる成長領域を目的に経営統合

問 カルタの中期計画を発表されています。元々経営統合も更なる成長意欲の形として電通グループを選んでボヤージュG側から提案したということでした。両社が経営統合するとインターネット広告市場の約1割を占めます。中期計画には何を込められていますか。

宇佐美 経営統合の発表をした時、まずは「インターネット広告領域」において圧倒的な存在を目指していくと掲げ、より長期では広告に限らず「インターネット業界」で圧倒的な存在を目指すと掲げていて、それを実現していくための一つのマイルストーンとして22年に向けて中期計画を作りました。

 売上げの部分はグロスからネット計上に変えました。売上げではなく、取扱高でいうと、昨年ベースで10%弱くらいのシェアを占めていると思います。一方でグロスからネットに変えたのは事業として中身の部分、利益を伸ばさなければいけないからです。規模だけ拡大しても結局利益が出ていないのであれば意味がありません。それよりも売上総利益をしっかり伸ばしていくことをベースとして今回の中計では考えています。

問 以前、取引先の方針の転換で、既存売上げの3分の1がなくなってしまう危機がありましたね。「ハリケーン」と名付け、ピンチはチャンスになるという教訓にされて、御社では常に新しい事業に投資する事業開発会社を掲げていますが、現在注力している事業はありますか。

宇佐美 4月にブランド戦略室を新設し、ブランド広告領域を強化するため、CCIと共同でサービスを作りました。ブランド広告主向けの「PORTO(ポルト)」という、ブランディングを重視する広告主向けに安心して出稿できるアドプラットフォームです。ボヤージュGが保有する独自データを活用できるメリットがあります。将来的には、デジタル領域だけなく、テレビやラジオ、OOH(OUT  OF  HOMEの略。屋外広告のこと)など、オフラインメディアを含む多様なプレミアムメディアフォーマットへの対応を計画しています。

 経営統合して1年目は、共通言語を作り、今後のビジネスを進めていく上でのベース作りをしっかりやるというフェーズにしています。

問 商業インターネットが誕生して30年が経ち、ネットは完全に普及しました。今後、大きく産業が変わろうとしていると感じます。デジタルシフトがいよいよ始まったという印象が強まっていますね。

宇佐美 そうですね。今までは「インターネット」という切り口で捉えているところだったのが、「デジタル」という言葉が復権してきているイメージがあります。デジタルトランスフォーメーションのような既存の産業がネットで変わる、IoTやAIも含めて、デジタルを起点に変わっていく状況になってきています。今後は経営統合の本当の意味が問われることでしょう。これからが本番だと考えています。ネット広告市場において業界をリードする圧倒的な存在を目指します。

 

P R O F I L E

宇佐美進典 (うさみ・しんすけ)

1996年、早稲田大卒業後、トーマツコンサルティング(現デロイトトーマツコンサルティング)に入社。1999年にアクシブドットコム(現CARTA HOLDINGS)を友人と創業。2001年サイバーエージェントと資本業務提携し、2005年から2010年まで取締役も兼務。2012 年にサイバーエージェントよりMBOし、2014 年東証マザーズ上場、2015 年東証一部へ市場変更。2019 年のCCI とVOYAGEGROUPの経営統合に伴い、CARTA HOLDI NGS の代表取締役会長に就任。

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