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| 【海外特集アブダビ】世界最大の国家ファンドを運用する投資立国 |
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| 世界最大の国家ファンドを運用する投資立国
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| [2009-12-28 01:19:04] |
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アラブ首長国連邦の中でも最大規模を誇るアブダビ首長国。世界で最も大きな国家ファンドを運用し、世界から高い注目を集めている。ファンドマネジャーとして豊富なキャリアを持つ藤野英人氏が、石油国家から投資国家へと変貌を遂げているアブダビの今に迫った。
石油国家から投資国家へ
アブダビ投資庁の投資最高責任者の英語はフランス訛りでとても聞き取りづらい。何故ならフランス人だから。彼はゆっくりと話しをした。「日本はとてもよい国だ。治安もいい。人も親切で勤勉だ。頭もいい。文化もあるし美しい四季もある。水も豊富だ。中東にないよい部分がたくさんある。資金も腐るほどある。しかし、ひとつだけ重要な問題点がある。それは…」
最高投資責任者は水を飲んだ。そして断じた。
「成長の意思がない」
今回、11月の初旬にアブダビに出張に行った。目的はアブダビから長期資金を引っ張っていきたいという思いで。要は日本株に私たちの会社を通じて投資をしてくださいという営業だ。アブダビは世界で最も大きな国家ファンドがある。80兆円とも100兆円とも言われており、国家ファンドの大きさではアブダビ、ノルウェイ、シンガポールと続く。アブダビでは石油や天然ガスで儲けた資金を将来、石油や天然ガスがなくなっても食べていけるように世界中の企業の株主になることによって将来的に生きていこうと考えている。だからむしろ脱石油技術の投資にも積極的だ。彼らはいつまでも石油が出るとは思っていない。
世界中から投資の専門家を集めている。もちろん現地の中東の人間も採用しているが、中枢の投資の意思決定はフランス人、イギリス人、アメリカ人、インド人などの混成部隊である。彼らは最高の知恵を世界中から集めて最高の国に投資をしようと考えている。実際にサブプライム問題で米国の金融機関がぼろぼろになったときに出資して救ったのがアブダビ投資庁でもある。そしてそれから米国の金融株は数倍になっているので、すでにアブダビはウハウハだ。
成長の意思を持つ
参議院議員の田村耕太郎さんが中東およびシンガポールの政府との投資機関とパイプが太いので、田村さんの出張にあわせてアブダビに訪問をすることにした。
アブダビ投資庁のビルはアラビア海を望む素晴らしい眺望で、投資最高責任者とお会いしたゲストルームはそのアラビア海を一望するすばらしい場所だ。彼らの専門家部隊は世界中の国や企業の実態を知り尽くしており、日本のことはおそらく普通の日本のエコノミストよりも精通しているレベルである。「成長の意思がない」と喝破されたのも、おそらく日本に知悉している証拠である。実際に日本には頻繁に出張するし、日本のエコノミストやストラテジスト、アナリスト、政治家や経営者とは頻繁に意見交換をしている。
アブダビの最高投資責任者は語る。「実際には全部の日本の企業に成長の意思がないわけではない。ユニクロのように強い成長の意思を持って世界にも打って出ようとしている会社もある。日本については総じて日本の企業をザラザラっと投資をするようなインデックス投資はできないし、向かない。しかし選別投資をしていけばまだまだチャンスは有ると思う。
アブダビは石油の埋蔵量では世界5位、日本の石油の輸入はイラン、サウジそして三番目はアラブ首長国連邦である。アラブ首長国連邦と日本はとても関係が深いのだ。イラン、サウジは政情が不安であり、アラブ首長国連邦に対する日本の重要性はとても高い。
アブダビはアラブ首長国連邦の首都である。アラブ首長国連邦は複数の連邦国家であり、アブダビが最大部族で二番目が今話題のドバイである。ドバイはアラブ首長国連邦の一部である。ドバイは野心的な地域で、昔から海上交易で発達していた地域である。石油は残念ながらもうほとんど出ない。彼らは石油に代わるべく次の産業を「観光と金融」にターゲットを決めて、ドバイに証券市場を作ると同時にたくさんのリゾート物件を立てた。その調達資金は現地のアブダビであったり欧州や米国の投資家であったりして、資金を募った。
うまくいくように見えた。ドバイの株式市場は順調に成長したし、土地やリゾートマンションの値上がりもうなぎのぼりだった。ところが昨年のリーマン・ショックですべてが逆回転した。観光客も減り、マンションも売れ残り、完成間近の地下鉄も追加資金がなくストップしている状態である。そしてついに支払いの猶予を余儀なくされ、2009年11月末の「ドバイ・ショック」へとつながっていく。
アブダビはもともと毎月、石油、天然ガスの販売で1兆5000億円もの収入があり、もともと何もしなくても資金が入ってくるので、ドバイのような危機感もなかったが、ドバイの成功を見て彼らも「観光と金融」へのシフトをしようとしている矢先にリーマン・ショックがあった。彼らはその前に本格的に始めなくてよかった。歴史的にアブダビはツイている地域である。むしろ彼らは観光と金融についてはこれから本格化しようとしている。後の先とはよく言ったものだ。
むしろアブダビがドバイを支えると言うことについては地域全体のコンセンサスのようになっており、今回のドバイ・ショックも最終的にはアブダビが救うであろう。しかし、この問題はアラブ首長国連邦の部族同士の駆け引きでもあるし、そこに出資をした欧州や米国における駆け引きであると理解した方がよいと考えている。
世界に打って出よ
アブダビはマスダール計画という砂漠の中に太陽光発電システムをメインの発電システムにしながら環境に優しい都市を作る計画があり、それを数兆円規模で予算化している。彼らは石油がなくなった時のために石油で潤っている国でありながら、脱石油資源で持続可能な都市の計画を立てている。そのために世界中の環境技術を導入して、彼らが砂漠における実験都市を作ろうとしているのだ。それを目当てに世界中の首脳がセールスに行っている。しかし日本はあまり食い込めていない。むしろアブダビ政府からすると日本の技術を心待ちにしているという実態もあるのだが。
アブダビ投資庁の責任者は残念そうに話す。
「日本はもっと世界に打って出ればいいのに。それだけの技術と信頼があるはずなのに、自信を失って世界に出て行かない。中東も日本の技術を心待ちにしている。そういう会社にどんと投資をしたいんだよ」
アブダビで感じたのは、海外における日本の可能性と日本はかなり好かれているということだ。決してイメージが悪いわけではなくむしろ逆だ。一方で米国の評判が非常に悪いことにも気がつく。日本が技術立国で平和主義で美しい国土と親切な民がいるという評判は比較的定着をしている。
確かに日本においては少子高齢化に悩んでいると言う事実もあるが、世界に目を向ければ日本はまだまだ求められているのを感じる。アブダビ投資庁の投資最高責任者ではないが問題は「成長の意思」なのだ。
◆プロフィール藤野英人(ふじの・ひでと)1966年生まれ。90年早稲田大学法学部卒業、野村投資顧問に入社。92年ファンドマネジャーに就任。96年ジャーディン フレミング投信・投資顧問に入社。8 本のファンドで合計純資産総額2800億円を運用。国内株式ファンド中トップの運用成績を収めた記録を持つ。2000年ゴールドマン・サックス・アセットマネジメントに入社。03年レオス・キャピタルワークス株式会社設立。代表取締役に就任。09年2月、CIO(最高運用責任者)に就任する。
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