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| 【潮田健次郎の経営道場1】企業家が日本経済を再生させる |
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| 企業家の能力とは何か |
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| [2008-03-04 12:30:40.0] |
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潮田健次郎の経営道場
住生活グループ前会長 潮田健次郎
●企業家が日本経済を再生させる
●企業家の能力とは何か
企業家の能力というのは一般的に次のようなことです。1、並の人間には思いつかない目的を設定する発想力。2、与えられた問題を解くだけではなく、問題を発見し問題をつくる能力。3、目的を達成するためのユニークな手段・方法をを案出する能力。4、特に突発的な異変が起こった時や窮地に陥った時の『救いの神』になれる能力。5、自分のアイディアや方針を明快に説明し、説得する能力。6、スピードを大切にして短時間でより大きな利益をあげる能力。
私はこれに二つ付け加えます。一つは道徳的な人格、つまり品性です。経営者には実にさまざまな人がいますが、ひとつ共通しているのが、品性のある人間が大成するということです。もうひとつは、仕事にどれくらい集中できるかです。そのようなことが企業家の資質でしょう。
●技術国日本に、企業家精神が必要
私は終戦から十七年目に、初めてヨーロッパに行きました。ドイツでカメラの店を見て回ったのですが、世界に君臨するドイツ製のカメラがない。あったのはヤシカとミノルタとニコンとキヤノンなんですね。日本の工業力に驚きました 私が子供だった時は、ライカの新型カメラは家が一軒建つくらい貴重なものでした。日本の工業力はわずか十七年で焼け野原の中から立ちあがり、ドイツのカメラを駆逐してしまったのです。
今から六、七年前のことですが、中国ナンバーツーの李鵬首相はオーストラリアでの記者会見で、二十年経てば日本という栄えた国があったということになる、と述べた。同じ時期に、シンガポールの前首相李光耀(リ・クァンユー)さんは全く逆のことを言っています。日本は五十年前に航空母艦を作った。そんな国は他にいくつもない。優れた工業力を持つ日本の時代はまだまだ続くということです。
私は李光耀さんの見方をとります。八七年のGDP比の研究開発投資は、日本とアメリカ、ドイツが並んで約二・七%だった。しかしその年を境に日本の投資額はじりじり上がっている。アメリカは同水準を保ち、ドイツは二%を切るまで下がってきている。経済が厳しいなかでも日本の投資額は断然一位で、惜しみなく投資している。そういう工業力がある日本は、そう簡単におかしくなる国ではないという確信を持っています。そして再び経済が成長するためには何が大きいかというと、企業家精神です。あらゆる資源を富に変えていく力です。今現在五%あまりの失業率、つまり生産余剰を、別の付加価値を生むものに変えなければならない。
●品質は企業の命、サッシ市場から学ぶ
企業家は会社の使命を確立しなければなりません。自分はどのようにして富を生み出すのか明確にしなければならない。ドラッカーが言っていますが、組織というものには元々共通点がない。しかし、いけばな教室でも、山岳クラブでも、会社でも、たったひとつだけ共通しているのは目的です。目的がなければ、組織が存在しない。だから企業家は組織が存在する理由を明らかにしなければならないのです。
トステムグループは、「品質至上」を社是にしています。六七年にアルミサッシを始めましたが、その頃は普及率が三○%ほどで、他に四十社くらいがありました。大企業が子会社を作ってサッシに乗り出す形態が多かった。私は他社のサッシを買ってきて、梱包の状態から品質評価してみました。見ていると、部品が揃っていない商品、加工ミスがある商品を作る会社から赤字になって消えていく。そして品質の良い会社がシェアを広げて行くのを目の当たりにしました。現在は六社に集約されました。TQC(トータル・クオリティ・コントロール)の教えるところも勿論だけれども、結局は品質の戦いだと身をもって学びました。
そこで「品質至上」という社是を作りました。だから私は品質についてものすごくうるさいわけです。この度開発した指紋錠についても、売る前に自分で使うからと言って、家の鍵を全部取り替えました。しかし指紋が読み取れないことがあり、家に入れたり入れなかったりする。こんなもの売ったら大変な事になるぞといって、カタログも全部出来ていたのですが、発売をやめさせました。実際には百五十件取りつけてしまっていたので、誤って弁償してくるように言いました。品質とは、企業の命なのです。
●日本の経済力に見合った住宅を
何のためにこの会社があるのか、それを綱領にしています。「良い家に住むことは万人の願い この願いを実現するために私たちは働く」という綱領で、会合のある時に必ず唱和します。
カナダに住んでいた孫は、どうして日本には美味しい食べ物も着る物もたくさんあるのに、こんなに狭くて、寒くて暑い家に住んでいるのと言うんです。日本のGDPは、現在でもドルベースでアメリカより高い。私は社員に対して、日本人はわれわれの経済力に見合った家に住まなければならない、それがこの会社の目的だと言っています。この目的を共有する人が集まって、仕事をしています。
ドラッカーは九十二歳で『ネクスト・ソサエティ』という本を出しましたが、そのなかで、「次の時代を生き残るために、企業は自らの価値、使命、ビジョンを確立し社会的正当性を獲得しなければならない」と言っています。これがまずスタートとして大事です。しかし私も仕事を始めて十年ほど経ってから、私の使命は日本の住宅を良くすることだと気付きました。私はよく家で仕事をするのですが、会社は暖かいのに、家は寒い。あんかに当たりながらテレビを見ているような時間が長くなって、非常に時間の無駄です。日本人がこんなに貧しい住宅に住んでいるのは、我々の努力が足りないからだと痛感しました。それでこういう綱領を作って、住宅の研究開発に入りました。
日本住宅の機密性を測定しますと、一平方メートルあたり、十平方センチから二十平方センチの隙間がある。これは煙突の中に住んでいるようなもので、いくら暖めても空気が入れ替わってしまう。風が吹くとなおさらです。しかし断熱をして機密性を上げると、湿度が上がってカビが生えてしまう。そこでカナダでは政府が研究したのですが、二時間で空気が一回転するように計画的に換気します。外の空気をろ過して取り入れ、全室同じ温度に保ちます。カナダでは家を空けていても換気を止めてはいけないことになっています。ですからカナダの住宅では冬でも半袖で生活できるのです。
●住宅産業が景気回復の突破口になる
日本の景気が回復するとすれば、それは住宅だと思います。現在日本人が住宅に投資する額はGDP比で四%、二十一兆円です。対してアメリカでは一○%です。もし日本がアメリカ並みに住宅にお金を使うと、五十兆円になります。そうなると上がった分の六%で日本中フル操業になるわけです。住宅産業の経済全体に対する波及効果は非常に高い。また、材木は外国から買ってきますが、ほとんどは人件費です。ですからアメリカ並みの投資が始まれば、約六%の経済成長と、百兆円を超える市場の創出が期待できるわけです。
ひとつの国はひとつの家庭と同じで、誰かが良ければ皆潤います。住宅が良ければ、服屋も、食べ物屋さんも潤います。だからどの産業でもいいから、とにかく立ち上げないといけない。そうすると日本は再びいい国になっていきます。
もうひとつは、日本では六十五歳以上の人が金融資産の六五%を持っています。それは八百兆円ほどです。その人達がお金を使うかといえば、そうではない。夫婦が健康なうちは海外旅行に行けますが、もう少し経つとそうもいかなくなる。人間は六十五歳から三十年間生きます。六十五歳までは家は朝ご飯を食べて寝る場所ですが、六十五歳からは職場がなくなるわけですから家にいることになる。それなのになぜ日本人が住宅に金を出し惜しんでいるのか。日本人は快適な住宅のためにお金を使わなくてはいけない。
●家が名実ともに財産になる時代が来る
日本の家は寒くて暑いものだという考えがまだあります。しかし技術革新はどんどん進んでいます。阪神大震災で、たくさんの人が家の下敷きになって亡くなったことから、建設省が本格的に住宅品質促進法を作って、九項目にわたる住宅の性能を等級にして表すことにしました。耐用年数、強制換気、耐震等級について公認機関が証明書を作るようになった。住宅は、完全に財産になったのです。
これまでは日本の家は十七年経てば価値がなくなるものだった。私の孫の家族はカナダで築二十七年になる家を買って住んでいました。日本では二十七年経った家なんてどうにもなりませんが、向こうで土地がただに近いような値段の代わりに、家は四十年、五十年の財産なんですね。日本もようやくそういう時代に入ってきました。
スウェーデンでは、六十五歳以上の人の平均入院日数が五・五日だそうです。一方で日本では五十五日です。日本の住宅は高齢者に快適なように出来ていないので、それだけ長い入院をしなければ家に帰ることができない。住宅のために高齢者には非常に悲惨な状況が待っているというのが現状です。 私の会社には二万七千人の正社員がおりますが、そのひとりひとりが日本の住宅を良くするために働くんだ、それが使命なんだということを明確にしています。
●理念を空念仏にしないための仕組み
経営理念を空念仏にしないためにはどうすべきか。トステムグループには不正があった場合のために、部下がメールで報告する仕組みがあります。また別の会社に監査を頼んでいます。そうすると何もかもはっきり出ます。そして懲罰委員会にかかった結果は、とにかく二万三千人に公開される。この仕組みを会社に浸透させています。また言うことは徹底して守らせています。こうした仕組みで人間を作り上げていくことが大切です。
リクルート創業者の江副さんから教わったのですが、経営にはフィードバックが必要だということを最後に申し上げます。フィードバックとは、自分の仕事と結果を検証するということです。営業担当者は、お客さんに本当に満足してもらっているのか聞いているのか。経理担当者は、自分の作ったデータが実際に役に立っているのか知っているのか。誰にでもお客様はいるわけですから、全ての人が自分のした仕事がどのように評価されているのか、明確に知ることが必要です。大体本社というのは、半分は要らない仕事を作っているのです。それを常にチェックしないと、人間は要らない仕事をするようになる。あらゆる仕事に対して、フィードバックをする仕組みを作ることが必要です。(この記事は、企業家倶楽部2003年4月号掲載のコラム記事「潮田健次郎の経営道場」からの抜粋です)
潮田健次郎(うしおだ・けんじろう)プロフィール 1926年東京都生まれ。小学6年生の時、結核でサナトリウムに入る。家業の建具屋を関東最大の建具卸問屋に発展させる。66年住宅用アルミサッシ事業に進出、翌年東洋サッシを新設。アルミ建材総合メーカーとして事業を拡大し、85年に株式を上場。92年社名をトーヨーサッシからトステムに変更。2001年INAXと共同持株会社INAXトステム・ホールディングスを設立、会長に就任。2004年10月にINAXトステム・ホールディングスから住生活グループに社名変更。
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