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先端人 ホスピタリティ&グローイング・ジャパン会長 有本 均氏

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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ハンバーガー大学やユニクロ大学で培った「人づくり」でサービス業の未来を変える

ハンバーガー大学やユニクロ大学で培った「人づくり」でサービス業の未来を変える

(執筆者:三浦 2022/4/7)

若者人口が減少する中、日本は慢性的な人手不足に陥っている。特に飲食業、小売りなどのサービス業では離職率が高く、ヒトの確保が重要な経営課題となっている。そこで立ち上がったのが、ホスピタリティ&グローイング・ジャパン会長の有本均氏だ。自らの経験を活かし、サービス業に特化した人財育成のプロとして、日本のサービス業の未来に貢献する。



せっかく入社したパート・アルバイト、社員が早期に退職してしまうことは企業にとって最大の損失だ。ましてヒトが資本のサービス業にとっては死活問題にもなる。なんとか人を辞めさせずに育てる方法はないものか。そんな悩みを抱える企業は多い。
そうした悩める企業の救世主として活躍するのがホスピタリティ&グローイング・ジャパン(以下H&G)の有本均会長である。
このH&Gがユニークだ。外食産業や小売りなど、サービス業に特化した人財育成のプロ集団なのだ。長年サービス業の現場に従事してきた有本氏だからこその、実践をもとにした多彩な研修プログラムが特長だ。
創業から10年、今や導入取引企業は3500社、総受講人数は88万人に及ぶ。導入企業には小売りでは紳士服のアオキや飲食業では鳥貴族、モスバーガー、コメダ珈琲など錚々たるチェーン店が名を連ねる。
有本氏がサービス業に特化した研修会社を立ち上げるには、さまざまな経験と試練があった。特にマクドナルドの「ハンバーガー大学」とユニクロの「ユニクロ大学」での経験を駆使、世の中に貢献したいとの想いで開発したのが、実践に役立つ研修プログラムだ。
仕事がキツイ、時間が不規則、低賃金など、マイナスイメージがつきまとうサービス業だが、そこで働く人を定着させるには、労働環境・教育制度・評価制度を整備し、スタッフを育てる仕組みを作る必要があると有本氏。しかしそうしたノウハウも人財もいないのが現実だ。

マクドナルドで人づくりの極意を学ぶ
有本氏がなぜこうしたサービス業に特化した人財育成の会社を創業したのか。それは学生時代から関わったマクドナルドでの体験があった。早稲田大学の学生だった有本氏、マクドナルドにアルバイトとして入社する。当時、日本に進出して5年目ぐらいで50店舗しかなかった。
そこで驚いたのはパート・アルバイトまで、人財育成のマニュアル、仕組ができていたことだった。アルバイトから正社員として入社、リーダー、店長、スーパーバイザーなどを経験、マクドナルド大学の学長として、マクドナルドの人財育成の原点を創り出すこととなる。
マクドナルドでは人づくりが一番にくる。店長の一番の仕事は売り上げを上げることでも、利益を出すことでもなく、“人財育成”であった。良い人財が育てば、おのずと売り上げが伸び利益がついてくる。こうした「人づくり重視」の発想が根底にあった。
今や日本マクドナルドは全国に3000店舗展開、外食業界のトップとして成長しているも、その原点にあるのはヒト大切にする企業風土にあると語る。

ユニクロで離職率を改善
その後29年間お世話になったマクドナルドを退社した有本氏に声をかけたのはファーストリテイリング柳井正社長だった。2003年のことである。当時フリースブームが終了、落ち着きをとり戻していたが、急拡大したこともあり、パード・アルバイトの離職率の高さに悩んでいた。柳井社長はヒトづくりに力を入れており、人財育成のため「ユニクロ大学」を設置していた。その柳井社長が人財育成のベンチマークとして注目していたのがマクドナルドのハンバーガー大学だったのだ。だからこそ有本氏が招かれたのであろう。

ファーストリテイリング柳井正会長兼社長

有本氏のミッションは、現場スタッフの教育システムを構築、実践することだった。まずは入社初日のオリエンテーションをきちんとやる、1週間目、1か月目のオリエンテーションを見直すことから始めた。さらに3か月に1度の評価システムを導入、時給アップなど、モチベーションアップの仕組みをつくった。
そして教育用のハンドブックを作成したが、それは今でも使われているという。店長になるための教育システムの構築など、ユニクロ大学の部長として3年間関わり、離職率の減少に貢献した。
「ユニクロに入社する人は皆さん真面目で優秀な人が多いので、一度そのやり方に納得するとパフォーマンスを発揮する。その徹底ぶりスゴイ。そこはまさに柳井イズムが浸透している」と有本氏。
 
H&Gを創業
 マクドナルドとユニクロ、今や世界を代表する企業で人財育育成に関わった有本氏。
その経験を活かし、2012年H&Gを創業することとなる。ユニクロ退社後、外食産業のトップなど歴任したが、敢えてサービス産業に特化した人財育成やコンサルティングの会社を設立したのだ。
そこには長年、サービス業の人づくりの現場にいた有本氏だからこそ実現できるノウハウがあった。
「マクドナルドとユニクロ、この2つの企業で人づくりに特化した経験ができたのは私しかいない。これってスゴイ経験だと気づいたのです。この貴重な経験を活かし、人づくりに悩むサービス業に貢献したいと思ったのです」。
55歳での創業である。慢性的な人不足の中、採用した人全員を戦力にしたい、しかし教育する人もノウハウもない企業を支援したい。その強い想いが有本氏を突き動かした。

リアル研修で熱弁をふるう有本均氏



 現場経験豊富な有本氏率いるH&Gの研修内容はキメ細やかだ。研修プログラムは通学型の通学型研修が70講座以上、オンライン研修は120講座以上、オンデマンドは31講座あるというから凄い。

何よりも実践的なプログラムがすぐに役立つと好評だ。オンライン研修は何時でもどこからでも研修に参加できる。その費用がリーズナブルなのことも特長だ。通学型の研修は月4万円から、オンライン研修は月額6万円からという。

小売りや外食産業にとって、何をどう教育したらよいのか。日々のオペレーションは教えられても、その先の部下の育て方、マネージャー教育、コミュニケーションスキルの高め方など、教育のノウハウをもっていない。実際教育する人がいないのが現実だ。そんな中、サービス業に携わる企業の人事部教育係として、大きな力を発揮しているのがH&Gの多彩なプログラムといえる。

「グローイング・サイクル」を回す
人財育成に大切なことは、図のような①基準を示す ②教える ③要求する ④評価するの「グローイング・サイクル」を途切れなく回すことだと有本氏。

この中でも③要求する、現場の実践としてアウトプットをきちんと出させること。そして④の評価することが大切なのだと有本氏。
サービス業はたくさんの人が従事しているので、どんな人でも育つ仕組みにしないと会社として発展しない。100点の人が一人より、60点、70点の人が多い方が売上は上がると語る。

サービス産業の未来を変える
日本の外食産業の弱点は単価が安すぎて利益率が低いこと、それだけに給料が上げられないことだ。逆に品質の高さや接客レベルの高さはどこにも負けない。
その強みは今や国内だけでなく、バンコクや上海にも進出、サービス産業で働く人々の人財育成に力を発揮する。日本式のきめ細やかな教育システムは、かの地のサービス産業の原動力となろう。
H&Gの強みは、経営者はもとよりパート・アルバイト社員に至るまで、それぞれの役割に応じて最適な研修を実施し、採用から人事評価制度まで連動したサービスを提供できることだ。
有本氏のミッションは「人を育てることで世界のサービス産業の未来を変える」ことだ。そこには「サービス業に携わる人々に、より幸せになってもらいたい。そしてサービス業の地位を向上させたい」という強烈な想いがある。そのミッションを果たすべく有本氏のチャレンジはまだ続く。

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