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【先端人】ベースフード 代表取締役 橋本 舜氏

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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「主食で健康をあたりまえに。」

昨今コンビニに並ぶ「BASE BREAD」をご存じだろうか。完全栄養食として、1食2袋で一日の1/3の栄養素が摂れるというパンである。そんな画期的なパンを発案、パン業界に新風を巻き起こしているのが、ベースフードの橋本舜社長である。「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」をミッションに、2016年IT企業から転身、創業した。以来わずか6年で、11月には東証グロース市場に上場した。業界人にはない気づきを掘り起こし、食のテック企業として、主食を進化させる橋本社長に本音を伺った。                             (聞き手 副編集長三浦千佳子)

■主食で必要な栄養素を摂れたら 
問  大手IT企業から転身し、ベースフードを起業したとのこと。“食”の世界に飛び込んだのはどういうワケがあったのでしょう。
橋本 大学を卒業しDeNAに入社、仕事に打ち込んでいました。多忙でしたのであまり良い食生活とはいえませんでした。“食”と“健康”はどんな人にも必須事項です。日本では「主食」+副菜+もう一品というのが慣習としてありますが、そんな食事はできていないのが現状です。主食は炭水化物だけでいいというのはおかしい。主食を完全栄養食【注1】にしたらどうかと考えました。そこで「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」をミッションに起業しました。
問  確かに主食で必要な栄養素が摂れるなら理想ですね。BASE BREAD(以下ベースブレッド)は一食で一日の1/3の栄養が摂れるので、栄養バランスを考えたら安心です。
橋本 昔は白米や白いパンにこだわりがありましたが、今は玄米や全粒穀物入りパンが受け入れられています。粒全体を粉砕した全粒穀物は、フードロス削減の観点からも、僕ら世代には重要です。生活習慣病を防ぐにはベターだし、サステナブルですから。

【完全栄養食ベースブレッド】

美味しさを進化させる
問 今はごはんもパンも白ければ良いという時代ではないということですね。
橋本 昔は玄米や全粒分入りパンは食感も味も良くなかったかもしれませんが、今はテクノロジーで美味しくて栄養バランスの良いものがつくれる時代です。全粒穀物+豆類など、身体によい食べ物が求められるのは、歴史的必然だと思います。
問  3年前に初めてベースブレッドを食べましたが、ボソボソしていてあまり美味しいとは言えなかった。今は格段に美味しくなりました。
橋本 何度も試行錯誤しました。主食ですから食感、味、香りを良くするのは必須です。完全栄養食としていますが、ケミカルな味はしないはずです。
問  いまやコンビニにも並んでいてどこでも買えるようになりました。
橋本  オフィスワーカーが完全栄養食としてのベースブレッドを手軽に買って頂けることは大切です。不足栄養素をサプリメントで補うのではなく、簡単に美味しく食べて体に良かったら、心の栄養に繋がると思っています。
問  固くもなくやわらかすぎず、絶妙な食感ですね。
橋本 食感にもこだわりました。きちんと噛むことは大切ですし、腹持ちが良く、満腹感に繋がります。

13万人のサブスク顧客が支持
問  毎月ケースで買ってくれる会員は何人ぐらいいるのですか。また客層はどんな方が多いですか。
橋本 今、サブスク会員は13万人になりました。客層は30代、40代、50代と幅広いです。男女比は女性が多く、女性6対男性4です。
問  料理することも食べることも面倒な若い男性が主な顧客かと思ったら、そうではないのですね。
橋本 この中で「BASE FOOD LABO」というコミュニティーを運営、皆さんの意見を商品開発や改良に活かしています。今2万5千人が登録してくれています。
問  すごい応援団ですね。こんなに良い商品なら、すぐ真似する会社が出てきそうですが、今のところないですね。特許を取得しているからですか。
橋本  特許も取っていますが、真似をするのが難しいからだと思います。開発もつくるのも手間がかかります。僕らは「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」という信念をもって、これを進めるために起業したので、手間は厭わない。しかしたくさんの事業の中の一つなら、面倒なことは避けたいですよね、ちなみに真似が多いのはちょっとだけ変えるからだと思います。僕らベースフードは発想からして違います。

【ベースブレッド継続コース 16袋 3172円】


信念に同調して集まった仲間が強み
問  御社の強みはどこにあると思いますか。
橋本  わが社のビジョン・ミッションの下に集まったメンバーたちの存在です。やらされ感はありません。皆が信念をもって走っています。
問  信念がぶれないというのは強いですね。今年で創業6年目ですが、一番苦労したことは。
橋本 全てが大変だったといえます。不可能と思っていることを可能にすることは大変です。一朝一夕にはできません。しかしできると思って走り続けることが大切だと思います。
問  御社はファブレスですが、よく製造工場の協力を得られましたね。
橋本 僕らの信念を伝えると、面白そう、一緒にやろうとタッグを組んで下さる会社が出てきました。
問  今、生活者の糖質離れがパン業界を悩ませています。そんな中、「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」を推進する御社が出てきたのは、画期的だと思います。
橋本 今や大手とスタートアップの競争という発想は古いと思います。国内で争っている時代ではありません。一緒に組めばいいのです。共存共栄が大切です。製造を担って頂き、僕らは商品開発とデジタルマーケティングを担うというように。

創業6年目で上場
問  11月に株式公開されましたね。上場の狙いは
橋本 11月15日に東証グロース市場に上場しました。「健康をあたりまえにする」ということは公共事業だと思っていますので、もっと公に知って頂きたいですね。
問  今後の目標をお聞かせ下さい。
橋本 信念をもって「健康をあたりまえにする」を進めていくことです。そして僕自身も社員も、心身ともに健康でいることです。これが会社のバリューになると思っています。
問  座右の銘はありますか。
橋本 西郷隆盛の言葉で「敬天愛人」です。天を敬い人を慈しみ愛することですね。社会全体を良くすることと、ウチの会社だと社員が健康であることが、社会の健康に繋がると考えています。

【注1】1食で、栄養素等表示基準値に基づき、過剰摂取が懸念される脂質・飽和脂肪酸・n-6系脂肪酸・炭水化物・ナトリウム・熱量を除いて、すべての栄養素で1日分の基準値の1/3以上を含む。

橋本舜氏プロフィール
 1988年大阪府生まれ。2012年東京大学教養学部卒後、DeNAに入社し、新規事業を担当。2016年4月「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」をミッションに独立、ベースフード株式会社を創業。食事による栄養格差解消のため完全栄養の主食「BASE FOOD」を開発・販売。


                              

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