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Think(シンク)「パンと菓子、ベストパートナーが新境地を拓く」

Think(シンク)「パンと菓子、ベストパートナーが新境地を拓く」

左鈴木シェフ、右仲村シェフ 

 

JR上野駅、日暮里駅から風情溢れる下町を歩くこと10分。古民家3棟をリノベーションした複合施設がある。2023年4月、ブーランジェリー パティスリー「Think(シンク)」がオープンして10か月、パンも菓子も美味しい店と話題になっている。菓子専門学校時代から同級生だった菓子職人仲村和浩氏とパン職人鈴木嵩志氏が二人で出店した店だ。Thinkの魅力をご紹介しよう。               

(レポート三浦千佳子)

 

パンと菓子両方主役の「Think」

パンと菓子両方主役の「Think」
古民家を活かしたThink(シンク)

築85年という趣のある店構え、和の装いの店内には2人の実力派シェフ渾身のパンと菓子がズラリと並ぶ。その数約55アイテム。場所柄、外国人の観光客も多いが、ここは今やパン好き、菓子好きが集まる隠れた名店となっている。

美しい商品を眺めながら、どれを買おうかと迷うのも楽しい。そして庭の椅子に座って食べるのも風情がある。ここは別世界、異次元の舞台に忍び込んだようで、訪れた客を魅了する。

パンも菓子も主役の商品が並ぶ

 

店名の「Think」については「モノづくりは想うことから始まる」と仲村シェフ。誰のために何をつくるのか、原点は「想うこと」なのだと。アイテム数はパンの方が多くパンに比重を置いているが、ついでにお菓子ではない。パンも菓子も両方主役だ。

パンとしては、バゲットやカンパーニュなどの食事パンからクロワッサン、惣菜パン、メロンパンまでと幅広い。菓子類で目を惹くのは、焼き立てのマドレーヌ他、フィナンシェなどの焼き菓子類だけでなく、クラシカルなケーキも揃う。2人のシェフが素材と製法にこだわり創り出す作品はどれもが美しく、味わい深い。

超高加水の食事パンが得意という鈴木シェフが創り出すパンは秀逸だ。特に自慢は加水率100%という「カンパーニュ」だ。見た目はがっしりしているが、パリっと薄く香ばしい外側と、もっちりやわらかい中身が絶品で、一度食べたら忘れられない味わいだ。さらにこのカンパーニュ生地を応用した「サングリア」はそのジューシーさに驚く。

左カンパーニュ 右サングリアの赤

 

バゲットもクラストが薄く、中はもちもちで食べやすい。2日ぐらい置いても、バリバリになることはない。

パティシエ仲村シェフが創り出す菓子もすごい。特に焼き立ての「マドレーヌ」を味わえるのはここしかない。サクッとした軽い食感と口どけのよさ、バターの芳醇な香りと濃厚な味わいが、食べた人を虜にする。プレーンからショコラ&キャラメルなど4種類が並ぶ姿は壮観だ。カヌレや美しい「ポム フイユッテ」や季節のタルも揃う。どれも繊細な仕事ぶりが伺われ、焼き菓子好きにはたまらない。

 

焼き立てが味わえるマドレーヌ4種 

 

原材料や製法にこだわる

二人とも実力派シェフだからこそ、原材料や製法すべてにこだわる。超高加水の食事パンが得意な鈴木シェフは、オリジナルの水種を生み出した。

「価格に関係なく使いたい粉を使っている」と語る鈴木シェフ。今は8種類の小麦粉を使い、自在にブレンドしている。 バターはベルギーのコールマンの発酵バターを使用。品質が安定していて焼き上がりの風味がよく、キレの良さが魅力と仲村シェフ。菓子を担当する仲村シェフにとって、バターは重要な要素だ。あの風味豊かなマドレーヌを創り出しているのはバターかもしれない。卵は那須の御養卵を使用。砂糖はきび砂糖。塩は長崎五島列島のものを使用するなど、原材料はすべてにこだわっているという。

 

ベストパートナー

二人の出会いはフランス・リヨンの製菓学校という。今パン職人として活躍する鈴木シェフは、菓子からスタート。ゴントラン・ シェリエやハイアット リージェンシー 東京、ガーデンハウスクラフツなどでパン作りの腕を磨き、この「Think」へ。 

仲村シェフは、ストラスブールのティエリー・ミュロップやパティスリー・サダハル・アオキ・パリを経て。ハイアット リージェンシー 東京ではシェフパティシエを経験。その後独立。㈱INTUITIONSを設立しコンサルタントとして活躍。2023年4月、鈴木シェフを誘い二人でThinkをオープンした。

 「鈴木氏はまじめでA型らしい仕事ぶり。しかし遊び心もあり、仕事が丁寧で作品は奇麗」と評する仲村シェフ。「仲村氏はクリエイティブでパティシェエの仕事は申し分ない。コンサルも経験しているので目線が高く広い」と評する鈴木シェフ。

互いにその良さを熟知しているからこそ、ベストパートナーとして役割を担っている。鈴木シェフは組織づくりやモノづくりなどクリエイティブの部分を、仲村シェフはマーケティングやPR部分を担う。

オープンして10か月、全力疾走で走ってきたという二人。それを可能にしているのは二人がまさにベストパートナーだからであろう。超多忙だが、現場だけに埋まってはいない。だからこそ次の展開が実現できる。まさに新しい形のブーランジェリーパティスリーといえる。

 モノづくりで一番大切にしていることを問うと、「思いやりと創造力」と鈴木シェフ。自分本位で仕事をするのではなく、五感を働かせて、今どういう状況にあるかを考えられるかが大切という。そして「マニュアル化できるところ、簡略化できるところは限りなく簡略化、複雑にしないこと」と。

仲村シェフに問うと、「隅々まで想いを馳せて仕事をすること」ときっぱり。基本、文化、体験を大切にし、本質を考えることと語る。確かに二人の作品は完成度が高く、一つひとつに想いが込められている。

 

2人はベストパートナー 

 

百貨店のイベントに招聘

この二人の実力にいち早く目を付けたのは三越だ。2023年9月、日本橋本店で開催された「フランス展2023」に招聘された。オープンしてすぐで多忙を極めていたが、より多くの人に「Think」を知ってもらいたいと、出店を受諾した。

そして2024年1月は銀座店が開催したイベント「スコーンパーティ」にも声がかかった。会場奥の「Think」の店頭には長蛇の列ができた。仲村シェフが創り出すスコーンは、さっくりだがリッチで味わい深い。8種のスコーンは飛ぶように売れた。仲村シェフの実力と魅せ方がキラリと光る。たくさんのブースが並ぶ中で、「Think」が際立っていたことは間違いない。

 

得意のスコーンが並ぶ 

互いの実力を何乗にもアップ

 

今、38歳という二人、オープンして10か月、最短距離を全速力で走ってきた。もっと販路を拡大、カフェもやってみたいと、夢は広がる。Thinkとは別ブランドで、新しいことに挑戦したいと意欲満々だ。そしてアルティザンの雇用のインキュベーションを実現したいと語る。鈴木シェフは障害者雇用にも意欲的だ。

互いをリスペクトする二人がタッグを組むからこそ、パワーは何倍にも増殖される。やりたいことが山ほどあると二人。その熱い想いがどんな形で具現化されるのか今後が楽しみだ。

(三浦千佳子)

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