トピックス -ビッグベンチャー

2020年02月05日

漁業界に飛び込み変革を先導する女性企業家

Biz Forward Story マネーフォワード社長CEO 辻庸介×GHIBLI 代表 坪内知佳


   




マネーフォワード主催で開催されたBizForward 2020。若くして全く縁のなかった漁業の世界に飛び込み、萩大島船団丸の代表として山口県萩市で、生産、加工、流通、販売にも取り組む6次産業化に成功した萩大島船団GHIBLI 代表 坪内知佳氏と、マネーフォワード社長CEO 辻庸介氏の対談で、坪内氏の波乱万丈な人生から漁業界の抱える課題、今後の挑戦まで掘り下げた。



人生を漁業へ捧げる決断に導いた信念

辻 まずは、坪内さんの事業内容の説明をお願いします。

坪内 漁業の生産、加工、流通、販売に一貫して取り組む6次産業化の認定を受け、仲介人や卸売業者を通さずに、魚を漁獲後発泡スチロールに詰めて、新鮮なまま直接漁港から出荷するというシンプルな事業を行っています。

辻 何故萩市なのでしょうか。

坪内 CAになりたくて外大に行ったのですが、元々化学物質化過敏症という、皆さんが普通に接することのできる物質に反応を起こす病気を持っていて、体調を崩してしまいました。今33歳ですが、これまで3回癌になったことがあります。1回目の19歳で、余命半年の可能性があると宣告を受け、非常に失望し、キャリアも学歴も要らないと思い、大学を中退し結婚を機に、漁業のまちである萩市へ嫁ぎました。その後、離婚をしましたが、ここに残りました。

辻 萩に残るのは大きな決断だと思います。何故漁業なのですか?

坪内 先ほども言いましたが、自分の死を考えたときに、「これから医者になって誰かの命を直接救うことはできなくとも、誰かの人の口に入る魚を通して、良い物を食べたいと願う消費者の健康に携わることはできる」。これはものすごく自分がやりたいこと、すべきことだと思い、そこで萩大島船団丸の水産業に関わることにしました。



変化の必要性と恐怖感の板挟み

辻 水産業のコスト構造は、どうなっていますか?

坪内 事業を始めた当初の売上は、年商で6000万から7000万円の水揚げが3隻で2億円でした。そこに補助金がついて、3億円ほどの借り入れが各社約1億ずつあったため、計3億円。船1隻を作るのに3億円、1回水揚げをするのに使うネットが、1枚5000万円します。それほどお金がかかります。

辻 収入より支出が多いと、明らかに衰退していくのが分かりますよね。

坪内 当時2歳の私の息子ですら、「大人になってもお魚ってもらえるのかな」と言ってしまうほど、この地はいずれ無くなるという空気感がありました。何かをしなければならないという声はもちろん漁師たちから上がっていたのですが、やはりどうしても動き出すのに時間がかかります。

辻 変わる必要性は感じているものの、前例がないのでどうしても恐怖を感じてしまいますよね。

坪内 当時はまだ、水揚げ後、地方市場や中央市場を通して、小売業に卸され、スーパーや店舗へ届くという、戦前から確立された水産の仕組みがありました。ですがその仕組みは時代にそぐいません。それを何度も変えようと説いても、やはり変えたくないという反発の声が上がり、なかなか進みませんでした。

辻 では、どれくらいかかったんですか?

坪内 まだまだですが、形になるまでにかれこれ10年ですかね。



諦めない理由

辻 僕も会社を経営していますが、一緒にやってくれる仲間やお客様に励まされるので頑張れています。坪内さんは何を糧に頑張っていらっしゃいますか?やはり息子さんですか?

坪内 実は、19歳で余命半年宣告を受けたのとほぼ同時期に、私の父の事業がリーマンショックで倒れてしまい、家にはもう帰れないかもしれないという考えが頭をよぎりました。自分が生まれ育った地元が無くなるは辛いです。

辻 地元って自分のアイデンティティですよね。

坪内 昔は、自分にとっては、よその地の関係ない漁師のおじちゃんたちだから、もう諦めてもよいと正直思ったことがありました。しかし、息子にとってここは生まれ故郷です。消滅可能都市として間単に受け流してよいものではなく、この地で子どもを産んだ1人の親、大人として責任があると思い、やり続けています。



独自のやり方を残す漁業界

辻 私の想像する限りでは、漁業の世界では情報やベストプラクティスの共有、ITの活用などができていないのではないかという気がします。

坪内 漁業では、情報がばれないように船ごとに船用語を使っています。だから、隣の県に行けば口をきくことはありません。Iターンなどで、新しい新入社員が来てくれても、最初は言葉で教えようとしない業界です。その点においては辻さんの仰る通りだと思います。本当は私なんかが間に挟まらなくても、漁師同士でどんどん情報共有すれば、6次産業化の展開もより早く可能になるはずです。

辻 一方で、変化を先導するには、漁業への理解や愛もなくてはならないと思います。

坪内 正しいことを言うだけでは変わりません。私が一番大事にしているのは敬意を示すことです。スーツで海に出ようとするとやる気がないのかと思われます。一緒に仕事が出来るように長靴とジャージ姿で浜に出ることから始めました。



続く坪内氏の挑戦

辻 これからの展望をお聞きしたいです。

坪内 6次産業化を全国に展開していきたいという思いは萩大島で事業を始めた当初から持っていますが、呼ばれて行った先々で、反対の声を受けることを繰り返しています。しかし、現場ベースでできる場を持ちたいと思って続けています。

また、真珠も水産物ですが、規格外の真珠の価値を上げるブランディングも行っているので、漁業の6次産業化を今後も続けていきます。



コメントをシェア

骨太対談
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top