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トピックス -企業家倶楽部

2012年06月01日

メディアミックス×自前主義×人間力=ジャパネットブランド/ジャパネットたかたの強さの秘密

企業家倶楽部2007年12月号 ジャパネットたかた特集第2部


「商品そのものではなく、その商品がもたらす感動と豊かさを提案するのがジャパネットの使命」とジャパネットたかた代表取締役の高田明は想いを語 る。会社設立から20年、数値目標は立てずに顧客のために今できることに徹し、愚直に事業を続けてきた。「無理をすると、どこかにほころびが出る」と高田 は穏やかに話す。94年にスタートした高田自らが出演するテレビショッピングは朝の顔となり、今や日本一親しみやすい経営者と言われる。ジャパネットたか たが支持される理由はどこにあるのか、強さの秘密に迫る。   
  (文中敬称略)



■「感動」提案企業  独自性のある商品紹介が魅力

高田は以前に顧客から届いた一通の手紙のことが忘れられない。ある小学生の親が子供にジャパネットでカメラを買って与えた。カメラを手にするとその子供は好きな花の写真をたくさん撮るようになった。その子供は小児癌だったのだ。花の写真の話題で暗くなりがちな会話から親子共通の話題が増えた。「その瞬間、カメラは単なるモノではなく、その家族にとって宝物になったのです」と高田はいう。 
 

 ジャパネットで購入した商品によって、顧客が幸せになること、感動してもらえることが創業以来の高田の企業理念になっている。ジャパネットは21年前の1986年、長崎県佐世保にある町のカメラ屋として始まった。近所の家族にカメラを販売し、高田自ら近くの学校に記念撮影にも出かけた。当然、フィルム写真の現像も請け負う。近所の家族の思い出作りを生業にしてきたのが原点なのだ。
 

 「このデジカメでお子さんの運動会の写真を撮ると、ほらっ、新聞紙2枚分に引き伸ばせますよ」、高田の親しみのある笑顔と独特な甲高い声は、朝の馴染みの顔になった。画面から元気な子供の姿とビデオ撮影している若夫婦の幸せな姿が目に浮かぶ。難しい専門用語を使わずに、高齢者や主婦でも分かる簡単な言葉で説明し、実際に使い方を自ら実演することで安心感と信頼をお茶の間に与えている。さらに、撮影した画像をすぐに印刷できるようにプリンターもセット販売する。フィルムは不要なことを強調し、長く使うことを想定したら経済的なこともアピールすることを忘れない。付属品として保存用のメモリーと印刷用シートを加えて、「ジャパネットが分割金利・手数料を負担します」と締めくくる。テレビショッピングは欲しいときに電話一本で注文できるので、その手軽さが受け業績を伸ばしている。



■職人の想いを伝えたい

その他の人気商品を見てみると、パソコンから薄型テレビ、洗濯機、炊飯ジャー、掃除機などの生活必需品の電化製品が多い。商品の選択は「直感が8割です」と高田はいう。何万点もある商品の中から自分に合った商品を選ぶことは難しい。まして、高齢者や主婦は機械類に弱い。パソコンを紹介するときも、他社の店舗販売のように性能や新機能ばかりを説明することはしない。このパソコンを使うと運動会で撮影した子供の写真を簡単に編集し、印刷できることを実演する。
 
 「メーカーに代わって商品開発に携わっている職人の想いを伝えたい」と、高田はお客さんとメーカーの橋渡しがジャパネットのミッションだと考えている。以前、番組中に紹介して爆発的に売れた商品がある。三洋電機が発売したエネループは、1000回充電が可能な電池だ。地球環境のことを考えると、今後メーカーは利益ばかり考えた商品開発をしていてはいけない。商品に込められた開発者の想い、メーカーのメッセージに感動した高田はこの日の番組のMCにも力が入ってしまった。反響は大きかった。
 

 顧客は必ずしも性能や機能で商品を選ぶわけではない。商品を購入した結果、どんな生活に変化するか期待して買い物をする。ジャパネットが創業以来、一貫して守り、提案してきたものは、商品を通して感動と豊かさを伝えること。長く使ってもらうために、紹介する商品は必然的に品質に信頼のあるナショナルブランドとなる。結果、顧客満足度も上がる。ジャパネットで買い物をすると、生活が豊かになり、楽しくなるとイメージしてもらえるようになったことが今日のジャパネットを築いたのだ。



■新しいショッピングインフラを構築  メディアミックス戦略

「たまたまラジオを聞いたから、テレビショッピングを見たからという人がまだまだ多い。しかし、今後は時間と場所を選ばずにジャパネットでショッピングができるようにしたい」と、テレビ制作課シニアリーダーの塚本慎太郎はジャパネットの将来について語る。
 

 今ではすっかりテレビショッピングが有名になったが、通信販売の形態はラジオが先である。ラジオショッピングは今でも全体の売上げの9%を占める。売上げの構成を見ると、新聞の折込みチラシ、一度購入した人へのカタログやDMといった紙媒体が44%と売上げの半分を占める。地上波、CS放送といったテレビショッピングが31%と、紙媒体よりも少ない。最近急成長しているのが、定期的に配信する動画ライブが売りのウェブサイトや携帯電話に対応したモバイルサイトといったインターネット関連の分野だ。すでにラジオを抜き16%まで成長した。
 

 これら複数のメディアを使うことで、幅広い客層と多様化する消費ニーズに対応できるのがジャパネットの強みだ。例えば、高齢者や主婦層はテレビショッピングやチラシなどを見てから電話やファックス1本で注文するのが便利だろう。サラリーマン層はといえば、昼間は仕事でゆっくりショッピングをする余裕がない。外回りの運転中にラジオで気になった商品を、帰宅後の夜や週末の好きな時間にインターネットで買い物ができるといった利便性が受けている。



■トップの顔が信頼の源

テレビショッピングでトップ自ら実演する高田を見ているので、他の紙媒体やインターネットで買い物をしても安心である。そういったメディアミックスの相乗効果もある。「インターネット関連の売上げが急速に伸びているのも、ネットだけの力ではないはず」と、常務執行役員の星井龍也は分析する。複数のメディアに露出することでマーケットに認知してもらい、それぞれの顧客に合った方法でジャパネットにアプローチしてもらい全体の売上げを伸ばしていく戦略だ。フリーダイヤルに楽しい音楽をつけて、番組中に繰り返し流すのもジャパネットたかたを覚えてもらうのに、役立っている。
 

 今後は、ワンセグに対応したモバイルでの動画配信に注力していく。PCを中心としたインターネットショッピングの成長スピードは、既存のテレビショッピングの伸びより早い。PCで起こったことが、次はモバイルで起こることは明白だ。「モバイルの可能性はPC以上。今後の核になる可能性が大きい」と星井は確信している。現在10代、20来のジャパネットの顧客となる。普段から携帯電話を持ち歩き、メールやゲームに、オークションで買い物をすることに慣れている若者が、携帯電話からジャパネットで家電を買うことが予想できる。モバイル端末の携帯性、即時性は通販事業を手掛けるジャパネットにとっては大変魅力的だ。現状では売上げ全体に占める割合は数%だが、近い将来2桁に成長することは間違いない。
 

 都市部では、大型の家電量販店の店舗出店が相次いでいるが、広いフロアに大勢の店員を配置し家賃と人件費もバカにならない。その費用は当然商品の価格に乗っかってくるわけだ。ジャパネットでは、大型店の店舗進出をしない分を商品の価格に反映することができる。コールセンターの設置や金利・手数料の負担に回し、浮いたコストを顧客に還元できる。店舗販売と違い、商圏を選ばないメディアミックス戦略は、ジャパネットの特徴であり強さの秘密だ。



■自前主義 販売責任とスピード感

ジャパネットは、商品の選定から仕入れ、番組やチラシの制作、注文受付、商品発送、アフターフォローまで社内で全ての工程を持っている。高田が自前主義にこだわるのには2つ理由がある。1つは、顧客に対して責任を果たせること。社員も責任感を持って仕事をすることで、充実感を味わうことができる。責任の所在を明確にすることで、サービスの品質も上がり顧客満足に繋がる。2つ目は、スピード。以前は番組制作を外部に委託していたが、1つ番組を作るのに1ヵ月も期間を要し、製作コストも1000万円を下らない。社員がこういう番組を作りたいと思っても、すぐに反映することが難しく自由度が狭かった。「自前でスタジオを持つことが、スピードにおいて重要だと認識している」と高田は話す。

 2001年3月には、本社に本格的なテレビスタジオ「ジャパネットスタジオ242」を開設し、現在では佐世保のスタジオから生放送番組を発信している。「自社スタジオが完成したときは本当に嬉しかった。生放送だとお客様の注文状況がダイレクトに伝わってくるので励みになる」と塚本は自社スタジオを持つことのメリットを語る。



■裏方の主役

このように自前主義を貫くジャパネットだが、新しい試みも始まっている。2002年7月に福岡に新設したコールセンターでは、派遣会社とのコラボ レーションが試されている。「朝の生放送開始と同時に300台あるコールセンターの電話が鳴り始めます。回線が一杯になると佐世保の本社にも注文の電話が 転送されるシステムになっていて、お客様を待たせないように心がけています」と、福岡市天神にあるコールセンター責任者の高田旭人は機会損失がないと胸を 張る。通信販売では顧客から掛かってくる電話が、そのまま売上げに直結する。リアルタイムにデータが把握できるように天井から吊るされたモニターには、現 在の注文状況が表示される。
 

 また、顧客との接点になるコールセンターのスタッフ教育にも力を入れている。顧客満足のために社 員の誠意ある対応が求められることは言うまでもない。そこで、初級者からマネージャークラスの上級者まで、各階層に合わせた社員研修制度が用意されてい る。さらに、顧客からの小さな疑問にも答えられるように、メーカー担当のスタッフが常駐している。このように、コールセンターの機能を全て外部に任せるの ではなく、自社の社員がスタッフの教育をし、オペレーションをマネジメントすることでジャパネット品質を保ち、顧客に対して責任を果たせるようにしてい る。
 

 ジャパネットの通販モデルを支えているひとつにITシステムの導入は欠かせない。ひとつの品物を紹介すると全国から一斉 に数百から数千という問い合わせが入る。それが、テレビショッピング、ラジオ、カタログ、チラシ、インターネットとチャネルが増えているのだから、取扱う 情報の量は年々膨大に、そして複雑になっている。顧客情報やコンテンツ情報はデータとしてサーバーに管理されるが、日々増加している動的なデータベースと コンテンツを掲載しているウェブサイトを連動させるのは、大変なことだが、自社でシステムを構築している。これを外部に出していたらスピードが落ちてしま い、やりたいことができないと社員のモチベーションが下がってしまうからだ。
 

 「各分野の担当者が、商品データなどの蓄積された情報を活用してデータ分析ができる自立型組織にしていきたい」と星井は将来の夢について話す。
 

  「カイゼン・改革は現場が全てで、問題が起こったときに対処しなければ解決できない。問題が起こってから1週間後に会議室で議論しても意味がない。現状で は多くのことがデータで見ることができる」とシステムの重要性を説く。ジャパネットでは、商品開発からアフターフォローまで自前主義を貫き、全工程におい て責任を負うことで、社員が責任感と誠意を持った対応ができると考える。持たざる経営が効率的で持てはやされたこともあったが、ジャパネットでは違う方法 があることを証明した。また、企画変更や価格変更といった急な変更にも自社の独自の判断で迅速に対応でき一石二鳥といえる。時間もコストと考えればスピー ドを重視する高田の経営にも合致する。自前主義は信頼とスピード経営の証と言える。



■顧客と向き合う企業文化 愚直に誠実に

秋の運動会の季節、キヤノンの一眼レフカメラの注文が予想以上に殺到し、数百という在庫が足りなくなった。顧客の大事な思い出作りを妨げるわけにはいかない。全力でカメラを集めよう。運動会は待ってくないので、メーカーと何度も交渉を続け、なんとか全国からカメラを掻き集めてもらった。

 「中にはどうしても注文通りのカメラが間に合わず、違うカメラで納得して頂いた」と当時の失敗について塚本は語る。「通販は品物がなくても買って頂ける商売なので、その後はこのトラブルを教訓に事前の策を練るようになった」という。
 

 高田を始めジャパネットの社員は、「今できることを一つひとつ地道にやってきた」と謙虚に語ることが多いが、これまでにも多くのチャレンジをしてきた。町のカメラ屋から、ラジオショッピングに進出するときも、さらにテレビショッピングに手を広げるときも勇気がいったことだろう。生放送ができるように自社スタジオを建設、顧客満足のためにコールセンターを新設し、配送センターまで自前で持つことには大変な初期投資がかかる。高田の胸に秘める大きな志がジャパネットの成長の推進力になっている。
 

 「うちは妥協しない会社だから」、塚本が中途入社の面接時に高田がラジオショッピングの合間に顔を出し、声を掛けてくれたことを覚えている。「面白そうな会社だな」と塚本は思った。




■逆境から逃げない

 ジャパネットを語る上で、2004年3月に起きた顧客情報漏えい事件は欠かせない。元社員の不祥事で、ジャパネットは存続の危機に瀕した。「会社 を清算しようと考えたこともある」と高田はいう。通信販売を手掛けるジャパネットにとって、顧客情報が悪用されることはあってはならないことだ。事の重大 さに番組放送の自粛を早々に決めた。放送局やメーカーなどの関係者へ一時的に迷惑を掛けるが、顧客の信用を一番に考えた。

 その日は午後に記者会見を開く予定だったが、逃げずに対応したいと考え、午前と午後の2回開催した。新規事業を発表する席は楽しい会見だが、不祥 事の際に人前に出るのは誰にとっても気持ちのいいものではない。しかし、ジャパネットはトップ自ら連日のように謝罪を繰り返したことで、社会は逆にその誠 実な姿勢を評価した。動揺する社内に向けても、社員全員に原因究明を約束し、雇用を守ることを約束した。「社長の逃げない姿勢を見て社員の心がひとつに なった」と塚本は当時の様子を語る。
 

 データや商品を盗み出せる環境を作り出した責任は自分にある。高田はその責任の重さを痛感し、営業自粛から50日経った営業再開後もしばらくテレビやラジオの番組に出演するのをやめた。番組に出て、商品を説明する気分にはとてもなれなかったからだ。
 

 高田の穴を埋めるという重い立場を任されたのは、塚本をはじめとした若手のMCだった。「高田の代わりを誰か一人で請け負うのは不可能。40人の 番組制作スタッフが40分の1ずつ埋めれば何とか乗り切れる」と塚本は当時の状況を振り返る。この過酷な経験が塚本や中島一成らのMCを育て、社員全員で サービス体制を整える姿勢が共有されていった。
 

 これまで高田自身がテレビ、ラジオ、あらゆるメディアに登場することで顧客から信頼を得て、ここまでジャパネットは成長してきた。後方では、コー ルセンターでアフターフォローを充実させ、自社にある配送センターから間違いなく迅速に商品を届けるといったバックアップがさらにジャパネットの信頼性を 押し上げている。高田が築いてきたジャパネットというブランドをさらに進化させられか、今後も目が離せない。



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