• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2012年06月01日

ジャパネットたかたの21世紀戦略 顧客と感動を共有する “通販2.0”をめざす

企業家倶楽部2007年12月号  特集第1部 





テレビやラジオの通販番組に自ら出演し、そのハイテンションなトークで全国の視聴者を虜にするジャパネットたかた代表取締役の高田明。 “テレビショッピングの革命児”として全国的に高い知名度を誇る高田は、「生活提案型の通信販売」をビジョンに、売上高1000億円規模の企業「ジャパ ネットたかた」を育て上げた。今後は、中継車で全国各地を訪ね、顧客と感動を共有・発信する「通販2.0」型の企業をめざす。 (文中敬称略)



■番組制作に妥協なし

長崎県のJR佐世保駅から車で東に10分ほど走ると、海沿いを離れ、佐世保市中南部の日宇(ひう)へと向かう。両側の山に挟まれた道沿いには、明るい朝日が差し込み、ユニクロなどのロードサイド店舗が立ち並ぶ。その一角に、ジャパネットたかたの自社スタジオが姿を現す。
 

 9月19日の朝9時、スタジオで働くスタッフ約50名は、テレビショッピングの生放送の準備に追われていた。番組進行(MC)を務める高田明の姿も見える。

 「カメラの位置をもう数センチ横にずらしましょう。そのほうがピアノの演奏が伝わりやすい」高田がスタッフに指示を出す。今回の番組の最初に紹介する商品は、カシオ計算機の電子ピアノ「Privia(プリヴィア)」。

ピアノを弾くタイミング、曲の選定、カメラの位置など、本番ギリギリまで入念に打ち合わせをする。
 

 9時30分、テレビショッピングの生放送が始まった。高田がカメラに向かって電子ピアノを熱く紹介する。カシオから派遣された女性がピアノを見事 に弾き、その演奏がテレビを通して全国に届けられた。高田の自慢の美声で、名曲「もしもピアノが弾けたなら」を歌い上げる。そして最後にあの名文句。 「さぁ、この見事な電子ピアノ。どうですか、皆さん。気になるお値段は今回も安いですよー。椅子とヘッドホンもつけて、なんと69800円!分割金利・手 数料はジャパネットたかたが負担します!」
 

 実は、ジャパネットたかたのテレビショッピングは、台本が一切ない。商品紹介の流れはMCと撮影スタッフの間で打ち合わせるが、それ以外はぶっつ け本番となる。生放送が始まれば、MCのトークですべての流れが決まっていく。MCが商品紹介に熱を込めすぎて、紹介予定時間をオーバーしてしまうことも 多々ある。「3分

50秒、時間が押しています!次の商品の説明は短く!」
 

 フリーダイヤルのナレーションの間に、スタッフから指示が飛ぶ。朝の生放送は30分番組で、時間延長は厳禁だ。スタジオは緊張に包まれる。この後 の商品紹介では、説明時間を大幅に削る必要がある。予定していたデジタルカメラの紹介では、VTRのシーンを急遽カット。MCはその場で説明するポイント を取捨選択しなければいけない。ディレクターやカメラマンらのスタッフも一丸となり、商品紹介のタイミングや流れをアイコンタクトや身振り手振りで伝え合 う。放送時間の最後には時間の帳尻を見事に合わせる形で、10時ジャストに無事生放送が終了した。
 

 番組収録後、スタジオですぐに反省会が開かれる。

「最後は、電話番号のテロップを流すより、MCの一言を入れたほうが、もっと商品の魅力が伝わったでしょう。僕と君との間で、阿吽の呼吸ができていないよ」。

 高田がスタッフに注文をつけた。生放送はトラブルも多い。この日は番組のエンディングで高田とスタッフの息が合わなかった。
 

 ジャパネットたかたは、生活提案型の小売業を目指している。そのミッションは、「商品紹介を通じて、顧客と感動を共有すること」だ。商品の魅力だ けではなく、その商品をどう使えば生活が豊かになるかを伝えている。「視聴者の皆さんに商品購入後の生活や感動を伝えたい。そのミッションをスタッフ全員 が共有することが大切だ」と高田は言う。
 

 だからこそ、高田は周りのスタッフの意見を必ず聞く。番組作りに妥協して欲しくないからだ。「何か意見があったらまず口に出しなさい」と高田はいつもスタッフに問いかける。
 

 反省会が終わった後、高田は椅子に座り、収録したVTRを見直している。その表情はテレビで見せる穏やかな笑顔とは違い、クールで真剣なまなざしである。「改善すべき点はまだまだある。どうすればメッセージがより正確に伝えられるか」。その答えを探る旅に終わりはない。



■カメラ店として創業し通信販売に進出

ジャパネットたかたの創業経営者であり、代表取締役を務めるのが、高田明である。自社の通販番組のMCとして、日本全国の消費者にもおなじみの顔 だ。その高田は1948年生まれ。長崎県平戸市で育ち、地元の高校を卒業後、大阪経済大学経済学部に入学する。学生時代は英語の勉強に没頭し、将来は英語 を活かした仕事をするのが夢だった。
 
 71年、大学を卒業後、機械メーカーの阪村機械製作所に就職し、ヨーロッパを駆け巡りながら機械 販売の営業活動に従事した。日本に帰国後、友人に「翻訳関連のビジネスをやろう」と誘われ、退職する。ところが、話は立ち消えになってしまい、74年に父 の経営するカメラ販売店の「有限会社たかたカメラ」に入社。高田の兄や弟、妹も一緒に働く中で、団体旅行客を相手に観光写真を撮る仕事にのめり込んでいっ た。
 

 団体客の集合写真では、下を向く者もいれば、話に夢中になっている人もいる。カメラのレンズに客の焦点を合わせるため、高田は得意のしゃべりで客 を惹きつけた。大勢がレンズを見てくれれば、それだけいい写真になる。笑顔を撮れば、顧客も喜ぶし、写真も売れた。「この頃に培われた経験がMCでも活き ている」と高田は言う。
 
 86年に平戸の実家から離れ、独立。株式会社たかたを設立(99年株式会社ジャパネットたかたに社名変更し、佐世保でカメラ販売店を運営する傍ら、訪問営業なども積極的に展開していった。
 

 転機が訪れたのは、90年。地元のラジオ放送局からの誘いをきっかけに、ラジオショッピングに進出する。約5分間の番組で高田がしゃべると、ビデ オカメラが50台も売れた。「これはいける!」。店舗や訪問営業時代で培った高田のトークを武器に、ジャパネットたかたはラジオショッピングを積極的に展 開する。
 
 94年にはテレビショッピングを開始し、通販事業に本格的に参入した。パソコンやデジタルカメラ、薄型テレビなど同業他社が あまり取り扱わないデジタル機器やAV機器で商品の差別化を実現。2001年には、自社スタジオを完成させ、地上波やCS放送を通じて生放送の番組を全国 に配信する。
 

 同時に、カタログ、チラシ、インターネットなどあらゆる媒体を通じたメディアミックス型の通信販売も構築。セット販売や分割金利手数料無料化など独自のサービスも大きな支持を得て、日本を代表する通販企業へと成長を遂げた。

 テレビショッピング参入時の94年の売上高43億円は、毎年数十億円から数百億円単位で伸び続け、03年に705億円、利益は23億円を達成す る。04年にはテレビショッピング参入の10周年を記念すべく、10億円以上かけた盛大なキャンペーンを企画した。「もっと多くの人に伝えたい」。高田は 販売促進に躍起になっていた。



■顧客情報流出事件の危機を乗り越える

満を持してキャンペーンを開始した04年春、事件は突如として勃発する。「御社の顧客情報が流れている。確認して下さい」。ある新聞社の記者から連 絡があった。対応したのは、転職してきたばかりの常務執行役員・吉田周一である。「そんなことはあるわけがない」。そう吉田は答えたが、念のために調べる と、ジャパネットたかたの顧客と奇しくも重なっている。「本当だ。顧客情報が漏洩している!」。「通信販売を行う我々にとって、顧客情報は生命線。このま までは信頼が足元から崩れる。販売活動はすべて止めよう」。高田は即座に営業自粛を決めた。
 

 事件発覚後の3月9日、高田は記者会見で顧客に詫びると同時に、「事件の調査と今後のセキュリティ対策の強化に全力を尽くす」と宣言した。さっそく社内調査委員会とセキュリティ委員会を設立し、高田自ら「情報セキュリティ最高責任者」に就任する。
 

 セキュリティ対策の強化に向けて、監視カメラの設置やICカードによる入退室のチェック、携帯電話の持ち込み禁止など厳格な管理体制を整えた。セ キュリティ関連の試験制度を発足し、全社員にテストを課した。試験の結果も社内で張り出し、成績が悪い社員は追加試験を受けさせる。抜き打ちで社員の持ち 込み検査を行うなど、徹底した姿勢で挑んだ。「できることは何でもやった」とセキュリティ担当を担った吉田は言う。
 

 結果として、営業自粛は49日間に渡り、その影響で約150億円の減収になった。「でもこの時間がそれぞれの現場の改善と強化につながった」とテ レビ企画制作課のシニアリーダーでMCを務める塚本慎太郎は振り返る。放映がない約1カ月半もの間、スタジオのスタッフは番組制作の見直し作業をした。各 部門もそれぞれの改善に取り組み、結果的に社内の結束力も高まった。
 

 こういった真摯な姿勢は、顧客や取引先の間で評価が高まる結果となり、営業再開後はこれまで以上に好調となる。事件が起きた04年の売上高は 663億円、利益は13億円と減収減益になったが、05年の売上高は906億円で250億円近くの増収となり、利益も33億円に到達した。06年には売上 高は1080億円、利益は34億円を達成。長崎県内の企業で初めて売上高1000億円を突破し、長崎県のナンバーワン企業に成長する。 



■メディアミックスのデジタル化を推進

 創業から20年以上の時を経て、「テレビショッピングの雄」として確固たるブランド力を築き上げてきたジャパネットたかた。「通信販売の域を超えた、まさにアイデア満載の情報発信番組で、見るだけでも楽しくなる」と長崎県知事の金子原二郎は賞賛する。
 

 実際、ジャパネットたかたといえば、テレビショッピングのイメージが非常に強い。だが意外なことに、テレビショッピング事業は売上高の3分の1で しかない。06年の売上高1080億円のうち、カタログやチラシなどの紙媒体が44%、テレビが31%、ネットが16%、ラジオが9%の構成比である。
 

 この中で急速に伸びているのは、ネット通販だ。07年の売上高では約2割(200億円以上)をネット通販が稼ぐと見込んでいる。
 

 「今後はネットを徹底活用したメディアミックスのデジタル化が鍵になる」と高田は見る。そこで05年12月からネット限定の生放送「ジャパネット Bスタジオ」を開始した。携帯端末向けでもワンセグ対応の生放送をはじめ、携帯端末向けのダウンロード型映像も配信する。メールマガジンの配信も強化中 だ。同社のメルマガ「ジャパメル」の会員数は現在約60万人だが、「早期に500万人に持って行きたい」と高田は言う。 
 

 同社のサイト上では、紙媒体をウェブで配信する「WEBチラシ」や「EBカタログ」をはじめ、ラジオショッピングで流した音声なども視聴できる。 あらゆる情報をデジタルで伝えることを可能にし、既存メディアとネットの融合をいち早く実現したのが、ジャパネットたかたと言える。「デジタルビデオの録 画ボタンはどこにあるんですか」。「こういう使い方ってできないの?」。今では、生放送中に視聴者からメールが届く。「このお客様の声が非常に参考にな る」と高田は言う。
 

 通販番組は従来、顧客と直接対話できない点が弱みとされてきた。「いち早くお客様と感動を共有したい」。そう願う高田にとって、ネットの登場は大きなチャンスに映る。

 ネットとモバイルを強化すれば、いつでも、どこでも、だれでも、ジャパネットたかたが提供する情報に触れられる。そんな環境を実現できる時代になった。

 「ネット時代が進むことで、情報の流れ方が変わると見ています。今後は、双方向性の高い通販番組を作りたい」



■中継車で全国各地を訪ね新鮮な情報を生中継する

双方向性の高い通販番組。その実現に向けて、07年6月に中継車による生中継テレビショッピングをスタートした。「中継車で日本各地のお客様のもとへお伺いして、商品購入後の生活や感動を一緒に伝えたい」と高田は言う。
 

 例えば、デジカメを購入した顧客の自宅に伺い、思い出の写真を見せてもらう。その喜びを顧客に語ってもらえれば、その感動は日本全国に行き渡る。 ジャパネット長崎号、ジャパネット北海道号という風に各都道府県に中継車を配備し、テレビやラジオ、ネットなどを通じて生放送することが目標だ。
 

 ハイビジョンの中継車で全国の農作物や名産品を紹介すれば、商品のラインナップも増えていく。「『デジタル機器に強いジャパネット』というイメー ジが強すぎて、商材を増やせないのが悩みの種だった」とメディア企画制作本部部長の浦明美は打ち明ける。中継車があれば、その悩みも解決できる。
 

 韓国の通販業界では、自動車も販売する。「日本の通販業界で法律などの環境が整えば、車でも家でも何でも販売していきたい」と高田。
 

 ただし商品の選定は厳選する。ネット通販では無限に近い商品数を販売することもできるが、何でも売るわけではない。実際、ジャパネットたかたは通 販業界では取扱商品数は少なく、数十種類の商品が売上高の多くを占めている。商品数を増やせば、売上高を飛躍的に伸ばすことが可能だ。しかしそれでは一つ 一つの商品に対して責任を持てなくなる。
 

 「自分たちが伝えたいと思う商品だけを伝えます。ジャパネットたかたの企業理念から外れることは一切しません」



■顧客と感動を共有するそこに一生懸命取り組む

10年後を見据えた事業展開ではなく、目の前のことに一生懸命取り組んでいく。これが高田のポリシーだ。業績目標は特に掲げていないが、「10年後 に1500億円に到達すればいい」と考えている。急速な成長よりも、地道に足場を固め、社員の成長を促していく方針を掲げる。「今後も完成はありえないと いう気持ちで社員と共に日々精進していく」。そこには高田の危機感もある。
 

 従業員数が400人近くにまで増えたことで、高田と社員一人ひとりとのコミュニケーションの時間は必然的に減った。社員との一体感を失わないため にも、社員旅行や年末のイベント「大望年会」を盛大に行っている。社員旅行は98年に「これから10年間、毎年みんなで海外に行こう」と決めた。今までフ ランス、スイス、ハワイ、イタリア、ニューカレドニアなど、様々な場所を訪れている。毎年同行する浦も「海外の空気を肌で感じると、人間として成長できる ものがある」と言う。
 

 ライバルの動きも激しい。ジャパネットたかたの急成長を目の当たりにした同業他社は、一斉にテレビショッピング事業に参入している。日本最大手の 家電量販店チェーン「ヤマダ電機」は2006年9月、関西・北海道エリアで「ヤマダTVショッピング」の試験放送を開始、07年1月には地上波放送などの 全国放送に本格参入した。だが、高田は同業他社の参入に動じる気配はない。

 「お客様と感動を共有する。そのことだけに集中したいですね」
 

 ジャパネットたかたは、自ら厳選した商品の先にある生活と感動を、メディアミックスで顧客に伝えてきた。だが、それは一方通行の情報提供でしかな い。一方通行の伝え方を「通販1.0」と定義するなら、今後はネットや中継車を通じて、顧客と感動を共有・発信する双方向のメディア「通販2.0」を提案 していく方針だ。
 

 ジャパネットたかたが目指す、理想の企業とは何か。高田はある日、ソニー元会長の大賀典雄の話を聞く機会があった。大賀は言った。「源氏物語は素晴らしい。1000年前の物語が今も多くの人々に語りかける」。高田はその言葉に感銘を受けた。
 

 「ジャパネットたかたも夢を持ち続けて日々精進し、品質の良さや魅力と共に商品を先にある生活や感動を伝えて行きたい」
 

 地元の小学生がスタジオ見学に来た時、高田は感じた。「カメラをのぞかせると子供達は本当に嬉しそうな顔をするんですよ。企業は感動や夢を多くの 人に伝えていくことが大切だと思っています。これからも長崎県佐世保から離れず、ショッピングを通して日本全国に感動を伝えていきます」
 

 その想いを社員全員で表現し、「高田明率いるジャパネットたかた」から「社員全員で牽引するジャパネット」へと変貌を遂げていく。それが同社の課題であり、新たな挑戦となる。



コメントをシェア

骨太対談
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top