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トピックス -企業家倶楽部

2013年03月23日

三位一体の組織力で独創的な製品を生み続ける/大研医器の強さの秘密 

企業家倶楽部2013年4月号 大研医器特集第2部





大研医器の強さを聞くと、「営業・開発・製造の三位一体」というキーワードを必ず耳にする。すなわち、営業が医療現場の声を拾い、その声を開発が商 品設計に落とし込み、そして製造が最も効率的に生産するというものだ。なぜ大研医器は現場主義を貫き、独創性に溢れた製品を生み出し続けられるのか。三位 一体の本質を解き明かす。(文中敬称略)
 

「氷が融けたら何になる?」   
  

いたずらっぽく山田は問う。常識的な答えは「水になる」であろうか。
 

「氷が融けたら春になる」
 

 山田はさらりと言ってのける。なるほど。自由な発想とはこうしたことを言うのか。新製品の開発も同じである。「常識に囚われない柔軟な着眼点が求められる」と山田。そんな山田に率いられた大研医器の強さの秘密を見ていこう。
 



■強さの秘密1・ビジネスモデル

三位一体
 

「私たちは、商社を発祥としたからこそ成功した」
 

 大研医器と共に歩んできた古参社員は、皆一様にそう語る。
 

 今年で創業45周年を迎える大研医器。しかし、自社製品を開発から製造まで一貫して行うようになったのは約20年前からだ。それまでは、医療機器を仕入れて病院に納品する、一商社であった。
 

  メーカーの中には、「プロダクトアウト」の発想で製品開発を行う「技術屋」集団がいまだに多い。家電や音楽デバイスならば、あとは市場原理に委ね ればそれで事が済む話だが、医療機器は一つ間違えれば人の命に直結するため、現場のニーズに応えることが第一だ。大研医器は元々商社であったからこそ、そ うした「マーケットイン」の発想を自然に持った状態で、メーカーに移行することができた。絶えず現場のニーズを吸い上げて、それに応える形で使い勝手の良 い新商品を開発する。製造と販売を同時に行っている大研医器ゆえの強みだ。
 

 では、どのようにして現場ニーズへの柔軟な対応が現出されるのだろうか。そこには、営業・開発・製造が三位一体となって事に当たるシステムの存在がある。
 

  薬液を1時間あたりで適量流すことのできるシリンジポンプを例に取って説明しよう。例えば、通常の製品における1時間あたりの流量が1ー3m l/hだとしても、病院側から7ー9ml/hの製品開発を頼まれれば、大研医器はこれを受け入れて実現まで持って行く。 この場合、開発部は通常の仕様か らイレギュラーな製品を設計し直さなくてはならないため、労力と時間がかかる。製造部も決まった製品を一律で作る方がコストダウンや安定供給に繋がるが、 新旧双方の仕様を別々に作らなければならないのでロスコストが発生する。一般的な企業ならば敬遠したいところだ。しかし大研医器は、知恵と工夫で対応に尽 力する。




現在、医療機器は外国製品が日本市場を席巻している。しかし、日本人に適合した商品ではないので不満も多い。海外メーカーは画一的な商品しか作らないのが普通だ。生産効率はいいが、現場のニーズを満たしているとは言えない。その点、大研医器には営業力で培った病院との密なパイプがある。日本の現場に合った製品を形にして提供できるのは、大研医器しかいない。
 
 大研医器は、それぞれの病院のニーズに合った変種変量、少量多品種という部分に柔軟に対応することで顧客満足度を向上させてきた。営業が各病院のニーズを拾い、開発がそれに合った商品を作り、製造が適宜生産する。この三位一体が、大研医器を支える大きな柱となっている。
 
 今年度から、新たに部長制も始動した。営業、開発、製造、経理などの各部長が集い、会社の課題と将来像を話し合う。新しい考え方と情熱を持った彼らが密に連携を取り合い、施策を実行に移すことで、三位一体はより躍動感を増していくことだろう。



■医療機器メーカーという絶妙のポジショニング

大研医器のビジネスモデルとして特徴的なのは、「半分」ファブレスである点だ。フィスコで客員アナリストを務める佐藤譲も「まず自社で開発し、製造からカスタマーサポートまで行う。その後、納品数が大量になり製造がルーチン化されると、全て外部に受託する。これにより、製造ノウハウを社内に維持しつつ、コスト競争力を高めることができるため、収益が安定している」と分析する。
 
 実際、大研医器は企画から開発、製造、販売まで全てをコントロールしているので、15%以上の高い利益率を誇る。また、製造や品質管理などのノウハウが社内に蓄積されていることで、ベンダーに対等な関係で受託できる。
 
 商品設計の段階で、大量生産を想定して安価な方法を考えるため、病院側の受け入れやすい価格帯と使い勝手の良い性能を備えた製品が出来上がる。一旦導入が決まれば、その病院ではよほどのことが無い限り大研医器の商品が使われ続けるだろう。また、開発時に多くの特許を取得するなど、様々な面から収益の安定化に繋げている。
 
 そもそも医療機器自体、景気に左右されにくい業界だ。今後国内マーケットが伸び続けることは間違いなく、市場シェアの伸びしろも大きいとなれば、有利なことこの上ない。さらに、高齢化社会に伴う医療制度改革で医療機器開発が促進される流れがあり、大研医器の追い風となること必至だ。
 
 営業・開発・製造が三位一体となって独自のビジネスモデルを支えている大研医器。では、その一つ一つを見ていくこととしよう。



■強さの秘密2・営業力

溢れるバイタリティー
 
「大研医器の営業マンは怯むことが無くていいね」
 順天堂大学名誉教授で東京クリニック院長を務める宮﨑東洋は笑う。営業マンのタフさは大研医器の売りだ。厳しいことを言ってもやり遂げる。以前営業を担当していた人間に話を聞くと、エピソードに事欠くことが無い。
 
  現在専務の山田雅之も、営業部で現場を回ったうちの一人だ。当時は会社の知名度も低く、名刺を破られることもしばしばあったという。縄張り意識も強く、地 道に営業を続けていると、別の販売代理店の人間から「俺らの営業エリアを荒らすな!」と怒鳴られたこともある。それでもめげず、エレベーターの前で待ち構 えたり、1ヶ月に渡って電話をかけ続けたりして、医師に無理やり会ってもらった。
 
 そうしたDNAを受け継いだ大研医器の営業マンはバ イタリティーに溢れている。有言実行をモットーに「まず宣言して自らを追い込み、行動で示し、成果を出せ」と言われる。今でも大研医器では「とりあえず任 せる」が方針だ。失敗を重ねつつ育った一流の営業マンが、大研医器を支えている。



■現場第一主義

営業力は営業マンにのみ付託されているわけではない。病院側のニーズを拾う上で、技術的な説明や提供価格帯の交渉など、より踏み込んだ内容を話したい場合は、開発や製造の社員も共に付いていく。どんなに革新的な良い製品でも売り込まずに売れることは無い。医療現場との密なコミュニケーションが肝要だ。
 
 現場で何が必要とされているのかを見極める目を養うきっかけとなったのは、大研医器が商社を発祥とした「営業力を誇るメーカー」だからである。常に時代の先取りを目指すのが大研医器の戦略だ。医師や病院など現場とのパイプをしっかり持っていないと、研究開発の方向性を見誤る。最終的に開発した製品が現場のニーズを満たしていなければならないので、いかに現場のニーズを吸い上げて対応していくかが最重要となるのだ。
 
 大手企業は現場のニーズをすぐに吸い上げ、製品に具現化していくフットワークに欠ける。また、セクショナリズムが進んで、営業以外の人間が現場に足を運ぶことはなかなか無い。その点、大研医器は医療現場に近く、潜在的なニーズを吸い上げて、医師の期待以上の製品を開発して持ってくるため、高い評価を受けているのだ。では次に、その開発を見て行こう。



■強さの秘密3・開発力

人まね否定の商品開発
 
 大研医器は独創性あふれる製品を生み出し続けている。フィットフィックス、シリン ジポンプ、シリンジェクター、バルーンジェクター、PCA装置、キューインポット、サージカルマット。こうした人まね否定の商品が誕生したのも、現場の ニーズを引き出して開発に繋げたためである。ただ、新しい医療機器を開発するのはそう容易いことではない。
 
 医療機器には、世界的に全く新しい新医療機器と、既存の機器を改良した後発医療機器がある。新医療機器は全メーカーを通しても滅多に登場せず、日本の医療機器はほとんどが後発医療機器で占められている。それほど、新医療機器を生み出すのは困難を極めるのだ。
 
  新医療機器の開発が難しいのは、臨床研究や治験、治療研究を経て、有効性と安全性を担保していかなければならないためだ。人間に使用する前に求められるい くつもの試験があり、体内に入れる医療機器であれば、組織に触れたときに毒性が無いかどうかなど、動物を使って実験する。このような数々の試験を全てクリ アして、ようやく設計に入ることが許される。
 
 設計後も審査は続く。市場に投入する承認が下りた機器を、実際人間に使ってみる市販後調査があり、約3年間使って有効性と安全性が担保できて、ようやく本当の医療機器として認められる。
 
 後発医療機器はこうした厳しい審査をすでに潜り抜けているため、追加した機能のみ検証すれば良い。こうした実情を聞くと、ほとんどの医療機器が後発医療機器というのも納得できる。
 
  日本は特に規制が多い国である。確かに、それによって安全性が保たれている部分はあるが、世界の医療機器メーカーから後れを取る要因になっているのも事実 だ。こうした状況でも大研医器はこれまでのノウハウを生かし、思いついた発想を少しでも形にしていく努力をする。それが新しい製品を生み出す原動力になる と信じているためだ。人まね否定の研究開発を行い、新医療機器の分野に挑戦し続ける大研医器は、業界のフロントランナーとして相応しい。
 
ゼロからのスタート
 
「騙された!」
 
  メーカーとして開発を行っていくにあたり、アメリカから呼び戻された現社長の山田圭一は、「研究施設」を前に絶句した。肩書きだけは研究所長であったが、 「研究」ができるような知識やノウハウの持ち主など誰もいない。会社には四畳半の部屋に机が一個と万力のみ。辛うじて水道は引いてあったが、技術も何も無 い。
 
 まさに第二創業である。手術中に生じた患者の血液などを含む排液を吸引し、凝固させることで安全に処理できるフィットフィックス は、そうした手探り状態の中で生まれた。今でこそ大研医器の代表的商品となったが、最初に売れたのは10本のみ。金型に2000万円を費やしたにしては、 何とも手痛い結果となった。社長も「金をどぶに捨てたようなもの」と苦笑する。 売れないだけならばまだしも、「血が固まらない!」と病院から苦情が殺 到。相次いで商品が返品されてきた。当然、使用済みの商品には血が入っている。患者の血液が凝固されないままで送られてきたこともあった。感染の危険性が あるため、研究所は大騒ぎになった。
 
 最終的には2000万円を費やした金型を捨て、再びゼロから商品を作り直すことに。前回の反省を 踏まえ、血液がちゃんと凝固するように研究・実験を重ねた。もちろん人間の血は使えないので、屠殺場から牛などの血を分けてもらい、毎日のように試験を 行ったという。自分たちが病気に感染しては元も子もないので、感染予防の注射を打つなど、隅々まで気を配っての開発であった。
 
 すると、1年ほどしてようやく商品が売れ出した。設計から開発まで全てに携わり、並々ならぬ苦労を積んだに違いなかったが、社長は「フィットフィックスに対する思い入れは全く無い」と断言する。
 
 むしろ、「研究開発は自分を否定するくらいがちょうどいい」と説く社長。人まねどころか、過去の成功にいつまでもすがることの無い向上心の強さが、大研医器の新たなフロンティア開拓を後押ししている。
 
 大研医器の差別化要因が独創的な発想力にあることは自明だ。しかし、その引き金となるのは何気ない会話だという。会議室で開発について正式に話し合った際の意見だけでなく、飲み会のどんちゃん騒ぎの席で出たアイデアがそのまま企画として成立することもある。
 
 社員を枠にはめず、会社のためにやりたい仕事をどんどん提案させ、好きにやらせてしまう大研医器。「言い出した者には情熱があるため、困難に直面しても簡単にくじけない」というのがモットーらしい。確かに、様々な困難を乗り越えてこそ、ノウハウが社内に蓄積される。
 
「真面目なる技術者の技能を最高度に発揮せしむべき、自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」というソニーの社是が思い出される。こうした自由な社風こそ、大研医器が常に新たな発想を生み出し続ける原動力となっているのだろう。


■強さの秘密3・開発力

■強さの秘密4・製造力 

トヨタ方式で改善を重ねる
 
 カチャ、カチャ、カチャ。防護服に身をまとった従業員が、ひたすらチューブを繋ぎ、検査の機械にかける。繋ぐべき箇所は多いが、慣れた手先で器用にこなす。製品として世に送り出されると、薬品が流れることとなるチューブだ。万が一、薬品が洩れでもすれば、人命に関わる。従業員の目は真剣そのものだ。スイッチを入れ、検査機が稼働。安全が確認されると、青いランプが点灯する。ある程度チューブがたまると、次のセクションへ。最終的には袋詰めされて、箱の中に積まれていく。
 
 大研医器の和泉工場では、徹底した品質管理が行われている。「5Sを徹底しています」と語るのは製造部長の西野竜司。5Sとは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」である。
 
 西野は3年前から製造部に5Sを導入。従業員たちの「気付き」の力を養っている。現在の業務がマンネリ化せず、常に改善の余地を求め続ける姿勢を保つためには、課題を見つける「気付き」の力の醸成が絶対的に必要だ。
 
「とにかく工場の中を全部掃除しろ」。西野は日常の業務時間の中で、朝から晩まで、全従業員に大掃除をさせた。他部門から「製造部は昼間から仕事もしないで、なぜ掃除ばかりしているのか」とバッシングを受けながらも、目の届きにくい床に至るまで、とにかく全部キレイにさせた。
 
 すると、延々と磨かされたその床が少しでも汚れていると、掃除をした人間が自発的に再び掃除するようになった。そして次に従業員たちは、そこが汚れないための仕組みを作る方向に思考が動いていった。その連鎖こそ、「気付き」の力を高める上で本質的なポイントとなる。
 
「わざわざ立って1歩あるくのに1秒かかります。その時間さえも惜しい」
 
 検査室では、イスの斜め後ろに必要な棚が備え付けられている。その場で振り返って必要な用具を取り、作業を続けられるようにするためだ。
 
 器具を置く台一つ見ても、徹底した効率化が行われているのが分かる。発泡スチロールが器具の形に合わせてくり貫かれ、そこから必要な用具を取りやすいようになっているのだ。さらに、型があることで自然と元あった位置へ戻すインセンティブが働くという仕組みである。もちろん、頻繁に使用する器具は最も取りやすい棚の一番上に、そうでないものは下へと並ぶ。その他、廊下の掃除道具に至るまで、無駄を防ぐために置くべき場所が決まっている。
 
 各作業場の外には、従業員ごとに、誰が何の業務に関してどれほどスキルを持っているのかが表になって貼られている。各自が足りないスキルを把握し、作業時に意識して改善したことで、時間当たりの生産性は何倍にも膨れ上がった。
 
 もちろん、改善はマンパワーのみに止まらない。システム的により良くできる箇所があれば、そのための提案を行う風土が形成されている。そうして出た意見から改善が行われた多くの事例は壁に張り出され、優秀者が決められている。
 
 ごちゃごちゃした絵の上に一つ点を描き加えても、誰も気付かない。しかし、真っ白な紙の上ならばどうか。誰もが、新たに発生した汚点に気付くだろう。これこそ、まさに「カイゼン」の本質である。トヨタウェイをヒントに、今では「大研ウェイ」が醸成されている。
 
 現在和泉工場の駐車場となっている場所に、近々新工場が建設される予定だ。ここで生み出された大研医器の製品が、様々な医療現場で活躍するのが目に見えるようである。今後も、世界の製品を相手に堂々と渡り合っていくことだろう。



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