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トピックス -企業家倶楽部

2013年01月02日

「おかげさまで」を貫き日本一の食品スーパーを目指す/ヤオコーの21世紀戦略

企業家倶楽部2013年1/2月号 ヤオコー特集第1部


スーパー不況の中で、単独23期連続増収増益を続けるヤオコー。得意の生鮮三品とデリカの圧倒的な強さで、他社をリードする。率いる代表取締役会長の川野 幸夫は主婦パートナーのやる気を引き出し、全員参加の経営で、徹底したお客様志向を貫く。“おかげさまで”を商売の基本に、地元に根付き、日本一のスー パーを目指すヤオコーの未来戦略に迫る。  

 (文中敬称略)






■パートナーによる「感動と笑顔の祭典」

2012年10月18日、朝8時すぎ、埼玉県川越市南古谷駅には続々とビジネスマンが降り立った。ダークスーツに身を包んだ一行は、皆、足早にヤオコー南古谷店に隣接する研修センターに向かっていた。
 
 9時きっかりに「感動と笑顔の祭典」が始まった。これはヤオコーで働くパートナーの改善事例発表会である。この日は第77回目というから、ヤオコーはこうした改善発表会を、毎月6年以上続けていることになる。  会場には会長の川野幸夫以下、社長の川野清巳等役員、各店の店長と関係者、本部社員等約300人が集結。パートナーの気合いの入った事例発表を待つ。
 
 この日の発表者はヤオコーの118店舗から選抜されたパートナー9人である。青果部門、鮮魚部門、精肉、花、ドライ食品など、店舗の10部門1180チームの中から選ばれた代表である。この日は9人のパートナーが発表の機会を得た。
 
 最初の発表者は埼玉県、小川ショッピングセンター青果部門の中島一子だ。続いて深谷国済寺店鮮魚部門の矢崎博美。一人15分の持ち時間の中で、それぞれが所属する店舗、チームで、どのように改善を実施し、効果を上げたかを、パワーポイントを使って力強く発表していく。
 
 どの人も大勢の前で発表するのは初めてと言いながら、日ごろ自らが考え実践してきたことだけに、堂々と自信に満ちている。これが本当にパートナーかと思えるほどだ。
 
  第77回のこの日の祭典の最優秀を獲得したのは、ヤオコー取手青柳店鮮魚部門で働くパートナー川上延江である。川上は入社8年目のベテラン。テーマは「全 員参加で不振脱出!鮮魚部門の数値改善」。自店の近くに出店した格安スーパーに客が流出、売上げ落ち込みが続く中、主任を盛り上げながら、川上ら12名で 結成した社員、パートナー、アルバイトのチームが一つになって改善にチャレンジ。見事に目標をクリア、活気を取り戻し成果を挙げたのだ。
 
 改善のキーワードとなったのが「ヤオコーらしさ」を店舗で提案したことと川上。一致団結して価格だけでなく楽しく活気のある売り場を充実させ、ライバルの格安スーパーから、お客様を取り戻したのだ。その努力と功績が認められて、見事この日の最優秀に輝いた。
 
  各人の発表についての審査はじつに明快。出席者に配布された資料に添付された審査表に従って、出席者全員が投票する仕組みになっている。評価項目は「粗利 コントロールへの取り組み」「作業の見直しで生産性が改善できたか」「チームメンバー全員での取組み」「カスタマー視点での取組み」「データ分析(新 DWHなど)」の5つ。それぞれの項目をチェック、さらに最優秀と思うチームに投票する仕組みになっている。
 
 30分の休憩時間に直ちに集計され、その場で審査結果が発表される。



■日本一のパートナーを育成

優秀賞に輝いたパートナーには、その後3カ月の業績をチェック、一定の要件をクリアすれば、アメリカ研修というご褒美が与えられる。発表したパートナーだけでなく、店長も同行できることから、各店の改善運動には一段と力が入る。
 
 ヤオコーのすごさはこのパートナーによる「感動と笑顔の祭典」を毎月実施していることである。そしてこの発表の様子をビデオに撮り、各店に配布、その改善事例と感動を共有していることである。
 
 外食産業や他の業界でもこうした発表会を実施している例があるが、ヤオコーのように毎月実施しているという企業はあまりない。ヤオコーがいかにパートナーの能力を引き出し、本気で活用しようとしているか、この「感動と笑顔の祭典」に出席しただけでわかる。
 
 檀上では優秀な成績を収めたパートナーの表彰式が始まった。最優秀賞に輝き、檀上で川野会長から賞状を授与されたパートナーの川上はとびっきりの笑顔で輝いていた。そして「こんな賞に選ばれて幸せ、チームの皆で喜びを分かち合いたい、そしてこれからも精一杯努力したい」と語った。ヤオコーではこんなパートナーの発表の舞台を、毎月用意している。そしてパートナーのモチベーションをアップし、報われる仕組みをいくつも用意しているのだ。
 
 この日の「感動の笑顔の祭典」の締めくくりに会長の川野が登壇。そして、「わがヤオコーのパートナーさんは日本一、わが社の宝物です」と発表者を称えた。ヤオコーではパートを「パートナーさん」と呼び、社員と同等の扱いをし、権限を委譲している。
 
 挨拶の締めくくりに川野はGMSのイトーヨーカ堂が社員を削減、全面的にパートを活用すると発表した新聞記事に触れ、驚いたとともに、パートの活用は一朝一夕にはできないと力説した。そこにはヤオコーがまだ小規模であった頃から、本気でパートナーの育成に力を注いできたことに対する自信が見て取れた。
 
 毎月一回開催される「感動と笑顔の祭典」終了後は、川野がその日の発表者全員と昼食を共にする。経営トップと一緒に親しく食事ができる機会を得られただけで、パートナーのモチベーションが上がるというものだ。このようにパートナーを戦力として活用し、118店舗それぞれの店が店長をリーダーに、全員参加の個店経営を貫いている。それこそがヤオコー発展の大きな力となっている。



■ヤオコーが好き

この発表会に臨むために、川上は主任はじめ、チームの皆と共に発表のための資料づくりに励んできた。勿論、自宅でも作り込みに精を出し、家族にも手伝ってもらった。「お母さんヤオコーのこととなるとすごいね」と息子たちに言われると苦笑する川上。「なぜそこまで頑張れるのか?」との問いに川上は「ヤオコーが大好きなんです。そして川野会長の考え方が好きです」と笑顔を向けた。この愛社精神、帰属意識の高さこそがヤオコーの原動力となっている。
 
 ヤオコーのパートナーは唯のパートではない。品出しから、売り場づくり、客数、売り上げ個数を予測、受発注に至るまで何でもこなす。まさに売り場の運営を任されているのだ。だからこそ自ら考え、行動し、後輩パートナーを育て、数値まで管理する。ここまでパートナーに権限委譲しているスーパーは他に見当たらない。
 
 パートナーは宝物であると同時に、生活の現場を知る重要なお客様と川野は考えている。地域の行事やできごとを熟知し、主婦として日々の食生活を切り盛りする。だからこそ主体性をもってお客様視点で店づくりができる。こうしたパートナーを戦力化し、全員参加の経営を創り上げてきた川野の想いが、各店の隅々にまで行き渡り、ヤオコーらしさを具現化する力となっている。
 
 そのモチベーションの高さ、行動力に、ライフコーポレーション(以下ライフ)会長の清水信次も「ヤオコーのパートナーはすごい」と絶賛する。



■23期連続増収増益を達成する超優良企業

ではヤオコーとはどんな会社なのか、ご紹介しよう。ヤオコーは埼玉県を中心に茨城県、千葉県などに119店舗(2012年11末現在)を展開する、今、日本で最も元気な食品スーパーマーケットである。イトーヨーカ堂やイオンがGMS(ゼネラルマーチャンダイズストア)であるのに対し、ヤオコーは食品を中心とするスーパーマーケット(SM)である。 

 食品スーパーとして、人々の日々の生活に直結しているとはいえ、他店が苦戦するのを尻目に、2012年3月期の連結売上高は2373億円、経常利益105億円を獲得。単独では23期連続増収増益を達成する超優良企業である。2013年3月期も上半期は好調で、このままいけば24期連続増収増益を達成することは間違いない。

「生活者の日常の消費生活をより豊かにすることによって、地域文化の向上・発展に寄与する」を経営理念とし、さらなる成長を遂げるヤオコー。
 
 率いる会長の川野幸夫はその経営手腕、真摯な人柄に定評があり、ライフの清水の後を継いで、日本スーパーマーケット協会の会長を務める。2012年7月には、企業家倶楽部主催の第14回企業家大賞に輝いた。審査委員の一人であるファーストリテイリング会長の柳井正は「川野さんは素晴らしい人物、企業家大賞に相応しい」と絶賛した。



■母から受け継いだヤオコーの商人道

会う人全てが賞賛する川野の人となりを語るには、その生い立ち、実質的創業者母トモと共に歩んできた歴を語らねばならない。
 
 ヤオコーの創業は1890年、祖父川野幸太郎が埼玉県武州小川町に食料品店を開業したのが始まりである。1957年にはいち早くスーパーに業態変換、地元の繁盛店として賑わった。その後1969年には川野が入社、母トモと共に二人三脚でヤオコー発展に尽くすことになる。
 
 地元小川町の神童と呼ばれた川野少年は、頭脳明晰で人間性もピカ一。東大法学部に進学、弁護士を目指し勉学に励む。当時は小売業に進む気はなかった、社会派の弁護士になるつもりだったと述懐する川野。しかし、母トモの奮闘する姿を見て、ヤオコーに入社することを決意する。
 
 それだけではない。直接お客様の反応がわかる商売の面白さに気付いたからと語る川野。しかし当時は東大出身で小売業に携わる人はなく、母トモのためとはいえ、一大決心であったといえる。
 
 川野が入社したことで、ヤオコーの近代経営に弾みがつき、チェーン展開を進めることとなる。店舗数が増えようが、従業員が増えようが、母トモの慈愛に満ちた家庭的な経営スタイルは変わらなかった。
 
 母トモから学んだことが多いと語る川野。2011年には『日本一のスーパーヤオコーを創るために母がくれた50の言葉』を出版、ヤオコーの商人道をしっかりと継承している。
 
 書籍には「行き詰まりを打破するには自分が変わるしかない」「厳しいときこそ実力を試すチャンス」「築城100年、落城1日、現場を離れれば明日はない」など、母トモがヤオコーの社員に向けて語った言葉が綴られている。これこそがヤオコーのDNAであり、母から受け継いだ商人道といえる。この一つひとつが経営者川野の指針となっている。

おいしさと楽しさを提案するミールソリューション型スーパー
 
 ヤオコーが日本一元気な食品スーパーと言われていることに対して、川野は「志の高い企業哲学と商いのコンセプトが明確」であることを理由に挙げている。母トモから引き継いだ商人道“おかげさまで”を貫き、地域に貢献したいという志の高さが第一。第二は八百屋から始まったヤオコーだけに生鮮3品の圧倒的な強さと、食卓提案をするミールソリューション型スーパーとして特徴づけていることである。そして何よりもおいしさと楽しさを提案したいとワクワクする売り場づくりを徹底していることだ。
 
 2012年3月に開店した川越的場店。今後のヤオコーのモデル店ともいうべきこの店の最大の特長は、お客を感動させる生鮮食品売り場である。特に鮮魚には力が入る。市場から直送した獲れたての近海魚や、マグロの解体ショーなど、ワクワクする鮮度感でお客様を魅了する。食べ物としての機能だけでなく、おいしさと楽しさを提案したいというヤオコーのコンセプトを、これでもかというほど具現化したこの川越的場店は、業界でも話題の店として、ベンチマークとなっている。
 
 昨今、長引く不況とデフレ経済で大型店はかなり苦戦、各社小型スーパーの出店が加速している。イオンは食品中心の小型店「まいばすけっと」の出店を加速。神奈川や東京を中心に300店舗以上を出店、都心に住む高齢者や単身者に対応している。先行するマルエツプチも小型店ながら豊富な品ぞろえ、惣菜などで成功している。そして最近、イトーヨーカ堂も小型店を出店すると発表、各社、利便性に対応した小型店化が進んでいる。
 
 こうした動きの中、川野に今後の小型店の展開について問うと、それはないときっぱりと否定した。ヤオコーのコンセプトである「おいしさと楽しさを提案する」には小型店では表現できないというのだ。お客様に楽しんでいただけるワクワクする売り場を創るには、最低でも300坪は必要と語る川野。間に合わせの買い物ではなく、来店することが楽しみとなるような、楽しい売り場づくりにこだわる。そこにはヤオコーに対する顧客の期待とそれに応えたいとするヤオコーの戦略がみてとれる。



■南下戦略で拡大

埼玉県を中心に店舗展開してきたヤオコーだが、昨今は茨城県や千葉県への出店が増えている。南下戦略である。食品スーパーは日常生活に密着しているため、 人の暮らしあるところにはどこでも出店できると川野。特にヤオコーのような生鮮やデリカが強い食品スーパーが進出してくれることは、地域住民にとっては大 歓迎といえる。
 
 しかし、埼玉県ではヤオコーといえば認知度も高く、その功績は知れ渡っているが、千葉県や神奈川ではまだ認知度は低い。それだけにいい人材を確保するのが、今後の課題ともいえる。



■ ライフと業務提携

昨今、スーパーマーケット業界は生き残りをかけての合従連衡が盛んだが、2012年5月に発表されたヤオコーとライフとの業務提携の記事に驚いた向きも多かったであろう。業界の重鎮として君臨する清水が率いる食品スーパー第1位のライフと業界7位の埼玉県のヤオコーの業務提携である。
 
 どちらからの誘いかとの問いに「私の方から声を掛けさせてもらいました」と川野。長年M&Aの事例もなく、超優良スーパーとして独立独歩の道を歩んできたヤオコーだが、将来を見据えての業務提携なのか。

 「川野さんからの話にありがたく2つ返事でOKをした」と嬉しそうに語るライフの清水。ヤオコーの成長性、川野の人間性と経営手腕を賞賛する清水にとって、超優良スーパーであるヤオコーとの業務提携は渡りに船。
 
 細かい業務提携内容はこれから詰めると語るが、「商品の共同開発・調達」「資材などの共同調達」「プロセスセンターの相互活用」などを詰めていくという。ヤオコーにとってライフとの業務提携が「最強のタッグ」となるのか。

「厳しい環境こそわが社にとってはチャンス」と戦略発表会で居並ぶ社員に檄を飛ばす川野。ヤオコーの今後の動きから目が離せない。



■小売業の地位向上を目指す

「自分が受賞することで、小売業の社会的地位を少しでも高めることができればうれしい」。川野は企業家大賞を受賞した喜びのことばで何度も繰り返し た。日本では江戸時代からの士農工商のイメージが色濃く残り、なかなか払拭しきれない。人々の日常生活にこれほど密着し、貢献しているにも関わらず、小売 業の地位が上がらないことに忸怩たる思いを抱いているのであろう。小売業の社会的地位をもっと高め、もっといい社員に来てもらいたいという。
 
  ヤオコーの代表取締役会長として君臨する川野は今年70歳、経営は社長で弟の清巳が担っている。そして2012年2月、川野の次男澄人が、36歳という若 さで副社長に就任、後継者としての道筋が整った。それだけに業界のためにも小売業の地位を上げることが、自分に課せられた課題と考えているのであろう。
 
  中学時代からの竹馬の友、日本アクセス相談役の吉野芳夫は政界に出て活躍して欲しいと熱いエールを贈る。ライフの清水も、日本スーパーマーケット協会の会 長職としての活躍はもとより、もっと中央で活躍して欲しい。そして川野さんのような人に首相になってもらいたいと語る。川野の人間力、人格、品性、経営手 腕には誰もが納得する。その力を業界だけでなく、広い世界で発揮してもらいたいというのだ。

川野イズムを継承アドマイヤードカンパニーを目指す
 
 毎週日曜日、川野は店舗視察を欠かさない。一日5?6店舗を廻るが、その目 的はパートナーに会うためという。創業50年以上の会社で、トップとパートナーとの距離がこれほど近い会社は珍しい。実際、企業家大賞の受賞式会場に、 パートナーが花束を持って駆け付けたほどだ。これは全て川野の人間力に依るものといえる。
 
 一年に同じ店を訪問できるのは3回程度と川野。拡大すればするほど、川野イズムをどのように末端まで届けるか、ここが今後一番の課題となろう。
 
 ヤオコーについて、イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊は「あのぐらいの規模が一番いいんだよね」と語ったと聞く。大きくなればなるほど、創業の想いを浸透させるのは至難のワザということなのであろう。
 
  今後は自分の想いを伝える伝道師を育成することが大切と語る川野だが、次男澄人にきっちりと受け継がれていることは間違いない。全員参加の商売で、各店が 個店経営を貫く。これこそがチェーンストア方式ではないヤオコースタイルの最大の特長といえる。そしてそれを実現するスタッフ全員に川野イズムが面々と受 け継がれる限り、ヤオコーは不滅である。
 
 母トモに学んだ人を大切にする商人道は“おかげさまで”ということばに象徴され、川野のまっすぐな経営と共鳴し、人々に賞賛されるアドマイヤードカンパニーとして、発展していくに違いない。



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