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トピックス -企業家倶楽部

2012年01月10日

戦略と人材無くしてアジアは取れぬ/ストラテジック・デシジョン・イニシアティブ代表取締役 森辺 一樹

企業家倶楽部2012年1/2月号 新興国の現状 vol.13


肩書き、プロフィール、会社概要は掲載当時のものです。

■戦略の重要性


成長著しいアジア市場を求め、企業のアジア市場への進出が後を絶たない。 20年もの間、経済が殆ど成長していない日本市場。今後の見通しも決して 明るいものではない。人口減少や少子高齢化で内需は確実に縮小する。アジアへ打って出るという経営判断は、日本企業としては当然のことである。


何を、誰に、いくらで、どう売るか 


 しかし、多くの企業が戦略無きアジア進出をしてしまっている。その結果、現地法人設立から数年が経過しても、なかなか売上を伸ばせず、先 の計画も明るいものが描けないでいる企業は少なく無い。基本的には「何を」、「誰に」、「いくらで」、「どう売るか」という非常にシンプルな課題をクリア することなのだが、そこにまったく戦略が存在していない為、課題をクリアできないでいるのだ。

 まず、「何を」に関して言うと、高品質、高技術の日本製、もしくは日本企業製を売ることに執着し、アジアの市場が本当に何を求めているのかを理解 していない企業が多い。このコラムシリーズでも幾度と繰り返し訴えているが、プロダクトアウト(市場のニーズを意識せず、企業側の意向や技術を重視して製 品やサービスを開発し、それらを市場に導入する考え方)の概念は捨てなくてはならない。高品質、高技術だけではアジア市場は取れない。いくら日本がアジア より先進的だからといって、日本市場のニーズを持ち込んでもアジア市場には受け入れられないのである。

 次に、「誰に」であるが、折角アジアに進出していながら、日系企業にしか売る事ができていない企業など山ほどある。今はそれで良いのかもしれない が、あと数年も経てば、日系企業だけを顧客にしている企業は、アジアの現地法人を維持していけなくなるだろう。顧客となる日系企業もグローバル競争の真っ ただ中であり、今後、必ずしも日系企業から製品を購入するとは限らない。例えそれが非日系企業であっても、より優位性のある企業から製品を購入せざるを得 ない。

 次に、「いくらで」であるが、多くの日本企業はこの価格設定に失敗する。品質が良いのは分かるが、そんな高い価格は受け入れられないのが新興国で ある。先進国であれば、品質がよければ当然価格も高いが通用するが、新興国はそうはいかない。新興国では新興国にあった価格戦略が必要なのだ。

 最後に、「どう売るか」であるが、ここでも日本企業が大きな過ちを犯している。日本や先進国での実績が無価値とは言わないが、そこでの成功体験を そのまま持ち込み、アジアでも成功を得ようとするのだが、そもそもアジア市場はサプライチェーンが日本市場のような一定の型に収まっていないケースが多々 あり、そのような市場で日本での売り方を持ち込んでも上手くはいかない。アジア市場には、アジア市場に即したサプライチェーンを構築しなければならないの だ。

 これらは全て進出する前の事業戦略、販売戦略を固めることでクリアできる課題である。そもそも戦略を構築しても、その実行が難しいアジア市場において、戦略無くして進出するということは、武器を持たずに敵地に攻め入るのと同義である。アジア市場こそ戦略が全てなのだ。



■日本のグローバル人材に危機

今、多くの日本企業が抱える新興国市場における様々な悩みは、一人のグローバル人材で大きく変わるだろう。勝てる戦略もそれを実行できる人材が居なければ、なんの意味も持たない。しかし、日本企業にはその一人がなかなか居ないのが現実である。

 日本企業は基本的に業種、規模を問わず、新興国での現地化や現地への権限移譲が欧米企業と比較し著しく遅れている。分かりやすく中国を例に取ると、現地社長に相当する「董事長」や「総経理」といった役職は基本的に日本人が務めている場合が多い。そして主要なポストも大半を日本からの駐在員が占めている。

 なぜなのか?答えは簡単である。日本本社の現地法人を統括する担当役員が日本人でないとマネジメントし難いからだ。世界には60億の人材の選択肢があるにも係わらず、わざわざ自分から1.2億人に選択肢を小さくしてしまっているのだ。

 勿論、最近では、部長クラスに現地人を抜擢している企業も多くあるが、同格ポストに日本人が付き、中国人部長の見張り役のような役割を果たしている場合も少なくない。また、仮に、役職では中国人の方が上であったとしても、日本本社から駐在に来ている日本人の方が給料も高く、「偉い」という日本企業独特の暗黙文化が存在する。中国人部長にして見れば、名ばかりの部長職だ。これも、部長を管理する立場の日本人が、中国人部長だけだとマネジメントに自信が持てないという理由も少なく無いはずだ。

必要なのは権限移譲とマネジメント

 生産工場として中国法人を活用していた時代はこれで良かったのかもしれない。生産に関わるノウハウを持つ日本人だけで現地法人を統治することが当然ながら最も望ましい。日本の現地法人担当役員も日本人をマネジメントできればそれで良い。その日本人がグローバル人材だろうが無かろうが、生産のプロであれさえすればそれで良かった。

 しかし、時代は大きく変わり、今、中国現地法人に求められているものは中国市場の獲得である。中国市場の獲得は中国人がやるのが最適であることは言うまでもない。そうなると、日本人に求められているものも当然ながら大きく変化しており、いかに中国人をマネジメントするかに尽きる。これは決して中国に限った話しでは無い。アジア市場全体で日本人に求められているものは、現地人材のマネジメントなのである。

 しかしながら、それができる日本人は少ない。駐在員に関して言えば、仕事が終われば、日本人同士で日本食を食べ、日本人カラオケに行き、家に帰ればNHKワールドを見て、朝は日本の新聞を読む毎日。本社の担当役員も未だに自身がマネジメントし易い日本人駐在員を送り込んでいる。



■20年先を見据えた人材投資

企業のグローバル化の波はもう止まらない。今、日本企業に求められるのは、グローバル人材育成への投資に他ならない。人材への投資は、今日、明日でできる話ではない。最低でも10年、20年の歳月が必要である。内需縮小が更に現実化する20年後の為に、今、投資を始めなければならないのだ。

 製品やサービスで圧倒的な優位性を誇る日本企業は、戦略と戦略を実行する人材に確りと投資を行えば、必ずや新興国を自身の成長エンジンにできると確
信している。
 

森辺一樹(もりべ かずき)

2002年にSDI香港法人を設立。07年、本社を東京へ移転。充実した海外ネットワークを武器に中国・インド・東南アジア等を中心とした新興国市場のリサーチとマーケティングの各種サービスを提供している。



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