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トピックス -企業家倶楽部

2012年07月30日

孫泰蔵のシリコンバレーエクスプレス vol.1 シリアル・アントレプレナー を生み出すシリコンバレー MOVIDA JAPAN代表取締役兼CEO 孫泰蔵氏

企業家倶楽部2011年1・2月号





今月号から新連載「孫泰蔵のシリコンバレーエクスプレス」をスタートします。本連載では、ベンチャーの本場・米国シリコンバレーの最新情報や、世界中の魅 力的なベンチャー企業を紹介していきます。第1回目は、シリコンバレーの全体像と魅力、そして「なぜシリコンバレーから次々とベンチャーが生まれるのか」 を伝えたいと思います。



■田舎の風景と最先端の設備

 シリコンバレーと聞いて、読者の皆さんはどんなイメージを持たれるでしょうか。アップルやグーグルなど世界最先端の企業が集まるので、未来都市をイメージ されるかもしれません。しかし実際は驚くほどの田舎です。企業のオフィスやビルは数キロごとに点在し、まわりの風景は土と砂のような自然しかありません。 鹿や狸もたくさんいて、人間よりも動物の方が多いのではないかと思うほど。良く言えば風光明媚な場所です。 
 見た目は田舎なのですが、地価は東京の一等地並みに高い。なぜかというと、仕事に集中するには非常に良い場所だからです。自然に囲まれて雑音などが少ないので、仕事に没頭できます。 
  アップルやグーグル、ヤフーなどは、広大な敷地に洗練された大きなビルを何棟も建てています。まるで大学のキャンパスのような雰囲気なので、オフィスでは なく「キャンパス」と呼ばれています。中庭には池があり、プールやジムもあります。食堂や宿泊施設もあるので、生活できるほど施設が充実しています。従業 員も万単位でいるので、一つのタウンです。そんな場所がシリコンバレーなのです。



■シリコンバレー人という感覚

 長い間シリコンバレーで働く人達は、アメリカ人やカリフォルニア州民という感覚よりも、むしろシリコンバレー人という感覚になるそうです。「シリコンバ レーという一つ屋根の下に集う仲間たち」という感覚です。「最近何しているの?」「こんな会社を始めたんだ」「前の会社は?」「売却した」。そんな会話に なります。シリコンバレーで活躍している方とお会いすると、名刺を何種類も持っています。「どんな仕事をしているのか」と聞くと、「この会社ではこの仕 事、こっちの会社ではこういう仕事」と説明してくれます。 
 2年ほど経つと、会社を立ち上げたり、転職したりで、名刺も次々と変わります。「こ れはいける!」と思ってやってみたけれど、「この事業はダメだ」とわかったときの見切りもとてもはやい。その間に新しいアイデアが浮かべば、既存の事業を 売却して、新規事業に挑戦します。売却したときに従業員も買収先に転職するので、職を失いません。新しく挑戦する人たちだけがまた何かを始めるのです。
   一方、日本では、どちらかというと倒産するまで無理に粘ります。倒産間近になってようやく外部から協力を得ようとします。しかしそのときはもう助けよう がない場合が多い。シリコンバレーでは、見切りをはやくつけることで、次の段階にハイスピードで移行するのです。そのため複数の企業経営やプロジェクトが 動くので、名刺もたくさん持つことになります。この活発な新陳代謝こそが、シリコンバレーの活力であり、魅力なのです。


スタンフォード大学


■シリコンバレー人という感覚

■次々と挑戦する人が尊敬される

 シリコンバレーは、失敗を恐れず、どんどん挑戦する風土があります。むしろ失敗をたくさんして、そのノウハウや経験を踏まえて成功した人が尊敬されます。 
  例えば、二人の企業家がいるとします。一人は若くしてたまたま運良く成功した人。もう一人は今まで3、4回失敗して、今やっと成功した人。この二つの企業 の業績や従業員数などが同じ規模であった場合、どちらが評価されると思いますか。シリコンバレーでは、後者が高く評価されます。ベンチャーキャピタル (VC)が投資を決める場合も、経験豊富な後者を選ぶのです。 
 このように繰り返し何度も起業する人をシリアル(連続)アントレプレナー(企業家)と言います。1回しか起業していない人よりも、5、6回起業して2、3回当てている人の方が有名であり尊敬されています。 
  例えば、オンライン決済サービスのペイパルで成功し、現在電気自動車ベンチャーのテスラモーターズなどを手がけるイーロン・マスクは、まさに連続企業家で す。ソーシャルゲームで躍進するジンガの創業者兼CEOのマーク・ピンカスも、4回起業して何度も成功しています。実は、ソフトバンクが米国で展開する ファンドは、マーク・ピンカスの2回目の起業に投資し、大成功しています。3億円の投資をして、3カ月後に30億円で売却できました。これは、ソフトバン クの数多くの投資案件の中で最も費用対効果が高かったものです。

シリコンバレーの風景
 


■次々と挑戦する人が尊敬される

■ハイスピードで世界一になる仕組み

 こういった中で、企業家や投資家、技術者など様々なプロフェッショナルが結びついて、人的なネットワークが形成されます。その豊富なネットワークか ら、スタートアップが促進され、ヒト・モノ・カネ・情報などの資産が一気に集まります。豊富な人材や資金が手に入った後は、一気呵成にM&Aや世界展開を 加速し、グローバル企業へと飛躍を遂げるのです。 
 例えば、ジンガは2007年の設立ですが、たった3年で世界最大級のソーシャルゲーム会社に 成長しました。マーク・ピンカスはこれまでの成功で得た自身の資金などで米国内でもソーシャルゲーム会社を次々と買収し、急速に規模を拡大しています。 2010年7月にはソフトバンクから約137億円の出資を得て、両社で合弁会社のジンガジャパンを設立、日本展開の基盤を固めました。クーポン購入サイト のグルーポンなども同様の展開で、一気に規模を拡大し、グローバル・ベンチャーへと飛躍するのです。 
 そして大成功した企業家はその後、エン ジェル投資家になり、次世代のベンチャー企業に投資します。彼らは元々、自分自身がリスクを取ってゼロから生み出してきた人たちなので、ベンチャーに対す る理解も深い。企業家の志とアイデア、そして試作品の3つを見てすぐに判断します。日本では、ベンチャー企業がVCやエンジェル投資家から資金を集めるの は時間も手間暇もかかって大変ですが、シリコンバレーではスピード感が圧倒的に速い。ベンチャーを次々と生み出し急成長させる生態系が、シリコンバレーの 大きな強みなのです。 
 これからのシリコンバレーでは、どんな企業が成功するのでしょうか。次回は、シリコンバレーで高い注目を集める最先端のベンチャー企業をご紹介したいと思います。




P r o f i l e
孫 泰蔵(そん・たいぞう)

1972 年、福岡県西新生まれ。佐賀県鳥栖育ち。96 年、東京大学在学中に、日本最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」のコンテンツ開発のリーダーとしてプロジェクトを総括。その後、数々のインターネットベンチャーを立ち上げ、日本のネット業界の活性化に貢 献。2009年、MOVIDA JAPAN 株式会社を設立。これまでの成功体験と失敗経験を活かしてベンチャー企業の創業・育成支援を手がける。現在、次世代のモバイルコンテンツやサービスのプ ラットホームを創るのに燃えている。



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