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トピックス -企業家倶楽部

2012年04月27日

東南アジア小売流通の今後/ストラテジック・デシジョン・イニシアティブ会長 森辺一樹

企業家倶楽部2012年6月号 新興国の現状 vol.15


肩書き、プロフィール、会社概要は掲載当時のものです。


国内小売業が東南アジアに熱い視線を注いでいる。ファーストリテイリングが2020年までに東南アジアで1000店の大量出店をめざした り、イオンはベトナムやカンボジアへの進出を表明したりするなど、大手の事業展開が進み始めた。今後のアジア小売市場はどう変わっていくのだろうか。



◆国別の小売流通構造を学べ

   東南アジア市場で商品を販売する際、最も重要となるのが国別に異なる流通構造の理解だ。特に消費材となれば小売流通の構造を確りと理解しなければ商品は売れない。日本の流通構造の例に習えば必ず失敗が待っている。

 小売流通は大きく分けて2種類存在する。一つが伝統的小売で、もう一つが近代的小売である。伝統的小売とは、昔ながらの家族経営型の小さな小売店 のことを指す。一方で近代的小売とは、スーパーやコンビニ等、チェーン型や大型の現代的な小売を指す。日本のような近代国家は流通の大半が近代的小売で占 められているが、東南アジアは国毎にその構造が異なる。

 人々の生活が豊かになると、流通は近代化し、近代的小売が流通の大半を占めるようになる。近代的小売市場に商品を流通させるのと、伝統的小売市場 に商品を流通させるのでは、やり方も違えば、労力や投資が必要なのは圧倒的に後者だ。要は、伝統的小売市場は、市場が近代的小売化するまでの間、長らく投 資が必要となる。日本企業が最も不得意とする領域だ。しかし、近代化がある程度進むと、今度は競合も多く、参入がなかなか難しいのも事実である。従って、 その市場を本気で取ろうとすると、伝統的小売市場のうちから段階的に投資をしていく必要があるのだ。市場の大半がまだ伝統的小売市場であるにも関わらず、 いくら近代的小売へ積極的に販売活動を行なっても市場シェアは上がらない。

 これらアジアの市場を狙う際、その国が今、どちらの小売市場にあるのか。そして、今後それがどのような時間軸で近代化していくのかを確りと加味し た戦略を立てなければ成功はない。どれだけ商品が良くとも、小売の流通構造を軽視して、その市場での成功はあり得ないのである。



◆拡大するベトナム小売業

ベトナムの小売業は着実な経済成長、収入の増加、中級層の成長、増大する若者人口といった要因に加え、欧米風生活様式に接する機会が増えたこともあり、今後も数年はその力強い成長を維持し続けると期待されている。

 堅実で力強い経済成長と国民の一人当たり所得の改善によって、ベトナムの小売業は飛躍的に拡大した。小売業やサービス関連の国内全体の総売上は、 ここ数年間約20%以上の高い成長率を示している。近代的小売業及び、伝統的小売業すべての小売業を含む総売上高は、2010年に約800億米ドルへと増 加し、前年比で24%以上増加した。

 ベトナムの小売産業は、今なお古くからの市場(いちば)や小さな個人商店が中心である。この伝統的小売が全小売業の約80%を占め、近代的小売 は、未だたった20%を占めるにすぎないが、その数は増えつつある。スーパー、コンビニ、ミニマート、大型スーパー、大型卸売店、デパートなどが次々と出 現し、伝統的小売は近代的小売急増の波に押されつつある。これは他の新興国でもスピードに違いはあれ同様だ。経済の力強い成長と共に人々の可処分所得が増 え、中間層が成長し、多くの若者達を中心に欧米風の生活様式に接する機会も増えたことで、ベトナムの小売業界でも近代的小売が急速な成長を見せることと なった。今後も数年はこの成長ペースが続くものと予想される。特に大都市圏に住む消費者の多くがますます海外商品の購入を求め、より一層多くの小売業者が 古い形態から近代化への転換を図っている。

 急増する近代的小売ではあるが、まだまだ大都市圏(ホーチミン市、ハノイ、ハイポン、ダナン、カントー等)に限られている。グローバルに展開する 大手小売業の幹部に話を聞くと、魅力ある小売市場として、ベトナムは、中国、インド、ロシアに次いで魅力ある市場だとの回答が多い。中では、中国やインド 以上の市場だと答える幹部も居る。現在ベトナムにある大型小売店のほとんどが更なる拡大を謳っている。しかし、一方で、ベトナム政府は海外からの新規参入 については厳しい規制を設けている。当然ながら国内企業を守るためだ。

 ベトナムにおける外資系の近代的小売業者には、ベトナム最大の小売業者メトロ・キャッシュ・アンド・キャリー・ベトナム、ビッグ・シー、パークソ ンがある。これら多国籍企業に加え、地元最大手のサイゴン・コープ・マートやジー・セブン・マート、シティーマートなどが参入している。多くの大手小売業 者たちが、特に都市圏において小売店舗の増加を加速している。

 こうした海外小売企業がそのネットワークをベトナムに拡大しようとしている流れを受け、国内の小売業者は市場における競争激化に脅威を感じている。



◆アジア最大のポテンシャルインドネシア小売業界

人口約2億9000万人を抱えるインドネシア。世界で4番目に人口の多い国だ。このインドネシアの小売業界も目覚ましい成長を遂げている。

 ここインドネシアの小売市場でも、近代的小売が急速に成長してはいるが、依然、伝統的小売がこの国でも大きな役割を果たしている。国内小売業の総 売上のうち、伝統的小売業態が今なお80%を占めている。この割合は、所得の低い農村地区では更に高く、大都市中心部においては低い水準である。これはど この新興国の小売市場でも同じ状況であるが、昨今、このインドネシアの近代的小売業界に異変が起きている。

 インドネシアの小売業界にはさまざまな近代的小売形態が出現している。ハイパーマーケット(総合食品・日用品を中心に、衣料、DIY用品、書籍、 玩具など多岐にわたる商品を大規模スペースにて陳列し販売する郊外型の小売業態)の売上は依然として最も大きく、その結果、最も多くの投資がこの業態に向 けられている。それに続くのがスーパーマーケット業態と、まだ駆け出しのコンビニエンスストア業態である。しかし、ディスカウントストアだけが例外となっ ている。

 ディスカウントストア業態が広まっていない理由は、強力な多国籍企業が不在だからだ。国際的な大手企業のカルフールとマクロはディスカウントスト アの業態を取っていない。地元企業の代表格であるマタハリ・プトラ・プリマやヘロー・スーパーマーケット、ラマヤナ・レスタリ・セントーサ、スンバー・ア ルファリア・トリジャヤなどの大手も主は大型スーパーである。地元企業たちもこのディスカウントストア業態の可能性に気が付き、最近になり要約その数が増 え始め、ディスカウント商品の拡大を加速させている。

 インドネシアは、経済の発展に伴い生活レベルが上昇した。結果、都市部の消費者たちの間では利便性や製品品質、サービスに対する要求が高まってき た。それに伴い近代的小売が勢力を増してきたわけだが、その高収入層においてでさえ、購入決定の重要な要因は価格である。従って、今後の主流はディスカウ ントストアに集中するだろう。

 日本の大手小売業の海外進出は欧米勢と比較すると大きな後れを取っている。彼らの海外展開は、日本の消費財メーカーにとっても追い風となる為、今後の展開から目が離せない。

 

森辺一樹(もりべ かずき)

2002年にSDI香港法人を設立。07年、本社を東京へ移転。充実した海外ネットワークを武器に中国・インド・東南アジア等を中心とした新興国市場のリサーチとマーケティングの各種サービスを提供している。



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