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トピックス -企業家倶楽部

2012年06月27日

第2部 スタートトゥデイの強さの秘密 高感度で高収益なコミュニティーを創造

企業家倶楽部2009年1・2月号


国内最大級のアパレルポータルサイトZOZORESORT(ゾゾリゾート)を創り上げたスタートトゥデイ。2008年9月には会員数 100万人を突破、09年3月期の売上高は104億円、経常利益は20億8000万円と高収益を見込んでいる。高感度の若者を魅了するウェブサイトの裏に は、企業理念を大切にして、社員のモチベーションを引き上げ、物流まで細かな気配りを怠らない、高収益のビジネスモデルが隠されている。同社の強さの秘密 に迫る。

(文中敬称略)



■強さの秘密1 卓越した表現力

●想像と創造を駆使した魅力的なサイトをつくる


「デザインセンスが抜群で、とにかくオシャレ。こんなサイトは見たことがない。表現力が突出している」

 2004年、スタートトゥデイの手がけるアパレルショッピングサイトを見たユナイテッドアローズ(UA)会長の重松理は驚きを隠せなかった。当 時、UAにはEC事業者の数社からネット通販の企画を提案されていたが、「スタートトゥデイのサイトが圧倒的に魅力的だった」と重松は言う。
 

 そして、04年12月にオープンしたアパレルEC(電子商取引)サイト「ZOZOTOWN」(ゾゾタウン)に、「時しらず」というUAブランドを 出店。アパレル業界がネット参入に二の足を踏む中で、「あのUAがネット通販に進出した」と大きな話題をさらった。ZOZOTOWNはアパレル業界で急速 に注目度を高め、UAと肩を並べる人気セレクトショップのビームスやシップスなども次々とZOZOTOWNに参入。話題が話題を呼び、国内最大級のアパレ ルECサイトに成長を遂げていった。現在、95店のショップ数と約680のブランド数を取り揃え、年間の商品取扱高は09年3月期で約200億円を見込ん でいる。
 

 なぜ人気ブランドはZOZOTOWNに出店するのか。「ブランドイメージにこだわりのあるアパレルメーカーに対し、僕らが細やかな配慮をする点にある」と、スタートトゥデイを率いる前澤友作はその理由を分析する。

 一般的なECサイトでは、全てのブランドが、同じフォーマットでサイトに並ぶので、ブランドイメージを気にするアパレルメーカーは利用しにくい。 スタートトゥデイが提供する高感度なアパレルポータルサイトZOZORESORT(ゾゾリゾート)では、各ブランドの価値観を前面に出したデザインで設計 されたショップが、まるで現実のショップのように、サイト上に立ち並ぶようにしている。各ショップをクリックすると、ZOZORESORT内にあるECサ イトZOZOTOWNへ飛び、各ショップ専用のページを見ることが可能だ。そこでは商品の画像はもちろん、店内を巡るようなイメージムービーを見たり、希 望の商品を購入することもできる。
 

「単なるECサイトではなく、各ブランドにとって一番良い環境を追求した結果、『ZOZOTOWN』という『街』をモチーフにしたECサイトになった」と、前澤は言う。

 アパレルメーカーにとっては、ブランドイメージを崩さず、ネット通販という新たな収益源を確立できる。この細やかな配慮と卓越した表現力がアパレルメーカーから高い支持を得ることにつながっている。



■強さの秘密2

●好きなものを売るから売れる
 

 ZOZOTOWNでは、高感度なブランドが豊富に取り揃えられている点が大きな特長だ。前述のUAやビームスはもちろん、ナノユニバースやエック スガールなど、若者に人気のブランドが多数軒を連ねている。人気ブランドと強固な関係を築いているのもスタートトゥデイの強さの一つである。
 

 これらのZOZOTOWNで取り扱うブランドの選定は、シンプルだ。スタートトゥデイのスタッフが好きなものを売る。「売れるから取り扱う」とい うことはなく、あくまで自分たちが好きなものを売る姿勢を貫く。「スタッフが大好きなブランドかどうかが決め手」と前澤は言う。スタッフの感性や感覚、何 より?好き“という想いが最重要視される。それは同社のポリシーでもあり、結果的に経営戦略としても効果的に作用している。
 

 というのも、スタッフの?好き“な想いの結集が同社の強さになっているからだ。「そのブランドが好きだ」という想いがあるからこそ、同社のスタッフは取引したいアパレルメーカーを口説くことができる。営業の際もそのブランドの服に身を包み、熱心に頼み込む。
 

「私たちは『ZOZOTOWN』だとこれだけ売れますよというような売込みはしません。そのブランドがどれくらい好きなのか。どういう人たちに身に 着けてほしいと考えているのか。そのブランドや商品の魅力を、『ZOZOTOWN』を通じていかにお客様に届けるかを大切にしています」と、EC事業本部 ストア企画開発部ディレクターの鈴木千秋は語る。
 

 もちろんそれだけではアパレルメーカーを口説き落とせるとは限らない。「取引するのに、5年以上かかったブランド様も多数ある」と、鈴木は言う。 だが、一度や二度断られたくらいでは決して諦めない。そのブランドが?好き“だからこそ何度でもアタックするし、新しい提案も出来る。「まるで恋愛のよう に、そのブランドが好きなことが私たちの原動力」と鈴木は語る。



■強さの秘密3 リピート率の高い集客力

●ファンがリピーターになりリピーターがスタッフになる
 
?好き“な想いが、アパレルメーカーを引き寄せ、顧客を集めるパワーになっている。「自分の好きなブランドが『ZOZOTOWN』には売っている。なかなか手に入らない貴重な商品が手に入るのが嬉しかった」と、EC事業本部ストア運営管理部の山本一之は言う。山本は、熱心な顧客からスタッフになった経歴の持ち主だ。
 

 ZOZOTOWNの顧客はいつしかファンになる。売り上げランキングや新商品の案内はもちろん、ZOZOTOWNで購入すると、その人にオススメの商品を紹介するリコメンド機能があったり、希望すれば好きなブランドの新商品情報が定期的にメールなどで届けられる。こういったサービスはリアルの店舗ではコストがかさみがちで難しいが、ウェブを駆使すれば、痒いところに手が届くサービスが実現できる。そうしてファンはやがてリピーターになる。そのリピーターは友人たちを誘い、口コミで広がっていく。リピーターからスタッフになるものも多く、そのスタッフが顧客目線で高感度なブランドを新たに開拓したり、様々なサービスを考えたりという好循環が生まれている。
 

 山本は入社後も社内販売で月に5万円以上の洋服代を使う。他のスタッフ約220名も同様だ。「スタートトゥデイのスタッフは、顧客以上の顧客」と山本は言う。スタッフの誰もがオシャレやファッションに関心があり、誰よりも厳しい顧客としての視点も持ち合わせている。その顧客に限りなく近い視点がZOZOTOWNに生かされている。

 スタートトゥデイは2000年以降、「社長が欲しい、社員が欲しい、売って楽しい」をコンセプトに、次々と個性的なインターネットショッピングサイトをオープン。その集積として04年12月にZOZOTOWNを開設した。04年3月期時点で約7万2000人の顧客をすでに確保していたことが今に続く源泉となっている。創業時、高校以来の友人として手伝っていたグッドラック・コーポレーション社長の堀田和宣も、「高感度な会員をカタログ販売経由で抱えていたことが、アパレルメーカーが取引してくれる大きな武器になった」と指摘する。
 

 アパレルポータルサイトZOZORESORTのファンは多い。08年9月末時点で、ZOZORESORTの総会員数は104万4724人。そのうちZOZORESORT内にあるZOZOTOWNで、過去1年以内に1回以上購入した会員(アクティブ会員)は38万4815人。アクティブ会員のうち、5回以上購入している会員は全体の20%以上を占める。アクティブ会員1人あたりの年間購入金額は約5万1000円を誇る。1年間で購入総額500万円以上の顧客も存在する。「熱心なユーザーが数多くいることは、アパレルメーカーへの強力なアピールになる」と、取締役マーケティング本部長の前原正宏は言う。
 

 若い世代が集まっているのも特長だ。08年3月末時点で、ユーザー会員の平均年齢は27・2歳で、男女比は49対51でほぼ半々。スタートトゥデイのスタッフとほぼ同年代の顧客である。だからスタッフが好きなものを売っても、その感覚に近い顧客が集まっているので、自然と売れる環境が整っている。「ファッションに興味のある顧客は自分のサイズも好きなブランドも知っている」と、山本は指摘する。そのため試着せずとも、ZOZOTOWN上で画像や寸法を見れば、自分に合うかどうかが自然とわかる。これが、「服はネットでは売れない」という従来の既成概念を壊すことになった。
 

「『ZOZOTOWN』では、ショップやブランド別に検索したり、在庫の有無をいつでも気軽に確認できる。これらネットならではのサービスが強み」と、山本は言う。リアルの店舗に行っても、欲しい商品が売り切れていることもある。だが、ZOZOTOWNでは、ウェブ上でいつでも気軽に欲しいブランドを購入することができる。先行受注会や新着メールなどで新商品の情報も随時提供するため、顧客は自然とリピーターになってしまう。一度使ったら、何度も通いたくなる。顧客をリピーターにする仕組みが同社の強さになっている。
 

 スタートトゥデイは、主力のアパレルECサイトZOZOTOWNで売り上げの大半を稼いでいる。だが、同社のサービスはそれだけではない。全国のアパレルショップを検索できるナビゲーションサイトZOZONAVI(ゾゾナビ)や500種類以上の人気ブランドのモバイル待受画像やPC壁紙などをダウンロードできるサービスZOZOGALLERY(ゾゾギャラリー)など、多彩なメニューを提供している。これらのメニューを集積したアパレルポータルサイトZOZORESORTには、ネット通販だけではなく、アパレル関係の情報収集・発信・共有を手にすることができる。
 

 08年12月10日には、ヒト(人)・コト(日記)・モノ(アイテム)に特化した情報発信サイトZOZOPEOPLE(ゾゾピープル)を開始した。ZOZOPEOPLEでは、自分のマイページを作成してプロフィールや日記を公開したり、他の人のページの閲覧やコメントがつけられる。
 

 これらのサービスは高い収益を生むものではないが、集客力は抜群だ。同社ではコミュニケーションの場を提供することで、集客効果を高め、ファンを確実にリピーターにしているのである。「ファッションは、あくまでコミュニケーションのツール。僕らは洋服を売りたいのではなく、ファッションを通じて、世界中をカッコよく、世界中に笑顔をもたらしたい。その想いが根本にある」と前澤は語る。



■強さの秘密4 自前主義

●志の高いビジョンがいい人を集める
 

 スタートトゥデイは、取引先となるアパレルメーカーの開拓やサイト構築、検品や発送などの物流システムにいたる一連の仕組みを、自社で構築している。この自前主義が同社の強みだ。「単にすべてを自社で行うという意味の自前主義ではない。どこよりもモチベーションの高い自前主義こそが、スタートトゥデイの強み」と、物流部門を担当するEC事業本部フルフィルメント部の江田健治は言う。
 

 その象徴が、千葉県の習志野にある物流倉庫のZOZOBASE(ゾゾベース)だ。建て面積約3500坪のZOZOBASEには、スタートトゥデイで取り扱うすべての商品がアパレルメーカーから届けられる。多品種・少量単位の商品が多いので、より手際よく仕分けし配送するかがEC事業者としての差別化になる。
 

 ZOZOBASEでは、商品掲載用の撮影・画像処理、荷受・検品・採寸・商品の梱包・発送など、商品の入荷から発送までの業務も一括して手がけている。販売機会を逃さず、顧客にも早く正確に商品が届けられるよう、自社システムを開発し、商品の出荷確認や自動発注など取引先とのデータ連携を実施する。同社はこれらの仕組みを一から作り上げ、顧客からの注文を最短で約2日程度で届けるスピード力を実現した。

「ブランドや商品が好きだから自然に丁寧に扱うし、モチベーションがとても高い。それが僕らの自慢。アパレルブランドの担当者の方が『ZOZOBASE』で働くスタッフの意識の高さを見て、取引を決めてくれることもある」と江田は語る。
 

 サイトのカッコよさに注目が集まりがちだが、「モチベーションの高い物流部門がEC事業の要になっている」と、物流のアウトソーシング事業を手がけるコーリングフューズヴィCEOの松井継太は指摘する。
 

「カネをかければ、最先端の物流システムは導入できるが、それだけでは魂が入りません。『ZOZOBASE』のスタッフは、イキイキと働いている。それが大きな強みになっています」 
 

 スタートトゥデイでは、各部署が随時採用活動をしている。アルバイトから社員になったスタッフも多い。経営管理本部財務経理部の三浦有人は、前職で外務省に勤めていたが、ファッションに長く興味を持っていて、「スタートトゥデイで働きたいとずっと思っていた」という。学生時代は1日20時間もの勉強を繰り返し国家試験の難関を突破。無事、外務省に入省し働いていたが、スタートトゥデイの求人募集を見たとき、「いてもたってもいられなくなった」と応募した。その募集も、社員採用ではなく、アルバイト。それを聞いた親は驚いた。

「『あれだけ頑張って、外務省に入ったのに』と言われました。でも、僕には公務員の将来が見えて、その世界がつまらなく見えた。今はスタートトゥデイのアルバイトから社員になり、仕事もすごく楽しい。スタッフもみんないい人ばかり」と三浦は言う。
 

 スタートトゥデイの経営理念は、「いい人をつくる」。同社の定義する「いい人」とは、「想像力と創造力が豊かな人、ギブアンドテイクの精神がある人、自分だけではなく周りにいい人をつくろうとする人」である。

「いい人が、いい会社といい事業をつくり、いい社会や世界を創造できる。この循環で、世界中にいい人が増えて、世界中がカッコよく、笑顔でいっぱいになる。僕らはそういう世界を実現したい。その理念と現実の距離を埋めるのが、僕らのミッション」と、前澤は言う。


■強さの秘密4 自前主義


 物流倉庫ZOZOBASEの外観(千葉県・習志野)

■強さの秘密5 高収益のビジネスモデル

●売上高経常利益率約20%
 

「志の高いビジョンを掲げ、いい人を集め、好きなものを売る。それをビジネスとして確立する。まさに理想の経営だ」と、ワイキューブ代表の安田佳生は指摘する。

 スタートトゥデイは09年3月期の売上高が104億円、経常利益は20億8000万円を見込んでいる。売上高経常利益率は約20%と高い利益率を誇る。その高い収益性には、「数字に強い前澤の本領が発揮されている」と、取締役経営管理本部長の柳澤孝旨は語る。「私がスタートトゥデイ入社前に、会員数や在庫率などを前澤に聞くと、即座に返答があった。前澤はこまかい数字も把握し、商売のセンスがある」。前澤はプロのミュージシャンだったこともあり、感性の鋭いアーティストの面も強いが、それと同じくらい論理的な思考も持っているという。「感性と理性。右脳と左脳。常識にとらわれない発想と論理的思考の両面を持っているのがすごい」と柳澤。その前澤の数学的なセンスは、事業面で大いに発揮されている。
 

 例えば、EC事業のビジネスモデル。EC事業は、ストア企画開発事業(自社販売)とストア運営管理事業(受託販売)の二つに分かれている。前者のストア企画開発事業は、スタートトゥデイがアパレルメーカーから直接商品を仕入れる事業で、セレクトショップの直営店モデルである。在庫リスクを背負う分、利益率も高い。だが売れ残ると、在庫が残ってしまう。そこで先行受注会や再入荷お知らせメール機能などを導入し、事前に需要を読み、適量の在庫を仕入れるシステムを整えている。極力在庫を残さず、売り切る方針だ。「在庫管理の徹底が商品管理や財務面での大きな強み」と柳澤は指摘する。
 

 後者のストア運営管理事業は、UAやビームスなどがテナントとして出店する事業だ。各テナントの商品が売れるたびに受託販売手数料がスタートトゥデイに入る形で、EC事業最大手の楽天やヤフーショッピングと同様のモデルである。ZOOZTOWNでは、有力アパレルメーカーがブランドイメージを維持した上で、物流などをスタートトゥデイに委託できる。集客効果もあるので、自社サイトで売るよりも効率がいいといえる。
 

 スタートトゥデイは今後、新事業としてアパレルメーカー向けのEC支援事業にも活用する方針だ。08年5月には子会社のスタートトゥデイコンサルティングを設立。同社は、アパレルメーカーが独自に運営するECサイトのシステム開発やデザイン制作、物流請負などを総合的に支援する事業を手がけていく。
 

「アパレルブランドが自社でECサイトを構築しようとすると、サイト運営や人件費、物流システム、集客の広告費などで、思ったよりコストが割高になってしまう。その手間隙やコストを削減し、アパレル業界の活性化に貢献したい」と、スタートトゥデイコンサルティング取締役の三角聡は語る。スタートトゥデイは自社で効率的なモデルを作り上げたノウハウを提供し、BtoBの収益モデルを確立する考えだ。
 

 収益の多様化を図れるメリットもある。このEC支援事業により、ZOZOTOWNでは扱えないブランドも手掛けられるためだ。ZOZOTOWNは高感度なファッションアイテムに特化しているため、いずれブランドの取り扱い数には限界が来る。これまでは低価格帯の商品やイメージが異なるブランドは扱えなかったが、EC支援事業ではこの問題をクリアできる。
 

「この新規事業を数年後には数百億円規模にしたい」と前澤は言う。高い目標を考えるのも、企業の規模が拡大すれば、企業理念が浸透しやすくなると考えているためだ。「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。その志を実現するべく、一所懸命に頑張りたい」。前澤率いるスタートトゥデイの挑戦にこれからも目が離せない。



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