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トピックス -企業家倶楽部

2012年03月23日

今が最大のチャンス 北朝鮮は日本にとって戦略的重要な国/コリア・レポート編集長 辺真一

企業家倶楽部2012年4月号 核心インタビュー


肩書き、プロフィール、会社概要などは掲載当時のものです。


朝鮮中央通信は2011年12 月19日、金正日北朝鮮総書記の訃報を伝えた。2日前の17日に死去、2日間その死は各国に知られることはなかった。08 年の健康問題も記憶に新しく、北朝鮮の情報統制の強固さを印象づけた。金正日氏の三男、現在29 歳の金正恩氏が後継者となり北朝鮮は新しい時代を迎える。経済が逼迫し、核開発やミサイル、拉致問題などを抱える北朝鮮の今後の展開はどうなるのか。謎の 多い北朝鮮について、コリア・レポート編集長の辺真一氏に聞いた。



■金正日総書記の急逝に見えること

問 2011年12月17日に金正日(キム・ジョンイル)総書記が急逝しました。死因は心筋梗塞と心原性ショックを併発したためと朝鮮中央通信では報道されていましたが、死因が違うとか、暗殺されたなどの噂もありますね。


辺 暗殺はないでしょう。08年に脳卒中で倒れていますから、亡くなる時は頭の疾患ではないかと思っていました。父親の金日成(キム・イル ソン)も心筋梗塞で亡くなりましたから遺伝かもしれません。死因を疑う説があるのは、本当に列車の中で亡くなったのかということですね。列車は前日から動 いていなかったという情報もあり、違う場所で亡くなったのではないかと。08年に金正日氏が倒れた時、8月14日の国営放送を最後に9月9日まで、アメリ カ、韓国、日本と、動向が一切つかめていなかった。9月9日は北朝鮮の建国記念日でしかも建国60周年という記念すべき日。軍事パレードも準備していたか ら最高指導者である金正日氏も出てくるはずなのに姿がなかったので、大騒ぎになりました。それから3年経って、今度は亡くなったのに死亡時の情報もつかめ ていなかった。北朝鮮に関しては各国ともこの程度の情報収集能力ですから、北朝鮮の公式発表を覆すような情報はないでしょう。メディアが面白がって報道し ているだけのように思いますね。


問 後継者は三男の金正恩(キム・ジョンウン)氏ですが、権力の継承はうまくいってるんでしょうか。


辺 まだ29歳になったばかりで若いですからね。金正日氏は94年、52歳で父親の死により権力を継承しました。70年代初めに後継者の指 名を受けて以来、帝王学と経験、実践を積み、最高司令官と国防委員長という二つのポストをすでに手にしていましたから、権力の継承もスムーズにできていま した。金日成氏の国葬も早かったですね。亡くなって3日目には国葬を執り行った。今回は国葬まで11日間あり、ほぼ毎日遺体に対面している金正恩氏の姿が 報道されています。これは国内外に後継者であることをアピールすることに狙いがあったと思われます。北朝鮮の最高幹部は30人いますが、70歳以上が半数 を超えます。後継者指名を受けてまだ日も浅い29歳の若者が長老らに指令を出すのは難しいでしょうから、後見人らによる集団指導体制に入るのではないかと 見ています。


問 旧ソ連のトロイカ体制を思い起こしますね。一番力を持つのは誰になりそうですか。


辺 日本のメディアは揃って、金正日氏の義理の弟の張成沢(チャン・ソンテク)氏に注目しています。ですが私は、金正日氏の実の妹の金慶喜 (キム・ギョンヒ)氏だとにらんでいます。女帝のような存在になるのではないでしょうか。生前、金正日氏は「金慶喜の言うことは自分の言うことと聞いて従 え」と言っていました。なんといっても血のつながった妹で、非常に仲が良かったですからね。張成沢氏がここまで出世できたのは妻である金慶喜氏のおかげ。 葬儀委員会名簿の順位を見ると金慶喜氏は14位、夫は19位で彼女よりランクが下。29日の葬儀・告別式への出席者名簿を見ると5位で、夫の張成沢は16 番目になっています。

拉致問題解決は今がチャンス


問 各国の弔問外交はどうだったのでしょう。


辺 韓国政府は北朝鮮の国民に向けてお悔やみは述べましたが、弔問は民間人以外は認めませんでしたね。韓国の軍艦が2010年3月に撃沈さ れ、同年11月に延坪島(ヨンピョンド)が砲撃された件で、北朝鮮から謝罪がないとして韓国は制裁措置をとっていますから。日本では小泉元首相が朝鮮総連 本部に弔問に行き、北朝鮮の労働党中央委員会に弔電を送っていました。アメリカはクリントン国務長官が北朝鮮国民に向けてお悔やみを述べました。金日成氏 が亡くなった時、当時のクリントン大統領は弔電を送っています。弔電を受け取って金正日氏は大喜びしました。以来、クリントン氏に好感を抱いていました。 日本は強硬な対応こそが毅然たる外交と思っていますが、私は硬直した外交と思います。


問 拉致問題に関して、金正日氏が亡くなったことで進展があるだろうという見方がありますね。

辺 金正恩氏は関係ないんだ から、父親に全部責任を被せればすむ話じゃないかと見るむきもありますが、楽観的ですね。儒教の国ですから、父親は絶対的存在です。父親に背いた面子を潰 したり、スケープゴートにして自らの保身をはかるなどありえません。だからこその世襲なんですよ。息子の代になっても変わりはないでしょう。金正日から金 正恩に取って代わっただけの話です。


問 拉致問題解決にむけて、今後どうすればいいと思いますか。


辺 今、正恩氏は父親の急逝でとても心細い思いをしていると思いますよ。後見に叔母夫婦がついていても、軍の支持と国民の支持を得なくては いけません。正恩氏はスイス留学から帰国して軍事大学に入り、砲兵にも携わっていましたから名実共に軍人ですが、国民の支持を得るためには、国民を食べさ せ、生活が向上したと実感されなければなりません。しかし、北朝鮮の経済はご存知のように逼迫しています。叔母夫婦は日用品などの軽工業と羅先(ラソン) など経済特区の責任者で、主に経済面を担当しています。この夫婦に働きかけることです。今、指導者の急逝という危機にあり、金ファミリーと軍、党の長老と 3者が一致団結していますが、それぞれの勢力が今後自分たちの発言力、影響力を強めようとする段階になれば、北朝鮮という国がどうなるかわかりません。


問 北朝鮮の核開発はどこまで進んでいると思いますか。


辺 北朝鮮の要求は3つあります。国交正常化、平和協定、経済協力。これを担保しなければ北朝鮮は核開発を継続します。そして今度は濃縮ウ ランの核実験が噂されています。1998年、2006年、2009年に続く4度目の長距離ミサイルの発射実験は今度は大陸間弾道ミサイル(ICBM)の可 能性もあり、そうなれば、米国にとっては深刻な脅威となります。今月から4月まで米韓合同軍事演習が始まりますが、北朝鮮が対抗手段として再び「ミサイル カード」を切るのではないかと、心配されます。


問 アメリカの立場に立てば、数年前に核実験もミサイル実験もやらないということで重油を50万トンあげたけれど、一方的に北朝鮮に破られた、という思いがありますね。


辺 北朝鮮は密かに濃縮ウランの開発をやっているんじゃないか、とブッシュ政権の時に疑惑が出てきた。そして2002年、ブッシュ政権は支 援を止めました。北朝鮮は当初は問題の濃縮ウランは濡れ衣だ、と言っていました。米朝の攻防の中で北朝鮮は人工衛星(テポドン)を打ち上げた。国連から制 裁を加えられると、対抗措置として核実験をした。国連が制裁を強化すると堂々と濃縮ウランの開発を宣言したのです。濃縮ウランの工場には遠心分離機が必要 なのですが、2000個もありました。以前から開発していなければそう短時間では手にできないものです。


問 中国と北朝鮮の関係に変化はありますか。


辺 金正日氏の「中国を信頼していない」発言もありましたし、核・ミサイル開発止めますと言ったのに2回もやりましたからね。北朝鮮は望ん で中国によりかかっているわけではないんです。北朝鮮は中国を頼れば従属隷属する羽目になるでしょう。韓国を頼れば経済格差は1対20くらいですから吸収 合併されてしまう恐れがあります。でも日本との間に抱える問題は拉致問題だけです。これは日本にも言えることで、日本は韓国とは竹島、中国とは尖閣諸島、 ロシアとは北方領土の、領土問題を抱えています。領土問題は対応を誤れば軍事衝突につながってしまいます。でも北朝鮮との間には拉致問題だけなんですね。 日本側に北朝鮮を取り込むことができれば、中国を牽制することができますし、日本海側から大陸への貿易拠点も手に入れることができます。先ほど名前を出し ましたが、張成沢氏が責任者になっている経済特区の羅先はシンガポールのような貿易都市を目指すようで、中国やロシアも目を付けています。ここを拠点に中 国東北省とロシアの極東地区との貿易ができれば、日本にとって大きなメリットになります。


問 北朝鮮には豊富な地下資源がありますね。


辺 レアメタルを含め、500兆円とも言われる資源がありますからね。日本で加工生産すれば、2倍3倍になりますよ。羅先経由による中国へ の輸出も大きな利益となるでしょう。北朝鮮にしても日本の技術や機械が欲しいんです。北朝鮮は地勢学的にも戦略的にも安全保障の見地からも日本にとって無 視できない国です。北朝鮮を中国に追いやるのではなく、今、果敢に拉致問題に取り組み働きかけ、解決して、可能ならば日本の安全保障にとって重大な脅威で ある核問題解決のための調整役を日本が担うべきです。小泉元首相は、拉致問題を解決して、核問題を解決すると言っていました。拉致問題と核問題は、日本と 北朝鮮との出口入口の話なんです。


問 日本のメディアももう少し大人な対応を心掛け、拉致問題を解決しやすくする雰囲気を作ることができればいいですよね。私は日朝の関係が良くなるのを恐れているのは、実はアメリカではないかと思っています。


辺 そうですね。私は今の六カ国協議に対して悲観的な見方をしています。六カ国協議で話がまとまるということは、アメリカと北朝鮮と平和協定を結ぶということです。アメリカと北朝鮮で戦争が起こらないということは、朝鮮半島有事を想定した日米安保条約の存在意義が
問われ、沖縄の普天間基地の比重が下がります。アメリカは六カ国協議の進展を急がないでしょう。



辺 真一(ぴょん・じんいる)1947 年東京生まれ。明治学院大学卒業後、新聞記者を経て、 フリージャーナリストに転身。1982年朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」を創刊。現在も編集長を務める。海上保安庁政策アドバイザー、沖縄大学客 員教授。北朝鮮問題の専門家として、多くのTV 出演、「金正恩の北朝鮮と日本」(小学館)「45分でわかる!14 歳からの北朝鮮のすべて。」(マガジンハウス)など著書・訳書多数。

 



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