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トピックス -企業家倶楽部

2013年06月03日

オプトアウトでイノベーションを生み出す社会に/MOVIDA JAPAN代表取締役兼CEO 孫 泰蔵

企業家倶楽部2013年6月号 孫泰蔵のシリコンバレーエクスプレスvol.13

【孫泰蔵のシリコンバレーエクスプレス】


【孫泰蔵のシリコンバレーエクスプレス】


 今回紹介するのは、人の手を借りず半自動で目的地まで走行する車「グーグル・セルフ・ドライビング・カー」です。先日、米国グーグル本社を訪れた際、私も同車してきました。

■運転不要、 夢のロボットカー

 この車の素体はトヨタのレクサスですが、車体の四隅にレーダーカメラ、ルーフトップには、360度回転し1秒間に150万回も周囲をスキャンするレーザースキャナーが装備されています。装置から照射されたレーザーの跳ね返り、カメラで捉えた地形のデータからリアルタイムで周囲の状況を把握。周囲の走行車を認識し、車間距離を調節する事も可能なのです。グーグル・プロジェクトリーダー曰く、実用化までは5年以上かかるそうですが、最終的にはカーナビのようにユニットを小型化、2000ドル程で売れるようにしていきたいと言っていました。

 当然の疑問ですが「法的には大丈夫なのだろうか、規制されていないのか?」と質問しました。しかし、担当者は「規制?そんなものないよ」と言うのです。このような車は俗に「ドライバーレス・カー」「セルフドライビング・カー」と呼ばれています。グーグルは昨年10月、カルフォニア州政府、全米自動車協会とともに、これらの車を走行させるための試験的な法規制「セルフドライビング・カー・ロー」を作り可決されたので、現在はリーガルだから問題無いというのです。しかし、そうなると、今までは、規制を無視し走行していたということになります。ですが「今はともかく昔は走ってはいけなかったのでは?」と聞くとキッパリと「いや走れます。イリーガルですが問題ありません」と答えるのです。最初は彼の言っている意味が全く理解出来ませんでしたが、これはアメリカの社会性が影響しているということを知りました。アメリカはオプトアウトの社会です。オプトアウトの社会というのは、法規制の定義がされていないことは原則OKという社会のことを指します。合法ではなかったとしても禁止事項ではない。社会に大きな影響をあたえるような新しい物ができると、後追いをする形で法規制を掛けるのです。これが先程も出たオプトアウトの考えです。

 逆に日本は、オプトインの社会です。基本、制約に書いていないことは実行してはいけない、行っても良いことのみが記されています。ゆえに規制緩和が必要だと世間で言われているのです。

■今の日本ではイノベーションが生まれない

 今の日本でセグウェイのような画期的な乗り物を発明したとしても「規制が厳しく、一台も走らせることができないので、造っても仕方ない」という結論に至ってしまいます。新しいものを生み出しにくい環境にあってはベンチャーが生まれてきません。

 アメリカでは、規制ができるまでの間、様々な問題が発生する場合があります。例えば、セルフドライビングカーに乗っている時、人を轢いてしまったとします。一体その責任は誰にあるのでしょうか。通常の車であれば責任を問われるのはドライバーですが、この車は機械が運転しています。法規制がない以上、山のようにディスカッションが存在します。日本だと法によって安全性が確認されるまで走行は許されませんが、アメリカだと走ることが可能です。万が一事故が起こった場合は、民事裁判で解決する形をとります。私はアメリカのような開発の後から法を作り、問題があった場合は民事で解決する体制でもよいと考えています。この変化の激しい時代、新たなイノベーションを創造していくのならオプトインよりアウトの方が良いと思っています。




■まず企業からオプトアウトに

 日本にアメリカのオプトアウトな考えを持ち込もうとすると、法体系から全て変えなければならないと私は考えています。しかし、国全体でなくとも企業内でオプトインからアウトにすることは可能です。就業規則などはなく、社内での禁止事項のみを記し、他は自由に仕事をさせる。あまり勝手を許すと会社が成り立たなくなりますが、いくつか規則を作ることでオプトアウトな会社を作ることができます。しかし上場してしまうと就業規則をきっちり作るよう命じられます。上場前にオプトアウトであった会社もオプトインの会社にさせられてしまうのです。これらは大企業病よりも根の深い問題なのではないでしょうか。

■インターネットヒッチハイクUBER

 ここで一つ、ユニークな会社を紹介します。アメリカのベンチャーが作った、UBERというサービスです。

 例えば私が六本木にいて、これからマイカーで品川に帰ろうとします。UBERで「品川に向かう」と入力すると、同じく品川に向かいたい人が表示されます。逆に、六本木の交差点で「品川に行きたい」と入力すると付近を走行していて同じく品川に向かう車が表示されます。あとはドライバーと交渉しOKが出れば5?10ドルという格安の値段でタクシーのように目的地まで移動できるのです。このようなサービスが今サンフランシスコでは普通に使われています。本来片道1時間かかるような道はタクシーに乗ると相当な金額を取られます。ですが、UBERなら格安で移動が可能なのです。

 UBERのようなサービスは日本だと白タク(違法タクシー)扱いになってしまうため展開できません。しかしマクロで見ると2人以上が1台の車で移動するのですから、渋滞も減り、環境にも優しい。良いことだらけの素晴らしいサービスです。

■力ある人と共に日本をオプトアウトへ

 今回はアメリカにおけるいくつかのサービスを紹介しました。これらの事業は日本だとどうしてもトラブルの危険性が問題視されますが、実際トラブルなんてそんなに発生しません。「最大多数の最大幸福」の観点から考えるとレアケースです。

 この国が目指すところは規制緩和からオプトアウトへの道です。影響力のある人達にオプトアウトの必然性を知ってもらい、日本をオプトインの社会から変えていかなければなりません。

P r o f i l e

孫 泰蔵(そん・たいぞう)

1972 年、福岡県西新生まれ。佐賀県鳥栖育ち。96 年、東京大学在学中に、日本最大級のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」のコンテンツ開発のリーダーとしてプロジェクトを総括。その後、数々のインターネットベンチャーを立ち上げ、日本のネット業界の活性化に貢献。2009年、MOVIDA JAPAN 株式会社を設立。これまでの成功体験と失敗経験を活かしてベンチャー企業の創業・育成支援を手がける。現在、若手ベンチャーへの支援プログラム、Seed Acceleration Program を推進。



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