• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2013年08月07日

未来をイメージし、地道に継続する/リブセンス社長 村上太一 vs レオス・キャピタルワークス取締役 藤野英人

企業家倶楽部2013年8月号 特別対談





株には二面性がある

藤野 今日はリブセンスの株は15%も上がり、ストップ高でしたね。

村上 正直のところ、驚いています。株主から期待をされている分、その気持ちに答えたいという気持ちと同時にプレッシャーも感じます。

藤野 私は投資家なので常に株と向き合っている立場です。常に会社とは何か、仕事とは何かを考えて過ごしています。「付いている株価は正しい」「株価はいつも間違っている」という大きく矛盾した二つの顔を持っています。


「付いている株価は正しい」というのは、マーケットで値段がついている以上、その株は値段がついた理由があります。景気や業績、買い手と売り手の受給の関係等、様々な要因が絡むことで決まった価値です。しかし、ここでもう一つ関係してくるのが企業の実態価値です。株と企業の実態価値が一致していることはまずありません。多くが実態価値より株価が上に離れているか下に離れているかのどちらかになります。そう考えると株価に正しいものはないと解釈できるのです。




 株を買う際には、株価が正確だと考えた上で、なぜこの値段がついているのか企業分析をすることも大切です。しかし逆に株価が間違っていると考え、会社の実態価値と提示されている株価を見比べ、冷静に分析することも大切です。

 全く違った二つのメッセージを持つ株価ですが、多くの人はどちらか片側の視点で株価を見ます。株価は常に正しいと考える人と、株価は常に間違っていると考える人。前者は儲けが出れば自信を持ち、株が下がれば自信を失う。後者は株価が上がろうが下がろうが全く気にしません。株を見る上では偏った観察をしてはいけません。株価は正しい、されど間違っているという、株価の二面性を理解し付き合っていくことが重要です。

未来をイメージする

藤野 仕事観について教えて下さい。

村上 仕事は続けていけば絶対に成果が出ると信じています。一瞬のアップダウンや時代の流れによる顧客の変化はあると思いますが、私はまだ50年以上働くことができます。JALを再建した稲盛和夫さんや政治家の石原慎太郎さんを見ていると、お年を召していても燃える志のある方は心身共にお元気です。彼らに負けぬよう自分も長く仕事を続けていきたいです。

 そのために私はイメージトレーニングを大切にしており、その為の写真集を自分で作っています。

藤野 イメージトレーニング用の写真集というのは、面白いですね。気になった写真を集めているのですか。

村上 日頃から著名な方々の写真や言葉を収集し、自分の想像している未来像と重ね合わせています。実際に知り合いの経営者が上場する際には、東証で鐘を付いている現場に立ち会いました。遠い先の話になりますが、自分の葬儀のイメージを故スティーブ・ジョブズ氏の写真を用いて膨らませています。写真集を作成する際は、まず言葉を先に入れておき、イメージに合った画像を探して入れています。

藤野 その写真や言葉というのは、いつ頃から収集されているのですか。

村上 言葉の収集自体は創業早期からはじめました。一緒に写真を載せるようになったのは3年前からになります。ですので、上場したときは、想像していたよりも冷静でした。既に何度も夢にも見るほどイメージしていたからです。故に、いざその場に立った時に新鮮味を感じなかったのです。偶然ですが、夢で見た初値も現実と一緒でした。

 私は小学生の頃からお金持ちになりたいというよりも、新たな事業を作りたいという思いを持っていました。事業欲が強く、幼いころからビジネスモデルに対するイメージトレーニングを常に考えていました。

藤野 そのような考えを持つようになったのは、ご家族の影響が大きいのでしょうか。

村上 そうですね。母方の祖父は、昔は証券会社勤めていました。しかし勤務するうちにこれは自分の居場所ではないと思うようになり、脱サラして画廊を開いたのです。父方の祖父は大企業の経営者でした。部下に厳しく、ガンガン突き進むような経営スタイルから「鬼の村上」と呼ばれていたと聞きます。考えてみると、私は両祖父から経営に必要な能力を引き継がせてもらったといえるでしょう。

藤野 村上さんのように未来に起きる事を今日の出来事のように考えられる力は、企業家共通の特質ですね。




地道に継続すること

村上 私は、新しいサービスを作るだけではなく、長期に渡り運営できる事業を作りたいと考えています。孫正義社長の言葉で「事業は30年しか続かないが、組織は300年続く」という言葉があります。また、書籍「ビジョナリー・カンパニー」に組織が一番の作品だと書いてありました。弊社も事業だけではなく組織の構成に注力していきたいと考えています。

 弊社のスローガンは「あたりまえを発明しよう」です。シンボルマークは、クエスチョンと雫を模しています。これには「世の中の常識を疑ってみよう」という意、そして「雨垂れ石を穿つ」この言葉には、地道な努力に対する意思が込められています。例えば、市場でPDA(タッチペン操作の多目的デバイス)が負けアイフォンが勝ったのは、突発的な発想のお陰ではありません。商品に対するアップル社の徹底力の賜物だと私は思います。一瞬のひらめきよりも、地道な努力を続けてきた人が最後は勝つと思います。

藤野 村上さんの考えは正しいと思います。投資家という立場から言わせていただくと、我々は成功する可能性の高い事業を見出し、投資を行うために、儲かる仕組みやノウハウを欲します。それが分かれば投資で失敗はしないからです。

 しかし必ず成功する方程式は存在しません。もしあるとしたら皆が真似をし始めてしまいます。しかし、「遅刻をしない」「勤勉に仕事をこなす」「迅速に行動する」「正直である」これを実践できない事業は必ず失敗するとわかっています。

 例えば同じ学歴・成績の人間を100人集め、嘘つきと正直者に分けたとします。10年後に年収の総合計を見てみると正直者のグループの方が圧倒的に高くなるでしょう。では、それはなぜでしょうか。嘘つきは必ず失敗するからです。正直者の収入は大きく格差がありますが、嘘つきは皆揃って同じような収入になります。

 以前、私は上場会社全てにハガキで簡単なアンケートを送ったことがあります。結果、一週間以内に返信してくださった会社の株価は、ばらつきはあっても全て上がっていました。逆に返信がなかった会社の株価は上がらず、皆近い額でした。

 ここから導き出される結論は、成功するということにおいて「勤勉である」「誠実である」ということは必須条件だということです。

村上 最近改めて人材領域が面白いと感じています。日本を変えるなら「働く」を変えるべきだと考えるようになりました。弊社は転職クチコミサイト「転職会議」を運営しています。将来的には、このサイトのように入社前に職場の雰囲気までわかるようになるのが当たり前になるでしょう。また、ゲノム解析によって個人の適職が判別される時代が来ると思っています。その人にあった適切な仕事のマッチングを行うだけでも満足度、仕事効率は大きく飛躍すると考えています。

 少し悲観的な意見になりますが、多くの人は勉強に対してやる気を持っていないと思っています。働くこと、お金を稼ぐことに対してもネガティブな考えを持っている人も多いのではないではないでしょうか。

藤野 そうですね。多くの人たちが仕事に対し、暗いイメージを持っています。「働くということは辛いこと」「勤務するということはストレスと時間をお金に換えること」だと。近年、ブラック企業という言葉をよく耳にするようになりましたが、まずは仕事に対する意識改革が必要でしょう。村上さんのように、「働く」を考える、変えることは日本にとって最も大切です。

ビジネスストーリーから知る事業の面白さ

村上 最近、またビジネスの本当の面白さというものを感じています。テレビ番組で日本ポリグルという会社が、濁った水に納豆菌から生成した薬品を混ぜると汚泥と綺麗な水に分離する技術を開発したと報じられていました。彼らはその技術を水質汚染で苦しむソマリアで活用し、寄付によって浄水設備を建造する活動も行っています。

 しかし一年後に現地を訪れてみると、設備は壊されており、蛇口等の金属類は盗まれており、設備の運営が不可能な状態になっていました。これではビジネスにはなりません。そこで日本ポリグルは、現地人に運営から水の販売まで指導し、金属類の盗難を防止するために警備を雇うようにしました。さらに遠くの地域まで水の販売を行うことにしました。現地の人にとっては、一般で売られているミネラルウォーターの約10の1の値段で買えるわけですから喜ばしいことです。

 このエピソードを知って、やはりビジネスの力はすごいと思いました。私も消費者を喜ばしつつ長期的に続く仕組みを作りたいと思います。

藤野 前からそのような事業を作りたいという気持ちはありましたか。

村上 以前からビジネスは楽しいと思っています。様々な企業のビジネスストーリーを見ていると面白いものがたくさんあります。例えば大塚製薬のポカリスエットです。今でこそロングセラー商品ですが、販売当初は、不味いと文句を言う人や、社内にも販売に対して疑問に思っていた人がいたそうです。それを見た上司が社員を登山に連れて行き、頂上でそのポカリスエットを飲ませた結果、その美味しさに気付き、社員一丸となって売り出していくというストーリーがあります。今ではヒット商品になっている飲み物でも苦労したエピソードがある。私はこのような商品が生まれるまでの物語からビジネスの楽しさを感じます。




日本には商人魂が必要

村上 中学校時代、グッピーを養殖して販売したり、ストラップを作って売ったりしていました。

藤野 学生の頃から物を売るのが好きだったのですか。

村上 売るのは好きでしたが、儲けるのは下手でした。安く販売しすぎたのです。ジョブセンスも、今でこそ価格設定を見直して値上げしましたが、当初は安すぎて本来事業として成り立たない額だったのです。しかし、長期で続けるにはしっかりとした価格を決めなければならないということで、適切な値段にしていきました。どうやら私には、始めに安く値をつけて長期に続かない価格設定をしてしまう傾向があるようです。

藤野 価格設定と言うのは難しいですよね。こんな話があります。オランダでは毎年、女王誕生祭が開催されます。子供たちが一年間溜め込んだガラクタを売るフリーマーケットが街中で開かれています。ここで得た売上が、彼らの一年間のお年玉になるのです。商品の売値は自由です。子供たちは各国から集まってくる旅行客を見定め、フランスから来た人にはフランス語、ドイツからきた人にはドイツ語で話しかけます。さらにはジョークを言ったり、商品におまけを付けたりして客の機嫌を取ります。実践を通してコミュニケーション能力が養われるのです。商売に必要となる訓練を彼らは3ー4歳のころから学び、20歳近くまでこの祭りでお金を稼いだ後、社会に出ていきます。オランダは商売が上手いと言われる背景にはこの祭りが大きく関わっていると私は思います。

 一方、日本の子供は稼ぎに出なくても、お正月に両親や親戚からお年玉をもらえる。年を重ねるごとにもらえる金額も大きくなっていきます。その仕組みはまさに日本社会に浸透した年功序列制度の縮図といえるでしょう。家の中で最低限の秩序さえ守っていれば定期的にお金が入ってくる。オランダの子供たちのような商売の経験をすることもなく、社会人になってしまうのです。

 企業家を研究している方の統計によると、創業経営者の80 %は親族の方が経営者だという統計が出ています。サラリーマンだらけの家庭の中から企業家が出てくることは稀です。この背景には、オランダのように商売に積極的ではない日本の文化が関係していると私は考えます。いまこの国に足りないのは「商人魂」なのではないでしょうか。

村上 とても興味深い話ですね。私も同意見です。学校の文化祭であっても、商売を知る機会にするべきです。私自身、高校の時、文化祭の運営委員を経験し実感しました。与えられた資産の中で工夫して物を売る。規模は小さくとも商売を行ってみることは今の若者にとっても大きな経験になると思います。

藤野 その通りです。会社でも社員をビジネスマンとしてではなく商売人として育てることが大切です。仕入れて売る、この商売の基本をいかにして社会に浸透させ、突き詰めるかが日本に必要だと感じます。

村上 今年の4月上旬、シンガポールに行きました。そこで改めて知ったのは日本の教育水準は圧倒的に高いということです。しかし我が国は、教育に恵まれていても企業家魂が足りません。私は、両祖父そして母から企業家魂を学びました。自分に近しい人間から商売のマインドについて得ることは大きいと思います。

 企業家魂を持つ人間には自責の念があります。与えられるのではなく自ら行動することを知っています。また、「ダメなものは仕方がない」と考える哲学も持っていますね。母は、私が中学受験に失敗した時に「しょうがないから次また頑張りなさい」と言いました。企業家には以上のような考えを持つ方が多いように感じられます。おそらく、私が将来結婚する相手は経営者の娘になるでしょうね。(笑)

藤野 お会いできて楽しかったです。今後のご活躍を期待しています。


村上太一 (むらかみ・たいち)

リブセンス代表取締役社長1986年東京生まれ。2005年、早稲田大学政治経済学部に入学後、ビジネスプランコンテストで優勝。2006 年に大学1年生でリブセンスを起業。2009年に大学を卒業すると、2011年12月、25 歳1ヶ月で東証マザーズ、2012 年10月には東証一部へともに史上最年少上場。2013年、第15回企業家賞受賞。

藤野英人(ふじの・ひでと)

レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者(C I O)1966 年富山県出身。早稲田大学法学部卒。野村投資顧問(現: 野村アセットマネジメント)、ジャーディンフレミング(現:JP モルガン・フレミング投信投資顧問)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、03年レオス・キャピタルワークス創業に参加、CIO(最高運用責任者)に就任(現任)。



  • DEGITAL DATA SOLUTION
コメントをシェア

骨太対談
DEGITAL DATA SOLUTION
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top