2013年08月01日
京都から美肌の文化を伝えたい/洛洛.com代表取締役社長 安達貞雄
企業家倶楽部2013年8月号 注目企業
美容用アプリを開発
洛洛.comは、百貨店の化粧品カウンターで利用されるスキンチェックを、スマートフォンと専用レンズを利用することで、個人で手軽にスキンチェックができる美容用アプリ「ボーテカム」を開発。きっかけは、2009年に安達貞雄社長が米国シリコンバレーを訪れた際にSNSの存在を知り、その可能性に魅了されたところから始まる。以前から画像認識の技術を持っており、その技術とソーシャルを組み合わせた新しいサービスを思いついた。
アイフォーンにボーテカムの30倍ズームレンズを装着し自分の肌を撮影する。その画像を専用のアプリで解析すると肌のキメ、毛穴、油分、水分などのデータがわかり、乾燥肌や敏感肌など自分の肌タイプが分析でき、自分と同じ肌タイプの人が使っている化粧品情報を共有できるようになっている。ズームレンズは実際の化粧品カウンターで使用するものと同倍率であり、顔のU字ゾーンとT字ゾーンによって測定方法を変更するなどの精密な機能も整備されている。
このレンズはアマゾンドットコムで購入できる(945円税込み)。レンズを提供するだけではなく、ボーテカムと提携する化粧品メーカーの化粧品から自分の肌タイプに適したものを推奨する。「化粧品カウンターでのスキンチェックは、メーカーが自社の商品を売るために用いているツールで、一度化粧を落とす手間や購入させられるのではという不安があるため、消費者としてはあまり気が進まないものだった。しかしボーテカムの肌チェックは、メーカーを1社に縛られずに自分の肌に適した商品を選んでスキンケアをすることができ、その後、正しいスキンケア方法についての知識を得ることができるのがメリット」と安達社長は言う。
また、本来スキンチェックを行う場合、そのデータは化粧品メーカーだけが保有していた。肌データを消費者自身で所持できるようにすることで、消費者はより化粧品の選択幅を広げることができる。また、洛洛.comでもユーザーの肌データを収集することで、肌タイプによる傾向などの分析を行い、化粧品メーカーに対してマーケティングデータを提供することが可能だ。
京都の文化を世界に発信
サービスの対象ターゲットは20代前半女性に設定している。就職活動を控えた女子大生が化粧品選びについて本格的に関心を持ち始める時期である。スキンケアは若い頃から始めた方が効果があるという。「大半の女性が正しいスキンケア方法の基礎について誤認しているため、若い世代から自分の肌タイプについて自覚させる必要がある」と安達社長は話す。本来は乾燥肌ではない人も、イメージ先行で高保湿成分の化粧品を購入しているケースが多い。ところが、肌は水分を外部から補うと自発的に出す水分量を減らすために、かえって乾燥肌体質になり、悪循環になっているケースがある。スキンケアには正しい知識が必要だが、そのことを学ぶ機会が少ないのが現状だ。
ユーザーはレンズ代だけ負担し、肌診断やスキンケア情報は無料である。ボーテカムの収益は、アライアンスを組んだ化粧品メーカーへユーザーから収集した肌情報を提供することで生まれる。化粧品メーカーには専用ページを提供し、年齢や地域、肌タイプに分類された数千から数万人の肌データを活用できるしくみになっている。
洛洛.comは交通渋滞分析など交通管制関連や監視カメラの顔認識技術など公共性の高い事業を受託し、システム開発を行ってきた。安達社長は米国へ視察した際にフェイスブックやツイッターというソーシャルネットワークの可能性に驚き、既存の経営資源とどう組み合わせたら新しいサービスを創り出せるか考えていた。そこで、京都の美意識の文化を海外に発信したいという思いをボーテカムのコンセプトにした。
「京セラは清水焼の発想からセラミックをつくり、任天堂は公家の花札文化をモチーフにするなど、京都生まれの企業は京都の文化を世に発信させてきた。京都の人はそれだけ京都を愛し、京都の文化を誇っています。私も芸子さんや舞妓さんが白粉を塗るように京都の美の文化を伝えたいと思った」と安達社長は創業の想いを語る。
化粧品メーカーは現場と商品には精通しているのだが、ITのノウハウは欠落していたのだ。スキンチェックという今まで化粧品の消費者の手が届かなかった情報を、ITを通して身近な生活に溶け込ませることで化粧品メーカーにITのフィールドを提供したらどうかと考えた。
在宅美容アドバイザーの活用
社員は大半が開発系のエンジニアである。システム開発には強みがあるが、営業面ではノウハウが足りない。そこで、スマートフォン及びソーシャル領域の販売促進を支援するモビーダコミュニケーションズ(九島洋一社長)などから営業面での協力を得ることで、化粧品メーカーとのアライアンス戦略を推進している。2017年までに国内外を含め、化粧品メーカー200社とのアライアンス取得が目標だ。
しかし、単純に万人に受け入れられる化粧品を製造するメーカーだけでは、ユーザー各々が本当に自分に合った化粧品に出会う確立が落ちてしまう。オーガニック系やドクターコスメ系など、独自色を打ち出しているメーカーを揃えるように工夫している。現在、ユーザーは20代、30代を中心に2万人が登録している。
「まずは早期に肌データを10万人分収集することで、肌タイプごとのスキンケアの傾向など、新たなサービスを開拓していきたい」と安達社長。
それを加速するためにはユーザー自身によるスキンチェックに加え、付加価値が必要となる。美容アドバイザーによるアドバイスサービスを充実させたい考えだ。今後は関東でも美肌塾セミナーを開催し、認知度を高め、会員を増やす狙いだ。
「美容アドバイザーは、結婚などで一度仕事を離れると、復帰することが稀少な職種である。潜在的に雇用を求めている人が多い」と安達社長は美容アドバイザーの雇用創出について大きな期待を寄せている。
また事業展開は国内に留まらない。サービス開始直後から、海外展開にも注力している。レンズは地域によって肌の色を識別する機能を追加し世界中で使えるように改良した。海外展開へのこだわりは、安達社長の「美」の文化を海外へ発信したいという強い熱意の表れでもある。化粧品業界では、常に新しい商品が生まれている。良い製品があれば、日本未発表の新製品もボーテカムを通して紹介していく計画だ。すでに台湾、韓国、中国の企業からボーテカムに対する引き合いもきている。日本の古都、京都発のベンチャー企業の挑戦から目が離せない。
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