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トピックス -企業家倶楽部

2013年09月09日

DeNAは南場智子の会社ではない だから自分で線を引いた/ディー・エヌ・エー創業者 南場智子氏

企業家倶楽部2013年10月号  核心インタビュー


 マッキンゼーのコンサルタントから転身、DeNAを創業、日本を代表するモバイルネット企業へと成長させた南場智子氏。2011年突然、夫の看病を理由に社長を退いて2年。2013年4月、DeNAの取締役として復帰した。と同時に自ら執筆した「不格好経営」が話題を呼んでいる。そこにはDeNAが創業時から如何にして幾多の危機を突破してきたか、チームDeNAの成長の軌跡が赤裸々に綴られている。南場さんらしいまっすぐな文章は、読む者の心を捉えて離さない。さまざまな経験を糧に現在を生きる南場智子氏に、DeNAの強さの真髄、これからの生き方を伺った。聞き手:本誌副編集長 三浦貴保



DeNAの素の姿を知って欲しい

問 著書の「不格好経営」大変面白く読ませていただきました。ここまで書いてしまっていいのかと思うほどですが、この本の執筆の意図をお聞かせ下さい。

南場 まずは会社が大きくなってから入社した社員も多くなっているので、彼等にこの会社が多くの人の支えでここまできたということを伝え、感謝の気持ちを忘れないで欲しいという思いがありました。と同時に私はこのDeNAというチームがとても好きですが、外から見るといいイメージをもってない方もいる。そこにギャップがあるので、まずありのままを伝えて、その上で印象を持ってもらいたいと。悪いイメージをよくしたいというよりは、むしろ素の姿を知っていただきたいという思いです。また経営に関係ない人にも何かに一生懸命に打ち込んでいられる喜びを伝えたいという思いもありました。

問 モバゲーは出会い系のイメージがあって、マスコミに出ると、すんなりと世間で受け入れ難くなってしまうところがあったと思います。この本を読んで初めて事実を知ることができました。

南場 書いてあることに偽りはありません。

問 初めて本を執筆されたとのことですが、一番大変だったのはどんなところですか?

南場 まず、これが面白いのかどうか、読んでいただけるクオリティーなのか自分で書いているとわからなくなります。またこんな長い文章を書くのは初めてで本当に苦労しました。まずは量を書くのに必死でした、1番苦労したのが全体の構成です。そこは様々な人の知恵を頂いています。またDeNA成長の過程で助けていただいた方がもっとたくさんいますので、登場人物を減らすのに苦労しました。



逃げずに真正面から向き合う姿勢

問 どんどん読み進めたくなる面白い本だと思います。この本のなかで1番伝えたかったことは?

南場 進もうとしている道は大変でも、逃げずに真正面から正直に向き合うという姿勢の大切さでしょうか。結果としてDeNAは潰れることなく発展しましたが、仮にこの会社が大失敗に終わったとしても、そういう姿勢で進んでいけば、関わった人の中に何かプラスのものが残ると思います。さまざまな困難に逃げずに正面からしっかりと向き合っていく、乗り越えることに全力を尽くすということに意味があるということ。数千年の単位でみたら、小さなことかもしれませんが、関わった人すべての心にちゃんとしたものが残るというのは、そういった“姿勢”にあるのかなと。DeNAというチームには、それを教えてくれたという点で1番感謝しています。DeNAという組織は成功したときに誰が1番貢献したかなど頓着せず、目的にまっしぐらに向かっていくチームです。そういったチームの突破力が大変強い。内輪に向かわずにコトに向かう清々しさがあります。

問 こんなにも多くの危機があったとは驚きですが、ここまで書いてよかったのかと思うほどです。

南場 伝えたいこととして3つ目があるとしたら、「人」の大切さですね。組織は人だと思います。社長1人とあと誰でもいい人ではなく、むしろ社長よりも周りにどういった人が集まるかが大切です。例えば戦略が間違っていても、良い志の高い能力のメンバーであれば、リカバリーできる。私はヤフオクの後を追いかけるということを間違えて長くやりすぎましたが、トップが間違えてもリカバリーがいくらでも効くというのは、まさにチームがいいからなんですよね。

問 よくここまでというほど赤裸々に綴っておられますが、これだけの危機をなぜ書こうと思ったのですか?

南場 うちは何でもオープンなのです。良くない出来事も多いですが、私たちの中では恨みつらみになっていないので、あまり陰のエネルギーは出ないのかなと思いました。



信頼感が厚くへこたれない仕事集団

問 御社がいくつもの困難を乗り越えられた理由はどこにあると思いますか?

南場 人ですね。もともと力量のあるメンバーで、へこたれないし吸収力のある仕事集団と書きましたが、そういう力があるので乗り越えられた。もう一つはお互いが信頼しているので、このメンバーなら出来ないことはない。いつか乗り越えられる、という気持ちを一瞬足りとも捨てなかったということですね。何かひどいことが起きると、チームによっては、誰のせいでこうなったと追及するチームもあると思いますが、DeNAは不思議とそれがない。何か起こったらそれを乗り越えることに力を結集して、誰がどうしたということに頭がいかないスカッとした個人が集まっています。

問 どういう人をチームメンバーに入れるかということについては南場さんも相当力をいれているようですね?

南場 とても重視しています。入社面接の際、失敗したときのことを話してもらい、責任追及しがちな人はなかなか仲間には入れないですよね。

問 DeNAのチームメンバーとして、一番重視していることは何ですか?

南場 うちの会社の人はアグレッシブだから、やる気やへこたれずに壁を乗り越えられるかなど、そういったことを言いがちですが、実際は色々な人がいた方がよくて、正直な人、透明な人、そしてDeNAクオリティーは最初から満たしている方がいいですね。コトではなく人に向かいがちな人は難しい。優秀でも合わない人はだめですね。この清々しい環境の中で頑張りたいという人でないと。



質のいい非常識力が強み

問 優秀でも合わない人は難しいということですが、過去に何か経験がおありですか。

南場 営業で有名な会社から採用した人がいて、営業は素晴らしいのですが、月末の午前中に休暇をとったのです。周りがチームの目標を達成するために彼の顧客名簿に電話をかけた。午後に出社した彼は自分のリストを盗んだ!と、とても怒ったんです。元の会社では顧客名簿はとても神聖なものだったようです。チームよりも自分を優先するカルチャーはわが社には合わない。彼は結局、個人で勝負出来る、個人がスターになれる組織に戻っていきました。うちの会社は前提としてチームで達成する。その辺が匂いの違いがありますね。結局合わない人は出ていってしまいますね。

問 よく同じ匂いの人が集まるといいますね。

南場 そうですね。日本で1200人ほど、海外で900人くらい社員がいますので、そういった考えを大事にしたいです、諦めないで。もちろん採用の時に気をつけますが、仮にちょっと違う人が入ったとしても、いい面を引き出せるような力を組織が持っていればいいのかなと。

問 南場さんからみてDeNAとはどのような会社ですか?

南場 凄いポテンシャルをもっている会社だと思います。DeNAの一番の特長は、常識に支配されないということです。自分たちの頭で考えて、会社の発展を考えるチームだと思います。


問 一番の強みはなんですか?


南場 人材力ですね。あと質のいい非常識力です。



社長の引き際は自分で決める

問 退任を決意されたことは悩まなかったのですか?

南場 あまり悩みませんでした。それより主人の闘病のことで頭がいっぱいだったので、治療に専念することが最優先で、自分が望んだことでした。DeNAは頭の半分が家族のことで一杯という人間がトップをやれる会社ではないのです。非常に戦略的な目線の高い会社ですし、一瞬たりともそこに怠けが入ってはいけない。他の人は少し休んでいいと思いますが、社長は継続出来ません。

問 著書には2012年に社長を退任するつもりだったので1年早まっただけ、と書いてありましたが、なぜ2012年に社長を退任しようと思われたのですか。

南場 理由の1つは50歳の人が会社の顔というのは抵抗があるなと思っていました。もう一つは、社長業って本当に面白いので、自分が言いださない限りずっと続けてしまうと思ったからです。ここまで!というタイムラインは自分から引かないとずるずる行ってしまう。ベンチャーは創業社長がずっと引きずることが多いですが、DeNAはそうしたくなかった。それだと南場さんの会社という器から出ない。DeNAは“南場さんの会社”というような小さなものに収まる会社ではないのです。創業者である私もいずれ能力が衰える。他にもっと相応しい人がいたら、当然その人に代わる。そういうチームにしたかった。それを創業者が率先してやれば、確実に次もやってくれると。

問 よく下が育ってからと言う方が多いです。

南場 それは言い訳です。代われば育つんですよ!



後任の守安社長はスティーブ・ジョブスを超える

問 次の社長は守安社長というのは以前から決めていたのですか?

南場 このままいくと守安かなという頭はありましたが、後継者はバトンタッチの瞬間に決めるべきことなんです。そうでないとリーダーシップがそこに集まってしまう。自分が社長でいる限りは社長としての責任を全うしたかったので、そういったことは一切決めていませんでした。

問 でも頭のなかでは描いていたのですか?

南場 今ならこの人だなと思いますが、ただ例えば2011年に主人が病気にならなかったとして、その時点でこのままいけば守安だなと思っても、1年の間にもっとすごい人間が現れるかもしれない。その時にベストな人間を選ぶべきですね。

問 後任を選ぶのは難しいことですね?

南場 でも私は後任に関してはすばらしい選択をしたと大満足しています。守安を社長にしたことは自分としても100点満点の意思決定だと思っています。

問 今の守安さんに関してはどのように思っていますか?

南場 ずっと一緒に仕事をしていますが、半端ない力量がありますし、スティーブ・ジョブスやビル・ゲイツを超えるような経営者になる可能性があると思っています。日本から出るなら守安だなと思っていますし、それだけいい経営をしていますね。

問 どんなところが守安社長が素晴らしいところですか?

南場 最初に決めたルールを貫き通すところですね。仕事を人に任せたら途中で邪魔をしない。私ですと、誰かに解決案を頼んでも途中で心配になって自分で始めたりしてしまう。でも彼は絶対に手をつけない。約束を守ります。例えばIRでもこの仕事は誰、これは自分といったように、あらかじめルールを決めて、決めたらそれに則って運営していく。ルールを決める際にも自分一人で決めないで、担当に考えさせる。従って秩序だって物事が進むし、余計なガタガタで疲れさせないので、組織力、チーム力がさらに発揮できますね。あとは戦略的だし、リソースをダイナミックに動かしています。頼もしいし、これからが楽しみです。

問 南場さんが考えるリーダーの条件はとはどんなことですか。

南場 1つは戦略の方向性を最終的に決断する力。ここを目指すという目指し所を定める決断力です。もう一つは、チームをまとめてそこに向かう力を最大化する力ですね。この2つです。



DeNAを世界一の会社にしたい

問 DeNAの未来についてはどのように考えていますか?今取締役として復帰されていますが、社長や会長に復帰はなさらないのですか?

南場 代替わりをしているので、そこを崩したくありません。一度社長を退任しなかったら会長に戻っていたと思うのですが、今は春田が会長を務めていて、とてもいい仕事をしています。日本一働く会長です。役割をしっかりと担って守安といいチームを組んでいる。イニシアティブは守安がとるべきなので、そこに関して私はコメントするべき立場ではありません。

問 今は取締役としてどういった仕事を担っておられるのですか?

南場 守安に任されているのは、3つのミッションです。1つは外部とのリレーションシップとか大きな事業提携交渉、DeNAの味方づくりのための仲間づくりなど対外的なことを中心にミッションを担っています。2つ目は人の採用です。これは引き続き任されています。3つ目は創業者としてDeNA魂のようなものを社内で徹底していくという役割です。あとは取締役として社長を監視する立場ですので、そこはガンガンやっています。会社の執行に関しては守安がトップですし、彼は非常によくやっていますので、率先してその枠組みの中で仕事がしたいと思っています。

問 南場さんとしてこれからも取締役としてDeNAで生きていかれるということですね。

南場 私の存在がDeNAの発展にプラスである限りは頑張りたいと思っています。DeNAを世界一の会社にしたいですね。その為に全力を尽くしたい。

問 2年間会社から離れてみて目線が変わったのではないかと思いますが、いかがですか?

南場 私は100%仕事人間だったのですが、多少仕事以外のことを大事にする気持ちがわかるようになりました。私は子供がいないのですが子供って大事なんだろうなとか、色々な働き方をしている人に対して心からサポートしたくなりました。それは経営者としても幅が広がったと思いますが、ようやく周りの人の常識に追いついてきたかな、と思いますね。いい経験をしました。


DeNAを世界一の会社にしたい

プロフィール

南場智子(なんば・ともこ)


株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)  ファウンダー新潟県生まれ 津田塾大学卒業後1986年マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。1988年、マッキンゼーを退職し、ハーバード大学へ。1990年ハーバード大学にてMB Aを取得、その後マッキンゼーに復職。1 9 9 9年マッキンゼーを退職しDeNAを設立、社長に就任。2011年6月、夫の看病に専念するため社長を退任、取締役に就任。



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