• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2013年09月27日

企業に最も大切な事柄は人と人との信頼関係/ウィルゲート代表取締役 小島梨揮

企業家倶楽部2013年10月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.5




自社利益より顧客満足を優先

「こんにちは!」

 ウィルゲートのフロントで待っていると、通りかかる社員たちが清々しい笑顔で挨拶してくれる。平均年齢は若い。同社を率いる小島梨揮は現在27歳。それでも、「事業を始めてから10年近く経つ」としみじみ振り返る。紆余曲折を経て、今年で社員数は100名を超えた。

 収益の8割以上を稼ぎ出すのはSEO事業だ。SEOとは自社サイトが検索で上位に表示されるように最適化する技術。だが、単なる技術力の提供にとどまらず、コンサルティングまで含めて行っている点がウィルゲートの強みとなっている。

 料金体系は、成果報酬では無く前払いの固定型。顧客によって要望が異なるため、必然的に提示する金額も変わる。少ない場合は約5万円から、場合によっては数100万円単位の案件もある。

 それでも多くの顧客がウィルゲートの門を叩くのは、同社が料金を論理的に説明していることが大きい。例えば、あるキーワードによる検索で1000人を集客し、更にそのうち10%の100人が実際の売上げに結びつくようにする。客単価が5000円ならば100人×5000円で50万円の効果がある計算だが、ウィルゲートは7ー8万円でサービスを提供するという具合だ。


 確かに、実際サービスを受けてみなければ効果を実感することはできないが、ウィルゲートは着実に実績を積み重ね、顧客との信頼関係を築いてきた。SEOによる効果が無いと判断すれば、正直にその旨を伝えるなど、自社利益よりも顧客のニーズを優先する姿勢も、多くの顧客企業から高く評価されている。



18歳、高校3年で創業 急拡大を目指すも社内崩壊

 小島の創業は18歳、高校3年生の時。特に誇れるものも無い中、常に「やらない理由」を考えてしまう自分に嫌気が差していた。不安はあったが、まずは行動するしかないと思い立ち、起業。事業を展開していた父や祖父の影響も潜在的にはあったと言う。

 当初は父の営むアパレル店のネットショップを運営していたが、じきにSEOの可能性に気付き、こちらを本業とした。しかし、そのうちSEOに止まらず、WEBサイト製作、エンジニア派遣など業務を多角化していった。もちろん、インターネットの力で世の中を良くしたいという思いは根底にあったが、具体的にどのような価値を提供したいかが不明瞭で、社員の結束が乱れてきた。そうした中、多額の資金調達をして行った新規事業に失敗し、ウィルゲートは倒産の危機に陥った。

 小島はこの事態を振り返り、いくつか要因を挙げる。一つは自身のリーダーシップ不足。ビジョンを明確に示せなかったことで、社員が別々の方向を向いてしまった。そして採用活動の失敗。目指す理想が無いため、各々の価値観に深く言及せず、前職での実績重視で採用を行ってしまった。さらに、そうした社員らの価値観を擦り合わせるコミュニケーションを怠った。そのうち、経営陣と社員はお互いに心を閉ざすようになり、組織は歪んでいった。

 そして迎えた倒産の危機。小島は社員を一人ひとり呼び、現状と今後の方針を真摯に話した。価値観を擦り合わせた結果、約30名いた社員の中で会社に留まったのはわずかに10名。残った社員は例外なく責任感が強かった。そうした当事者意識の高いメンバーとならば切り抜けられると確信すると同時に、もう仲間を裏切るまいと心に誓い、全社一丸となって死に物狂いで危機を脱した。


18歳、高校3年で創業 急拡大を目指すも社内崩壊

全社で価値観を共有 徹底してミスマッチを防ぐ

 こうした事態を乗り越える過程で、ウィルゲートでは一緒に働きたい社員像、全社で共有したい価値観を明確に言語化し、具体的な施策にも反映させるようになった。

 採用では、過去の具体的なエピソードを聞くことで、会社の価値観に合うかを判断する。もちろん、応募者側からもウィルゲートが自分に合う企業か見極めてもらうため、入社前の段階から多くの社員と話す機会を設けている。「人事もいない中で腹を割った話をするが、それでもなお私たちの考えに共感してもらえるなら本望」と小島。学生の素の考えを受け止めると同時に、ウィルゲート側の率直な思いも受け取ってもらい、本当にミスマッチではないことを確かめているのだ。

 また、社員間における信頼関係を築くためのコミュニケーション施策もある。飲み会などの費用は会社が負担。運動会なども開催し、社員同士の心の距離を近づけている。四半期に一度開かれる全社会議では、ビジョンの共有も欠かさない。

 そして、価値観の擦り合わせが行われた上に、社員一人ひとりが成長できるような教育施策がある。特に最近は柱となるSEO事業を重点的に伸ばしてきたため、SEO関連の能力を身に付ければ成長できたが、今後経営を多角化する際には幅広い知識や本質的な問題解決力を持った人材を育てる必要が出てきた。

 そこで現在、代表自ら「小島研修」と称し、毎週1グループ10名程度の規模でワークショップを行っている。社員からすれば1週間に1回の研修だが、小島にとってはほぼ毎日、週5回で60名近くと顔を合わせることになる。研修はケーススタディとして業務改善の案を募りつつ、その根幹にある理念を共有できるような内容となっている。

 良い施策があれば、実際の現場でプロジェクト化もありうる。新規事業を考える上で必要なスキルや思考力が身に付き、既存事業の改善にも役立つ。また、各社員が自分と異なる部門についても考えることでポータブルスキルが身に付くと同時に、他部門理解が促され、セクショナリズムの解消にも繋がっている。



「和の心」で信頼を構築

 今後、様々な事業に進出する中で、社員数も増えていくだろう。理念共有が課題となることは必至だ。その上で重要となるのは、経営陣と社員の中間に位置するマネージャーの育成である。彼らが会社の目指す方向性を明確に示すことで、全社の価値観が共有されるのだ。これからは第二、第三の「小島研修」が実施できる社員を育てていく。

 倒産寸前の状態からの再生を遂げたウィルゲート。小島は「人事施策は多々あるが、極論を言えば、制度の有無は問題ではない。最も重要で、根幹にあるべきは人と人との信頼関係」と説く。そして、信頼を築く上で一番大切なのは先に相手のことを考えて実行することだと言う。

「ギブ&テイクではなく、ギブのみを考えることで、初めて信頼関係は生まれます」

 ウィルゲートという社名は、「WILL(志)」と「GATE(入り口)」を掛け合わせて作られた。その社訓であるWinGは文字通りの「翼」という意味のみならず、ウィルゲートの「W」に現在進行形の「ing 」を加えることで、前進し続ける同社の意気込みが表されている。

 そんなWinGが掲げる理念に 「和の心」とある。一貫して周りのことを配慮した行動のできる人間、利他を考えられる人間こそ、大きな信頼を得ることができるというわけだ。「和の心」の及ぶ範囲は社員間に止まらず、もちろん顧客に対しても同様だ。こうした価値観が根幹にある限り、ウィルゲートは今後も信頼の輪を広げていくことだろう。(相澤英祐)



コメントをシェア

骨太対談
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top