2013年09月30日
写真屋×ITで写真業界を変革する/フォトクリエイト代表取締役社長 白砂晃
企業家倶楽部2013年10月号 新興市場の星たち
マラソンなどのイベントの参加者に、プロカメラマンが撮った写真をネットで販売するというビジネスモデルで、業界に新風を吹き込むフォトクリエイト。社長の白砂晃は「感動をカタチにしてすべての人へ」を理念に、成長路線をひた走る。2013 年7月には株式公開を果たし、感動写真を軸にユーザー参加型のメディアを創りたいと意気込む。
〈文中敬称略〉
マラソン人口が急増する日本、中でも東京マラソンは一大イベントとして希望者が殺到する。出場の切符を得たランナーにとっては最高の晴れ舞台。記念にプロのカメラマンにかっこいい写真を撮ってもらいたいと思うのは当然のことだ。これを可能にしているのがフォトクリエイトである。
マラソンやサッカーなどのスポーツ大会だけではない。バレエや社交ダンス大会、幼稚園、小学校などさまざまなイベントで、その人の輝く一瞬を写真というカタチにして届けるというビジネスモデルである。
イベントにプロのカメラマンを派遣、撮った写真をネット上に一定期間掲載し販売する。告知は参加者向けの資料にチラシを同封する。膨大な写真の中から参加者はゼッケン番号で自分の写真をチェック、購入できるという。
東京マラソンでは参加者の4人に1人が購入してくれると白砂。多くは紙焼きで購入するという。一カットの価格は2Lで一枚700円ー1500円と安くはないが、人生の記念となる写真だからこそお金は惜しまない。客層はマラソン大会の場合は40代ー50代の男性が、学校写真については30代ー40代の女性が主な客となっている。わが子の晴れ姿をプロが撮った写真で思い出に残そうといのだ。
写真屋× ITというこのビジネスモデルの創業のヒントは、シリコンバレー帰りの友人から「米国でプロが撮った写真をネットで販売するビジネスモデルが流行っている」と聞いたことがきっかけと語る。聞いた瞬間「コレはいける!」と確信したと白砂。2001年暮れのことである。
当時サイバーエージェントにいた白砂はインターネット企業についてはよく研究していた。そして野心を持った仲間が集まって、ネットの新たなビジネスの可能性を模索していたという。そんな環境にいたことも、白砂のアントレプレナー精神に火をつけたといえよう。
サイバーエージェントを退職、翌年1月にはアイディアを持ちこんだ友人の田中大祐(現取締役)とその友人の小松利彰(現取締役)と3人でフォトクリエイトを立ち上げた。
フォトクリエイトの商品は何と言ってもプロが撮る「いい写真」である。それだけにプロのカメラマンとのネットワークは重要だ。最初は社交ダンスの大会で知り合った雑誌カメラマンが白砂の構想に賛同。マラソン大会でも別のカメラマンの賛同を得た。こうして次々と仲間を引き入れ、今や日本全国1300人をネットワークするに至っている。
雑誌が斜陽となり、プロといえども仕事が減少ぎみの彼らにとって、白砂の話は魅力的だ。日給制度とし、5段階のランクに応じて報酬を支払うという。
プロカメラマンといってもマラソン、サッカー、ダンスなど種目によって得意分野がある。それぞれの競技を理解していないと感動の一瞬は撮れない。従って競技ごとにマッチしたカメラマンを派遣。しかもどの場面に何人配置し、どのカットを何枚撮れば売上げが最大化できるか、ここに10年培ったノウハウがある。
年間500以上のイベントにカメラマンを派遣するフォトクリエイト。今や国民的イベントとなった東京マラソンには70名のカメラマンが出動した。撮影したカットは130万カット。この写真を整理・加工してサイトにアップ、販売するまで1週間という。このスピード感は他を寄せ付けないフォトクリエイトの強みとなっている。
これを可能にしているのが、自前のシステムである。システムを担う小松が創業メンバーであったことも幸いしている。ネット企業の肝となるシステムは自前で持つことが勝つための要件であることは、サイバーエージェント時代に学んだと白砂。それだけにシステムはもとより、写真データの加工、印刷、配送までを自前で行うことにこだわる。
2013年6月期は売上高27億5100万円(見込み)、経常利益1億9600万円(見込み)と、拡大するフォトクリエイトは、創業11年目となる2013年7月10日、東証マザーズに株式公開を果たした。イベント写真をオンライン販売するという新しいビジネスモデルに市場は沸いた。その日値が付かず、翌日公開価格の約2.3倍となる3775円で初値をつけた。それだけ期待値が高いということだが、株価にはあんまり翻弄されたくないと白砂。上場で得た2億円はシステムの増強に使うと語る。
営業はさまざまなイベントが対象となるが、メインはマラソンという。中でも1000人以上参加するマラソン大会の9割に同社が出動している。何人参加のイベントでペイするかは種目と記念度によって異なるというが、こうした営業ノウハウも同社独占の強みとなっている。
写真販売だけに留まらない。今、白砂はサイトを活用し、ユーザー参加型のメディアを創ることに注力している。同社ではマラソンや自転車などの「オールスポーツコミュニティ」や「ダンスライフ」などカテゴリーごとに12のサイトを持つが、そのどれもがコアなメンバーが集まっている。それだけに練習方法や、大会当日の携行品など、必要な情報が一つに集まったメディアを創ろうというのだ。マラソンランナーだけでも、年間150万人にリーチできるという白砂、コアなメンバーを集客できるだけに、広告としても魅力的なツールになると睨む。
それだけではない、さらにフォトクラウド事業にも力を入れている。市場の大きい学校写真はまだアナログ方式で販売されているのが現状。地元の写真屋さんにこのプラットホームを活用してもらい、子供たちの輝く瞬間を掲載し、販売してもらいたい。このクラウドモデルで地域社会と写真屋さんに貢献したいとその構想を語る。
これまで同社に蓄積している写真は3億カットに及ぶという白砂、その先にはフォトライフ構想を描いている。輝く一瞬を写真というカタチで切り取っているが、まだ線になっていない。これを繋いでストーリーにしていくのが我々のこの10年の計画と夢を語る。
今年39歳になる白砂だが、起業して苦労したことはない。事件があってもテンパっている方がやる気になるという楽天型だ。今後はビジネスノウハウをシェアして、日本をもっと元気にしたいと語る。デジタルカメラの出現で、既存の写真業界が苦戦する中、写真屋×ITで従来の商習慣を打ち破り、写真の新しい可能性を提案する白砂の挑戦はこれからだ。
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