2013年10月28日
常に高い目標と志を持ち伸びる会社をつくれ/ユニクロ社外監査役 安本隆晴
企業家倶楽部2013年12月号 著者に聞く
上場準備コンサルタントとして、ユニクロをはじめとする多くの成長企業を支えてきた著者が、起業を成功させるための必須34 項を伝授。起業の心得からビジネスプラン、資金繰り、上場準備まで現場を知り尽くした著者ならではのアドバイスを送る。
『伸びる会社をつくる 起業の教科書』
安本隆晴 著ダイヤモンド社(1500円+税)
問 この著書を書かれた理由をお聞かせ下さい。
安本 私はこれまで、経営コンサルタントあるいは監査役として成長企業の経営に関わる傍ら、創業間もない起業家に様々なアドバイスをしてきました。それはひとえに、現在の日本の閉塞感を何とか打開したい、志の高い起業家をたくさん排出して日本経済の衰退を防ぎたい、という危機感から来る願望があったからです。
しかし、個人の力では、行動を起こしてもたかが知れています。そこで起業を勧める本を書くことにしました。今この時、起業をためらっている人たち、起業に踏み出したものの道に迷っている人たちの背中を押し、伸びる会社をつくるための具体的なアドバイスを提供できればと思っています。
成功した起業家柳井正
問 この著書にはファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が多く登場されますが、柳井さんと出会ったきっかけは何だったのでしょうか。
安本 13年前、私の著書である「熱闘株式公開」を読んだ柳井さんが連絡してきたことがきっかけです。当時山口の宇部市で紳士服店を経営する小郡商事をやっていた彼が、「アメリカの衣類業界の成長は著しく、それらが日本に進出してきたら我が社は潰れてしまう。そうなってしまう前に何とか上場したい」と、いち早く上場するために私に協力してほしいとのことでした。
問 監査役になることを承諾された後、まず始めにどんなことに取り組んだのですか。
安本 始めに会社の7人のキーマンと会い、一人ひとり話をしました。それが終わると柳井さんに「あなたの担当者は誰がいい?」と聞かれ、ある人を指名すると、翌月に宇部に来た時にはその人が取締役になっていました。彼は何でもやることがすごく早かった。
次に3年程で上場するためのレポートを書き、その中で「しっかりとした組織図を作ること」、「店舗の形式やお金の管理に標準をつくること」を主に指摘しました。
組織図には会社での機能、部署の目的、追求すべき目標・指標・キーワード、誰にやってもらうか、部署名と事細かく記しました。会社がどのような規模であってもその時点で組織図をきっちり作れば、どの機能がどの程度足りないかが分かります。
また、当時の小郡商事の店舗は前に入っていた店の形をそのまま再利用していただけだったので、それぞれの店舗を統一する必要がありました。
問 柳井さんはどんな方なのですか。
安本 「熱い思いとクールヘッド」を持ち合わせた方です。
とにかく志が高い。常に目標を高く持ち、現状に決して満足しない。目指すものの更に上を目標としています。その志と高い目標、明確なビジョンに社員が共感し、ついてくるような求心力があります。
他人に厳しいですが、それ以上に自分にも厳しい。強く言うのは自戒しているのです。人と戯れることは好みませんが、他の人のことをしっかり考えていますよ。
あとは、「山と言えば川」というような人ですね。私と同じ意見であっても、自分の言葉でもう一度同じことを主張します。
対象と一体になることで見えてくる
問 企業の成長にとって重要な要素である、良い事業プランとはどのようなものだとお考えですか。
安本 良い事業プランは、自分の頭で考えて、考えて、考えたその結果、絞りだすものです。最終的には、考えた総量や時間に比例するものではないでしょうか。「考える」とは、対象と一体になって「相手が何を望んでいるのか」を感じることです。そうすることで何かが見えてくるのです。
実現不可能といわれていた無農薬・無肥料のリンゴ栽培にチャレンジし、ついに成功させた木村秋則さんという方がいます。木村さんは、近所や親戚から大バカ者呼ばわりされて無視され続けて、長い間収穫も出来ずに辛い思いをしてきましたが、常に「自分がリンゴだったら、今何をしてほしいだろうか」と考え続けたことで最後には果実が実ったのです。彼こそまさに成功した起業家と呼べるでしょう。
夢見る起業家であれ
問 起業するにあたって、今の日本の問題点は何ですか。
安本 日本では資金面や実務面のサポートが得られにくかったり、会社設立などの手続きが煩雑だったりと、他の先進国に比べて起業しにくい環境であるというのは事実でしょう。しかし、私はそうした起業環境や制度よりも、一人ひとりの心の持ち方に問題があるのではないかと思います。夢を大きく持つことがなくなってきた。日本の大学生はいまだに安定志向で、大企業や官公庁への就職を希望する人が圧倒的に多いといいます。
持った夢はとにかく人に話すべきです。最近はSNSが広く普及し、一見主張しやすい社会に見えますが、私には個性が埋没しているように思えます。思ったことを話すことで批判や駄目出しを受けることもありますが、それらを一つひとつ改善していけば、目標に近づいていけるのではないでしょうか。
また、高校での教育の質にも問題があると思います。日本の教師は一般企業で働いたことのある人が少ないので、経営をあまり分かっていない。故に生徒に教えることが出来ません。しかし、アメリカでは高校の時点で資産運用など経営の感覚を磨くような内容を学んでいます。
問 これから起業する上で大切なことは何ですか。
安本 潰れない会社を作るためには、事業プランを自分で考えた上で実行することです。自ら考えることで、予定と現状の違いが分かる。他人に任せていたのなら、それが分かりません。目指していた姿と違っていたのなら、そこからまた修正していけば良い。そして基本的なことですが何度もPDCAサイクルを回すことです。
また、常に危機感を持つことも大切です。維持するということは変化することなのです。成長するには維持すること以上に変わっていくしかない。失敗する経営者というのは総じて慢心しています。
今の時代、やり方しだいではいくらでも知恵を発揮する場面があり、誰にだって、どんな企業にだってチャンスはあります。これから起業しようと考えている人は、現状に満足せずに志を高く持ち、「あの人に評価されたい」と思わせるような人物を目指して下さい。意思のある者には人が集まります。まずは「この指とまれ!」と自らの手を大きく掲げる必要があります。
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