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トピックス -企業家倶楽部

2013年10月31日

【竹中平蔵の骨太対談】vol.32 常にグローバルなマインドを持て 制約条件が能力を最大化する/vs エニグモCEO 須田将啓

企業家倶楽部2013年12月号 骨太対談


 



アジアで再び注目される日本

竹中 須田さんとは以前に世界の政治・経済界のリーダーが集う、アジア版ダボス会議でお会いしていますね。グローバルな国際会議に参加されて、印象はいかがでしたか。

須田 かつてのように日本が注目を浴びていると実感しました。日本が先頭に立って牽引していってほしいという、アジアからの期待を感じました。竹中 私も日本は今、間違いなくチャンスだと思います。日本の株価は一年前に比べて51%上がりました。これに対してアメリカは13%、ドイツは16%に留まっています。

 今年の日本の成長率は、第一四半期は3.8%、第二四半期は2.6%でした。2.6%という数字は一見低いと思れるでしょうか。実は同じ時期、アメリカは2.5 %で、EUは1.1%です。アメリカやヨーロッパと日本を比べると、日本の成長率が一番高かったのです。1980年代のバブルの時、日本の株価は年間60%程上がっていました。つまり、51%上がるというのはバブル当時に匹敵する数字です。この半年間の安倍総理はよくやっていると思います。



個人バイヤーが革命を起こす

竹中 先日ある中高年の女性と話す機会があったのですが、「日本では、気に入った水着を買えない」と嘆いていたのがとても印象的でした。日本の水着は若者向けの可愛らしいデザインのものばかりですよね。残念ながら、大人のオシャレの文化が日本にはありません。以前地中海のリゾートへ行きましたが、中高年の男女が格好良い水着を着こなしていました。消費者は、例えばイタリアの水着が欲しいなどといった、多様で新しい商品を求めているのだと思います。消費者の潜在的なニーズを探るのは困難であることを、その女性に教えてもらったような気がします。

須田 おっしゃる通りです。日本国内で購入できる水着のデザインは限られています。しかし、私たちが運営しているソーシャルショッピングサイトBUYMA(バイマ)は、個人バイヤーが選んだ海外の水着を幅広く取り揃えていたので、この夏は売上が二倍近く伸びました。これは水着だけに限らず、あらゆるジャンルで言えることだと思います。雑誌やテレビ等で美魔女が話題になっているように、40代の日本女性はとても綺麗で、ファッションにお金をかけている人が多いです。それは日本の特徴だと思います。しかし、今まではなかなかそこに適したマーケットがありませんでした。

竹中 既存の企業が商品を仕入れ、店頭に並べられ、個人が購入するといったモノの流れとは違う、個人が本当に欲しいものを、日本で買えるようにした須田さんのビジネスモデルはまさにイノベーションですね。イノベーションとは新しいライフスタイルの提案です。しかし、具体的に何を提案すべきなのか明確にするのは難しい。

 例えばグルメの場合、消費者は何が美味しいのか分からないけれども、話題になっているものや本当に美味しいものが欲しいのです。これまでは、消費者は自分が欲しいものを選んでいるようで、実は企業によって既に選別されたお店の陳列棚から買っているにすぎませんでした。

須田 BUYMAはまさにそこに焦点を当てています。特長は個人がバイヤーになって、世界中にある良いと思った商品を、注文の都度仕入れて日本に売るというところです。アパレルショップや商社のバイヤーは、海外へ買い付けに行って、大量に仕入れて日本で売るという形をとります。しかし、世界中にたくさん商品があっても、日本に入ってくるのは、売れ筋のものに限られてしまいます。在庫のリスクも発生するので、企業側の意図が入ってしまいます。本当に魅力的な商品を全て網羅することが出来ないのです。その障壁を個人に委託したことで、世界中のあらゆる商品をBUYMAに揃えることができました。しかも、現地の流行と同じタイミングなのが新しいところです。ある種、ちょっとした革命だと思っています。個人が欲している商品だけを取り扱うので、本当にリアリティのある品揃えになっています。

竹中 革命だとおっしゃっていましたが、私も本当にそうだと思います。近代工業化は、まとまったロットにすることによってコストを削減するのが特徴でした。しかし、そうすると限られた商品しか提供できません。コストに配慮した大量生産ではなく、供給する経緯を個人に委託することによって、選択肢を増やした新しいケースだと思います。

須田 扱う商品の価格帯が幅広いというのも一つの特徴です。数千円のTシャツから100万円を超えるバッグ、200万円の宝石、それらを一度に介しているサイトはなかなか日本にはありません。世界中からあらゆる価格の商品が集まっているのがBUYMAです。また、バイヤーは現時点で全員が日本人で、サービス精神が旺盛です。商品と一緒にお礼の手紙が同封してあったり、おまけの品が入っていたりするので、利用者は驚いています。これから世界展開をした時に、サービス精神などといった、日本特有のソフトの部分も一緒に広げていけたらいいなと思います。

竹中 キーワードはホスピタリティです。オリンピックの演説で話題になった、「お・も・て・な・し」ですね。そこは本当に日本は世界と比べても素晴らしいと思います。


個人バイヤーが革命を起こす

重要なのはグローバルなマインド

竹中 1989年、東西冷戦構造の象徴であったベルリンの壁が崩壊しました。それ以前は、地球上で市場経済の人口は約27 億人いました。それとは別に、社会主義圏の人は壁の向こう側にいたわけです。ところが89年に壁が崩れて、すべて市場経済の中に入ってきました。そのため、市場経済の人口は一気に27億人から60億人になりました。中国も資本主義経済に入ってきて、ソ連は崩壊してロシアになり市場経済に加入しました。マーケットが大きくなっていくのは一つのチャンスです。ところが同時に、ライバルが27億人から60億人に増えているわけですから、ピンチでもあります。これが本当の意味でのグローバリゼーションです。マーケットが大きくなり、ライバルが増えて凄まじい競争になりました。勝つためには、グローバルな競争力が必要です。須田さんは、具体的にどんな競争力が必要だとお考えですか。

須田 語学力、特に英語は必要だと感じました。私も中学から大学まで2500時間は勉強したはずですが、流暢に話せるわけではありません。世間でも英語が必要だとよく言われていますが、世界で戦うためには言葉だけではなく、ロジックやマーケティングの会話力も必要だと思います。英語はそのための手段にすぎないのではないでしょうか。また、ダボス会議に参加して、グローバルな問題の解決にどう貢献していくかを考えることが大切だと思いました。地球環境問題をはじめとして、世界的な金融危機、感染症、テロリズムなどグローバルな規模で解決しなければいけない問題はたくさんあります。

竹中 ちなみに、世界から敬意を受けている日本の企業があるのをご存知でしょうか。一つは住友化学という会社です。オリセットネットという、マラリアの予防ができる蚊帳を一番安く大量に生産していて、アフリカで知らない人はいないくらいの有名企業です。マラリアとは、蚊が媒介する感染症のことで、2010年には世界で年間約2億人が発症し、約66万人の命が奪われました。貧困や財政難のために十分な対策が取れず、マラリアにかかって就業や教育の機会を失うといった悪循環に苦しんでいます。この問題に対して、住友化学はマラリアの撲滅に貢献し、実際に人命を救っているのです。世界に何が貢献できるかを考えることが、グローバルな考え方を持つことにつながります。是非とも、これからの時代を背負っていく学生たちに考えていただきたいです。



制限することで引き出される能力

竹中 歴史の名言はとても興味深いですよね。人間の行動の断片をうまく捉えていると思います。スピーチ原稿を書く時に、名言集を購入してよく読むようになりました。その中に、アメリカのクラーク牧師の名言があります。「政治屋は次の選挙を考える。政治家は次の時代を考える」。政治家は時代のことを考えず、目の前にある次の選挙で勝つために、安易なことをしてしまうというわけです。

須田 ダボス会議の際に、竹中さんが「政治家は、ばかではない」という主旨のお話をされていました。賢い人は全てが揃っているイメージですが、全体で見ると間違った意思決定をしていたり、いつまでも問題解決しないことがありますよね。日本の選挙改革についてはいかがでしょうか。

竹中 間違いなく変わるべきだと思います。福沢諭吉が言っていましたが、一国の政治というのは、その国民の民度を超えることができないのです。政治が悪いというのは、国民が悪いということとほぼ同義です。政治家が悪かったとしても、その悪い政治家を選んだのは国民です。本当に国民が賢ければ、そんな政治家を選ばなければ良いわけです。

 つまり、国民一人ひとりが賢くならなくてはいけない。「だから国民は勉強しろ」と言ったのが学問のすすめです。ドラッカーの言葉で、「すべての資源は枯渇する。枯渇しない唯一の資源は人間の能力である」という名言もあります。

須田 ドラッカーの名言は納得ですね。私も経営をしていて思うことがあります。引き出せば引き出すほど出てくるの人間の能力だと思います。

竹中 そうですね。ある程度、外部条件を制約するというのは重要です。今の関連で興味深いのは、三重県の県庁で行われたペーパーレスの取り組みです。紙の使用量を削減するために、様々な策を尽くしましたが、結局減りませんでした。しかし、一つの取り組みを行うと、紙の使用量が減りました。何だと思いますか。実は、ゴミ箱を置かないようにしたのです。

須田 なるほど。捨てる作業に対して制約をかけたのですね。極端な例ですが、国の予算を半分にすると、様々な革新が起こるかもしれませんね。

竹中 クラウドというのはそこからできています。少ない予算で機能させるためには、別々にやっていたものを、全て一箇所にまとめて部分的に発注すればいい。それがクラウドです。制約があってこそ初めてできるものです。日本が省エネ大国になったのは、オイルショックで石油の値段が数倍に上がったからです。日本には石炭が無かったため、大きく影響を受けました。欧米諸国は国内資源によってまかなうことができたので、日本ほどに値段は上がりませんでした。日本は輸入に頼っているため、値段が上がるとその瞬間は大変です。しかし結果的には、エネルギー効率を高く保っています。

須田 制限すればするほど、人間の能力を引き出す。この考え方をマネジメントに取り入れています。例えば、安易に人を増やさないということです。人が足りないと言って増やしていくと、いつの間にか必要のない仕事が増えてしまいます。また、新しいプロジェクトを始める時には予算が大きくなっていく傾向があります。しかし予算を半分に削減してみると、メンバーは工夫をするようになって、質も上がっていきます。


制限することで引き出される能力

情報が人生を豊かにする

須田 人は情報を得ただけで人生が豊かになると思います。これは一つの例ですが、最近、父にとても美味しい土佐の鰹のたたきの通販を紹介しました。すると、とても喜んでそればかりを注文し食べているようです。他にも美味しいものがありますが、このように、知らないことによる情報格差はもったいないと思います。情報を持っていれば、安くて良いものが買える時代です。シニアの人に対しては、そこにニーズがあると考えています。

 インターネットであれば無料で調べることが出来るのにも関わらず、104の有料電話番号案内サービスは未だに多額のマーケットになっています。ネット活用を知らないということで損をしている人や、同じ一万円なのに損をしている人は世の中に多くいると感じています。これからはより多くのシニア世代が、インターネットを活用できるよう変えていきたいと思っています。

竹中 実はシニア世代ほど格差社会と言われています。大学を卒業したときは、初任給は一緒ですが、その先で差が広がっていきます。日本で格差が広がった最大の理由は、高齢化社会になったことです。これからはITの裾野を広げていくべきだと思います。情報の仲介を改善し、デジタルに対する理解も高める。これを推進することで、今のビジネスと繋がっていくと思います。

須田 私の地元では、コンビニが無料でiPadを配って使用方法を教えています。注文すると、その日にお弁当が届くサービスがあります。地道に企業はそういった取り組みを進めているようです。

竹中 シニア向けビジネスの問題は、デジタルな手段に対するアクセスだと思います。まだまだ、インターネットの利用やスマホ・PCといった端末を使うことに抵抗があるようです。そういった枠組みを変えるのと伴って、須田さんが一緒にやっていってくださると興味深いです。シニアマーケットや世界展開も含めて幅広い方面に進出し、これからも改革していくことを期待しています。

竹中平蔵 (たけなか・へいぞう)

 1951年和歌山県生まれ。73 年に一橋大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。ハーバード大学客員准教授などを経て、2001年、小泉内閣に民間人として初入閣。04年には参議院議員に初当選。郵政民営化を本丸に掲げる小泉政権の実質的ブレーンとして活躍する。06年に参議院議員を引退後、慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長に就任。

須田将啓 (すだ・しょうけい)

 1974年茨城県生まれ。慶應義塾大学院理工学研究科を終了後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局に配属され、幅広い領域のクライアントを担当。2004年、エニグモを設立。世界75 カ国のバイヤーからリアルタイムで欲しいものをお取り寄せできる、これまでにない新しいソーシャルショッピングサイト「BUYMA(バイマ)」を運営。2012年7月、東証マザーズ上場。



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