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トピックス -企業家倶楽部

2013年11月01日

消費増税の是非について/SBIホールディングス 代表取締役執行役員社長 北尾吉孝

企業家倶楽部2013年12月号 世相を斬る! vol.1


 「世相を斬る!」というタイトルで連載をさせていただくことになりました。企業家倶楽部様には立派なタイトルを頂き甚だ恐縮ですが、世の中で話題になっている経済問題についての私見を徒然と書かせて頂きます。どうぞよろしくお願いします。


 今号のテーマは「消費税増税の是非」ということですが、私は2020年の東京オリンピック招致と消費税増税が今後の日本の命運を左右する2大イベントになると考えておりました。


 そこで、まず9月7日にIOC(国際オリンピック委員会)が2020年のオリンピック開催地として東京を正式に選定しました。『論語』の「顔淵第十二の五」に「死生命あり」とあるように、生きるか死ぬかは天の命で分からないことですが、もし7年後に私が生きていられれば、幸運にも日本での夏季オリンピックを2度経験できることになります。日本人男性の平均寿命が79・94歳であること、及び私が毎日ALA(5 -アミノレブリン酸の略称)のサプリメントを飲んで健康維持を心掛けていることから、69歳になる2020年まで生きていられ、またオリンピックを日本で見られるのではないかと期待しています。



オリンピックの経済効果

1964年に開催された東京オリンピックの時、私はまだ中学生でありましたが、あの事前事後でどれだけ東京が変わったかということ、そしてまた、日本を見る世界の目がどれだけ変わったかということが、実体験として私の目に焼き付き、脳裏に染み付いています。あの時「オリンピック関連投資は1兆円を超え、1964年の国内総生産(GDP)の3.6%に相当した」と言われていますが、仮にGDPが500兆円だとすれば、今回1%に達しない程度であったとしても5兆円弱という数字が出てきます。私自身はその直接的経済波及効果を4兆円?4.5兆円程度を見込んでおりますが、そういう意味では長野オリンピックを下回る3兆円などという東京都の試算に対しては、「何を計算したのですか?」と言いたくもなります。東京都の試算前提に基づかない民間の試算では、観光など間接的効果も含めたオリンピックまでの7年間で100兆円を超える経済波及効果を指摘するものもありますが、そうした前提で言えば少なくとも30兆円は下らないと思いますし、上手く行けば50兆円規模に膨らむ可能性もあると見ております。


 そうしたオリンピックの経済効果や足元の経済の強さなどを背景に、安倍総理は予定通り来春に消費税率を8%に引き上げることを決断しました。之については2012年に民主党・自民党・公明党で結ばれた、社会保障と税の一体改革に関する三党合意で決めたことを撤回するのも難しく、最早世界に対する日本の公約のような様相を呈していました。諸外国は日本に対して世界経済の不安定要素の一つは日本の財政危機だという認識を持っており、IMF(国際通貨基金:Internat iona l Monetary Fund)等はずっと増税の必要性を主張し続けています。また、仮に消費増税を実施せねば外国人勢は日本国債を叩き売るというふうに盛んに言っている人達もいます。8月3日の朝日新聞記事「(経済気象台)日本国債の暴落を回避せよ」にも『「国債の外国人保有比率は1割に満たないので、外国人投資家が売り浴びせてもたいしたことはない」との論調もある』と書かれていましたが、実際には空売りしてくる可能性もあって、その時には結構な量の売りになるかもしれないということは常に頭に入れておかねばなりません。また、日本の国債の格付けが下がることもほぼ間違いないと思われ、日銀の黒田総裁も「脱デフレと消費増税は両立する」と述べ「消費増税の修正論議にクギ」を刺していたわけで、彼は今回増税を実施しなかった場合に外国人投資家がどういう行動に出て国債金利に如何なる影響を与えるかとか、日本人勢でも日本国債の保有比率が圧倒的に高い所謂「機関投資家(銀行:約4割/生損保:約2割/年金:約1割)」が提灯をつけるような形で或いは外国人勢の売りに誘発されるような形で出てくるかもしれないといったことを考えられ、最悪の場合ある種の金融のシステミックリスクというものが生じる可能性も恐れていたのだろうと思います。消費税増税にはマクロ経済に対するネガティブな影響だけでなく、このような金融面での不安があったわけです。


 しかし、今回の2020年東京オリンピックの開催決定は安倍首相に消費税増税に関する決断を促したと思います。その意味でオリンピックの招致成功は7年後という開催のタイミングと共に非常に良かったと思います。



消費増税のマイナスの影響

安倍総理はもともと10月1日に発表された日銀短観をもとに消費税増税の最終判断をすると言われておりましたが、9月9日発表の4?6月期のGDP改定値が年率換算で3.8%増(速報値:2.6%増)に上方修正されたということと日銀短観の好数字だけではまだ予定されたような消費税増税という決断に踏み切れない状況だったのではと考えています。しかし、東京オリンピックの開催が7年後に決まっていたということで、後顧の憂いなく安倍政権は消費税増税の決断ができたのだと思います。


 即ち、あの3.8%増という上方修正と日銀短観での大企業製造業での景気判断が12ポイントと前回より8ポイント上昇したということは私からしてみれば必要条件であり、そして今回の東京オリンピック招致成功が十分条件であって、必要十分条件が満たされたので、予定された通りに消費税は上げたのではないかということです。


 もっとも予定通り消費税増税を実施し、「名目3%台半ばの高い成長率が続くシナリオでも2020年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字は名目国内総生産(GDP)比で2.0%、実額で12・4兆円の赤字となる」という政府試算もありますが、之についても2020年東京オリンピックの御蔭でひょっとしたら変わってくるのではないかと期待しております。


 ただ、いくら東京オリンピックが経済に好影響を与えるとしても、短期的には消費税増税が結果経済成長に対してマイナスに作用することは明らかです。8月13日の日本経済新聞記事「来年度成長率0?1.9% 増税の反動、見方割れる」でも、民間調査機関10社による「消費増税の反動が出る14年度の成長率の見通し」が紹介されていましたが(10社平均―13年度:2.7%/14年度:0.8%)、例えば「GDPの6割を占める個人消費は10社のうち8社はマイナス」という見方であり、折角上向いてきた個人消費に対しては、やはり大きな影響を与えることは間違いないと思います。所謂「アベノミクス」効果により多少上向いてきた日本経済企業家倶楽部 2013 年12月号・56の成長が今回もまた腰折れするということにもなりかねません。従って消費税増税実施による悪影響を出来るだけ最小化すべく、これから色々な手を打って行く必要があると思います。


 すでに、政府は次のような景気対策を発表しています。10月1日の日本経済新聞朝刊にも出ていたように、今回は「7300億円(企業の投資を促す減税)」、「1600億円(賃上げ促進税制の拡充)」、「1100億円(住宅ローン減税の拡充)」、そして「約9000億円(復興特別法人税の一年前倒し廃止)」ということで減税規模が大体2兆円に上るという話です。


 更には公共投資や震災復興事業といったことに対しても3兆円以上の措置がとられ、新たな経済対策の規模は総額5兆円に上るということですし、あれだけ法人実効税率の引き下げと言っていた割に少し引っ込んだ感じはしますが、これも「速やかに検討を開始する」ということです。


 そしてこうしたことを上手くやって行くことこそが、今後の日本の成功あるいはアベノミクスの成功といった部分を左右する非常に大きな要素になってくると思います。



日経平均は1万8000円も視野に

株式市場については、既に市場はどんどん動き始めていて、私の見通しでは年末までに少なくとも1万6000円は軽く超えて行き、場合によっては1万8000円位まで上がる可能性も十分あると見ています。


 更に言えば、昨年6月に上梓した『日本経済に追い風が吹いている』(産経新聞出版)の「論点10:2012年、日本株は上昇する」の中で、私は「おそらく2011年11月を底に2?4年程度の中期的な上昇波動に入っているのではないかと見ています」と書きましたが、正にその通りに相場は動いて行っています。


 年初の日経新聞に掲載される経営者の今年の日経平均の高値予想をみても、1万2000円あたりが大半で日経電子版に昨年末に掲載されたストラテジストなど10人の予想では高値予想の平均は1万1500円台だったわけで、大和証券株式会社の日比野隆司社長の高値予想1 万3500円もあっさりと超えて行きました。


 また、野村證券株式会社によれば、『1996年に開催されたアトランタ五輪以降の五輪開催国の株式相場の騰落率をみると、ITバブルの崩壊が北京五輪の開催決定と同じ時期だった2001年などを除いて、「経済効果が波及するとみられる開催直前より、開催の7年前で、開催地が決定する年に好パフォーマンスになることが多い」』ということもあるようですが、私は相場に対しても非常に強気で、年末までに1万6000円から1万8000円を目指す展開になるであろうと確信しています。


 そして、今回東京オリンピックの招致成功により日本経済の最優先課題「デフレからの脱却」も更に進展して行くものと思われ、日経平均が1万8000円に達するための必要十分条件も整ったと、これまた考えています。


 ただ経済についてもう少し付け加えると、最近は円安になったら相場が上がるとか、円安になれば日本にとって良いというふうな発言をする人が結構いて、そういう風潮が出てきていることについて私は危惧しています。


 確かに輸出企業にとっては良いことなのかもしれませんが、国民経済的に良いことか否かというのは別問題であって、寧ろ一国の通貨が上がるということは、その国のリビングスタンダードが上がるということですから、本来的には円高の方が望ましいわけです。


 勿論、長期に亘って購買力平価よりも遥かに円高になっている場合は修正が求められるのでしょうが、今一部で見られるように一方的に円安を望むというのは、明らかに間違いだということだけは指摘して置きたいと思います。


P R O F I L E

北尾吉孝(きたお・よしたか)

1951年兵庫県生まれ。74 年慶應義塾大学経済学部卒業後、野村證券入社。78 年英国ケンブリッジ大学経済学部卒。87 年第二事業法人部次長。91年野村企業情報取締役(兼務)。92年野村證券事業法人三部長。95 年ソフトバンク入社、常務取締役管理本部長に就任。99 年ソフトバンク・ファイナンス社長。現在、SBIホールデイングス代表取締役 執行役員社長。

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