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トピックス -企業家倶楽部

2013年10月27日

真心ある料理人を作る人間道場/俺の株式会社代表取締役 坂本孝

企業家倶楽部2013年12月号 俺の株式会社特集第3部 編集長インタビュー1


 ミシュラン級の料理を立食形式によって格安で提供し、注目を浴びている俺の株式会社。坂本孝社長は「料理人を幸せにすることが私の使命だ」と経営に対する想いを語る。飲食業界で経験した挫折を乗り越え、今や常に行列が出来るチェーン店を作り上げた、その成功の秘訣に迫る。

 聞き手は本誌編集長: 徳永健一



人びとの心を掴む発想

問 俺のイタリアン、俺のフレンチが大繁盛されていますが、何がお客様の心を掴んでいると思いますか。

坂本 普通の飲食店では原材料費、つまり食材にかかる費用は30パーセント以下ですが、弊社は倍の60パーセント以上かけて高級食材を使用しています。それを一流のシェフがおいしく調理し、格安で提供する。この他に類のないコストパフォーマンスが、行列の要因だと思います。実は社長である私ですら、並ばないと食べることはできません。良いリハビリだと思って、いつも最後尾について待っていますね。

問 何がその安さを可能にしているのですか。

 
坂本 原材料費に費用がかかるため1人あたりの利益は少ないのですが、店舗を立ち飲みにすることによって回転が早くなります。したがって、普通1回転する時間で4回転すれば、単純に他の店舗より4倍お客様が入る。そうすると、1人あたりの利益は4分の1でいいことになります。したがって、このビジネスモデルはお客様が満足することはもちろん、利益をしっかりと得られる仕組みになっているのです。

問 それにしても、三ツ星レストランのシェフの味を立ち飲みで頂くという、この驚くべきスタイルはどこから思いつかれたのでしょうか。

坂本 以前、焼き鳥を中心とした居酒屋を経営しており、最初はお客さんが入ったものの、2?3ヶ月で赤字になってしまいました。10店舗ほどチェーン店を作ったのですが、赤字続きでしたので、飲食業界は自分にむいてないとわが身の運のなさを嘆いていました。しかし、ここで諦めてはいけないと自分を奮い立たせ、証券会社で世界を股にかけていた安田道男と、料理業界で革新をおこした森野忠則の2人に常務として入っていただき毎日対策を話し合いました。

問 どのような対策を話し合われたのですか。

坂本 不況の中でも利益をあげている店舗に注目し、その共通点を話し合いました。するとミシュランの星を取っていることと立ち飲みのスタイルであること、この2点が共通点としてあげられました。そこで立ち飲み屋に初めて行ってみると、開店30分後だったにも関わらず大勢の人が並んでいて本当に驚きました。こういった一流の腕と立ち飲みを組み合わせたら、流行すると予感がしましたね。

問 これは業界の人では考えつかない発想ですよね。

坂本 その通りです。むしろ、業界を知らないからこそ出来るのです。世の中を変える人は、その業界の中心にいる人ではなく遠くから見ているよそ者、若者、ばか者、この3つのタイプの人です。しかも、幸運なことに自分にはその3つが全部当てはまっていたので、この発想ができたのだと思います。



すべては利他の精神から

問 俺の株式会社の一番の強さの秘密は何ですか。

坂本 シェフも含め理念の共有を徹底していることです。当時から30人程のシェフが集まっていますが、1人も辞めていません。もちろん若い見習いが今日来て明日辞めることはよくあります。普通のレストランの何倍も人がくるため、その忙しさに耐えられないからです。ところが、腕の良い人には人間力がありますから、この忙しい状況でも仲間のために汗をかくという意識が根付いており、この「仲間のため」という考えが理念の共有で浸透しています。2年間で私自身も本当に驚くほど素晴らしい会社に成長していると実感しております。

問 理念の共有を徹底するための仕掛けはありますか。

坂本 京セラの創業者である稲盛和夫氏が設立した盛和塾で約15年お世話になり、理念を共有する会社が伸びるという実例を知っておりました。私はシェフが入社する時も一人ひとりに会って一流のお店に連れていき「私はみなさんが幸せになるための会社をつくる。みなさんには株を差し上げます。会社は株主のものですから、誰の会社と聞かれたら俺の株式会社といってください」と一人ひとり説得しました。人のために汗をかく、仲間のために汗をかく、この利他の精神が重要だと思います。もちろん料理人だけではなくその奥さんや子供も含めて、会社というのは大きな家族になっていきます。皆、お互いを憂い、心配し、そして成長していくという企業になりつつあると確信しています。

問 やはり、社員と経営者が一丸となる必要があるのですね。

坂本 もちろんです。企業としては理念を共有すること、同じ合言葉をもつこと、これだけは手を抜いてはいけません。そしてこの理念を皆に共有してもらうことが私の仕事です。店の回転や資金調達など細かいところはナンバー2、ナンバー3が全部運営してくれますので、私は戦略と夢の共有だけに絞っても会社は十分に回っています。


すべては利他の精神から

特徴づくりが勝負を決める

問 坂本社長はもともとブックオフの創業者として大変有名ですが、そこからなぜこの飲食店をやろうと思われたのか、創業の思いをお聞かせください。

坂本 ブックオフを辞めた後、豪遊してゆっくりとした時間を過ごすことも出来ましたが、考えてみると私はブックオフでやり残した仕事がありました。それは本当の意味で社員を独立させて、彼らが持っている才能を発揮させることです。それと、料理人という職業はまだ満足出来る環境が整っていないことを知っていましたので、料理人の幸せのために会社を作ろうと思ったのがきっかけで俺の株式会社を作りました。その前に焼き鳥の事業で失敗した経緯がありましたが、挫折は絶対不可欠であり、その辛酸をなめたことが今の成功に繋がっていると思います。そんなわけで、どれだけ自分が料理人を幸せにするかというテーマで今毎日闘っております。

問 その焼き鳥事業の失敗の原因はどこにありましたか。

坂本 結局、誰でも簡単に出来る事業だったのだと思います。他社が10年前に行っていた形態を踏襲しただけでした。逆に今は、他社に出来ない特徴をいくつか持ったことで10年間向かうところ敵なしだと思います。これによって料理人が思い切って良い料理をつくれる。競争に巻き込まれないようにすることも、一つの戦略です。これが、俺の株式会社の創業の一番の基礎にあると思います。

問 10月には東京・青山に大型店を開店され、すでに大評判になっていますね。こちらのお店のコンセプトはどういったものでしょうか。

坂本 イタリアンとフレンチのお店にわざわざ行かずに1カ所でロッシーニとピザを食べられるようにして欲しいと言われ、青山は俺のフレンチ・イタリアン2つの業態が一緒になるものを作ろうと考えました。そして、店舗はおしゃれな白を基調としていまして照明にもこだわっています。それに加えて一流のミュージシャンが店内でジャズを演奏するという粋なアイデアを取り入れました。それに店のソムリエも大きな役割を果たしています。弊社の店舗では、年間200万本のワインが売れており、飲食店で断トツ日本一です。おいしい料理をがつがつ食べて、ワインを2?3本飲んで一人当たりで平均で3500円。満足して笑顔で店を後にする。これが1つの理想のシーンですね。



強い意志と信念が道を切り拓く

問 俺のイタリアン、俺のフレンチが軌道に乗ったところで、2012年にお怪我をされましたよね。

坂本 はい。少し足元がくるって頭をぶつけたことが原因です。気が付いたら救急車で運ばれて、両手両足が動きませんでした。もう自分の人生も半ば終わったかと思いましたが、自分にはやり残したことがある、もっと多くの料理人を幸せにするという使命がありましたので、絶対に治すと自心に誓って手術を受けることにしました。その手術前日に先生が私のところにやってきて、「坂本さんには神様がいますから大丈夫です。この病院を出る時には絶対に車椅子ではなく、歩いて帰します」と言われました。翌日の帰りの際にはそれが現実となり、先生に「レントゲンの結果や検査のデータを見て、車椅子ではなく歩けると判断されたのですか」と聞いたら、「いえ、坂本さんのどうしても治すという気迫ですよ。医師はある程度のとこまで出来ますが、あとは患者さん次第です」と言われた時に、自分の持っている強い意思と信念をどこまで貫くかがいかに大切か学びました。自分にとって歴史的な一瞬だったと思います。

問 料理人の幸せを願ってなんとか再起しようという思いが一番気持ちを奮い立たせたわけですね。

坂本 何店舗か出来て、まだ富士山でいうと1合目に登ったくらいのところでしたからね。創業したときに、この料理店を絶対に東京・銀座で30店舗展開して、その後はニューヨークに店を出すことを考えていました。日本が今世界に冠たるものは料理人の腕だと思います。私が世界という舞台に羽ばたくことで、彼らの腕を証明できる。それによって自然と日本中の料理人が奮い立ちますよね。若い人がプロ野球選手やパイロットでなく、料理人になりたいという夢を語るような未来にしたいです。


強い意志と信念が道を切り拓く

いざ、世界の舞台へ

問 ニューヨークにはいつごろ出店されるのですか。

坂本 14年秋です。まず和食から出します。私たちはミシュラン級の料理人を10人近く擁していますが、彼らにニューヨークに行って勝てるか聞いたら、全員が「負けるはずがない」と言い放ちました。この楽天的な自信が素晴らしいですよね。身震いするように嬉しかったです。みなさんが本当に自分の仕事に自信を持っていると感じた瞬間でした。

問 出店の場所などももう決まっていますか。

坂本 まだ決まっていませんが、大体の目途はついており、来年の1月にはいくつかの候補を絞って決定しようと思っています。ニューヨークのど真ん中ですよ。

問 いまやイタリアン、フレンチ、割烹、そして焼き鳥と様々な分野で展開していますが、ほかにはどのような分野に進出される予定ですか。

坂本 例えばフォアグラやウニ、あわびなどの高級食材を使っているものを考えれば、中華料理でしょう。それから日本そば。でも、ビジネスモデルは全部一緒なのがポイントです。回転の早さによって、高級食材を使った高嶺の花の料理をお客様に提供する。この軸はぶれないと思います。

問 将来的にはフランチャイズチェーンもお考えになっているのですか。

坂本 ブックオフ時代にフランチャイズの魅力と怖さを自ら体験していますので、難しいところですね。職人、料理人を本部が加盟店に提供する、つまり厨房は弊社が引き受けることが肝要だと思います。普通の中小企業で良いシェフを採用するのは無理がありますからね。加盟店の経営者はお客様へのサービスに努めることが最優先だと思います。

問 株式上場は視野に入っていますか。

坂本 14年秋、遅くても15年春を目途に上場を目指しています。私欲を一切伏せて皆さんの幸福のために創り上げてきた会社なので、どうしても上場は果たさなくてはならないという使命感で働いております。



すべては料理人の幸せのために

問 料理人を育成する機関を作られますね。

坂本 本社の地下にプロ養成の研修センターを建設中で、来年は辻調理師専門学校から約25名の新卒を受け入れます。彼らを一流の料理人にすること、加盟店からお預かりした料理人を立派に育てること、実はその仕組みは今まで出来なかったことです。日本一を誇るミシュラン級のシェフがマンツーマンで指導していますから、20ヶ月経てば一流の料理人になれるわけです。夢を持つ辻調の学生を見ていると、「日本は大丈夫、料理は絶対に負けない」と感じますね。それと同時に、彼らに「本当に料理人になって良かった」と感じてもらいたい。

問 料理の世界で、日本一、世界一になっていきますね。

坂本 もちろん世界に土俵を構えると決めた以上、日本一になるのは当然のことです。料理人がどんどん育っていくことが大切だと思います。業態としては飲食店ですが、本当は気合いの入った、そして真心のある料理人を作る人間道場を目指しています。

問 最後に、坂本社長の究極の夢をお聞かせください。

坂本 今身近にいる料理人達を、奥さんまで含めて幸せにすること。これが僕の夢です。



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