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トピックス -企業家倶楽部

2013年11月26日

女性が幸せに生きる社会をつくる/ランクアップ代表取締役社長 岩崎裕美子

企業家倶楽部2013年12月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.6


 30秒に1本売れているヒット商品がある。アンチエイジング化粧品を手掛けるランクアップが販売するメイク落とし「ホットクレンジングゲル」だ。2006年の発売から累計270万本を売り上げ、同社の看板製品となっている。人気のバロメーターとなるリピート率は85%というから驚きだ。なぜ、このようなヒット商品が生まれたのか。そこには創業者である岩崎裕美子の「売れるものではなく、自分が納得できる化粧品を作る」という強い情熱があった。



「老けたくない!」で自ら起業

 「まだ30代前半の頃に実際の年齢よりも5歳も老けて見られ、ショックでした」

 若々しく屈託ない笑顔でそう話す岩崎だが、10年前の当時は働き方を考え直すほど真剣な悩みだった。岩崎の前職は広告代理店の営業職。バリバリのキャリアウーマンとして働いた20代、その仕事振りが認められ取締役に抜擢された。ますます仕事に明け暮れた30代だった。残業は当たり前、帰宅が深夜になることも珍しくなく、不規則な生活で肌はボロボロになっていた。充実した仕事の代わりに肌を犠牲にしていたのだ。

 岩崎は、不安と焦りから手当たり次第に多くの化粧品を試してみたが、自分に合う化粧品に出会えずにいた。

 「このまま老けていくのは嫌だ!」

 自分と同じように肌の悩みを抱えている女性が多くいるに違いないと考えた岩崎は、自ら理想の化粧品を作ることを一大決心し、会社を辞め、2005年6月に起業した。



「実感」と「安心」を共存させる化粧品

「まず、第一に効果を実感できる化粧品を作る」、これは今も変わらない岩崎の信条だ。

 しかし、実際に経験のない初心者がゼロから化粧品を開発するのは、そう簡単なことではなかった。岩崎が決めた条件は、効果が「実感」でき、毎日使うものなので、無添加で「安全」なものであること。同社にとっては当たり前の要望でも、それに応えられる化粧品製造メーカーはなかった。「肌にとって本当に良いものは何か」といった本質的な問いかけに、「シミ用かしわ用か?」、「製造数は?」、「価格は?」といった利益に関する回答だけで、どこも冷めた反応しか戻ってこなかったのだ。数十社を訪問する中、一人の担当者だけが岩崎が理想とする「効果の実感できる化粧品作り」に賛同してくれ、開発は進められた。

 製造メーカーとの開発会議の中で、肌の老化防止には加齢とともに減少するコラーゲンを補うことが有効との結論に至った。しかし、コラーゲンは分子が大きく、肌に浸透しないとされていた。また紫外線にも弱いという性質を持っている。そこで、一般的なコラーゲンの1000分の1の大きさまで分解し、「補い」「生み出し」「育て」「守る」効果がある6種類のコラーゲン強化成分を配合することにした。

 超えなければならない壁がもうひとつあった。それは、「実感」と同様に肌に「安全」であること。それは成分はすべて無添加であることを意味している。「どんなに効果があっても、毒を塗ってはいけない」。

 岩崎は、肌に負担のある成分は入れないと誓っていた。しかし、無添加の条件が多く、製造メーカーもお手上げ状態だった。それでも妥協をせず、有効成分の配合を何通りも試し、やっと製品が完成した。一番にこだわった効果は、女性のシミ、しわ、くすみに効果が得られるものだったが、思わぬ副産物もあった。成分中のグリセリンが空気中の湿度と結びついて温感効果があり、重い質感のゲルが毛穴の汚れを巻き込み、よく落ちるといった効果もあった。



残業ゼロでも会社は潰れない

 会社設立から8年、社員は35名にまで増えた。男性社員は2名で、9割以上が女性である。前職時代、女性の部下が30歳を前に「忙しすぎて結婚も、出産もできない」と相談しては、会社を辞めていった経験から、女性が活躍できる会社を作ろうと考えた。

 「妊婦や産休の人がいるのが当たり前の職場で、いつも誰かが休んでいます」と岩崎は嬉しそうに話す。実際、ある女性社員は、「社長は私以上に子供のことを心配してくれます。『子供が小さな内はなるべく、一緒の時間を過ごすように』といつも声を掛けてくれる」と言う。

 岩崎自身が4年前に出産し、育児と仕事を両立していることもあり、子供がいる女性社員の気持ちは十分理解している。制度だけあっても役に立たない。上司や同僚が早く帰宅するように気を使っても、自分だけ早く退社するのは気が引けるものだ。ただでさえ、子供の予期せぬ病気などで早退や欠勤を余儀なくされ、ストレスの種は尽きない。

 また、以前は夜中まで長時間働けば売り上げが上がると信じ、無理をして身体を壊すこともあった。健康を犠牲にしては誰も得をしない。休む時には休み、リフレッシュした方が新しい発想も生まれ、それが事業となる可能性があることに気付いた。詰まるところ就業時間の差がストレスになる、そう岩崎は結論付けた。

 そこで、残業を一切無くし、就業時間を午前8時30分から午後5時30分までとし、30分早く5時に帰ってもよいという制度を思い切って導入した。 「女性活用の重要性を掲げる経営者は多い。しかし、当事者である女性が先に帰るのがストレスになることを理解している社長は少ない」と岩崎は言う。ランクアップでは、社長である岩崎自ら率先して育休、残業ゼロを実践するので、社員も遠慮することなく制度を利用できる。ストレスフリーを実現しているのだ。

 産休から戻ってきたばかりの人は気持ちに余裕がなく、プレッシャーが大きいので、周りの人にはユーモアを交えて「しばらく戦力にならないから、あてにしないように」と諭している。本人も期待されていないと分かると、気持ちに余裕が持てるというわけだ。

 本当に大企業ではないベンチャー企業で「残業ゼロ」といった思い切った制度を導入できるのだろうか。岩崎自身が産休で職場を離れた時期があったが、社長がいなくても会社は回ると分かったのだ。

 「なんだ、出来るかもと思った」、そこから岩崎の女性が働きやすい環境作りの挑戦が始まった。社員も早く帰れることは嬉しいので前向きに残業ゼロ制度に取り組んだ。さらに30分早く帰るために仕事の段取りも各自で工夫している。その結果、8年連続増収で2013年9月期は売り上げ47億円となった。会社が儲かれば社員に特別賞与も出す。



挑戦する風土を創る


 「女性が幸せに生きる社会をつくるが目標」と岩崎は夢を語る。自分の会社だけではなく、女性が活躍する職場が増えるような影響力がある会社にしたいと意気込む。2014年春には、初めて新卒3名を採用した。ゼロから仕事を作れる人材になることを期待している。ベンチャーでは、大企業に比べて当事者となって活躍できる機会が多い。

 「主体的に行動する情熱が大切です。少しくらいKY(空気が読めない)歓迎です」と岩崎は求める人材像について語る。将来的には、女性支援のための新しい事業を企画し、経営者に育てる方針だ。

 2年後の2015年9月期の売り上げ100億円を目標にした。高い目標だと、今までと同じことをしていては達成できないので、新しいことを考えるようになる。

 「常に挑戦する風土を創っていきたい」と岩崎は想いを語った。



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