2014年01月09日
企業家は腹をくくってチャレンジせよ/セコム創業者 取締役最高顧問 飯田亮
企業家倶楽部2014年1/2月号 新春インタビュー
安倍政権の強気の政策で、日本経済は長いデフレのトンネルからようやく脱却、株価も回復、久々に元気を取り戻している。これに拍車をかけたのが2020年の東京オリンピック誘致の成功である。景気回復が顕著になり、企業間の世界的競争が激化する今、企業家や政治家はどうあるべきか。セコム創業者の飯田亮取締役最高顧問は「企業家は打たれ強くあれ」とエールを送る。聞き手は:企業家ネットワーク社長 徳永卓三
問 安倍政権が誕生、景気も回復しています。安倍政権のこの一年間の動きをどうご覧になりますか。
飯田 割り合い流れに乗っているのではないかと思います。
問 私もそう思います。なかなかいい首相ではないかなと。
飯田 思い切ったことやっていますからね。それから結構流れに乗るのが上手い。従って周りも今の調子を乱しちゃだめだという考え方が強い。あんまり邪魔しないでおこうと。このまま流れに乗って行って欲しいと、恐る恐る周りを取り囲んでいる感じですね。
問 国政選挙もあと2、3年はないという状況ですから。いい流れが続きそうです。
飯田 このまま乗って行ってくれという気持ちはあるが、あんまり調子に乗りすぎると心配です。何でもやりたがっているので、もう少し慎重にいってほしいですね。
問 調子に乗りすぎて心配な点とは何ですか。
飯田 色んな点があります。当人は慎重にやっているつもりでしょうが。
問 海外に行き過ぎて、少し忙しすぎるかなと思いますが。
飯田 いや、あれは必要なことです。外交はそれまで空だったから。外交をきちんとやって日本の存在を示しておかないと。
問 最近話題となっている特定秘密保護法についてはどう思われますか。
飯田 あれは是非必要なことです。特定秘密保護法無しで国が成立するとは思えません。
問 特定秘密保護法がないと全部筒抜けでやられますね。そうなると同盟国だって大事な軍事機密は日本には教えないということにもなりかねない。
飯田 外国からはもともと日本の国は危ないという感覚を持たれていたからね。
問 消費税が2014年4月から8%になりますが、これについてはどう思われますか。
飯田 社会保障の問題等々、これからは増税なしではどうにもならない。そういう意味では安倍さんはついている。新聞の論調もみんながそれで行こうと、増税は仕方がないという風潮になっていますからね。
問 安倍総理は運のいい人かもしれませんね。どう思われますか。
飯田 運が無きゃ総理大臣はできません。
問 しかも2度目ですからね。普通は1度で終わりですよね。
飯田 小泉元総理が原発の問題に意見を入れてきているけどね。原油の輸入の問題から何から考えたって相当ハードルが高い。
問 何でもやれると思うとずっこけますから、少し抵抗があった方が良いということでしょうね。
飯田 話は違うけど、楽天についてはどうですか。
問 ちょっとやりすぎではないかと思っております。今回の薬のネット販売についても、自分の意見が通らなかったからといって、産業競争力会議の議員をやめると言っている。あれは三木谷さんはやりすぎじゃないかと思っていますが。どうでしょう。
飯田 いや、仰せの通りです。(笑)
問 楽天は野球で優勝したことは立派だと思いますが、日本一のセールで業者が偽装をしていたとかみそをつけた。きちっとやらないと楽天のブランドが失墜するのではと思います。ちょっと辛口ですが。
飯田 いいじゃない。辛口は重要です。
問 ソフトバンクがスプリント社を買収して今、孫正義社長は月の半分近くはシリコンバレーに滞在し、世界一の携帯会社になると頑張っています。スプリント社の買収に2兆円、スプリント社の借入金が2兆円。さらにボーダフォンを買収した時の借入金が2兆円と合計6-7兆円の有利子負債があるということですが、大丈夫かなと心配になります。
飯田 ソフトバンクの資産はどのぐらいありますか?
問 総資産は16兆円くらいになっております。
飯田 それならソロバンはとれます。企業家はそれぞれの事業の性格や内容に確信があってやっているわけだから、みんな同じようにはいかない。孫さんは孫さんのやり方でいいんじゃないですか。
問 確かボーダフォンを買収した時に飯田代表が「孫正義はたいした男だ」といわれたことを記憶していますが、今度はAT&Tとかワイヤレスに負けないでやろうということで。
飯田 いいんじゃないですか。それぞれの信念に基づいて頑張れという事です。そうじゃないと自由主義経済じゃない。
問 ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長ですが、東洋経済新報に社員の定着率が悪いと叩かれて、その後朝日新聞や日経ビジネスでも、ブラック企業ではないかと叩かれています。柳井さんは今は大人しくしておこうと、マスコミやジャーナリズムのインタビューを一切受けない状況になっています。
飯田 いいのではないですか。どうしてマスコミに出る必要があるのですか。
問 ベンチャー企業の代表選手としてマスコミに出て欲しいなと。
飯田 ジャーナリズムに出るも出ないも戦略の1つでしょう。
問 なるほど。ファーストリテイリングは2013年8月期決算で売上げ1兆円を達成、2020年には売上げ5兆円を目指して頑張っています。そのためには社員の尻も叩かなきゃいけないのかと思いますが、ブラック企業と言われています。
飯田 それで会社が潰れたというなら話しは別ですが、隆々としてやっているわけだから、誰も文句つけることはない。それぞれあっぱれです。
問 そのお話しを聞いて柳井さんも心強く思われるでしょう。
飯田 ユニクロというのはいい会社ですから、叩かれることもあります。
問 孫さんは、何年かに一度は叩かれないと生きている気がしないといっています(笑)なかなか太っ腹というか、うたれ強いところがあります。
飯田 どんな企業もみんなうたれ強くなければ生きていけない。
問 だけど柳井さんは意外と真面目ですよね。
飯田 真面目な人です。だけど相当太い。覚悟でやってます。企業家っていうのは叩かれても仕方ないと腹を括ってやっている。叩かれたから嫌だなんて思っている人は企業家に向かない。
問 神経を太く持ってやると。
飯田 柳井さんはそんなことでへこたれるような人じゃないと思います。
問 孫さん、三木谷さん、柳井さん、日本電産の永守さんにしても、頑張ってほしいなと思っています。
飯田 みんな頑張っていると思いますよ。
問 飯田さんは何が一番楽しいですか。
飯田 仕事ですね。
問 仕事って面白いですね。日清食品の安藤百福さん(故人)は仕事が一番面白くて、仕事と戯れることが一番楽しいとおっしゃっていました。
飯田 仕事は面白いに決まっている。さもなきゃやりません。
問 でも一般の社員の中には仕事が苦しいと思っている人がいるから、ブラック企業などという発想がでてくる。
飯田 面白くないなら辞めたらいい。別に縛り付けてやらせるって訳じゃない。
問 最近の若い人達をそういう意味では鍛えなおして欲しいです。
飯田 うちの社員は喜んで仕事をしています。
問 日本全国が是非そうなって欲しいと思います。
飯田 ほとんどそうなっていると思います。
問 マスコミが取り上げるからいけない。だから私は日経にも東洋経済にも文句いっています。もっと世界は厳しいぞと。
問 ところでオリンピックが日本に決まってよかったですね。
飯田 最高だね。できるだけお祭りをやっているほうがいい、喜んでお祭りをやって、その中で皆が楽しんで仕事をするならもっといい。
問 そういう面では前知事の石原慎太郎氏がオリンピックを誘致、一回は失敗しましたが、今回は猪瀬さんで成功した、石原さんの功績は大きいんじゃないかと思います。
飯田 オリンピック誘致成功は石原慎太郎さんの功績も大きいですよ。
問 セコムは前回のオリンピック村の警備を機に大きくなったと聞いています。今回のオリンピックではどのようにやっていかれますか。
飯田 まあ、どういう風になるかね。業界にも相当恩恵が行かないといけないし、うちはハイテクのセキュリティではお役に立てると思います。
問 ソビエト連邦がテレビの普及によって倒れたように、ネットの普及によって中国共産党は倒れるんじゃないかと、僕は希望的観測もあるんですが。
飯田 いや、希望的観測がだいぶ入っている。そんなにやわじゃない。あれだけの人口がいて倒れるわけにはいかない。
問 そういう面では、今後も中国の事業に力を入れていかれる予定ですか。
飯田 力は入れていくが、その重心の置き方です。
問 孫さんは、今までは中国を制するものが世界を制すると言っていましたが、スプリント社の買収をしてからは中国のことは一切口にしないようになりました、かなりアメリカにシフトしているなと思います。
飯田 中国を制するものは世界を制するなんて、言いすぎですからね。
問 なるほど。これからの日本企業のグローバル化はどこに重心を置けばいいでしょうか。
飯田 全世界です。昔のように工場を中国に作りやっていくというような、偏ったやりかたはなくなると思います。
問 アメリカは財政の崖とかで議会がギクシャクしていますが、どう思いますか。
飯田 アメリカだって昔みたいな力はないから、世界の中でバランス取るようになっていくのではないかと思います。
問 日本の力はだいぶある。
飯田 実はありますね。
問 では安倍さんを中心にまとまっていけばいいということですね。
飯田 日本の国のあり方、考え方みたいなのものは、もっとしっかり考えないとダメ。どっかに頼って生きていくような感じじゃまずい。
問 自己責任といいますか、自分で頑張らなきゃいけないと。そういう面ではアメリカとも中国とも仲良くしておきながら、アジアが成長センターになっていきますから、ここを中心に盛り立てていけば、日本の力も強くなると。
飯田 アジアにだけ依存してはいけないと思いますよ。私の考えですが。
問 そうするとどこが重要ですか。
飯田 ヨーロッパもある、アジアが成長センターというのは考えやすいが、そんなに偏った力があるわけではない。世界の中でどの国が力を持っていくかという事は、軽々には言えない。
問 セコムは業績もよく今の前田修司社長は上手くやっているのではないでしょうか。
飯田 一生懸命やっていますよ。
問 売上も利益も好調で、2014年第2四半期では利益が2桁くらい増加をしていてすごいと思います。
飯田 それはよって立つビジネスモデルがあるからです。ビジネスモデル自体が違う。
問 やはりビジネスモデルが一番肝心ですか。
飯田 重要だね。さもないとあわてて稼ぐことになる。
問 じっくりと基礎からしっかり。
飯田 基礎がしっかりしてなきゃね。急いで稼ごうと思ったって出来るもんじゃない。
問 これから会社を起こすようなひとたちにそこは強調しておきたいですね。
飯田 中々出来るものではありません。
問 セコムは2014年3月期では売上げが約8000億円をちょっと超えますよね。1兆円が目の前に来て、経常利益も1000億円を超えていますね。
飯田 この数字に対してはそう驚いてはいません。ある程度のビジネスに基づいて、到達する所までしかいかない。あわてたっていかない。
問 セコムは技術に裏打ちされながらじりじりと売上や利益を伸ばす重戦車のようです。
飯田 無理して業績を伸ばそうとしていないですからね。
P r o f i l e
飯田 亮(いいだ・まこと)
東京都出身。学習院大学政経学部卒業後、家業である酒類問屋「岡永」に入社。1962 年、大学の同窓生・戸田寿一氏と日本初の警備会社「日本警備保障」を創業。76 年代表取締役会長。83 年、社名をセコムに変更。97年、取締役最高顧問に就任。日本で初めてセキュリティ・ビジネスを立ち上げ、一代でセコム・グループを築き上げた日本を代表する創業経営者である。第1回から第8回の企業家賞審査委員長を務める。
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