• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -ビッグベンチャー

2014年01月17日

確固たる商品力で世界をまたに掛ける/良品計画の強さの秘密

企業家倶楽部2014年1/2月号 良品計画特集第2部


無印良品の店舗を訪れると、整然と並ぶシンプルな色彩とデザインの品々に魅せられる。ふと気が付くと、何かしらの商品を持ってレジに並んでいることもしばしばだ。どこか雰囲気の良い店作り。つい手に取りたくなる商品たち。良品計画の強さはどこから来るのか、その秘密に迫る。(文中敬称略)



強さの秘密1・商品コンセプト 

全世界の店長が一堂に会す



11月半ば、良品計画本社にて、1週間にわたり2014年春夏物の商品展示会が行われた。エレベーターのドアが開くと、もうそこは無印良品の世界。衣料品、雑貨、食料品に至るまで、良品計画の誇る数多くの品々が整然と並ぶ。

 どこからともなく良い匂いが漂ってくると思えば、置いてあるカレーは本物だ。テレビ番組の食品ランキングで5位以内に4商品がランクインし、視聴者を驚かせた。その他、展示会の入り口には食に関する商品がズラリと並び、2014年度も食品に並々ならぬ力を入れていることが見てとれる。

 まるで無印良品の店内にいるのではないかと錯覚してしまう。それもそのはず。ここには、世界中の店舗から店長が視察に来る。周囲には英語はもちろん、スペイン語、中国語なども飛び交う。

 本展示会は、ただ新作商品を発表するだけの場ではない。什器の配置や使用方法に至るまで考えて並べられている。商品タグをよく見ると「A、E」などのアルファベット表記が目に留まる。実はこれ、店舗のカテゴリを表しており、その商品を置きやすい店の種類が一目で分かるようになっている。全社の総力を上げて売り出していく予定の商品コーナーには、大きく「戦略商品」の文字が躍る。店長らはこうした情報を持ち帰り、自店舗の運営に生かす。


 無印良品の名を冠する商品は現在約7500アイテム。これだけ多くの商品が、新陳代謝を繰り返しながら販売されている。ただ単に商品数が多いだけではない。そこには、いくつかのコンセプトが貫かれている。

 まずは、生活において必要となるものを提供しているという点。衣料、雑貨、食品、そして家まで、まさに衣食住を網羅している。そのため、どんな季節、地域においても固定客を見込むことができる。

 しかし、生活必需品を売っているというだけでは、各部門に存在する競合との差別化が図れない。松井も「部門ごとに競合はいるが、あくまで自分の土俵で戦う」と述べる。では、松井の言う「自分の土俵」とは何か。それは、商品が一貫してまとっているコンセプトである。




禅のようなシンプルさを追求

 良品計画の社員と話していると、しばしば登場する「MUJIらしい」という言葉。まさに、「MUJIらしさ」で貫かれているからこそ、人は無印良品を手に取るのだろう。その支柱とも言うべきコンセプトは、飾らないシンプルさだ。

「体にフィットするソファ」「洗えるタートルネック」「LED持ち運びできるあかり」……良品計画のアイテムは、商品名がどれも端的で秀逸だ。名前だけで特長が把握できる程シンプルだとも言える。

 極めて明快な商品ながら、ちょっとした工夫がしてあるのも無印良品の特徴だ。例えば、「しるしのつけられる傘」。柄の部分に穴が開いている傘を見かけたことはないだろうか。実はこれ、良品計画発案の品。空いた穴にリボンなどを付けることで、持ち主を判断できるようになっている。言われれば便利だが、なかなか思い付かない。無印良品はまさに「かゆい所に手が届く」商品作りを行っているのだ。

 また、買って損をすることが無いという声も聞かれる。「決して派手ではないが、色彩やデザインが奇抜ではないので他のどんな商品にでも自然に溶け込み、合わせやすい」とワールド社長の寺井秀藏も語る。流行に左右されず、長くいつでも着られるのも魅力的だ。こうしたシンプルさ、合理性が海外でも受け入れられている無印良品。一切の無駄を削ぎ落とした様子は「禅のようだ」と評される。

 海外での人気の裏には、もちろんマーケティング力がある。「グローバルなマーケットなど存在しない。あるのはローカルなマーケットの集合体」と松井も言い切るように、現地に人を送り、生活習慣などの分析には余念が無い。例えば、オイルマネーで潤う中東ドバイではシングルベッドなど売れない。金が余っていて、キングサイズ級のベッドに一人で寝るのが普通だからだ。それが分からずに画一的な商品分配をすると、見誤る。このように、現地に溶け込んだ展開を心がけている。

 海外での価格は、物流や関税のために若干高めに設定せざるをえない。それでも売れているというから実力は本物だ。良品計画のマーケティング力は他の企業が追随するほど。巷では「無印良品、ユニクロ、ZARA、H&Mが入ればそのショッピングモールは勝ち組」とまで言われている。

 このように、コンセプトが世界共通で認識され、さらに現地調査に基づいてその土地に適応した商品を店頭に並べていることが、良品計画が海外で飛躍する所以ともなっている。





ライフスタイルの変化に適合


 無印良品が提供しているのはライフスタイルである。しかし、そもそも彼らの提供するシンプルな生活はなぜ受け入れられたのか。その裏には、大きな社会構造上の背景が存在する。

 アメリカの心理学者マズローが提唱した欲求のピラミッドをご存知だろう。人間の欲求は5段階で構成され、低次の欲求が充たされると、より高次の欲求に至るというものである。

 具体的には、まず食欲・睡眠欲といった生理的欲求、次に健康や安全な暮らしを求める安全欲求、そして仲間を求める社会的欲求がある。それらが満たされると、他人から認められたいという尊厳欲求、そして最終的には創造的な活動を求める自己実現欲求へと到達する。

 日本でも、戦後の高度経済成長期からバブル経済期にかけて、人々は白物家電、自動車、家という具合に、モノの価値を追求してきた。それは、モノが社会におけるステータスとしての機能を果たしていたためである。ステータスとは他人から見られることを意識して初めて存在する概念である以上、人々は尊厳欲求のために消費活動を行ってきたと言える。

 しかし、バブル崩壊と長いデフレの時代を経て、人々のライフスタイルは変容した。消費の中心は実物商品(モノ)からサービス(コト)へ。西洋から流入した個人主義が台頭して価値観が多様化する中で、自分なりのライフスタイルを追求するなど、自己実現型の欲求に移っていったのである。

 そこにうまく合致して登場してきたのが、前述した「MUJIらしさ」の概念だ。シンプルで質素、しかし合理的で使い勝手が良いというスタイルが、MUJIファンの心を掴んで離さない。

 モノを買うことにより、その先にあるコトも手に入る。大量生産・大量消費の時代が終焉した今日、これこそ無印良品が提供している最大の付加価値と言えよう。むしろ、無印良品のファンはそうした「コト」を潜在的に意識しているように見える。

 こうした社会における人々の欲求度合いは国ごとに異なる。すでに国民の大半が日本と同じような高次元の欲求に到達している先進国はもちろん、今後は発展途上国も、経済発展に伴って上位の欲求へ移行していくことが予想される。良品計画が次に狙っていくのがインドや南米の市場というのも大いに頷ける話である。波が来る前から沖に出ている無印良品がグローバルに今後も伸び続けていくのは必至だ。



強さの秘密2・ 開発力

あらゆるヒントを開発に繋げる


 では、商品力溢れる「MUJIらしい」商品はどのようにして生まれてくるのだろうか。

 一つの方法として、お客からの要望を開発に取り入れるシステムを持っている。年間17万件も寄せられる要望に応えて開発を行い、廃盤となった商品を復活させることもある。

 さらに、良品計画の行っている手法の一つとして、一般の自宅に訪問するというものがある。社員の友人などの協力を仰ぐことが多いが、しばしば公募も行う。一般家庭内で雑然としている部分を、「MUJIらしい」コンセプトを軸に、シンプル、合理的、実用的にして適応することで商品開発を行うのだ。そうしてできた商品の例として、「PET詰替ボトル」がある。シャンプーは多種多様な会社の製品が使われることが多いため、風呂場で乱雑に置かれやすい。そこで、統一感溢れるボトルにすることで、見た目も良く、シンプルな置き場となる。


強さの秘密2・ 開発力


 その他、絡まったコード類の改善のために「延長コードシステム」、机に無造作に置かれた小物の収納を可能とした「壁に掛けられる家具」なども、家庭からヒントを得て作られた商品である。

 世界中からのインスピレーションによって商品開発を行う「ファウンドムジ(Found MUJI)」の取り組みも興味深い。フランスで使われていた半円型の洗濯物干しから生まれた「アルミ壁面用ハンガー」、中国・景徳鎮の磁器を元に商品化した「青白磁の器」などがこれに当たる。

 無印良品のコンセプトに合致した商品をそのまま取り入れる。こうしたマーケットインの不断の取り組みによって世の中のニーズを汲み取り、商品の新陳代謝を行っているからこそ、無印良品は色褪せることがないのである。




商品そのものの力だけで勝負

 無印良品の商品は、どこか洗練されているように感じる方も多いのではなかろうか。それもそのはず。実は、「ワールドムジ(World MUJI)」という取り組みの一環として、世界中から多くの著名なアーティストが無印良品の商品デザインに参画している。

 ヒット商品となっている「壁掛式CDプレイヤー」は深澤直人のデザイン。その他にもジャスパー・モリソンら大物が並ぶ。ただし、彼らの名前が表に出ることは無い。それがむしろ、商品そのものの力だけで勝負するという強烈なメッセージとなっている。

 普通はブランディングと言うと、有名芸能人を使った広告やテレビCMによって消費者にインパクトを与えていく方法を想起するが、良品計画は違う。「自然、当然、無印」、「人類は、温暖か。」、「くりかえし原点、くりかえし未来」。決して派手ではないが、言葉や風景写真、そして商品そのもので自らの付加価値を伝えている。これこそが無印良品流のブランディングなのだ。



強さの秘密3・仕組み化 

仕組み化で全体最適を図る


 さて、商品力と開発力を軸に見てきたが、商品がいくら受け入れられても、チェーン展開する以上、店舗のオペレーションができていなければ永続的な収益は見込めない。そこで必要となってくるのが業務を回していく仕組みだ。

 仕組みの無い状態で、店舗運営を店長の裁量に任せた場合、松井の目から見ても限りなく100%に近い店舗を作る優秀な店長はいる。しかし一方で、自由な独自性が裏目に出て、客観的に見ると及第点に満たない店舗も出来てしまう。

「部分最適ではなく全体最適を行わなければなりません」

 松井はこの「全体最適」という言葉を好んで使う。完成度90%以上の店舗と60%未満の店舗が並立するより、全ての店舗が80%以上の完成度となるような仕組みを構築した方が全体最適に繋がるというわけだ。

 そこで作られたのが良品計画秘伝のマニュアル「ムジグラム(MUJ IGRAM)」である。最初はファイル1冊分であったが、徐々にページ数を増やし、カテゴリ分けを重ね、今では13冊分にして約2000ページのマニュアルとなっている。

 元々松井がしまむらのマニュアルに影響を受け、自社でも同じものを作ろうと企画したが、他社のマニュアルをそのまま移植しても良品計画で使えるはずがない。結局は、マニュアルの持つ本質的なコンセプトのみ参考にする形で、実際のモノはゼロから全て作り上げた。


強さの秘密3・仕組み化 


仕事の本質を突き詰め変化し続けるマニュアル


 ムジグラムは表面的な業務内容が羅列されているただのマニュアルではない。仕事の目的が明記されているのが特徴だ。例えば「掃除とは」の項目を見てみよう。

 上の写真のような具合に掃除やレジ応対といった単純と思える業務でも、その意味から方法まで丁寧に説いている。

 また、抽象的概念は一切取り払っているのも興味深い。例えば「整然と並べる」と書いても、「整然」の価値観は人によって異なる。そのため、商品を具体的にどのように並べればよいのか、写真付きで説明している。あらゆる業務を「見える化」することで、新人が入ってきても対応できるようになっている。

 マニュアルと言うと、多くの人は社員を型にはめ、柔軟性を奪うもののように感じるだろう。しかし、それは完成した時点で満足してしまっている、変化の無いマニュアルの場合である。

 その点、ムジグラムは変化し続けられるようにできている。社員が変更すべきだと感じれば、その旨を提出すればいい。変更することになれば、まず店長に告知・説明が届き、理解度を図るためのテストも行われる。その店長が店舗スタッフに徹底して伝えることで、それぞれの店舗への浸透を図っている。

 表面的な業務を記載した、作って終わりの自己満足型マニュアルから脱却し、業務の本質まで理解してもらうことを目的とした、変化し続ける仕組みを生み出したことは、良品計画の根幹を支える強みとなっている。



強さの秘密4・社風 

決めたことは徹底して守る


「おはようございます!」

 午前8時半、東京・豊島区の良品計画本社ロビーに、元気な声が響き渡る。エレベーターホールの前に陣取るのは3人。出社してくる社員たちにはもちろん、清掃員や宅配業者にも例外なく声をかける。中央に立つのはなんと松井その人だ。

 この「あいさつ隊」の試みが始まったのは1年ほど前。最初は役員のみであったが、最近ではボランティア社員の姿も目立つ。今でも、月に1回は松井が率先して声を張る。「以前はもっと頻繁に立っていましたが、会長がいたら変に緊張してしまうと社員から言われましてね」と苦笑する松井。それでも、店舗スタッフの清々しい応対を見るにつけ、あいさつの文化は全社に浸透していると実感できる。

 仕組み化はもちろん重要だが、忘れてはならないのは、どんなに良い仕組みを作ろうとも、最終的にそれを運用するのは人間だという点だ。そこで必要なのが社風である。

 あいさつ隊の他、整理整頓、「さん」付け運動、ゴミ拾いなど、小さなことからコツコツと試みてきた。「部下は上司の背中を見て育つ」と松井が言う通り、社内では誰もが会長である松井のことを「松井さん」と呼び、ゴミが落ちていれば松井も自ら拾う。

 松井も出席し、毎週火曜日に必ず行われる内部統制業務標準化委員会では、社内での取り決めがしっかり守られているかが話し合われる。

「申し訳ありません。先日は商品展示会の影響で会議が1時間を超えてしまいました」

 会議は1時間以内というのがルール。また、残業を無くして生産性を向上させるため、定時退勤が厳守とされている。会長の松井と言えど例外は無い。午後6時に退社しなければ、チェックが入る徹底ぶりだ。「全体最適」と同じくらい松井がよく口にするのは「計画5%、実行95%」。一度始めたら、怠らずにきちんと実行する。そうした文化も、今や社風として浸透しているように見える。


強さの秘密4・社風 


苦労が人を育てる


 人事についても仕組み化がなされている。人材委員会にて役員が話し合い、部長40人、課長100人の配属を決めることになっているが、その際に用いるのが「5BOX(ファイブボックス)」というシステムだ。

 これは縦軸を「パフォーマンス」、横軸を「潜在能力」とし、それぞれを「高い」「合格」に分けた4つのボックスに、そもそも「パフォーマンス」が低い社員を加えた5つのカテゴリを作り、人事異動を行う制度である。これにより、社員それぞれに見合った部署や、海外を含む店舗に配属となる。

 興味深いのは「パフォーマンス」が不合格となってしまった社員。彼らは「改善かローテーション」という欄に落ち着くが、それで「能力が低い」というレッテルを貼られることは無い。「仕事の能力は人間関係によって大きな差が生まれることがある」という松井の考えのもと、部署を変えたりすることによって適材適所が図られている。

 そもそも、良品計画では部署の異動が多い。一つの畑に固執してしまうと内部対立の温床にもなりかねないため、様々な役職を経ることで他人の苦労が分かる人材に育つようになっている。

 また、店長経験をさせたり、何ヵ月間か海外に送ったりすることも多い。言語能力の高さではなく、日本において優秀な社員を海外に出すよう心がけている。「苦労が人を育てる」というのが松井の信条。「誰だって最初はきちんと泳げない。でも、水に落とすと一生懸命泳ぐものです」と語る。その言の通り、海外に送った社員たちは短期間で逞しく育っている。こうして世界で鍛えられた多くの戦士たちが次の時代を担う良品計画の飛躍は、まだまだ止まらない。



コメントをシェア

骨太対談
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top