トピックス -ビッグベンチャー

2014年03月11日

孫の代まで豊かな日本を創る一翼を担う/サインポスト代表取締役社長 蒲原寧

企業家倶楽部2014年4月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.8

犠牲の上に今日の繁栄がある

 2013年、蒲原寧はサインポストの役員らと共に鹿児島県の「知覧(ちらん)特攻平和会館」を訪れた。そこでは、戦争による数多の犠牲の上に今日の繁栄があること、リーダーの判断ミスが引き起こす結果の怖さを再認識した。元来、「孫の代まで豊かな日本を創る一翼を担う」との想いで起業したが、これまで以上に「堅く熱い想い」で経営することを誓った。

 サインポストは金融を主軸としたコンサルティング会社だ。取引先の9割が都市銀行、地方銀行、カード会社、証券取引所などの金融、残りの1割が国や地方公共団体などである。主要業務はプロジェクト全体の支援を行うPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)、システムのコンサルティングや開発だ。官公庁からは情報担当役員であるCIO(チーフインフォメーションオフィサー)補佐官の業務を請け負う。2013年2月期の売上高は11億5千万円。リーマンショックの一期を除いて、右肩上がりに成長している。

 勘定系と呼ばれるATM、預金、ローンなどの金融システム移行のプロジェクトは高額な為、数行の地銀でシステムを共同化している。数百億円程度の予算を組み2?3年で実施されるが、遅れは許されない。仮に1ヶ月遅れれば数十億円の損失になる。品質も確かなものでなければならない。ひとたびトラブルが起これば、銀行の経営体制にまで影響が出かねないからだ。同社の深い金融の知識は、銀行の要求をシステムに落とし込むだけでなく、一歩進んだ提案や解決法を提示可能だ。徹底的に顧客の立場に立ち、システム構築以前の全体構想を作る段階から、取引先と共にプロジェクトを遂行していく。その為、新規開拓は顧客からの紹介も多い。


犠牲の上に今日の繁栄がある

価値の通信簿

 蒲原は07年に銀行を退職しサインポストを設立した。当時41歳、「行員時代は仕事を早く切り上げてビジネスモデルを考えていた」と大阪出身の蒲原は明るく冗談めかして言うが、07年は蒲原が入行した三和銀行が現在の三菱東京UFJ銀行へと再編された翌年。1990年のバブル経済崩壊を発端に98年には銀行持株会社が解禁され、銀行の提携・合併が繰り返されていた時代だ。そんな中での業務が困難だったことは想像に難くない。蒲原はシステム部でキャリアを積み再編を見届けた後、独立した。

 現在はバイタリティー溢れる蒲原だが、小学生の時には3年間入院生活を送り、大学生時代には交通事故で九死に一生を得た為か、「生かされている」という気持ちが強いという。先人が創り上げてくれた豊かな日本を永続させていく為に、自分の会社がもたらす付加価値も国際競争力を増していくことになると考えている。

 蒲原は「世の中に価値を生み出したい」と繰り返し語るが、それは経営理念でもある。価値を図るものは社内で「価値の通信簿」と呼ぶ「営業利益」であり、「本業に徹すること」だと常に社員に語りかけている。経常利益に目が行きがちであるが、不動産の売買益などを含む「経常利益」に重きを置くことはしないと断言する。たとえ業績を上げられたとしても、本業をおろそかにする危険性があるからだ。



誠実な経営

 サインポスト創業以来、社員には財務諸表を全て開示している。蒲原は「経営者の使命の1つは会社の状況を包み隠さず話すこと」であり、社員が判断する材料をきちんと示すべきだと考え、毎月1回全社会を開き蒲原自ら経営の状況報告を行う。具体的には営業利益、新規事業の状況、経営施策、採用等について説明。そして顧客からの感謝や労いの言葉を全社で共有する。顧客と実際に触れ合うことのない間接部門の社員はそこで顧客の反応を知ることができ、他の社員の活躍を知ることで社員間の競争にも繋がるのだという。総評はわかりやすく絵文字で発表する。笑顔、無表情、泣き顔の三段階だ。

 社員に求める資質は「誠実」だというが、蒲原自身も経営や社員に誠実に向き合っている。リーマンショックで初の赤字に陥った時も蒲原の年収を半減した上で、通常給与の2ヶ月分支給していた社員の賞与を1ヶ月分に減額した。しかし、社員は全員納得した。そして具体的な方策を示し「こうすれば乗り越えられるからがんばろう、来期は必ずボーナスも全部戻す」と一致団結した結果、見事V字回復を果たし、晴れて賞与も満額に戻したのである。

 同社を訪れると、広々としたオフィスは数人のスタッフが残っているのみ。照明もスタッフがいる部分だけ照らされている。サインポストの社員は「IT部門の一部員として」をモットーにプロジェクトを取引先と一緒に実行していくため、外出している事が多い。

 では、どのように会社としての一体感を高めているのだろうか。平均年齢35歳の若いIT企業だが、社員旅行、家族ぐるみで参加できるよう一家族1000円のバーベキュー大会、忘年会など従来式とも言える行事を実施している。中でも忘年会は東京湾クルーズ船をチャーターして大規模に行う。社員らは一芸を披露、バンドなども結成され、例年非常に盛り上がる。都内のホテルで年に一度行われる経営計画発表会ではその年の最優秀者の表彰も行う。

 さらに社内限定の単語を活用している。その月の活躍した人材を社員の前で表彰する「みんパチ(みんなでパチパチ)」、お客様の立場に立ち行動することを「おきゃスタ(お客様スタート)」などを意識的に会話の中に入れ、施策を徹底的に浸透させていく。



世の中から最も信頼されて必要とされる企業集団に 

蒲原は永続する会社にしたいという思いで経営してきたが、営業利益を最大化していくためにこれまでと違うアプローチが必要な時期に来ていると感じている。そのため、「世の中から最も信頼されて必要とされる企業集団に」と新たなスローガンを作成、「世界中から認知される日本有数の企業」を目指す。社内全体で理念を共有すべく、約5分のプロモーションビデオも製作中だ。今後20年以内に営業利益500億円、売上げ1兆円をめざす。

 蒲原が考える先進国の事業ポリシーは二つだけ。一つ目は徹底的に顧客の立場に立つこと、付加価値が高ければ価格競争に巻き込まれない。そして二つ目は全く新しいものを生み出すことである。

 そのため、主力のコンサルティング事業を着実に増やしていく構えだ。さらに、顧客の悩みをすくい取り、更なる金融ソリューションを作成していく。人口減少に苦しむ地方の地銀が全国展開するためのプラットフォームの開発や、銀行業務で切り離せないのがバッチ(一括)処理であるが、その処理速度を10分の1程度に短縮したベンチャー企業と組み、業務パッケージとして販売するなど、さまざまな方策を準備している。

 加えて、新たな商品の開発を行なっている。自動車や電化製品や洋服に至るまで日本発のグローバルスタンダードの製品は数多いが、ITにはハード、ソフト共にそうした商品が生まれていない。そのことを蒲原は常々不甲斐なく感じていたが、「それならば自分が」と現在開発中だという。ハードとソフトの両面で従来とは全く違う商品をリリースしていく予定だ。創業以来の希望である障害者雇用も実現させるつもりでいる。

 サインポストとは「道しるべ」の意。金融業界の未来、そして日本のIT業界の道しるべになるべく走り続けるサインポストの行く先に期待したい。(庄司裕見子)



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