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トピックス -ビッグベンチャー

2014年06月05日

5年後に1000億円企業 これから100年続く企業でありたい/エイチームの21世紀戦略

企業家倶楽部2014年6月号 エイチーム特集第1部


名古屋から急成長企業が躍り出た。エンターテインメント事業とライフスタイルサポート事業を2本柱としたエイチーム。創業17 年で年商100 億円を突破、「5年後には1000 億円を目指す」と社長の林高生は全社員に号令をかける。「みんなで幸せになれる会社にすること」「今から100年続く会社にすること」を合言葉に成長路線をひた走る。 ( 文中敬称略)



入社式の誓い

 2014年4月1日午前10時30分、名古屋駅近くの名古屋ルーセントタワー32階のエイチーム「社内広場」。34名の新入社員をはじめ450人の全社員が集まって、入社式を行った。

 「今年の新入社員は顔で選びました(笑)」と林が会場の雰囲気をなごませたあと、まじめな顔で新入社員に語りかけた。

 「新入社員の皆さん、ご入社おめでとうございます。またエイチームに入りたいと思っていただき、入社してくれたことを心から感謝しています。エイチームという会社をさらに成長させたい、エイチームを通じていろいろなサービスを世の中に展開したい、など、さまざまな想いを胸に、今日のこの場にいてくれていることと思います。皆さんが今日胸に誓ったその気持ちを、決して忘れないでください」

 「また、今この場にいる社員の皆さんも、それぞれの入社式を経験してきたことと思いますが、その場がエイチームであろうと、(中途採用の人は)別の会社であろうと、入社式の時の気持ちを今一度思い出してほしいと思います。すべてはそこに尽きると思います。これからもみんなで一緒に成長していきましょう」

 林の言葉通り、エイチームは急成長している。創業17年で年間売り上げ100億円を突破、経常利益は17億円(2013年7月期)に達した。2012年に東証1部に登り詰め、5年後に年間売り上げ1000億円を見据えている。


入社式の誓い

苦難の連続の青少年期

 しかし、ここまで来るには数々の苦難があった。まず、林高生の生い立ちに遡らなければならない。林は将来有望な陶芸家の長男として1971年に生まれた。9歳までは何不自由ない裕福な家庭だった。 

 それがある日、暗転する。父、孝太郎が41歳の若さでがんで亡くなったのだ。見る間に幸福な家庭は崩壊する。一家の柱を失った林家の家屋は競売にかかり、2000万円の借金が残った。

 林はこの借金を返すために夢中でアルバイトした。中学時代は勉強どころではなくアルバイトに明け暮れた。そのため高校受験に失敗した。多感な青春時代の受験失敗は大きな傷跡を残すが、林にはそうした感傷に浸る暇もなく、借金返済のことだけが心に重くのしかかった。

 借金返済のためには自分で働くしかない。25歳の1997年、岐阜県土岐市でソフトウェアの受託開発を始めた。企業家、林高生の誕生である。

 何冊か経営書を読み、見よう見まねで企業家の道を歩んだ。幸いコンピューターが好きで、小学5年生の時、パソコンを買ってもらった。独学で簡単なゲームをつくり、友だちと遊んだ。このゲーム作成が役立ち、97年の創業から2003年まではもっぱらソフトの受託開発に従事した。


苦難の連続の青少年期

創業期の2つの事件

 しかし、一向に生活は楽にならなかった。次から次に苦難が襲いかかり、一時は「会社をたたもうか」と思ったほどだ。

 林が今でも鮮明に憶えているのは2つの事件である。1つは創業間もなく、林がまむしに噛まれたのである。サンダル履きで魚釣りに出かけたところ、まむしに足の親指を噛まれた。

 まむしの毒が回り、右足は通常の2倍ほどに腫れ上がり、目にも毒が回った。医者は林に絶対安静を申し渡したが、ちょうどその頃、ソフトの開発を受託していた。納期に間に合わせなければ、次の仕事は来ない。

 林は命の危険を承知で病院のベッドを抜け出し、ソフトの開発を続け、公衆電話にかじりつき、発注者と交渉を続け、何とか納期に間に合わせた。正に命懸けの仕事であった。

 もう1つは幹部社員の裏切り。ベンチャー企業には、社員の裏切りはつきものだ。ソフトバンクの孫正義も創業時、ライバル企業から社員の集団引き抜きにあい、苦労した。林もその洗礼を受けた。

 ある日、たまたまパソコンで調べものをしていたところ、幹部社員のメールを見た。それは林にとって驚くべき内容だった。幹部社員がゲームの開発システムを盗み、その開発システムをもとに独立しようと企てている内容だった。

 林はすぐさま別の開発担当者に電話を掛け、もし、幹部社員がいなくなってもエイチームの開発に支障はないかと尋ねた。開発担当者の答えは「大丈夫です」。その答えで林の心は決まった。

 翌日、全社員集会を開き、幹部社員の裏切りを公表した。独立を企てた幹部社員も出席していた。林は静かに聞いた。

 「このメールは確かに君のものか」

 「そうです」

 「わかった。君はわが社を裏切った。即刻首だ」

 同時に、この集会で経営理念をつくった。

 1つは「みんなで幸せになれる会社にすること」。もう、社員の裏切りは真っ平ご免だ、という林の願いがこめられている。

 もう1つは「これから100年続く会社にすること」。エイチームの永遠の命を願う林の切なる気持ちだ。



ゲーム制作で業績好転

 業績が好転したのは、恋愛シュミレーションゲーム「美少女トラブル学園」を自社開発したこと。これがヒット、月100万円ほど儲かり、一息ついた。次に携帯電話の着うたを開発、ピーク時は月商2億円ほどになった。

 飛躍的に拡大したのはスマートフォン向けのゲームを開発したことによる。「ダークサマナー」というゲームは世界的に大ヒット、月商3億円も売れた。

 このゲームは発表から1年半で世界700万ダウンロードを記録したスマートフォン向けソーシャルゲーム。「ダークファンタジー」の世界観が特徴で、多数の著名クリエイターが描くモンスターたちが人気だ。

 このほか、レギオンウォー、AKB48ステージファイター、エターナルゾーン(オンライン・ロールプレイング・ゲーム)など立て続けにヒット、ゲームメーカーとして不動の地位を築いている。

 ただ、ゲームは爆発的に売り上げを伸ばすものの、空振りに終わるケースも少なくない。ヒットしたゲームも長期間売れるわけではない。ゲームは水物なのだ。


ゲーム制作で業績好転

もう1つの事業を開発

 そこで、林は考えた。「経営の安定性を考えるには、もう1つの柱をつくらなければならない」。そこで第2の事業として考えたのがライフスタイルサポート事業。いまの消費者は何か探しものをする時、まず、インターネットで調べる。

 そこで、「不安の解消」をテーマに、日常生活に密着した比較サイトや情報サイトなどを企画・開発している。

 



「引越し侍」ヒット

最初に手がけたのが「引越し侍」。全国の引越し業者200社と提携、消費者に条件に合う業者を最大10社まで紹介する。料金まで紹介しているので、消費者は条件に合った業者を選ぶことが出来る。

 エイチームは提携業者から紹介料を受け取る。その額は月間1億2000万円に達している。

 
 「ナビクル」は車の査定、買い取り紹介サイトで、簡単な車の情報を入力するだけで、最大10社の買い取り価格を紹介する。消費者は10社の中から1番高い業者を選択することが出来る。同サイトでは月2万件を紹介、月商2億円を売り上げている。

 結婚式場の紹介もしている。「すぐ婚navi」というサービスで、半年以内に結婚式を挙げたいカップルに関東、関西、東海地方の結婚式場を紹介している。現在、月に1000組弱を紹介、1億円を稼いでいる。「カップルの中には、1ヶ月以内に式を挙げたいという人が意外に多いのです」と担当者は語る。

 「ラルーン~女性の悩みケア~」は無料で生理日・排卵日予測ツールが使える。女性向けの体調管理、悩み相談サイトで、ユーザーが急増している。

 現在、109億円の売り上げのうち、40%はライフスタイルサポート事業。「さらに、サイトの数を増やし、経営の安定化を図りたい」と林は語る。



2012年東証マザーズ上場

2012年2月29日、エイチームは東証マザーズに上場が決定した。400年に1度という「うるう年」の2000年2月29日、会社を登記して12年後に株式上場を果たした。

 この日、林はナゴヤドーム球場を借り切り、マザーズ上場を祝う晴れ舞台を演出した。5万人収容可能なナゴヤドームで300人の社員がマウンド上に集った。林が全社員に向けて発した。

 「たった今、エイチームにマザーズへの上場承認が下りました!」

 一斉に歓声が沸き起こった。林たちが待ちに待った株式上場である。「これで社員のご両親が安心して息子や娘たちを送り出すことが出来る」。林はそう思うと、創業から15年間の苦労が吹き飛んだ。

 そのあと、マウンド上で上場後初めての取締役会を開いた。全員、ジャージを脱いで、スーツ姿の正装に着替えて取締役会に臨んだ。



社長のいたずら

 創業時、惨々苦労したが、今は明るい元気な社風である。それは多分に林のいたずら好きの性格から来ているようだ。

 どんないたずらをするか。たとえば、新入社員の歓迎会を済ませ、お開きとなった。いざ、会場の勘定を払う段になった時、そこの勘定係が暴力団に豹変した。70万円の新入社員歓迎会の費用が数倍多く請求され、担当者が青くなる。新入社員もびっくり驚転、楽しかった歓迎会は一転修羅場と化す。

 実は林が仕組んだ ”ビックリテレビ”で、暴力団はヤラセ。数分後にお芝居とわかるのだが、新入社員は一瞬恐怖におののく。林は社員が驚くのを面白がる。こんな風に林は時々、いたずらを仕掛けては、社員をびっくりさせる。



5年後に1000億円の売り上げ

 創業17年で売り上げ100億円を突破したエイチームは5 年後は1000億円の大台を狙う。

 その第一弾として、無料チャットで急成長著しいLINEの親会社であるNHNエンターテイメントと2014年1月に合弁会社を設立した。両者でLINE向けのゲームを開発する計画だ。

 LINEはチャット通話で若者の間で人気急上昇、海外を含めたユーザー数は3億人を超えるという。そのプラットフォームにゲームを供給することになれば、エイチームの海外事業は飛躍的に伸びそうだ。



社長をいっぱい育てたい

 林は自分の経験から社長経験者から後継者を選びたいと思っている。「社長」こそが当事者意識を持ち、自分と同じ土俵でものを考え、行動できると思うからだ。

 「社長」を経験していない社員はいわば車の助手席に乗っているようなもので、同じ目的地に向かっていても、意識は全く違うと林は思っている。

 そのため、各事業部門を分社化し、「社長」を創っている。すでに「株式会社引越し侍」(社長熊澤博之)、「株式会社A・T・サポート」(同熊澤博之)、「株式会社エイチームライフスタイル」(同間瀬文雄)、「株式会社A・T・brides」(同大崎恵理子)の4社を設立した。今後、これら子会社の社長たちは自分で資金繰りを考え、人事を実行する。10社、20社と増えて行くだろう。



難関を見事に、突破する”特攻野郎”たち


 「エイチーム」という社名は1980年代にアメリカで人気を呼んだテレビ番組「特攻野郎Aチーム」にちなんで命名した。いろんなプロフェッショナルが力を合わせて難題を片付ける内容に林は感銘を受けた。

 そこで、創業した時、社名を「エイチーム」とした。いろんな事業分野の専門家が集まり、見事難問を解決する颯爽とした会社になりたいとの林の願いがこめられている。

 これから1000億円企業を目指して、特攻野郎たちがどんな活躍を見せるか、楽しみだ。



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