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トピックス -ビッグベンチャー

2014年06月17日

バランス感覚に優れた人格者/林高生の人的ネットワーク

企業家倶楽部2014年6月号 エイチーム特集第5部


 早くに父を亡くし、幼い頃から苦労を重ねた林。しかし、それだけにバランス感覚に優れ、情に厚い。社員に愛されエイチームを上場に導いた林の魅力とは何か。林をよく知る5人に聞いた。 ( 文中敬称略)



若い時の苦労の経験が人を育てる

株式会社マプス代表取締役 横山順弘 Yoshihiro Yokoyama


若い時の苦労の経験が人を育てる


 「若い頃から苦労してきているので、挑戦する人を応援する経営者」

 マプス社長の横山は林の人柄についてこのように語る。横山が林に初めて会ったのは今から6年前の2008年。ちょうど中古車情報のプロトコーポレーション副会長を60歳になったのをきっかけに辞めた時だった。横山はこれからの人生は自分の経験を通して得た知識や経営ノウハウを若い人に伝え、資金面でも支援したいと投資育成事業を目的としたマプスを創業した。

 名古屋の先輩経営者として今でも2ヶ月に1度、林ら若いITベンチャー企業家9人と勉強会を開催している。会の名前は「でらITミーティング」(「非常に、大変な」の名古屋の方言「でら」と「会いたい」を掛けあわせた造語)と名付けた。メンバーは交代で自分の知っている面白い人を講師に招き、経営資源である「ヒト、モノ、カネ」についてお互いの意見を交わす。経営者の集まりだけあり、「ヒト」に関する採用や育成の話題が多くなる。

 今では林の率いるエイチームは東証一部の上場企業に成長し、名古屋を代表するIT企業になった。当然、林の一挙手一投足が後輩の経営者から注目される存在だ。

 「口数は決して多くはないが、周りの人の話をよく聞き、物事をよく考えてから自分の意見を話すタイプ」と横山は林について語る。常に関心があるのは、組織をどうするかについてで、事業部制やチーム制を試してみたり、組織を作っては壊したりと、試行錯誤を繰り返し一定ではないことが林の経営者としての魅力だという。

 「駄目なものはスパンと切れるクールさを持っているのも企業家として素晴らしい。情だけでは判断しない」と林の経営手腕を評価する。トップが二足のわらじを履くのは当たり前だが、いずれは経営に集中し、現場は誰かに任せなければならない時が来る。だから早くから人を育て、どんどん権限を渡していかなければならない。

 「経営感覚を持った幹部を育てるには社長をやらせるのが一番良い。長い目で見れば、エイチームが子会社化を進めているのは正しい選択である。会社を成長させるためには人を育てることが最も重要」と横山は言う。

 会社が大きくなればなるほど、安住してしまうのも世の常だが、それが大企業病の始まりである。社長や役員がうちの会社は大丈夫だと安心していたら、下の社員はもっと油断してしまう。将来、自分の会社がどうなるか、倒産してしまうのではと心配しているのは常に社長である林であろう。だから、業績が上向きでも、常に新しいことに挑戦しているのだ。林の頭の中にあるのは今ではなく、将来の会社の姿である。

 「危機感を持ち続けられるかどうかがトップに問われている」と横山は社長の心構えについて語る。

 「若い人には5年先のイメージが出来るかどうか。目標を定めたら未来から現在を見て、ギャップを書き出し、優先順位を付けて実行あるのみ」と事業成功のコツを語る。会社をどうしたいかは社長の意志次第。いつも可能性は若い人の前にある。目指すものがあれば必ず出来る。

 林に対しては、50才を過ぎてからが経営者として一番脂が乗って来る頃だと横山は考えている。今後10年間は沢山会社を作ってみるのもよい、肌で感じる実体験が何よりもノウハウになると助言する。

 「夢を語れない人は社長になれない。林社長は夢を語れる人物」と横山はエールを送った。



東海の朋友

ネクステージ 代表取締役社長 広田靖治 Seiji Hirota
 東海の朋友


 中古車市場の拡大を目指す業界団体JADRI(日本自動車流通研究所)の会員企業であるネクステージの社長を務める広田は、ある懇親会で林と出会った。互いにゴルフ好きで、同じ東海地方出身の経営者という間柄だったため、2人が打ち解けるのにはさほど時間を要さなかった。

「林さんは今、ゴルフにハマっているんですよ。我々自動車業界の人間はゴルフ好き、酒好きが多く、共通の趣味を持つ林さんとはすぐに交流が深くなりました」

 広田にとって林は、年齢が近い経営者ということもあり、身近な存在だ。実際、名古屋に若手の上場経営者は少なく、特にゲーム事業を主軸とするビジネスモデルで新規上場を果たした会社は今まで無かった。

 林の第一印象を問われた広田は、「正直、最初は機械オタクの方かなと思っていました。でもゴルフ好きだし、お酒はザルのように飲むので、とてもワイルドでしたね」と答える。

 広田と林は2カ月に一度の割合で会食に行き、お互い経営について議論を交わす。儲けや効率を重視し、スタッフとの調和を軽視する経営者が多い中、林はなるべく自社の関係する行事には顔を出すよう心掛けているという。

「林さんは自分で舵を取るというより、人に任せて自分の分身のような経営者を育成しているイメージが強いですね」

 若き2人の経営者の共通点は、出身や趣味だけではない。いずれも、幼少期に尋常ならざる苦労をしている。林は早くに父を亡くし、中卒で働かざるを得なかった。一方、広田も母子家庭で4人兄弟のためお金に困り、進学を諦めた過去がある。

「林さんも私も、中学生の時から早くお金を稼ごうと考えていましたね。家族に迷惑をかけないためにも、絶対失敗するわけにはいきませんでした」

 このような姿勢は、エイチームの事業からもにじみ出ている。林は主軸のエンタメ事業を手掛ける傍ら、日常生活に密着した比較サイトや情報サイトの企画・開発及び運営をするライフスタイルサポート事業に従事している。

 この両事業は、内容はもちろん、利益体質が全く異なる。ますます競争が激しくなるであろうゲーム業界を思えば、いつ来るやもしれぬ危機に備え、林は新たな柱であるライフスタイルサポート事業を展開しているのだ。「今から100年続く企業」という理念の下、「市場環境が大きく変化しにくい安定的な事業を持ちたい」との林の言葉通り、これからも継続的に利益があがる市場を開拓した。

 ライフスタイルサポート、すなわち人々の暮らしに密着した事業は、一旦板につけば比較的安定して運営及び発展が出来る。常に未来志向で策を講じていく積極的な会社経営に同調した社員も多いはずだ。

 そんな林だが、どんな時でも遊び心を忘れない。冗談を言ってはいつも周囲を沸かせている。

「彼は笑わせるツボを知っています。JADRIの会長とゴルフをした後の飲みの席でも、『僕らが本気出して会長に勝ったら駄目でしょ』などと平気で言ってのける。いつもクールな彼が真顔でジョークを飛ばすのが最高に面白いですね」

 そんな林に、広田はこうメッセージを送った。

「同じエリアの経営者で歳も近いですし、友人としてこれからも色々な付き合いがあると思いますが、仕事もゴルフもお酒も、林さんに負けずに良きライバルとして頑張っていこうと思っています。今後ともよろしくお願いします」



「名古屋の顔」と呼ばれる企業になって欲しい

大和証券 執行役員 名古屋法人担当 辻本将孝 Masataka Tsujimoto


 「名古屋の顔」と呼ばれる企業になって欲しい


 「何か持っている人。強運の持ち主ですね」

 エイチームの主幹事を務める大和証券の辻本は林について語る。辻本が林に初めて会ったのはまだ株式上場前の2011年。審査の過程で2度ほど上場日が伸びたが翌年の2012年4月に無事に東証マザーズに上場を果たした。そしてその7ヵ月後には史上最短で東証一部に指定換えし世間から注目を浴びたのだ。

 「林社長は上場前と後でも全く態度が変わらない人格者」だと辻本は言う。ベンチャー経営者同士で群れることもなく、夜の会食もあまりせずに社員と食事をしている。社員からも気軽に一緒に食事をして欲しいと要望が多い。林はイタリアンが好きで型にはまったコースではなく、いつもアラカルトで好きな料理を注文し、皆でワイワイやるのが好きなのだ。また名古屋人のソウルフードであるスガキヤラーメンが好物で上場後も飾らず庶民派である。

 株式上場の際のエピソードとして、林は会社設立日の2月29日に上場承認が降りることにこだわり、さらに上場日も4月4日で「幸せの日」に合わせたいと熱望した。

 「林社長の希望通りに日程を合わせるのは実際大変でした。しかし、林社長の思いが強く願いが叶ってよかった」と辻本も嬉しそうに話す。林は上場日に東証で行われる鐘を5回叩くセレモニーにも家族を同伴するなど家族思いで、資産管理会社の名称は「林家族」とユニークである。

 林の誕生日には社員がそれぞれ顔写真を撮って日めくりカレンダーを手作りし、プレゼントしており、「社員からこれほど好かれている社長も珍しい」と辻本は言う。

 また、林も社員を想い従業員持株会が出来ると、社員が最大2万円を出すと会社からも同額補助金を出している。他社では10%が標準的で20%も出せば多い方だ。

 「持ち株会で100%の補助金を出すのはエイチームくらいで、企業理念である『みんなで幸せになれる会社』を掲げるだけではなく、実践している」

 「エイチームという社名の通り、チームワークが良く社員の皆さんがノビノビとしていて楽しそう。林社長が怒っている姿を見たことがありません。そんな会社が利益を出しているのだからバランス感覚が素晴らしい」と辻本はエイチームの強さについて語る。

 辻本と林の共通の趣味はゴルフ。始めて林とラウンドした時はスコアが110位であったが現在は90台で回る腕前だという。ゴルフを始めた頃は、ハーフセットしかコースに持参せず、7番アイアンで80ヤードから150ヤードを打ち分けていた。合理的に考え、フルセット持っているが余分なクラブは除き、必要なクラブだけバッグに入れていたのだ。

 「1つのことに集中するタイプ。自由な発想で独特なゴルフ上達法ですね」

 現在、名古屋駅周辺では再開発がされ三菱地所、日本郵政、JR東海の3つの高層ビル建設が進行している。旧「大名古屋ビルジング」は半世紀の間、名古屋駅前の顔として市民から愛されてきた。2015年末に竣工予定の新「大名古屋ビルジング」にエイチームはオフィス移転を予定しているが、抜群の立地の良さから更なる知名度向上や採用面などでメリットが期待できる。

 「これまでは名古屋と言えばトヨタですが、これからは名古屋と言えばエイチームと言われるような地元を代表する顔になって下さい」と辻本は林にエールを送った。



今までに無いタイプの経営者

ZIP- FM 取締役 執行役員 事務局長 兼 事業推進部長  杉山博紀 Hiroki Sugiyama
今までに無いタイプの経営者


「社員は何人になりましたか」

 林と顔を合わせると必ず聞く、お決まりの台詞。こう問いかけるたび、杉山は林の率いる会社の成長を実感させられる。

 杉山が林と出会ったのは2006年。名古屋を基点に音楽番組を配信しているラジオ局ZIP-FMで、携帯着うた事業の新規立ち上げ責任者として動いていた時だった。パートナーとして東京の大手IT企業が次々と名乗りを上げるも、共に働く相手の顔が見えてこない。地元の企業と手を取って進めたいと気持ちが傾いていたところに訪ねてきたのが、当時名古屋でゲーム制作を請け負っていた林だった。

 今まで会ってきたタイプの経営者とは全く違う。商談の場で林と初めて顔を合わせた杉山はそう直感したという。

「林さんは非常にクールで、仕事に関して誘っても『今日は話を聞かせてください』と即決はしない。いわゆるヒルズ族のような、ITバブルの勢いに乗って成り上がろうという雰囲気は全くありませんでした」

 リスナーを第一に考えたサービスを生みたいと考えていた杉山に、林の慎重かつ冷静な態度はむしろ好意的に映った。この人に賭けてみよう。失敗したら、自分の人を見る目がなかったのだ。こう腹を決めた杉山は反対する上司を説得。2007年3月、「ZIPうた♪RADIMO」は二人三脚でスタートを切った。

 携帯事業の認可を巡る「キャリアの壁」に、当時まだ実績の乏しかったエイチームが苦戦する部分はあったものの、林をトップとした意思決定の早さは、今まで候補に挙がっていたどの企業にも無いものだった。最終的には無事認可も獲得し、反響をもとにした派生サービスも誕生。杉山の賭けはまさしく勝ちに転じたのだ。

「林高生という求心力があり、そこに良い人材が集まっている」

 杉山はかつての協業相手を客観的にこう分析する。出会った当時は社員数たった20名前後だったフリーランス集団が、リーマン・ショックを経て、各企業から弾き出された優秀な人間を吸収。今や500人を束ねる上場企業になった。「林さんも頑張って会社を大きくしてほしいなどと発破をかけていたら、あっという間に抜かれてしまいました」と杉山は苦笑混じりに語る。

 これほど急激に拡大する会社をまとめ上げる林の人間力に、杉山は尊敬の眼差しを向ける。その惚れこみ具合は、飲みの席でプロダクション事業に引き抜こうとしたほどだ。しかし、林は冷静に「船頭多くして船進まず」と答え、首を縦には振らなかった。

「若くして経験されてきた様々な苦労が、そう言わせるのだろうと感じました。やはり、私達業界人とは感覚が全く違う。慎重かつ大胆。そのバランス感覚があるからこそ、ベンチャーとして大手企業の隙間に切り込み、社員の方も惹きつけているのでしょう」

 現在では、エイチームがZIPFMのラジオにCMを流す間柄だ。互いに忙しくなった今でも、二人の交流は絶えることがない。

 お酒にゴルフと、趣味を共有している杉山。普段から語り合う林に改めて送るエールの言葉もユニークだ。

「個人的には、ゴルフはあまり上手くならないでほしいですね(笑)。若い会社ですし無茶はするでしょうけど、経営者としての健康管理を怠らないでいただきたい。名古屋を代表する企業として、この地を大切にしながらグローバル展開を目指してください」

 規模の小さい頃からずっと成長を見続けている戦友は、発展の土台となった名古屋の地にて、最前線で林への応援旗を振っている。



頼れる兄貴分

スーパーアプリ 代表取締役 飯沼正樹 Masaki Iinuma
頼れる兄貴分


 飯沼は2007年の秋、マプス代表を務める横山順弘が主催する、名古屋のIT企業経営者を集めた勉強会で林と出会った。林は元々プログラマーということもあり、物静かな印象で、飯沼は自分とどこか似ていると感じた。

 現在は勉強会などで2か月に1回ほど顔を合わせるが、プライベートでお酒を飲むこともある。普段は落ち着いた印象の林だが、酔うとお茶目でいたずら好きという一面を見せる。

 創業時は会社の方向性や資本政策など、他の人には聞けない込み入った話も、林には聞くことができた。様々なゲームを任せてもらい、ソーシャルゲームを一緒に制作したこともある。エイチームとの仕事をきっかけにゲームやモバイルコンテンツなどの事業を始めることができ、林は大きな支えだった。今でもこの時の経験がスーパーアプリの根底に流れている。

 一緒にお酒を飲みに行ったときは、一歩先を行く先輩経営者として相談に乗ってもらうと語る飯沼。

「組織が大きくなるにつれ、チームをどのように組み立てていくかという話は参考になりました。組織が拡大していく過程では、ヒット作が出ずに苦戦する時期があります。そうした際の対処法などを聞いて、組織編成の仕方を職業別の縦割り制から、プロジェクトごとでメンバーを変えていくような体制に変えました」

 飯沼にとって、6歳上の林は兄のようでありながら同業の経営者としてともに業界を育てていく同志だ。最近では、採用時にエントリーしてくる人間が被ることもしばしば。それでも、面接で気を付けることをオープンに話すほどの仲である。

「林さんは社員をとても大切にされていますね。会社の福利厚生がしっかりしているところなど、社員への思いが随所に表れています。共感できる部分が多いですね」

 そんな林の周りには優秀で前向きな人材が集まる。エイチームと仕事をすると、どんなに小さな企画でも留まることなく、積極的に一歩踏み出す社員が多いように感じる。

「林さんは変動する社会に付いていく柔軟性があるのに、オリジナルのゲームを作るという信念を昔も今も強く持っています。変わったのは他の人への対応が柔らかくなったことでしょうか。昔は目標のために脇目も振らずに走っていましたが、今はどこか余裕を感じますね」

 最近林が注力しているのは新しい社長の育成だ。昨年から積極的に分社化を始め、社員にも一企業の社長という立場を与える。ここには「挑戦して成功すれば、描いていたものを手にできる」ということを社員に教えたい林の思いがある。

「林さんが実際に任せてみると、期待していた社員の方でも会社全体の視点に欠け、採用や資金繰りに悩むなど、驚くことがあるそうです。何でもやらせてみなければ分からないと伺いました」

 一つのことに熱中して取り組む性格の林。昔はジョギングに関心を寄せ、社員を引き連れてマラソン大会を開催したほどだ。他にもラジコンや音楽など、幅広い分野に目を向ける。「今、専らハマっているのはゴルフ。これは当分続きますね」と飯沼は笑う。「いつも気にかけていただいて本当に感謝しています。今後ともよろしくお願いします。ただ、あまり私にはお酒を飲ませないでください(笑)」



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