2014年06月30日
大風呂敷を広げて圧倒的ナンバーワンになれ/ソフトバンク前社長室長 嶋聡
企業家倶楽部2014年8月号 著者に聞く
ソフトバンク社長室長として活躍し、「孫正義の懐刀」と言われた嶋聡氏のソフトバンク8年3000日の卒論的著書。松下幸之助の大風呂敷、スプリント買収、アジアスーパーグリット、脱原発へのエピソード等を軸に、日本人は今こそ大風呂敷を広げるべきであると説く。
『「大風呂敷経営」進化論 松下幸之助から孫正義へ』
嶋 聡 著 PHP研究所( 1300円+税)
問 『「大風呂敷経営」進化論』を執筆された動機を聞かせてください。
嶋 日本経済が停滞して失われた20年と言われる中で成長を遂げてきたソフトバンクの経営力を皆さんの参考にして欲しいと思ってこの本を執筆しました。孫正義社長のように目標を高く掲げると、的よりもさらに上を目指すようになって、思ったより矢は遠くに飛ぶことがあります。大風呂敷の目標を掲げると自分が思っていたよりも大きく成長するのです。今まで日本は経営者も含めて縮んで来ていますから、孫社長のように大風呂敷を広げ、それを実現していくことで、もっと成長していって欲しいと思います。
問 本のサブタイトルに「松下幸之助から孫正義へ」と書いてありますが、嶋さんは松下政経塾の2期生でしたね。「経営の神様」とも呼ばれている松下幸之助氏にも直接お会いになったことがあるそうですが、松下氏と孫社長の経営の神髄はどこにあるのでしょうか。
嶋 両者ともよく似ていて、極めて楽観主義者です。松下幸之助はどんな難しいことでも「いける、いける」と言うのですが、実際かなり難しい状況下にあっても彼にそう言われると本当にできそうな気がしてくるのです。孫も信念でやればできると言うタイプで、「言い訳無し」だとよく言います。
問 孫社長との出会いはどういうものでしたか。
嶋 出会いは衆議院議員時代で、私がITに詳しい議員ということで、1997年頃からのお付き合いです。
私自身は郵政民営化も情報通信改革も賛成でしたが、民主党党員として郵政民営化に反対票を投じたことで批難の的となり、2005年の郵政解散総選挙で落選しました。そういう事情から孫社長にご支援を賜りたいと思い、すぐに会うということになりました。
小選挙区選挙は、落選する時にはあっけないもので、イギリスのような小選挙区先進国は、こういう時すぐにビジネスサイドに移ります。私としては、4年も選挙が無くてもったい無いからソフトバンクで働かせてもらいたいと軽く言ったのですが、孫社長はその場で「嶋さん、やりましょう!」と決めてしまう圧倒的な決断の速さでした。こうして、それまで衆議院議員だった男が一気にソフトバンク社長室長となったのです。
問 嶋さんからご覧になって、孫社長の素晴しい点をもう1つ挙げるとすれば何でしょうか。
嶋 驚くべく謙虚さです。社員を鼓舞する時は強い話し方もしますが、学ぶ時は凄く謙虚で、専門性を持っている私に対しては嶋さんと呼びますし、現場を知ってる人にも耳を傾けます。営業利益1兆円に達しましたが、本人は本気で通過点だと思っていて、目標がもっと上にあるからこそ謙虚でいられるのです。
問 まだ通過点ということで、スプリントを買収してアメリカに進出しましたが、大丈夫でしょうか。
嶋 通信事業は、大きければ大きいほど良いのです。アメリカは人口が増えていて、携帯電話も日本の1.4億台に対して3.5億台の巨大なマーケットが広がっています。無理せずに自然な流れで進出するということですから、私は心配していません。
問 アメリカ進出においてはAT&Tなどが大変な強敵だと思いますが、いかがでしょう。
嶋 これまで孫社長が戦ってきた相手は誰でも強敵ですから、怯むことはありません。日本は競争の中でNTT、KDDIと私達が一生懸命競い合って、非常に回線が繋がりやすくなったのに対して、アメリカの通信事業は二強が独占して競争が無いため通信速度は日本と比べて極めて遅いのです。だからネットワークを補強し、繋がりやすくして、日本一のソフトバンクの営業を活用していきます。もちろん油断はできませんが、孫社長に対する信頼感は大きいので心配は無いと思います。
問 スプリントの皆さんも孫社長を信頼していますか。
嶋 2013年10月、孫が一つのチームで一つの目標、「ワンチーム・ワンビジョン」という演説を行った際には、スプリントの皆さんがスタンディングオベーションで応えてくれました。
問 アジアスーパーグリット構想については、最近あまり聞かなくなってきた気がしますが、どのような状況なのでしょうか。
嶋 国際政治が厳しい局面ですので大変ですが、昔は犬猿の仲であったドイツとフランスも今はEUの枠組みの中で協力し合っていますし、長い視野で見れば必ず実現すると思います。私も、ライフワークとして挑戦していければ幸いです。
問 社長室長時代に東日本大震災があって、東北地方に行かれた際はどんな事がありましたか。
嶋 孫社長が福島の人に避難してもらうべきだと言って、九州の知事、市長に電話で30万人の受け入れの約束を貰いました。孫社長自身が福島の田村市の避難所で何件も避難を呼びかけ、ともかく一人が動けば皆動くと言って説得しました。しかし、皆さん大変だからということで動いてもらえませんでした。
帰り際に孫社長は、日本人は本当は危ないと思っていても代替策がないから、仕方なく原発を作っている。だから、自分は事業者として自然エネルギーに進出し、代替案を作らなければならないと言って、太陽光発電事業を始めたのです。
問 当時は民主党政権時代でしたが、嶋さんの9年間の政治活動の中で一番勉強になったことは何でしょう。
嶋 僕は3代に渡って代表の補佐役を務めたので、政権交代をいかに成し遂げるかの一点を考えてきました。これが極めて大風呂敷な話で、NTTと対抗するソフトバンクは、自民党と政権交代をするために足りない人材、資金で戦っていた時の民主党とよく似ていたのです。9年間の政治の世界で、不利な状況の際にはどうやって切り抜けるか考える癖が付いていたことが、ソフトバンクを営業利益1兆円まで押し上げるのに役立ちました。
そして、ここに来るまでが私の仕事だという思いを抱いたため、今年3月にソフトバンクを卒業したのです。
問 最後に、現在の安倍首相の政治についてはどう思われますか。
嶋 私たちはアジアスーパーグリット構想で、中国、ロシアと一生懸命にビジネス環境を作ってきましたが、今の日本外交は東アジアにおいて緊張環境を作ってしまいました。私たちはインターネットという国境のない世界に住んでいますから、国境を意識する政治は息苦しく感じます。本当の意味でグローバルな視点に立っていただきたいですね。
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