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トピックス -ビッグベンチャー

2014年07月07日

世の中にサプライズを提供したい/ジェイアイエヌ社長 田中仁

企業家倶楽部2014年8月号 次世代の企業家





「任天堂が花札やトランプを作っていた会社から、家庭用ゲーム機ファミコンを発売してジャンプしたようにジンズも今回の新製品発売でステージが変わるかもしれない」

   そううそぶくジェイアイエヌ社長の田中仁はビッグマウスを自称するが、その笑顔には自信がのぞく。2009年発売の「Air frame」は累計1000万本の大ヒット、続いて11年にはコンピューター画面から出るブルーライトから目を守る「JINS PC」を発売、累計350万本を突破する人気商品に育っている。同社は今日では同業他社からベンチマークされる存在となった。年間販売本数で日本一となり、田中はメガネ業界のイノベーターとして確固たる地位を築いた。



次世代メガネの開発

 5月13日、東京・お台場にある日本科学未来館にて、田中は次世代メガネ「JINS MEME(ミーム)」の発表会を開いた。これまでJINS PCの発売で視力補正以外の機能性メガネを謳い、メガネを掛けない人向けにも新しい市場を作ってきた田中が次に放ったイノベーションは、「自分を見るメガネ」。これまでにない全く新しいコンセプトの商品で会場は驚きで静まり返った。

 どのようなコンセプトかというと、人間の目は磁石のように磁気を帯びており、それを「眼電位」と呼ぶ。ジェイアイエヌが大学の研究チームと開発したセンサーを使うと目の動きやまばたきを感知することができ、疲労具合や眠気といった度合いを数値化することが可能になるという。そのデータを通信を使ってスマートフォンなどに転送することも可能だ。この技術を活用すれば、仕事中の集中度合いや疲労度、ドライバーの運転時の眠気も事前に感知し知らせることも可能になる。文字通り、「自分を見るメガネ」なのだ。

 記者会見では、実物の自動車に乗ったドライバーがこのメガネを掛けて登場し、眠気を計測した。また、スポーツシーンでの利用などデモを披露し、メディアの関心を集めた。

 実際に田中がミームを掛けて、目の動きだけでスマートフォンの操作を行った。利用法が簡単に分かるムービーを流し、アップル創業者スティーブ・ジョブスのようなスマートなシリコンバレー流のプレゼンテーションを披露した田中。報道を見た他業種からの引き合いもすでに何件も寄せられている。

 田中はこの新技術を独占する気はないという。

 「ミームの可能性を最大限に引き出し、新しいマーケットの創造にチャレンジします。そのため開発者用のAPI(外部が利用可能なインターフェス)を公開します。多くの人が様々なコンテンツを作れるようにしたい」と宣言した。メガネ会社が外部のシステム開発者のためにプログラムを公開するという意外性を帯びた響きにジェイアイエヌが新しいステージに入ろうとしていることが伺える。

 すでに自動車のドライブ分野では、自動車部品の大手サプライヤーであるデンソーと運転サポート技術の研究を始めている。アプリを開発するITベンチャーも興味津々だ。


次世代メガネの開発

ビジョン確定がV字回復の始まり

 「目は口ほどにものを言う」という諺の通り、目の動きを分析するとビジネス、ドライブ、スポーツ、エンターテイメントなど様々なシーンでの用途が考えられる。視力補正の範囲を超えられない既存のメガネ業界にこのような突飛な発想を持てる会社があるだろうか。 「私は異業種からの参入だったので、メガネ業界の常識に囚われず自由な発想ができた」と田中は言う。これまでも不可能と言われた「レンズの追加料金ゼロ」を始めるなど、メガネ業界で何度もイノベーションを起こしてきた。なぜ、田中は常識を打ち破り、新しいアイデアを思い付いては具現化出来るのだろうか。

 「それは、ビジョンを定めたからです」とさらりと答える田中。きっかけは憧れの企業家からの言葉だった。01年にメガネ事業に参入し、平均単価3万円の業界に風穴を開け、順調に売上げを伸ばし06年念願だった株式上場を果たした。それで気が緩んだわけではないが、上場後の数年間は目新しさもなくなり伸び悩んだ。株価は50円を切り失意のどん底であった。 時計を08年暮れに戻そう。藁をもつかむ思いで先輩企業家であるファーストリテイリング会長の柳井正の門を叩いた。そこで田中は完全にノックアウトされた。

 「御社の事業価値、ミッションはなんですか」、よく通る声で柳井は田中に質問する。田中は頭が真っ白になり、明確に答えられなかった。

 「志のない企業は継続的に成長できない」、柳井の言葉が胸に刺さり苦しかった。何のために事業をしているのか、自分の志は何か、何度も自分に問い続けた。田中は次第に企業家として生まれ変わるチャンスだと感じるようになった。翌09年正月、田中は役員を静岡・熱海に集め合宿を行い、会社のビジョンを定めた。

 「メガネをかけるすべての人に、よく見える×よく魅せるメガネを、市場最低・最適価格で、新機能・新デザインを継続的に提供する」というものだ。

 「ビジョンが定まるとこれまでの店舗作りのズレが見えて来た」と田中は語る。その年の5月、レンズ追加料金ゼロを打ち出し、同年9月にAir frameを発売。破竹の勢いでジンズの名前は社会に認知されていった。11年JINS PCを発売、現在では国内に223店舗、年間550万本を販売し、売上げは365億円に達している。



世界展開を目指して

「メガネは13世紀にイタリアで発明されてから700年以上も進化していない。まだまだ未開の地であり、海外市場を含め可能性がある」と田中は将来展望について語る。

 海外進出の足掛かりとして、10年12月、中国の瀋陽にジンズ1号店を出店した。中国でも日本と同様にレンズ追加料金なしのスタイルで展開しているが滑り出しは上々だ。現在では上海にも出店し、中国進出3年で25店舗を運営、黒字化の目処がついてきた。

 中国に続いて、14年12月にはアメリカ進出を予定している。アメリカ市場初の出店は西海岸のサンフランシスコに決めた。ファッションの街、サンフランシスコでジンズの商品が受け入れられるか試金石になる。中国の責任者には田中の右腕的存在の宇部真記をアメリカ担当には冨田晋輔を任命した。将棋で言えば飛車と角、二人はこれまで田中の改革を支えてきたエースである。その二人を指名したことにも、田中の覚悟が伝わってくる。

 海外進出を本格化するにあたり、ビジョンを見直した。新しいビジョンは、「Magnify Life(マグニファイ ライフ)」、人生を拡大するという意味を込めた。

 「メガネを進化させることで人々の人生を豊かにしたい」と田中は夢を語る。世の中が驚くようなイノベーションを生み続ける組織を目指し、田中の挑戦は終わらない。





田中仁(たなか・ひとし)

1963年生まれ。81年前橋信用金庫(現しののめ信用金庫)入庫。87年 服飾雑貨製造卸のジンプロダクツを創業。88年、有限会社ジェイアイエヌを設立。06年8月 大阪証券取引所ヘラクレスに上場(現在のJASDAQ)。メガネなどのアイウエアを扱う「ジンズ」や服飾雑貨の「クール・ドゥ・クルール」などのショップを全国に展開。13年「第15回企業家賞」受賞。14年5月には、次世代メガネ「JINS MEME」を発表した。



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