2014年07月10日
インターネットを駆使し人類の未来を切り拓く/フリービット社長 石田宏樹
企業家倶楽部2014年8月号 次世代の企業家
2013年11月、スマートフォンキャリア業界に激震が走った。フリービットが月額2100円でインターネットと電話を使えるプランを発表したのだ。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの寡占状態にあったスマホキャリア業界に一石を投じた形である。
しかも、端末は同社が独自ルートで開発したもの。商品名はPandA。「Palm and Arm(パームアンドアーム)」の略で、手のひらでも両手でも利用可能という意味が込められている。その独特の大きさはファブレットと呼ばれ、スマホとタブレットの中間に位置するサイズ。画面としては大きく見やすいが、手のひらに馴染むように設計された。
これまでも端末を開発していなかったわけではないが、圧倒的にB2Bビジネスであるインターネットプロバイダのイメージが強かったフリービット。実際、その名を知る消費者はまだ多くない。
だが、それも全て含めて、機会を伺っていた石田。「目立たないように隠れていました」と笑う。まさに、満を持しての進出であった。
フリービットのスマホキャリア参入後、まるで湧いて出たかのようにイオンやビックカメラといった他社が追随して「格安スマホ」を発表した。しかし石田は「一気に市場が出来て認知が高まったことで、こちらとしても動きやすくなった」と全く意に介さない。
これまでは、なぜ安くできるのか、根本から説明しなければ理解してもらえなかったが、今では他社との差別化さえ明示すればよくなったというわけだ。それだけ、勝算はある。では、その自信はどこから来るのか。
フリービットの強みは価格だけでは無い。企画から製造、販売、そしてその後の通信キャリアの部分に至るまで、一貫して展開していることから、中間コストが省ける上、きめ細やかな対応が可能となっている。
フリービットに追随してきた他社は、継続課金ビジネスの経験が浅い企業ばかり。ノウハウが無い分、どうしてもサービスの質は落ちてしまう。そこへ行くとフリービットは、元々がインターネットのプロ集団だ。
例えば不具合が発生した場合、これまでは回線、端末、OS、どこに問題があるのか分からず、顧客は振り回されることも多かった。その点、フリービットは首尾一貫したサポートを行っている。
また、繋がりやすさも売りだ。他社は、どちらかと言えば低価格にフォーカスしており、「安い分、速度は出なくて仕方が無い」という印象を受ける。しかし、この高速回線時代、繋がりにくさは致命的だ。その点、フリービットが掲げるのは、「ちょうどいいスマホ体験」。動画以外の部分はストレスが無いような商品作りを心がけている上、必要に応じて高速通信を可能とするオプションサービスも用意されている。「皆さん、安いのは好きですが、安っぽいものは嫌いです。だから、最終的にはブランディングをして、この端末を買うのが一番賢い選択であると思われなければなりません」
デフレを抜け出しつつある今日、安かろう悪かろうでは通用しない。それは逆に、PandAにとっては追い風となるだろう。
格安スマホに先鞭を付けたフリービット。しかし、石田が見据えるのはそのような目先のブームではなく、遠い人類の未来だ。
2020年問題と2050年問題という言葉がある。現在の人口増加と資源の枯渇などを考えると、人類が2020?2050年の間を超えられないかもしれないという議論だ。「これを超えるためには、あらゆる知識を一点に集めなければなりません。その時必要となるのが、インターネット、センサーネットワーク、ビッグデータです」
今後のインターネットは、人類が生き残るためのインフラになれるかどうかがポイントだと石田は説く。フリービットがスマホキャリアに参入したのも、誰もがどこでも使えるコンピュータを1人1台持てるようにするためだ。これが、石田の言う2050年問題を超えるための第1の変革であるモバイル革命である。
次は、生活革命を成し遂げるべく、医療分野に進出する。インターネットとビッグデータを駆使し、的確な予防医療と経過観察を行っていくという。健康管理をする上で、個々のモバイル端末であるPandAも重要な役割を果たす。
そして、最終的には生産革命に至る。農業や工業製品の生産を、ITの力を通じて効率化することで、2050年の壁に立ち向かう。
石田が第2の革命と位置付ける医療分野に関しては、すでに水面下で動きが進んでいる。
今後、技術の進歩によりセンサーの価格が下落いていけば、日常の様々なデータを一挙に取ることができるようになる。そうして得たビッグデータを解析することで、予防医療に着手しようというのだ。
現在の医療は、病気が発症した後に病院へ赴き、そこで問診を受け、その時の症状や曖昧な記憶をもとに、病名やその原因を突き止めるのが一般的である。しかし今後は、病気が発症する前にどのような変化があったか、気圧や地軸の変化といった外部要因まで含めて網羅的に分析することが可能となる。
これにより、病気が発症した原因を突き止める精度が高まるばかりか、最終的には何らかの異常値が検出された時点で予防へと動くことが出来るようになるかもしれない。
現時点ですでに自動問診のシステムを開発しており、質問に答えていくと大体の病気まで分かるようになってきた。病気の重篤度が分かるため、病院に行くべきか否かなどの判断材料となる。
また、将来的にそうした情報が病院と繋がっていけば、問診やカルテ作りの時間を短縮できる。特に救急患者の場合、コンスタントな病院との情報共有が、一命を取り留めることに繋がる例も出てくるだろう。
スマホキャリアへの進出というだけで衝撃が大きかったが、医療、農業と未来を見据える石田の視野の広さには驚かされる。PandAがただのスマホだと思ったら大間違いだ。 人類の2050年問題を解決するための布石。その第一歩として、より多くの人にインターネットを広げるための端末がPandAであり、その先には医療、農業という第2、第3の革命が控えている。「まずは、2050年を超えても人類が地球に迷惑をかけずに存続できるよう、企業として総力を挙げる」
未来は予測するものではなく、自分で創るもの。尊敬するソニーの創業者、井深大の言葉を肝に銘じ、ひた走る石田。一人の企業家の挑戦が、人類を救うかもしれない。(相澤英祐)
石田宏樹(いしだ・あつき)
1972年佐賀県生まれ。98年慶應義塾大学総合政策学部卒業。00年にインターネット事業者へインフラなどを提供する株式会社フリービット・ドットコム(現フリービット株式会社)を創業し、代表取締役社長・最高経営責任者となる。02年にフリービット株式会社と商号を変更すると、07年には東証マザーズに株式上場を果たす。09年「第11回企業家賞」を受賞。
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