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トピックス -企業家倶楽部

2014年07月18日

個人の力が発揮できる場を提供/エニグモ代表 須田将啓

企業家倶楽部2014年8月号 次世代の企業家





ソーシャルショッピングサイト「BUYMA」


ショッピングの概念を一変させる

 ショッピングという概念を一変させる可能性を秘めた企業がある。ソーシャルショッピングサイト「BUYMA」を運営するエニグモ。日本発のベンチャー企業だ。

 特に海外ブランドの場合、店頭に並ぶのは商社などが売れるとにらんだ商品ばかり。BUYMAは、世界100カ国以上に点在する約5万人ものバイヤーをネットワークすることでこの限界を取り払い、世界中の魅力的な商品を個人から購入できるシステムを構築した。

 人気の海外モデルが身に着けていた服やブランドバッグを手に入れたり、現地で流行っているアイテムをリアルタイムで購入したりできるため、オシャレに目がない女性たちにとっては夢のようだ。

 特徴は、三方よしのビジネスモデルである。例えば、日本での価格が10万円の商品があったとしよう。これを海外に住むバイヤーが現地価格の6万円で購入し、8万円で出品する。これで、バイヤーは利益を上げられる上、ユーザーも本来ならば10万円の商品を8万円で購入できる。またエニグモにとっては、バイヤーとユーザー双方からの5%ずつ仲介手数料が入り、それが収益となる。

 バイヤーにとってのメリットは、金銭的な利益だけではない。自分のファッションセンスを発揮して商品を買い付け、それを買って喜んでもらえる楽しみがある。主婦が活躍するなど、片手間でできてしまうのも魅力的だ。有力バイヤーになると、月収1000万円を稼ぐ強者もいる。

 購入者であるユーザーは、ファッションに敏感な女性が多く、バイヤーはセンスに優れた友人のような存在だ。一度購入すると、現地の最新商品をお勧めしてもらえる。いわば、自分だけのスタイリストを持ったような感覚である。

 昨年は、著名人の中古商品を扱うファッションフリマサイト「STULIO」や世界中の本を翻訳して販売するサービス「BUYMA Books」をオープン。主力事業を軌道に乗せ、新規事業を次々と展開中だ。

 エニグモの2014年1月期の業績は、売上げ18億2300万円、営業利益8億5200万円だが、2017年1月期に営業利益30億円、2019年1月期に営業利益50億円という目標を掲げる。現段階ではBUYMAで全体の8 割、STULIOで2 割の利益配分を想定。BUYMA Booksについては目下、基盤作りを優先させる。目標達成に向け、まずはBUYMA事業に一点集中し、利益をあげていく。



「人」にこだわる

 今年で創業10周年を迎えるエニグモ。実店舗や在庫を持たないショッピングサイト運営という事業内容からは、バリバリのIT企業を想起する方も多いだろう。しかし、エニグモを率いる須田は、常に「個人の力」を意識してきた。

「今注目しているのは接客です」と須田。お店で多くの商品を眺めている折、接客が加わると購買意欲が湧くものだ。店員から「この商品、昨日たくさん売れて、残り一枚なんですよ」と言われると、つい後押しされて買ってしまうことも多い。

 インターネットショッピングサイトは、使いやすいサイト作りや、消費者の関心をデータ分析するなど、IT技術を駆使するのが一般的である。しかし、エニグモはそこに人の力を活用したから驚きだ。この強みを活かし、他社のサイトとの差別化を図っていく。

「接客の価値は、自分よりもファッションに詳しい店員さんや友達にアドバイスをもらいながら楽しんで買えるところにあります」

 良い店員に会うと、またそのお店で買いたくなる。「今後サイトでの取扱商品を増やし、1人当たりの購入単価を上げるためには、接客が肝です。BUYMAには多くのバイヤーさんがいるので、他社には絶対にできない接客体験を提供することができると思います」と須田は期待を込める。

 エニグモにおいて、バイヤーの存在感は絶大である。活動は、商品調達に留まらない。お勧めの商品をピックアップして発信するなど、メールマガジンのような機能もBUYMAでは充実している。サイズや着用感のアドバイスといった細かい情報まで発信するため、購入者にとってはお店に足を運んでいるかのような体験ができる。

 また、バイヤー一人ひとりがサービスを提供するため、様々な個性が発揮され、無限の可能性が秘められていると言えよう。個人と個人の取引だからこそ、相手を思いやる気持ちが生まれるのだ。

 ある購入者は、商品を注文すると、その商品が掲載された現地の雑誌が一緒に梱包されていたと喜んだ。思いがけないおもてなしだ。単に品物を揃えて売るだけではない、そこに人が介在することで、購入体験に付加価値を与えることができる。

 出品側から買う側へと視点を改め、「自分の望みを叶えてくれる店員」というコンセプトへ。BUYMAでは現地の商品買い付け役の呼称を、今までの「バイヤー」から「パーソナルショッパー」へと変える。まるで専属の店員のようにユーザーに寄り添い、買い物を楽しんでもらえるようサポートするという意味が、そこには込められている。



ITと人の融合で世界を変える

 IT技術だけに頼るのではなく、人間の力を最大限活かすというのが、他社にはないエニグモの強みである。須田はこれを「ITと人の融合」と表現する。個人の力を活用することでこそ、便利なだけではなく、より価値のあるものになるという考えだ。

 買い物の楽しさをインターネットショッピング上で実現させたBUYMA。大量の商品一覧から欲しい商品を選ぶだけのショッピングサイトに、人為的な物語が加わることで、新たな価値を生む。

「日用品などは安くてすぐに届く方が好まれるでしょう。一方で嗜好品においては、思い入れのような、感性的な価値を大事にする傾向にあります。その価値を提供できるのがBUYMAです」と須田は語る。

 接客による単価やリピート率のアップによって、利用者が企業やブランドにもたらす利益が向上する。顧客満足度をあげてファンを作り、長期的なユーザーを増やす。その結果、BUYMA事業やエニグモの売上拡大に繋がるのだ。

 BUYMAのアクティブ会員数は50万人近くにのぼり、BUYMAファンは着実に増えている。日本での知名度は上がっており、雑誌などで取り上げられることも多くなった。昨年には、韓国版BUYMAをオープンするなど、グローバル展開にも積極的である。

 須田は「次の10年では、エニグモが世界で通用する会社になって、世界中の人がエニグモのサービスを使っている状態に育てていきたいです」と今後の展望を話す。

 常に個人の力が発揮される場を提供することを考えてきた須田。ファッションセンスに長ける人の力をバイヤーに。外国語を得意とする人を翻訳者に。個人が持つ可能性は様々だ。エニグモは、C2Cビジネスの本質を見極め、新たな価値を世の中に発信していく。次なる革命の場をどこに定めるのか。その飛躍に期待したい。





須田将啓(すだ・しょうけい)

1974年茨城県生まれ。慶応義塾大学院理工学研究科を終了後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング部に配属され、幅広い領域のクライアントを担当。04年、エニグモを設立。世界105カ国のバイヤーからリアルタイムで欲しいものをお取り寄せできる、これまでにない新しいソーシャルショッピングサイト「BUYMA」を運営。12年7月、東証マザーズ上場。



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