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トピックス -ビッグベンチャー

2014年07月24日

世界ブランドへの道をひたすら歩む/サマンサタバサジャパンリミテッド社長 寺田和正

企業家倶楽部2014年8月号 次世代の企業家





 サマンサタバサの店舗は女性の好きな可愛いモノで溢れている。バッグやジュエリー、パステルカラーがあしらわれたインテリア。一歩足を踏み入れるとそこはキュートで華やかな女性の聖域であることがわかる。アパレル、スイーツ、ゴルフ関連商品と商材が増えても、可愛いサマンサタバサらしさが揺らぐことはない。それに本気で向き合っているのが、サマンサタバサジャパンリミテッド社長、寺田和正だ。

 寺田は1994年の創業時、自社製品を世界ブランドに育てるという想いを社名に込めた。同社はバッグの企画・製造・販売からスタートした若い女性に人気のファッションブランドである。海外のセレブリティをプロモーショナルモデルに起用し、2006年のニューヨークに海外1号店を出店したのを皮切りにアジア各国へ相次いで進出、着実に実現へと近づいている。

 2014年2月期売上高315億7800万円(前年比114・9%)、営業利益は18億2500万円(同181・9%)と絶好調である。同社のECを含めた店舗小売売上は対前年比約30%、既存店は約20%増、旗艦ブランドのサマンサタバサとサマンサベガは30%以上の伸びを見せ、男性ブランドのサマンサキングズが60%以上と大きくけん引した。消費増税後の4月、日本百貨店協会が発表した百貨店の前年同月比の売上高は12%減であったことを考えると、これがいかに驚異的な数字かがわかる。



「ブランド」を作り、育てる

 寺田は学生時代カナダへ留学し、海外の人々がソニーやホンダなどの日本製品をこぞって愛用していることを知った。製品もさることながら、それを持つことによってもたらされる自信や満足感があることに気づいた寺田。そのブランドを生み出した国の人間であることを誇りに感じると同時に、ブランドとはいかなるものかを実感した。

 寺田はファッションで日本発の世界ブランドを作ろうとしている。寺田が考えるブランドを作る要素は4つだ。「良い人材、良い商品、良い場所、良い宣伝」。それを愚直に追求してきた。

 人材面では「やりがい、プライド、報酬、信頼」を企業理念に掲げているが、これは自身の会社勤めの経験からきている。サラリーマンの社会は不満との戦いだ。仕事が面白くない、会社にプライドが持てない、報酬が少ない…。寺田も成果を上げたにも関わらず同期と横並びの報酬に疑問を抱き、これら全てを満たす会社を作ると誓ったという。なるほど、同社スタッフからはサマンサタバサが大好きだという気持ちが伝わってくる。オシャレで、溌剌としてサマンサワールドの代表といった様子なのだ。

 ブランドイメージを左右する店舗の立地には創業時から妥協しない姿勢を貫いている。同社が無名だった頃、百貨店の担当者から「日本のブランドは2階」と言われた悔しさを寺田は忘れていない。一等地とされる1階の売り場は欧州ブランドの独擅場であり、日本のブランドはあからさまに格下にみなされていたのである。「自国のブランドを大切に育てようとする他国と違って、日本人は自国ブランドに厳しい」と寺田は苦笑いするが、粘り強く立地にこだわり続け、現在では表参道の一等地や百貨店の1階はもちろんのこと、東京スカイツリーや大阪あべのハルカスなどの話題スポットに店舗を展開する。空港ではあえて飛行機を利用する人のみ購買可能な場所に出店した。顧客にとって希少価値や特別感が付加された品物になるからだ。

 宣伝では世界のセレブリティによるプロモーションに力を入れてきた。グローバルなマーケティング戦略は、世界ブランド構築への礎となるだけでなく、自分の愛用品を世界的な著名人が使用しているという事実が顧客満足度を向上させるとともに、ターゲット層以外へもブランドイメージを浸透させることに繋がった。

 そして最も重要なのが、商品である。中核商品は売上高6割強のバッグだが、旗艦ブランド「サマンサタバサ」は皮製の高価格帯商品の構成比を上げるなど、各ブランドの特色や価格帯をより鮮明に打ち出した。その結果、増税など負の環境下でも驚異的な伸びを示すようになった。また、近年のファストファッションブームを受けて、入口商品に位置づけられるリーズナブルな価格帯のブランド、「サマンサ&シュエット」を13年に発表。香港に1号店を出店した。


「ブランド」を作り、育てる

「人間」寺田和正

 13年、寺田は自ら日本全国を行脚し、店舗の全販売スタッフ1300人と直接面談した。面談は会社の規模が小さかった当時の取組みで、創業20周年を契機に原点に立ち返ろうと行った。社員の9割以上が女性であり、一般的に結婚や出産適齢期と言われる年齢層が多数を占める。仕事との両立や働き方に悩みが生じやすい社員が多いと言える。それらの声を受け止め、彼女らへのプレゼントを選び、面談後は80人規模の懇親パーティーも主催。実に細やかな心配りをする人間なのである。

 ブランドの広告塔として、若く華やかな寺田自身が海外セレブらと共にマスコミに登場した時期もあった。感性やセンスが重要なビジネスのため、語る言葉は感覚的だ。明るい性格でサービス精神が旺盛な様子は、ファッション業界人らしい。しかしそんなイメージと相反した昔気質の顔も併せ持つ。オフィスの一角には1メートル四方はあろうかという巨大な縁起熊手が祀られており、日本の伝統を重視している事が伺える。そして口約束も守る義理堅い人物だ。



世界ブランドへ

 寺田の夢は明確だ。世界に名だたる日本のブランドへ。国内外の事業規模を同レベルにし、大型の店舗をパリ、ロンドン、ニューヨーク、ローマなどのメインストリートに展開する。そのための業務や組織インフラの構築、グローバルな人材育成が急務である。

 
 07年にはメッセージと資本提携、アパレル事業に乗り出した。現在はバーンデスト社、ラ・エスト社で6ブランドを展開中だ。革製品から出発した欧州ブランドもアパレルを展開している例が多い。ブランドをトータルで表現していけるからだ。ハワイのファッションショーに参加、また、20年の東京オリンピックに向けてゴルフ事業にも注目し、着々と世界ブランドへの布石を打っている。

 日本のファッションは「カワイイ」という言葉と共に海外の若い女性に支持されている。サマンサワールドが世界で展開される日もそう遠くはないだろう。男気ある寺田が率いる同社の未来に、大いに期待したい。(庄司裕見子)





寺田和正(てらだ・かずまさ)

1965年広島県生まれ。商社勤務を経て91年に独立、海外ブランドの輸入卸業を始める。94年サマンサタバサジャパンリミテッドを設立、女性向けバッグのオリジナルブランド「サマンサタバサ」を立ち上げる。05年12月、東証マザーズ上場。ヒルトン姉妹やミランダ・カー等をモデルやデザイナーとして起用し、急成長する人気ブランド。08年「第10回企業家賞」受賞。

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