トピックス -ビッグベンチャー

2016年06月14日

インターネット業界のプリンス断トツ1位に執着/GMOインターネットグループ代表 熊谷正寿

企業家倶楽部2014年8月号 次世代の企業家





 GMOインターネットグループ代表の熊谷正寿はインターネット業界のプリンスである。早くからインターネット時代の到来を予測し、創業時に55年計画を立て、売上げ10兆円構想をぶち上げた。その大風呂敷はソフトバンク社長の孫正義並みである。

 性格も明るい。風貌は女難の相があるのではないかと周囲が心配するくらいハンサムである。既に50歳を過ぎたが、いまなおプリンスの雰囲気を漂わせている。2013年12月期の連結売上高は937億円、経常利益109億円、グループ企業115社のうち、上場企業は6社を擁する。
 



地獄の苦しみ味わう

 ただ1回だけ横道にそれたことがある。05年、消費者金融会社を買収、過払い問題で地獄の苦しみを味わった。同年8月、270億円でオリエント信販を買収、金融業に乗り出した。

 当時、GMOは東証1部への鞍替えが控えていた関係で活動を抑えていた。これに対し、ライバルの楽天などが銀行業などに進出、活発に動いていた。東証1部への移行期間が過ぎ、GMOも自由に企業活動が出来るようになった。その矢先にオリエント信販の買収話が舞い込んできた。

 「若干の焦り」もあって、買収話に乗った。好事魔多しというが、十分に消費者金融業界の研究をしないで、オリエント信販を買ってしまった。

 1年後の06年秋、監査法人の公認会計士から「過払い金の請求に備えて10年分の引当金を積んで下さい」と要求された。消費者金融会社はグレーゾーン金利の支払い請求が発生した場合、予め引当金を積んでおかなければならない。そのことは熊谷も覚悟して買収に応じた。

 ところが、公認会計士が要求したのは、過去10年分、金額にして200億円という巨額引当金なのである。これを積むと、自己資本比率が低下し、帳簿上、債務超過寸前に追い込まれる恐れがある。

 それまでのGMOはネットベンチャーの優等生そのものだった。91年に創業、8年後の99年8月に店頭市場に上場、05年6月には東証1部上場を果たした。00年に設立した連結子会社のまぐクリックは会社設立364日で上場した。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。

 そこへ06年秋の会計基準の改定で過去10年分を全額引き当てる形になった。オリエント信販を買収して1年も経っていないのに、10年分も引き当てるとは、熊谷ならずとも「そんなバカな」と思うところだ。



200億円の引き当てをさせられる

 当時の過払い金の請求は1ヶ月当たり1ー2億円だった。GMOは同4億円の利益があったので、十分請求に応じることが出来る体制だった。ところが10年分約200億円を引き当てるということになると、話は違ってくる。巨額の引当金で債務超過状態になれば、上場廃止へもつながる。

 この結果、05年12月期、売上高372億1900万円、当期純利益32億5800万円から06年12月期は当期純損失120億9900万円、さらに07年12月期には当期純損失175億9800万円と奈落の底に落ち込んで行った。

 
 07年8月は危機の頂点に達した。GMOは断腸の思いで消費者金融事業からの撤退を表明した。同時に自己資本比率は0.5%まで落ち込み、債務超過寸前となった。

 債務超過になると、財務制限条項(コベナンツ)に抵触するため、金融機関からいつ貸付金の返済を迫られても、おかしくない状況となる。この時点でGMOの借入金は1700億円あった。案の定、いくつかの金融機関がコベナンツを理由に資金を引き始めた。



ハゲタカも登場

 外資系ハゲタカも登場した。ある時、ハゲタカの幹部から「熊谷さん1人で来てくれ」と言われた。熊谷が行ってみると、ハゲタカの幹部6人がいて、「500億円用意した。これでGMOを売ってくれ」という。

 一呼吸おいて、熊谷は毅然として答えた。「GMOは売れない」

 500億円で売れば、ハワイあたりで何不自由なく余生を過ごすことが出来る。しかし、熊谷は茨の道を選んだ。「一度きりの人生。仲間への約束を果たし、夢や志を諦めたくなかった」と述懐する。

 その決断は正しかった。最終的にGMOは約400億円の損失を被り、熊谷が切った身銭は計170億円に達したものの、ヤフーの支援などによって、ようやく危機を脱出、08年12月期の売上高372億4700万円、経常利益40 億3100万円を確保した。

 
 13年12月期の連結売上高は前期比26%増の937億400万円、経常利益同19%増の109億4100万円、時価総額は1392億円(14年6月13日現在)と完全に復活した。

 GMOは倒産の危機に直面したが、仲間の団結というかけがえのない教訓を得た。普通、会社が危機に陥ると幹部がわれ先にと辞めてしまうものだが、GMOの場合、誰一人として逃げ出すものはいなかった。鉄の団結によって、危機を脱出したのである。



ドメインは430万の顧客かかえる

 今、GMOは「日本のインターネット部」をめざして、再び全力疾走している。スタッフ数は社員、アルバイトを含むと3838名に達している。

 同社の事業領域は4つ。1つはインターネット上で情報を発信するためのサービスをワンストップで提供するインターネットインフラ事業。

 2つ目はインターネット上における集客支援を中心に、広告事業も配信するインターネット広告・メディア事業。3つ目がインターネット証券事業。そして、4番目が11年から新しくスタートしたスマートフォンゲームなどのモバイルエンターテイメント事業。

 「お名前.com」などのドメイン取得事業は顧客数が430万件に達するなど、2位以下を大きく引き離している。「われわれは断トツ1位しか手がけない」と熊谷は豪語する。

 インターネットは1位企業しか生き残れない過酷な世界である。だからといって、ソフトバンク、ヤフー、楽天など数少ないIT企業が幅をきかしていては面白くない。それぞれの事業領域に個性豊かなIT企業がキラ星のごとく存在してこそ、豊穣な土壌といえるだろう。GMOにはそんなIT企業を生み出す「日本のインターネット部」になって欲しい。





熊谷正寿(くまがい・まさとし)

1963年長野県生まれ。東証一部上場企業グループのGMOインターネットグループを率いる。「すべての人にインターネット」を合言葉に、WEBインフラ・EC事業、インターネットメディア事業、インターネット証券事業、ソーシャル・スマートフォン関連事業を展開。04年「第6回企業家賞」受賞。



コメントをシェア

骨太対談
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top