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トピックス -ビッグベンチャー

2014年07月31日

日本の定食を世界に広めたい/大戸屋ホールディングス会長 三森久実

企業家倶楽部2014年8月号 次世代の企業家





「大戸屋ごはん処」を国内外に388店舗を展開、おふくろの味で外食業界で確固たる地位を築いている大戸屋。女性が一人でも入りやすい定食屋を追求、お値打ち価格で家庭料理を食べられるとして支持されている。率いる会長の三森久実は成長のベースを海外と定め、海外展開に余念がない。タイ、台湾、インドネシアなどアジア各国はもとより、ニューヨークにも進出。ここで大戸屋のブランドを確立し、欧州にも打って出たいと意気込む。



定食屋として成長を続ける大戸屋

 東京・丸の内、ビジネスビルの3階にある大戸屋丸の内センタービル店。昼時ともなれば近隣ビルからのビジネスマンで溢れかえり、長い行列ができる。ランチタイムだけではない。この店は夜でも行列ができる。多くの飲食店がひしめく中でなぜ大戸屋が人気なのか。

 中に入ってみると60席ほどの明るい店内は、残業食を食べるビジネスマンや会社帰りのOLらで満杯。客層は若者からシニアまで幅広い。誰もが定食を美味しそうにほうばっている。人気メニューは「しまほっけの炭火焼き定食895円(税込)」や「鶏と野菜の黒酢あん定食844円(税込)」などである。いずれもごはん、味噌汁、小鉢がついて850円前後とリーズナブル。一人でも入りやすく家庭料理を手軽に味わえるとして支持されている。

 この確かな味と価格がリピート客を呼び込み、国内308店舗、海外80店舗(3月末)を展開する大戸屋。2014年3月期の連結売上高232億円(13・9%増)、経常利益7億8200百万円(76・9 %増)と成長を続けている。



店内調理にこだわる

 その大戸屋が脅威と感じているのは、最近のコンビニの弁当・惣菜の品質向上である。飲食店として店に足を運んでもらうには、コンビニにできないことをやらねば勝てないと三森。世界に何店出店しようが、店内調理の基本を守り続けている。コスト高にはなるが、料理はつくりたてが絶対に旨い。この旨さを追求するには店内調理は欠かせない。

 人気メニューの焼き魚定食も魚は各店で焼いている。そのために独自に炭火グリラーを開発、全店に導入。焼き魚に付け合わせる大根おろしも、注文を受けてからおろすというこだわりようだ。こんな面倒なことはコンビニではできない。手がかかって大変だが、これをきちんとやっていかないと、コンビニとの差別化ができないと、危機感をつのらせる。客単価850円という定食ではあるが、美味しさの追求は怠らない。この愚直さが大戸屋の味が海外でも支持される理由といえる。


店内調理にこだわる


人気のしまほっけの炭火焼定食


アジア出店を加速

 大戸屋の海外進出は早い。少子高齢化で縮みゆく日本を尻目に、三森は10年前にタイに進出。その後台湾、インドネシア、シンガポール、香港とアジア各国に出店を重ねてきた。どの国でも人気の和食が手軽に食べられるとして支持されている。タイではセントラルレストラングループと共にFC展開で40店を出店、今期中には50店になる予定だ。台湾はファミリーマートと共にFC展開、中国本土はこれから狙っていくという。既にインドネシアもFCで10店舗を展開している。アジア各国に77店舗を出店、大戸屋の輪が広がってきている。

 FCのフォーマットが確立したアジアでは、フランチャイザーとしてメニュー開発と材料提供、人材育成に特化、ロイヤリティを得る。10年前から力を注ぎようやくここまで確立できたと三森、今後はパートナーと共に出店を加速したいと語る。



ニューヨーク出店でうずくベンチャー魂

 その三森が今、一番力を入れているのがニューヨーク店である。今、この街では和食への期待は高い。2012年にチェルシーに大戸屋1号店を、2号店はタイムズスクエア、3号店はイーストビレッジに出店、この秋は4号店を出店する予定だ。どの店も大変好調。 N.Y.は世界の発信基地。数年で大戸屋のブランドを確立し、全米に拡大、将来は欧州に打って出たいとベンチャーの顔を見せる。そのために毎月、10日間はN.Y.に滞在、大戸屋の品質維持のために陣頭指揮をとる。

 N.Y. でも人気は焼き魚定食という。大戸屋独自のルートで仕入れている魚類は、この価格でこの品質ならどこにも負けない、と自信をみせる。客単価は昼1800円、夜3600円と日本よりも高級なイメージに仕上げ、和食の店として支持されている。

 大戸屋の精神を浸透させるためには各店での朝礼は欠かせない。海外店でも毎日日本語と現地語で、経営理念を唱和させる。朝礼をきちんとやっている店ほど売上げも高いと三森。現地採用の社員も基本的には日本と同じ教育を実施し、人づくりにも力を注いでいる。


ニューヨーク出店でうずくベンチャー魂


日本より高級なイメージの大戸屋N.Y.タイムズスクエア店


大衆和食を世界へ広める

 日本食は素材と発酵と技術で成り立つ。発酵とは醤油、酢、塩麹などの発酵食品である。

 大戸屋はこのタレ、つゆなどをメーカーと一緒になって開発し、独自の味を創りだしている。そしておいしさ追求のためには焼き魚、タレ類、つゆ、パン粉など、食材の1/3は日本から運んでいる。コスト高にはなるが、これが大戸屋の味であり、ここで差別化しなければ勝てないと語る。さらなる美味しさを追求するために、2014年春から本枯れ節を全店に導入した。香りが全く違うという三森、大衆和食でも旨いものへのこだわりは半端ではない。

 和食が世界無形文化遺産に認定されて脚光を浴びているが、大戸屋にとっても大きなチャンスといえる。何千年も培われた日本食が、今世界で注目されている。

 海外展開は第二の創業と位置付ける三森、一か月の内、20日間は海外に滞在、本気で取り組んでいる。海外店舗の成功の秘訣は日本人が食べて美味しいと言われる店をつくること。日本人は世界で一番味覚値が高い。その日本人に評価されなければ繁盛店はつくれないと、美味しさの追求には余念がない。

 愚直でまじめ。一食、一食の細部にまでこだわる三森の真摯な生き様が、大戸屋を世界ブランドに押し上げている。数年以内に国内外併せて1000店舗を展開すると意気込む。美味しくてリーズナブル、毎日食べても飽きない大戸屋の大衆和食が、欧米も含め世界中の人々に支持される日も近い。





三森久実(みつもり・ひさみ)

1957年山梨県生まれ。15 歳で東京・池袋に「大戸屋食堂」を経営する伯父の養子となる。76年、フローラフーズ入社。養父の死に伴い、79 年に大戸屋食堂の事業を継承。83年株式会社大戸屋設立、代表取締役社長に就任。01年株式を店頭公開。05年タイに出店。11年に持ち株会社化、会長に就任。12年ニューヨークに1号店を出店。14年「第16回企業家賞ベンチャー賞」受賞。

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