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トピックス -ビッグベンチャー

2014年08月22日

ティアイズムを体現し感動の葬儀を波及させる/ティア社長 冨安徳久

企業家倶楽部2014年8月号 次世代の企業家




目指すは全国制覇

 名古屋を中心に、東海、関西、関東で葬儀社を営むティア。2013年6月には東証2部へ上場を果たした。だが、社長の冨安徳久は「あくまで通過点」と割り切る。目指すは全国制覇だ。
 

 現在、日本の年間死亡数は120~130万人。だが、その葬儀の1%を担っている葬儀社すら無いのが現状だ。ティアも年間の葬儀件数はFC(フランチャイズ)を含めても1万件弱にとどまる。反対に、これを2%、3%と増やしていけば、売り上げは2倍、3倍と確実に増えていく計算だ。「やってやれないことはない。やらずにできるわけがない」と冨安も自信を見せる。
 

 では、全国へのシェア拡大に向けて、どのような布石を打っていくのか。
 

 地元名古屋での認知度は高く、葬儀件数のシェアは約20%。街を歩けばすぐ会館が目につき、CMも頻繁に流している。
 

 最近では関東に進出。埼玉に2件、直営の葬儀会館を建てた。基本的にはドミナント展開を行うが、都内に関しては貸しホールなどを利用し、ティア独自の高品質な接客とオペレーションで、大切な最後の儀式を運営する。
 

 まずは関東から東海、関西に至る「太平洋ベルトライン」を重点的に攻め、都内である程度の認知が高まり次第、地方都市のシェアを塗り替えて全国の統一ブランドを作る。現在、全国規模で高品質の葬儀を行える葬儀社は無い。そこで、全国どこでもティアに葬儀を依頼できる体制を構築する。



幸せは考え方が決める

 ティアの強みであるソフト面を保ちつつ全国展開をしていくとなると、末端まで行きわたる教育が肝要となってくる。直営会館はもちろん、FC店の社員とも思いを共有しなければ、良い成果は出せない。人材育成にどれだけ時間、資本、労力をかけられるかが、最終的な成長余力を決める。
 

 冨安自身が教鞭を取る社長セミナーも、毎月3回必ず開催される。「人間は忘れる生き物」というのが冨安の持論。何のために仕事をするのかという理念や社是社訓の部分に関しては何度でも語り、社員たちの思いを掘り起こす。

「仕事の意味が、生活するために変わった瞬間、感動のサービスは生まれなくなる。ただお金が欲しいだけなら、他社に行った方がいい。弊社では、少なくとも出勤してから退社までの時間は、徹底的に自分の命を相手に捧げるくらいの気持ちで働いてもらいたい」

 

 人間、気分の優れない時もある。しかし、目の前の遺族にとって、世界にたった一人の一度きりしかない儀式を執り行うのだ。社員がその覚悟が持っていなければ、感動は生まれないだろう。

 

 採用では4~5回の面接を行う。重視するのは、自分のことを差し置いてでも相手のことを考えられるか。損得勘定で仕事をされると、絶対に相手の琴線に触れるような感動を与えられない。誰かのために何かしたいと本気で思っている人を見極めて採用している。

 

「人を喜ばせようと思った時、結局は自分の喜びに繋がる。目の前の人の笑顔に幸せを感じる。そういう感性の持ち主を採りたいですね。人を幸せにするのは、その方の物事に対する考え方なのです」
 

 今年は新卒を20人以上採用した。入社した中には、実際にティアの葬儀に感動して就職を決めた人も。就職活動において、自社製品やサービスを使っていたという志望理由はよく聞くが、ティアの場合、そこには重い意味が込められている。人を育てるのには時間がかかるが、冨安はこつこつと、その真っ白なキャンバスにティアの色を塗っていく。


幸せは考え方が決める


社長セミナーは毎月3回以上開かれる


サービス業からおもてなし業へ

 ビジネスで重要なのはリピーター作りだ。相手の想定を上回る製品やサービスを提供することで、顧客としての定着を図る。だが葬儀社となると、他の業種と違い、10年20年単位で覚えていてもらわなければならない。通常の葬儀を行ってもリピーターになる可能性は低いため、心から感動してもらう必要がある。新規顧客は口コミから広がることが多い以上、他の人に伝えたいと思わせるだけの感動を与えなければならないのだ。
 

 「今まで、私たち葬儀社は究極のサービス業だと言ってきましたが、もう違います。21世紀を生き残れるのは、おもてなし業です。見返りなど求めず、遺族のため徹底的に尽くす。これができた時、初めて本当の感動が生み出せるのだと思います」
 

 大切な人の死という究極の場面で、悲しみのあまり思考が止まっている遺族に、「ありがとう」と言ってもらうためには、尋常な尽くし方では足りないだろう。
 

 冨安が「サービス業ではなく、おもてなし業」と説くのには、見返りを求める商売へのアンチテーゼがある。サービス競争では、相手が得することを提示して顧客を確保し、いわば等価交換を求めるため、人々は安売りになびく。それでは最終的に過当競争に陥り、利益が出なくなって、おもてなしをしてほしい社員たちが付いて来なくなってしまう。
 

 ならば、付加価値の高いおもてなしの精神で、徹底的に遺族のために尽くす。お客から自発的に「これくらいの金額を払ってもいい」と思われるような企業こそ、最後に生き残ることができるだろう。
 

 最近まで、デフレで安売りを善とする風潮があったが、景気の回復にも伴って消費者は付加価値の高いものを求め始めている。葬儀社も同様に、ただ安価に儀式を運営するのではなく、おもてなし業の領域に辿り着いた企業こそ、未来の葬儀社として生き残っていけると冨安は信じる。
 

 「ティアに頼んだら価値が違う」。お客にそう言わせる社員を育て、全国に発信していければ、自然と認知度は上がり、口コミも広がっていくだろう。同時に各都市のシェアを塗り替え始めれば、さらなる相乗効果で、各地域にいる潜在的な顧客も取り込んでいける。
 

 M&Aも選択肢としては捨てていない。数店舗を構える葬儀社を買収してティアの看板を背負ってもらい、社員を再教育していく手法も考えられる。「私自身の命も永遠では無い。スピード感を持って目標達成に近づくために有効な手段ではある」と冨安も語る。
 

 全国制覇の礎を築いた後は、世界進出か。特に仏教国ならば、親和性はあるだろう。

 「事業計画とは途中で変わっていくもの。世界に出るチャンスはゼロではない。少なくともきっかけくらい残しておけば、日本統一を終えてもまだ夢が見られる」
 

 そう笑う冨安からティアイズムを受け継いだ同志たちの世界に羽ばたく日が待ち遠しい限りだ。(相澤英祐)





冨安徳久(とみやす・のりひさ)

1960年愛知県生まれ。18歳の春、アルバイトで葬儀業界に入る。97年7月 株式会社ティアを設立。06年6月 名古屋証券取引所セントレックスに上場。08年9月 名古屋証券取引所市場第二部へ上場市場を変更。13年6月には東京証券取引所市場第二部へ上場を果たした。不透明な葬儀業界に一石を投じ、全国展開を目指している。



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