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トピックス -ビッグベンチャー

2014年08月22日

おしぼり業界に革命を起こす/藤波タオルサービス社長 藤波克之

企業家倶楽部2014年8月号 次世代の企業家




古い体質の産業にイノベーションを起こす

 今、日本でもっとも注目を集めるのは2020年に開催の決まったオリンピック関連銘柄と言われる。2013年9月、アルゼンチンで開催されたIOC総会にて開催地を決めるプレゼンテーションは印象的で、日本国内のみでなく全世界からも注目を集めた。日本が誇る「お・も・て・な・し」の心は流行語にもなった。嫌がおうにも世界中から日本のホスピタリティーに期待が集まる。そんな、おもてなしのひとつに「おしぼり」がある。

 東京・国立市に創業47年になる老舗のおしぼり屋がある。藤波タオルサービス社長の藤波克之は2代目で、10年前に家業を継ぐため同社に入社。以来、古い体質の業界にイノベーションを起こそうと奔走している。

 「人々が喜ぶ商品を生み出し続ける組織を作りたい。誰でも新しいことに挑戦しているとワクワクするでしょう」と藤波は目を輝かせて話す。



ビジネスの可能性を広げる

   レストランで食事の前に出されるおしぼり。使用済みのおしぼり用タオルを回収・洗浄し、綺麗に包装し、また店舗に配送するのが主な業務だ。この行程で他社と差別化をするのは難しい。そこで藤波はおしぼり自体に付加価値をつけることが出来ないかと考えた。

 香り付きのアロマおしぼりを開発し、品揃えを多くすることで差別化を計ったのだ。タオルの生地や色、香りなど、選択肢は多くあった方が良い。藤波のこの読みは当たった。外車を販売するディーラーや高級料亭、化粧品業界やエステなど顧客単価が高く、ホスピタリティーに対して敏感なクライアントのニーズを掘り当てた。

 自社の営業担当者にも他社と差別化できる商品は歓迎された。2006年に発売以来2万店舗以上で採用され、生産体制を増強するほど売れている。古くからあるおしぼり産業の中でもイノベーションを起こせることを証明したのだ。

 成熟産業や斜陽産業といわれる中でもイノベーションを生み出し、成長している企業がある。カフェに新風を吹き込んだスターバックス・コーヒー。メガネ業界には機能性メガネという新機軸を打ち出したジンズ。町の定食屋さんがチェーン展開し、株式上場を果たし、海外展開している大戸屋もある。斜陽産業と言われる繊維産業でも、フリースやヒートテックの開発などで成長を続けているユニクロはもはや日本を代表する世界企業となった。



新しい市場を開拓

 次の飛躍のチャンスは外からやってきた。2009年、インフルエンザの流行である。関西で猛威を振るい、すわパンデミック(世界的大流行)かと世間を騒がせた。予防策はシンプルだが手指洗浄とされる。航空会社など病原菌の蔓延を予防したいという現場の声が多かったがそれを解決する商品は無かった。

「おしぼりで手軽に殺菌や除菌が出来ないか」という藤波に寄せられた相談が頭の片隅に残っていた。

 その2年後の2011年、慶応義塾大学医学部の教授から「抗ウイルスの効果があり、かつ安全性の高い物質がある」という話を聞いた時、藤波はインフルエンザ蔓延の惨事を思い出した。

 衛生需要を掘り当てた瞬間だった。すぐに産学連携で研究を進め、商品化を急いだ。翌年、特許を申請し抗ウイルス(VB=ウイルスブロック)製品が誕生した。この商品は用途が広く、病院、介護施設、幼稚園など外食産業以外の問い合わせも多い。

 医療現場での使用など特殊な事情を考慮すると回収型の布製のおしぼりではない、使い捨てタイプのディスポーザブル型が適している。そこで藤波は設備投資を行い、特殊な紙製のおしぼりを生産するラインを新たに作った。

「抗ウイルスの使い捨て型おしぼりは用途も広く、ニーズがある商品。それを普及させるため価格を従来のものと変わらないように原材料の仕入れルートを開拓し、価格を抑えた。異業種からの引き合いも多く、手応えを感じている」と藤波は自信を見せる。



現状から創造的破壊

 おしぼり産業は多数の業者がおり、そのほとんどがオーナー経営者のいるファミリー企業だ。顧客は主に外食産業でおしぼりを定期的に回収するため、エリア制となっている。必然的に地域密着型となり広いエリアをカバーする企業は少ない。見積もりも請求書もまだ手書きが多く、ホームページも商品カタログもない。経営が遅れている産業のひとつと言える。

 おしぼり業の配送担当者は定期的に店舗を訪れ、店主と顔を合わせる機会がある。これは強みと言える。しかし、現状では顧客がおしぼり以外に欲しいものがあっても提案できずに機会ロスをしているケースが多い。一度契約すると大きな金額にならなくとも安定的に収入があるため、家族的な経営の中で安住してしまい、現状維持でよしとされる傾向がある。

「経営を合理化出来れば、売上げが倍増する会社は多くある。まだまだ潜在的なのびしろがあるはず」と藤波は話す。



業界全体で共存共栄

 藤波はおしぼり業界の現状を分析し、顧客接点という強みを活かしながら、弱みを補完する仕組み作りに奔走する。プライベートブランド作り、大量に製造・仕入れることで価格を押さえ、同業他社とフランチャイズ契約を結び、安定的に安価で商品を供給する。このように一社では新製品の開発はコストが掛かり、ハードルが高いがスケールメリットを出せる仕組みを作った。

 また、自社内にデザインスタジオを作り、カタログやホームページ制作など販促ツールも提供している。同社ではネット通販も積極的に展開しているため、エリアの制約を受けず、全国に発送できる。

 2014年4月にシステム開発を行う別会社を設立し、フランチャイズに加盟している企業に対し、ネット通販サイト「イーシザイ」と連動した受発注システムや在庫管理、配送運行管理、顧客管理といった総合的なIT活用を推進するクラウド型システムを提供する予定だ。

 加盟店はPC1台さえあれば、手書きの請求書から開放され、売れ筋商品や購入頻度などが把握できるようになる。経営の効率化が図られれば、これまで雑務に追われていた時間を短縮でき、顧客に新しい製品や企画を提案する時間に当てられるメリットも生まれるだろう。同業他社の後方支援をしながら、顧客の利便性も向上し、藤波タオルサービス自体の発展につながる「三方良しの経営」といえる。

「全国には磨けばピカピカに光るおしぼり業者が多くある。遅れている経営の効率化を推進し、後方支援をすることで自社の成長のみではなく共存共栄が最終的な目標」と藤波は熱い想いを語る。

 この10年で売上げは8億円から20億円を見込むまでに成長した。藤波は企業理念と経営方針をまとめた「コンパス」という手帳を全社員に配布している。そこには、10年後の2025年には売上げ100億円、営業利益10億円を目標と記されている。おしぼり業界のイノベーター、藤波から目が離せない。





藤波克之 (ふじなみ・かつゆき)

1974年9月11日生まれ。法政大学社会学部応用経済学科卒。NTTGroup勤務を経て、04年に家業の藤波タオルサービスへ入社。09年に専務就任、13年9月社長に就任。同12月、新本社新工場を竣工。13年1月、VBジャパンテクノロジー代表取締役就任



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