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トピックス -ビッグベンチャー

2014年08月22日

ファッション業界の革命児「WEAR」で業界に新風/スタートトゥデイ社長 前澤友作

企業家倶楽部2014年8月号 次世代の企業家





 スタートトゥデイ社長の前澤友作はファッション業界の革命児である。アパレルはインターネットでは売れないという常識を覆して、2000年にZOZORESORT(ゾゾリゾート)というサイトを立ち上げ、売り上げを急速に伸ばして行った。

 14年経ったスタートトゥデイの2014年3月期の連結売上高は前期比10%増の385億8000万円、経常利益が同45%増の124億2900万円を計上した。商品取扱高は1000億円の大台を超え、楽天に次ぐネットショッピング企業として期待されている。

 前澤は「このまま行けば、5000億円を突破するだろう」とこともなげに言う。今年7月で39歳。まだ、伸び盛りのベンチャー経営者である。

 前澤は独創的な考え、行動を好むタイプである。少年時代は自分でパチンコ台を作り、うえから玉を落とすと、どんな風に玉が落ちて行くかを飽きずに眺めていた。物づくりが高じて、ZOZOTOWNも独学で作った。

 それがユナイテッドアローズなどのセレクトショップの目にとまり、今では2000強のファッションブランドがZOZOTOWNに商品を展示している。 

 このままZOZOTOWNに磨きをかけ、アパレルのショッピングサイト事業を拡大していけば、前途は洋々と開けている。保守的な投資家などはそう望んでいるかもしれない。



「WEAR」という新サービスを提案

 しかし前澤は革命児である。小成に甘んじることが嫌いなのである。2013年10月31日から「WEAR(ウエア)」という新サービスを始めた。

 「WEAR」はスマートフォンのアプリを利用して、ファッションを楽しむサービス。3つの機能があり、1つはコーディネートレシピの機能。「今日はどんな格好をしようかな」を悩む人にファッションのレシピを提案する。「ファッション版、クックパッドです」と前澤は言う。
 

 2つ目はバーコードスキャン機能。店頭の商品タグのバーコードを読み取ると、商品情報などを詳しく知り、あとでネットで購入することも出来る。
  

 3つ目はマイ・クローゼット機能で、既に持っている洋服や靴などをアプリ上で管理する。「洋服がありすぎて、たんすの奥に眠ったままのものが再び陽の目を見るわけです」と前澤は「WEAR」の革新性を強調する。
 

 ところが、2つ目のバーコードスキャン機能に噛み付いたお店がある。「WEAR」が広く普及すると、店舗がショールーミング化するという心配である。つまり、店舗がショールームになり、客はあとでネットで買うというのである。店舗の売り上げが減る。もっともな心配である。
 

 今の消費者はちゃっかりしていて、量販店で商品説明を聞き、いざ購入する段になると、ネットで購入する。ネットの方が安いのである。ヤマダ電機などの量販店がショールーミング化し、一時、業績が落ちたこともある。



一部のショッピングセンターが阻止

 ショッピングセンターの運営会社などは「売り上げが落ちる」と危惧し、各テナントに「WEAR」導入阻止を働きかけたところもある。
 

 その結果、スタートトゥデイは2014年4月でバーコードスキャン機能を取りやめた。このことを、ある大手経済紙が大々的に取り上げ、あたかも「WEAR」そのものが失敗したという印象を読者に与えた。
 

 ところがどっこい、残り2つの機能は残っており、前澤は「WEAR」と止める気はさらさらない。台湾で5月から新サービスを始めたし、国内での「WEAR」の着こなしデータは70万件を突破した。
 バーコードスキャン機能は既存業者にとっては脅威かもしれない。しかし、消費者に便利なものは必ず普及する。スタートトゥデイが取りやめても誰かが必ず挑戦する。だとすれば、ファッションを愛してやまない前澤に任せた方がいい、という意見もある。



新興勢力が取って代わるのは歴史の必然

 紙の新聞はいつかネット新聞に食われるだろう。それは歴史の必然である。米国では紙の新聞は衰退し、ネット新聞に取って代わられつつある。日本でもいつかその日が訪れるだろう。
 

 既存勢力は新興勢力に取って代わられる。大手経済紙の記者は本能的にそれを嫌い、「WEAR」を葬り去りたいと思ったのであろう。
 

 かつて、日本の大手電機メーカーは1980年代に台頭したパソコンメーカー、ソードをいじめ、つぶしてしまった。その結果、マイクロソフトやアップルなどの米国ベンチャー企業の下請けをさせられている。あの時、ソードを支援していたら、今の状況は変わっていたかもしれない。
 

 前澤もファッション業界に波風を立てるかも知れない。しかし、ある程度の波風は業界の発展のためには必要なのだ。革命児前澤を大きく包み込む包容力がファッション業界にあってほしい。
 

 前澤は2012年秋に「ZOZOコレ」というイベントを千葉県幕張で開催した。ZOZOTOWNに出品している200のファッションブランド新商品を出店してもらった。
 

 期間中、1万人の客が訪れ、約1億5000万円の予約販売が実現した。ファッション業界は見込み生産が主体で、売れる残りを計算して価格を少し高めに設定する。このため、客は高い商品を買わされることになる。ファッション業界の悪弊の1つだ。

 この悪弊をなくす手段として、前澤は予約販売を考え、「ZOZOコレ」を開催した。もし、客の予約によって販売額が事前にわかれば、ファッションメーカーには計画生産が可能になり、適正価格で売ることが出来る。
 

 「ZOZOコレ」には副次効果もあった。若いデザイナーが自分の才能を発揮する機会を与えられる。「ZOZOコレ」が世界に向けて新しいファッション情報を発信することになる。「ZOZOコレ」はそうした可能性を秘めている。
 

 前澤は世の中の矛盾や不条理を見つけ、正しい方向に修正したいという意識がある。高校時代に通学電車の中で「サラリーマンは何故、しかめつらして毎日通勤しているのだろう」と思った。もっと笑顔で通勤出来ないものか。そうした思いがスタートトゥデイの6時間労働の原点になっている。
 

 前澤はこれからも、業界に物議を醸す新企画を考えて行くだろう。先走りもあるかも知れないが、大半は業界の古い体質を変革して行くに違いない。革命児、前澤友作の行動に注目したい。





前澤友作 (まえざわ・ゆうさく)

1975年千葉県生まれ。早稲田実業高校在学中に、音楽バンドを結成。95年、音楽活動を続けながら輸入レコード・CDのカタログ通販ビジネスを自宅にて創業。98年5月に、有限会社スタート・トゥデイ(現スタートトゥデイ)を設立。00年、アパレルネット通販に進出し、04年にファッションショッピングサイトの「ZOZOTOWN」を本格的にオープン。その後も事業を拡大し、07年12月、東証マザーズ上場を果たす。13年には新サービス「WEAR」を開始した。08年、第10回企業家賞を受賞。



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