2014年09月17日
行動力に長けた情熱家/黒田武志の人的ネットワーク
企業家倶楽部2014年10月号 リネットジャパン&ネットオフ特集第5部
一見すると、上品で控えめな印象の黒田。しかし、実際は事業のアイデアを生み出し続けるなど、自らが先頭に立って社員を牽引している。また、何事にも粘り強く簡単には諦めない性格だ。そんな黒田をよく知る4人は口を揃えて「彼は熱い男だ」と評する。 (文中敬称略)
俺の株式会社社長 坂本 孝 Takashi Sakamoto
ネットオフ社長の黒田武志にとって、ブックオフ創業者(現俺の株式会社社長)の坂本孝は、企業家としての道筋をつくってくれた恩師である。トヨタの社員だった黒田がある講演会で坂本の話を聞き、坂本に心酔。半ば追っかけのように坂本の講演に出向いていた。そして平日はトヨタの社員として働きながら、土日は三重にあるブックオフの店でアルバイトするという生活を続けていた。そんな黒田の熱心な姿が坂本の耳に届いた。三重に大変熱心な若者がいると。そこで坂本は黒田に囁いた。「三重の店をやってみなさい」
黒田は迷う事なく、トヨタを辞めてブックオフの起業家支援制度の第1号として、ブックウェーブを立ち上げることとなる。1998年のことだ。トヨタの社員といえば人生の8割は成功したようなもの。そのトヨタをすっぱりと捨てて起業した、その潔さに敬意を表したいと語る。
元々考えていたインターネットを使ったリユース事業構想を告げるが、坂本は反対した。しかし黒田は意思を貫き通し、2000年、イーブックオフを創業することになる。反対の理由を問うと「リアルの商売をきっちり極めてからでも遅くないと思った。しかし黒田君は私のアドバイスなんて聞きやしないからね」と坂本。見た目とは違う頑固一徹の性格を見抜いていたようだ。
「イーブックオフのオープニングのとき、当時トヨタの常務で現社長の豊田章男が現れたことには驚いた。黒田君に将来性を感じたからこそ、駆けつけてくれたのだろう。こいつなかなかやるなと感心した」と当時を振り返る。
そして苦節14年、最近ようやく経営が回るようになったのではないかと目を細める。中古業は最初にお金がかかる。資金繰りで、もうダメかと思うことが3度や4度はあったはず。その度に新しい連携と提携を重ねて仕事の厚みを増してきた。そして何よりもリユース、リサイクルという事業分野からブレてはいない。
アントレプレナーは常に革新者であり、開拓者でなければならない。中でも中古業は世の中の流れの5年先を行かないと続かないと坂本。本をリユースするという革新的なビジネスモデルをつくりあげた坂本の声に力がこもる。
「今、黒田君が取り組んでいる都市鉱山という発想は大きなチャンス、環境省からお墨付きをもらったというのも、革新性をもってチャレンジしてきたからこそぶち当たった鉱脈」と愛弟子の活躍に目を細める。
課題については人の使い方が下手、もっと周りを巻き込んで、いいチームをつくって欲しい。それには番頭役の黒田官兵衛を育成することが大切。いい番頭がいれば社長として心の余裕ができる。何でも自分でやってしまいがちだが、任せられる部下を育成することが、成長には不可欠と先輩企業家としてアドバイスを贈る。
そしてぜひ上場して欲しい。そして奥さんを連れて一月ぐらい世界一周の旅にでも出かけて欲しいと坂本特有のアドバイス。これはトップがいなくても会社がきちんと回る仕組みを創ることが必要という意味だ。
「黒田君はまじめ一徹、しかし経営者にはあいまいさも必要。人間の幅を広げて、官兵衛を育成、もっと大きく成長して欲しい」という。
リユース、リサイクルは下水道のようなもの。ここの循環がうまくいけばこそ新品市場も活性化する。リユース事業で日本を変える仕事をして欲しいと愛弟子にエールを贈る。
ネッツトヨタ仙台 代表取締役社長 野萱和夫 Kazuo Nogaya
「おとなしくておっとりした、勉強のできる優等生。元気を売りにしているような体育会系のタイプではありませんでしたね」
野萱は黒田の第一印象を、そう振り返る。野萱がトヨタ自動車の部品部総括課長を務めていた折、新入社員として配属されてきたのが黒田だった。
そんな黒田に任せた最初の仕事が、交換済みバンパーをリサイクルする仕組みの構築だ。野萱は黒田と共に日本自動車工業会の委員会に出席し、リサイクル全体の目標とスケジュールを提示。だが、社内外から反対意見が噴出し、事はそううまく運ばなかった。
廃棄されるバンパーをリサイクルするための技術開発、協力樹脂メーカーの発掘、回収・物流コストの低減、全国的に回収に携わる人員の確保、産業廃棄物処理・運搬に関する法律の壁など、問題が山積していたのだ。
しかし、ここから黒田の獅子奮迅の働きが始まる。
社内関係部署と粘り強く交渉する一方、バンパーを産業廃棄物処理法の適用外に変更してもらうべく、当時の厚生省に足しげく通い、若手の官僚たちを味方に付けることに成功。また、全国のトヨタ部品共販会社に物流面で協力を仰いだ。
物流方式を考案するためには回収の現場を知ることが肝要と考えた黒田は、ホワイトカラーらしいスーツではなく、「つなぎ服」と呼ばれる作業着を着て共販会社の車に同乗し、販売店の廃バンパー置き場を調べ尽くした。その姿は、今でも野萱の印象に強く残っている。
「現場の実態を踏まえて新しい仕組みを考案し、その実現に向けて粘り強く関係者と協力・推進していく行動力は卓越しています。ここまで来ると、もはや第一印象と全く異なる芯の強さを感じざるを得ませんでしたね」
リサイクルという大義を掲げ、各部署を説得して回ったり、現場で働く人の気持ちを考えて、仕事に誇りを持てるような回収の物流方式を考えたり、黒田の企画力に常々感心させられてきた野萱。「こうした力は、机上論だけでなく現場を泥臭く回りながら会得した経験に基づいている」と分析する。
使用済みバンパーの回収開始までには1年以上、新品までリサイクルできるようになるにはさらに数年を要したものの、最終的に黒田は当初からの目標を達成。これにより、貴重な資源を節約しつつ、環境への負荷も軽減することができるようになった。現在では交換済みバンパーは100%が新品バンパーにリサイクルされているというから、黒田の功績は大きい。
こうした実行力は、確実に現在のビジネスにも生きている。野萱は、インターネットを通じた中古本の仮想店舗開業、そして今回大々的に開始されることとなった小型家電の回収事業のどちらも、構想の段階から話では聞いていた。
しかし、ただ語るのと実行するのでは雲泥の差がある。「口だけでなく、しっかりと実現させたことに拍手を送りたい」と野萱は頷く。
そんな野萱と黒田は、黒田が新入社員時代から自宅に招いたり、野萱の妻も含めて一緒にテニスをしたり、交流を深めてきた仲だ。直近では昨年末、仙台の温泉で共にゆったりとした時間を過ごしたという。
「都市鉱山の資源をごみとして捨てたり、第三国に流失させたりするのは、資源のない日本にとって残念なこと。単なる一私企業の商売の観点だけでなく、日本の国益のためにも頑張って欲しいですね」
先輩として、友人として、野萱は今後も黒田に期待を寄せる。
株式会社MTG 代表取締役 松下 剛 Tsuyoshi Matsushita
「黒ちゃんの成功は自分のこと以上に嬉しい」。美容機器や医療機器を手がけるMTG社長の松下剛は、何度もそう繰り返した。
小型家電リサイクルの許認可が関係省庁から下りた時、松下は黒田からの電話で知らせを受けた。ネットオフの社外取締役も務めた松下は、認可が予定通り下りず期日が延びていくのをハラハラしながら見守っていた。お互い多忙の身であるが、その時ばかりはそれまでの苦労を思い起こし、2時間を超えても電話を切ることが出来なかったという。
そう語る松下もサッカーW杯後の7月、クリスティーナ・ロナウド選手の来日イベントを大成功に終わらせ、今度は黒田が涙を流して祝福した。ベンチャー企業が地方都市に招聘する大変さを熟知しているからだ。 「黒ちゃん」「まっちゃん」と呼び合う2人は10年程前、盛和塾(京セラ創業者稲盛和夫の勉強会)で出会った。今では黒田と松下は中部地区の創業経営者らと「元気会」と銘打って2カ月に一度ほど集い、お互いに夢を語り合い、励ましあって切磋琢磨している。
2008年、松下に創業以来初めての危機が訪れる。1台20万円弱の足温器1万数千台全てがリコールになった。売上、利益共に大幅に下落、8カ月程は全ての開発と営業を止めてリコールの対応に注力した。深刻な危機感と恐怖心の中、黒田からの一通のメールを受け取った。「何でも自分に出来ることがあったら言ってくれ」。その言葉に勇気付けられた。
1年後、ようやく業績が回復し始めた時、松下はMTGのリコールと同時期にネットオフも深刻な状況であったことを知る。「私は自分の会社を守るのに精一杯で、黒ちゃんの状況に気付きもしなかった」と自分を恥じたと同時に、黒田の人間としての器を実感した。
松下は黒田の様々な困難を近くで見てきた。不正アクセス問題の時は「今は大化けする前に膿を出している最中だ」と今度は松下が黒田にそう語りかけた。
リサイクルの許認可取得時も、競合は全て大手企業。非常にハードルが高く、無謀とも言える挑戦を、一歩一歩黒田はクリアしていった。
「彼は大人しそうに見えますが、全く違う。熱い男なんです」。一緒にビジネスをする訳ではなく、タイプも違うが、考え方の本質に感銘するという。常に高みを目指し、仲間を大事にし、粘り強い。その粘り強さが、リサイクルの許認可取得で生かされた。黒田が最後まで陣頭指揮をとっていたからこそ、実現できたのだ。
そんなネットオフの強みは創業者である黒田そのものだと松下。最先端のITと肉体労働の融合のビジネスモデルは容易に真似できるものではない。リネットジャパンは黒田の第二創業であり、必ずや大きく発展すると確信している。
現在の経営幹部は黒田と共に苦難を乗り越えた素晴らしいメンバーだが、今後は、会社の急成長でさらに事業ビジョンを理解し、黒田を支えていく幹部社員が必要になる。若手の育成はもちろん、外部から迎えることが出来れば、益々発展していくだろう。
経営者同士、他の人には話せないことや、知恵を出し合ったりすることもある。今やお互いにとって欠かせない無二の親友だ。照れくさいと言いながら、最後にこう結んだ。
「今まで以上に自分の無限の可能性を信じて、飛躍していただきたい。一生、何かあったら助け合うという仲間でありたい」
エポック・ジャパン 代表取締役 髙見信光 Nobumitsu Takami
アメリカ・ミネソタ州。約5年前、この異郷の地で、髙見と黒田は出会った。現地で約1週間に渡り行われた経営セミナーに参加したところ、数少ない日本人の一人が黒田だった。
話してみると、全くの同世代。髙見は葬儀社、黒田は中古品販売と業界こそ違えど、お互いに同じ2000年の創業で、売上規模も似ている。そして、両者とも株式上場を志していた。
「境遇以上に、会社が一旦伸び悩んでいる状況が似ていて共感できたからこそ、その後も懇意になったのかもしれませんね。リーダーのあり方自体を悩んでいて、その模索の一つの方法として、淡い期待の元に参加したセミナーでした」
そんなアメリカでのセミナーも一つの契機になってか、ネットオフは日本経済新聞に一面広告を掲載。「これこそ黒田さんを一番物語るエピソード」と髙見は語る。 「会社の状態が今ほど良くない中で、数字だけに囚われず、ここ一番大事なものに投資する。勇気をもって勝負する彼のスタンスを集約しています。僕にはできない芸当ですね」
新聞に一面広告を出せば、1000万円単位でお金がかかる。一見リスキーだが、軸をぶらさずチャレンジする黒田の精神を象徴する一つのアクションだと髙見は分析する。
「黒田さんはハンサムですし、第一印象としては柔和な雰囲気の持ち主に見えます。しかし彼の言動を繋ぎ合わせると、情熱的な人物であることが分かるでしょう」
上海への社員旅行一つ取っても、幹部が全員揃って日本を離れることは珍しい。黒田がいかに理念やビジョン、思いの共有を大事にしているかが伺える。
現在も、お互いに忙しい中で年に2、3回は会う仲。基本的には食事をしながら経営の話に終始するという。知り合いの経営者を紹介したり、情報交換をしたりして刺激し合っている。
「頑張ろうと励まし合いつつ、内心は負けるもんかと思っているかもしれませんね(笑)」
黒田の経営は、自分がアイデアを出して引っ張っていくスタイルだ。だが、「それができるのも、企画者たるべく勉強を重ねているからこそだ」と髙見は言う。特に、ネット業界の環境変化が激しいのは周知の事実。感度を高め、実際に動きながら様々なことを吸収せねば生き残ることは難しい。
「黒田さんのフットワークの軽さは見習いたいですし、夢を決して諦めずに前進する爆発的なエネルギー量はすごい。きっと、事業を拡大することに飢えているのでしょう。そこが他のネット会社に埋もれずにエッジを利かせられている秘訣だと思います」
髙見はこれまで、当初掲げた理念とは違う方向に進んでいってしまった経営者を何人も見てきた。確かに、年を重ねるごとに初志貫徹するのが難しくなっていくのは仕方の無いことかもしれない。だが、そうした社長たちに比べ、黒田の事業に対する貪欲さは底が見えない。
「ただ純粋に夢を追い続ける。意志を固くして会社を引っ張る姿は流石ですね。その雰囲気が、僕と馬が合う一番の理由かもしれない」
そんな黒田へ、髙見は次のようにエールを贈る。
「まずは上場実現。そして、世界に出て欲しい。シリコンバレーで表彰されたように、海外でも通用するビジネスモデルだと思います。コンセプトが分かりやすくて素晴らしいですし、リサイクルという概念も時代に合っています。本当に世界を変えられたらカッコいいですね」
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