2014年09月30日
日本復活の方程式を解く鍵はIT武装とロボットにあり/ソフトバンク代表取締役社長 孫正義
企業家倶楽部2014年10月号 ベンチャー・リポート
「日本は必ず復活する」
ソフトバンクワールド2014の基調講演で、ソフトバンク社長の孫正義は声高に叫んだ。日本は「失われた20年」から抜け出そうともがいているが、GDPは低迷。しかし、現状を憂いていても仕方が無いと説く孫は、スクリーンに一つの式を提示した。
「生産性×労働人口=競争力」
すなわち、日本が復活するためには、競争力を高めなければならず、それには「生産性」と「労働人口」という2つの要素を改善する必要があるというわけだ。ただ、言うは易し、行うは難し。一体どうすればこれらを達成できるというのか。
まずは最初の変数である生産性を見ていこう。孫は、その改善の鍵は日本全体の情報武装だと説く。
ITテクノロジーの進化は止まるところを知らず、2018年にはコンピュータの1チップに入るトランジスタが300億個を突破。人間の脳細胞のニューロン数を超えるという。これからも、コンピュータは性能、容量、通信速度を着実に、そして飛躍的に伸ばしていくだろう。こうした進化を味方にすることが肝要だ。
人々のワークスタイル、ライフスタイルが変化していく中で、ソフトバンクはどのような施策を取ってきたか。iPhone、iPadが発売されると、即座に全社員にこれらを配布したのである。そして、ソフトバンクの社員は全員がクラウドに繋がり、業務を行っている。
孫は、来場者に問いかける。
「今、自社でスマホ、タブレッドを全社員に配布し、かつクラウドを業務において使用している方はおりますか」
手を挙げた人間は、皆無であった。
「これでいいのか!」
孫は吠える。
「スマホ、タブレット、クラウド。この三種の神器こそ、IT武装、ひいては生産性向上に不可欠な要素です」
もちろん、これらを何に活用するかはそれぞれの会社で異なるし、使いこなせるかも未知数だ。
「しかし」と孫は続ける。「織田信長はなぜ天下に覇を唱えられたのか。それは、他の大名に先んじて最先端機器である鉄砲を手に入れ、最大限に活用したからに他なりません」
ソフトバンクでは2009~2014年の間、日本企業全体が業績を伸び悩ませている中で、1社員あたりの獲得契約数が倍以上になった。経費や社員数に照らして、費用対効果が倍。まさに、生産性を上げるとはこうしたことである。
現在、日本企業の中でスマホすら導入されていない企業が7割近いという。IT武装の有無が競争力の鍵を握っているとすれば、この事態は打開せねばなるまい。
スマホ、タブレット、クラウドの100%武装を唱える孫。しかし、IT武装によってどのように生産性が向上するというのか。今や、自動車から家電、メガネまで、様々なセンサーや通信機器によってビッグデータの収集対象とされている。今後もこの流れは続くだろう。
こうしてクラウドに集められたデータこそが、ソフトバンクの最大の財産なのである。現在でも約100億もの機器がネットに繋がっていると言われており、これから10年と経たずして、全世界で500億個のモノがインターネットに繋がってデータを集め始めるだろう。
では、ソフトバンクはそれらをどのように活用し始めているか。ビッグデータを活用することで、ネットワークの繋がらない部分をピンポイントで見つけ、一つひとつ解決して接続率を伸ばしていったのである。
電波改善のためにソフトバンクが行った接続テスト回数はなんと500億回。機種別、時間別、場所別、キャリア別というあらゆる面から接続率を把握できた。同様に、ヤフーの持つ月間565億ものページビュー、ツイッターの情報まで含め、ソフトバンクは解析している。
従来「繋がらない」というレッテルを貼られていたソフトバンクが、テレビCMなどで繋がりやすさナンバーワンを謳えるようになった裏には、こうした努力があったのである。
最先端テクノロジーが生産性を向上させることは歴史が証明している。だが、そうした機器は必ずしも自分で生み出す必要は無い。織田信長も鉄砲を発明したのではなく、最も早く最大限に活用したことが強みとなった。孫も言うように、自分がスティーブ・ジョブスやマーク・ザッカーバーグでなくてもいい。発明された世界最先端の技術をいかに使うかが、成長の鍵を握っているのだ。
生産性向上について、IT技術が重要だということはよく分かった。しかし、もうひとつの難題、少子高齢化と労働人口の減少にはどのように対処するのか。
日本の労働人口は少ない。世界各国の製造業の労働人口を比較すると、中国7000万人、アメリカ、インド、日本と横並びで約1000万人。日本は近年まで「ものづくり大国」という地位を確立していたが、労働人口が製造業の分野でも抜かれてしまったことで、経済が停滞してしまった。
さらに挙げられるのは、日本の人件費が高いという問題である。労働人口が多く、人件費が安い発展途上国に製造業で抜き去られるのは、論理的に考えれば当然ではある。ならば、どうやってこれを覆すのか。
「ここでホラを吹きたいと思います」
孫はニヤリと笑う。
「日本の労働問題を解決するのはズバリ、ロボットです」
製造業における単純生産型のロボットでは、日本はまだまだ世界一を誇っている。しかし孫は、安くて高性能で、しかも汎用性の高いロボットを一気に普及させると豪語する。しかも、これらのロボットはクラウドに繋がり、人工知能を搭載する。
もし日本が、こうした産業用ロボット3000万台を導入することができたら、どうなるか。ロボットは1日24時間働くことができる。したがって、1台のロボットは単純計算3人分の人間の仕事をすることが可能だ。土日も働けることを考えれば、それ以上かもしれない。つまり、ロボットの導入により、3000万台×3人分=9000万人の労働人口に匹敵する。それを1000万人の労働人口に加えれば、理論上労働人口1億人が達成できる。
次に賃金だが、多機能型のロボットを仮に100万円で作れば、これを5年償却で割り算していくと、月額約1.7万円に相当する。当然、人件費も世界の大国の中で一番安くなるというわけだ。
孫の本気度は、最近自社ロボット「Pepper(ペッパー)」を発表したことでも明らかだ。ペッパーは、基調講演でもゲストとして登壇。「近いうちに皆さんとお仕事する日が来ると思いますので、どうぞよろしくお願いします」 と、礼儀正しく挨拶をした。ソフトバンクはこの可愛らしいロボットを、2015年2月から19万8000円で発売する。個人がロボットを買える時代が到来したことを知らしめる、戦略的な価格設定だ。
ペッパーは世界で初めて、声のトーンや表情から喜怒哀楽といった人間の感情を認識するロボットだ。そして、人々に少しでも喜んでもらえるように、自らの意思で努力する。もちろんインターネットにも繋がっているため、リアルタイムで情報を集め、日々進化していくという。
今後、何万台と世の中に出ていくことになるであろうペッパー。そのそれぞれが家庭や店舗において認識・学習した経験は、全て積み上げられ、彼らの人工知能を飛躍的に進化させていく。
アプリも増えていくだろう。子供に絵本を読んで聞かせる。音楽に合わせたダンスのエクササイズをしてもらう。パソコンやスマホと同じように、ロボットができる行動の幅はどんどん広がっていくのは間違いない。
思えば、自動車やコンピュータが生まれた時、誰もがその有用性を疑った。まして、全世界に普及するなど想像もできなかった。しかし、今や自動車もコンピュータもあらゆる生活シーンにある。
「これから30年、50年と経った頃には、全ての人々が様々な生活シーンでロボットと共存する時代が必ず来ると、私は信じています」
孫正義は常に、はるか未来を見ている。その視線の先はあまりにも遠すぎて、多くの人が首を傾げてしまうほどだ。しかし、いつか私たちが時代の先に立った時、その未来を生み出す最初の一歩を踏み出したのがソフトバンクであり、孫正義であったと言われる日が来るのかもしれない。(相澤英祐)
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